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表題作魔術師リナルの嘘

イトゥル・シャーン・アルヴィド
アルヴィド国の末王子,帝国の捕虜,20歳
リナル・ヴィクセル
ザルツハイム帝国宮廷魔術師,伯爵家三男,24歳

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

軍の一部隊をたった一人で全滅させた、敵国の捕虜の世話をしろ――王命により無理難題を押し付けられた、宮廷魔術師のリナル。争いや厄介ごとを嫌う彼の前に現れたのは、戦争で家族も国も失った青年・イトゥリ。言葉も通じず手負いの獣のようなイトゥリに手を焼くけれど…!? 落ちこぼれと揶揄される最底辺の魔術師と全てを奪われた亡国の王子が、帝国に反旗を翻す逆転ファンタジー浪漫!!

作品情報

作品名
魔術師リナルの嘘
著者
渡海奈穂 
イラスト
八千代ハル 
媒体
小説
出版社
徳間書店
発売日
電子発売日
ISBN
9784199011313
3.6

(23)

(7)

萌々

(6)

(6)

中立

(4)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
7
得点
81
評価数
23
平均
3.6 / 5
神率
30.4%

レビュー投稿数7

過ぎたる力の恐ろしさ

とても面白かった。
大陸統一を目指す強大な軍事国家の魔術師受け。受けは野心も出世欲もなく伯爵家の太い実家と恵まれた容姿をフル活用して図書館でショボイ魔術師としてのんびり働いている。なのに何故か敵国の捕虜の世話を言い渡されて受けの平凡ライフは終わりを迎える。

攻めが置かれた状況があまりにも辛くて悲しかった。攻めを蕃族と呼び人として扱わず、言葉も通じない中で異国の言葉で「帰りたい」と呟く姿に涙。急に攻めてきて親兄弟国民を殺したことを棚に上げて、攻めが抵抗して殺した人達を思って憎しみを向ける兵士達が恐ろしかった。

そんな状態の攻めを放っておけず世話係の範疇を超えて攻めに寄り添い看護する受け。手負いの獣状態だった攻めが受けに心を開いて懐いていく様子が良かった。口数は少ないが、命を救ってくれた受けに魂も運命も委ねて尽くすという覚悟が見える。攻めは慣れない異国語を話すことになってシンプルな言葉を使い口数が減っただけで、本当は冗談も言う朗らかな感じの人らしいとあとがきで知り、そんな攻めと受けの会話をもっと見てみたいなと思いました。

その後も戦争の悲惨さや愚かしさに悲しくなる。受けを攻めの世話係に任命した第二王子が狡猾で恐ろしくて二人が生きて平和に暮らすことはできるのかとハラハラした。第二王子が登場する度に緊張感が走るけれど、とても魅力的なサブキャラクターだった。王子は賢く統治者の才能もあり、受けと同じくこのままでは国の栄華は長くは続かないと知りつつも父や兄の望みの通りに国を動かしてきた。受けの隠された魔術の才能を知った時に、受けを帝国の英雄にしようと決めて迷うことなく侵略に加担してきた第二王子の執念と清さが印象的だった。

2

なにもかもが中途半端

「昼行灯の主人公が実は○○(ネタバレになるので伏せます)」という、いわゆる“なろう系”にありがちな設定で、キャラが都合よく動いているだけのような印象を受けました。
攻めと受けが惹かれ合う理由もふんわりとしていて、雰囲気任せ。

主人公は目立つことが嫌いで平穏な暮らしを望んでおり、他者に明確な恋愛感情を抱いたことがないというのも宙ぶらりんというか中途半端というか、作中で本人が自称しているとおりの優柔不断な人物としか思えず。

ゲイではない、まともな恋愛経験がないが童貞ではないということを主張したいのか、場末の酒場の女を一晩だけ抱いたことがあるという描写が何度も出てきてくどく、キャラ設定とのチグハグさ、不誠実さに萎えました。
攻めと受けがはじめて結ばれるシーンもドラマチックさに欠け、気がついたら終わっているあっさりっぷり。

受けに怪我をさせたくないという理由から時間をかけて拡張したらしいことを匂わせていたなら、そこもきちんと書いてほしかった。濡れ場が物足りないわりにお互い今までは別の相手で性欲を発散していたことを語りだすので、興が醒めてしまいます。

他責思考で利己的な主人公にいまいち好感が持てないまま話はすすみ、攻めや周りの人間はすべて受けの都合の良いように動かされているだけで自我が感じられませんでした。
主人公の容姿がいいという設定もうまく活かしきれていないように思えました。具体性に欠けるというか、攻めに「綺麗だ」と言わせただけというか……いろいろ惜しい。痒いところに手が届かない作品だなあという感想です。
賭博や安酒に興じるのが唯一の楽しみなところ、一人称が「俺」なところも、細かいですがミスマッチに思えました。全体的にふわふわしていて、主人公=受けがどんな人物なのか、先行しすぎた設定のせいでその場その場でころころと印象がかわり、最後まで共感できませんでした。

他の方が指摘しているとおりラストもふわっとした終わり方で、えっここで終わり?ハッピーエンドと呼んでいいの?根本的な問題は何も解決していないよ……と混乱したまま終了してしまいました。

ファンタジー小説として読むには詰めの甘さが目立ち、BL小説として読むには絡みが足りず、どちらとしても中途半端です。
WEB小説出身の新人作家さんかと思いきや、ベテランの方なので驚きました。

1

惜しい!

設定も挿絵も好みで楽しみにしていました。でも前回読んだ「恋した王子に義母上と呼ばれています」と同じく、後半がとてももったいない感じで終わってたのが残念でした。

前半は蛮族と蔑まれてるイトゥリの世話を焼きながら、彼に魅力を感じて自国の兵に憤りを感じるリナルがどうやって彼を悪意から守って行くのかが面白くてページを捲る手が止まりませんでした。中盤までは間違いなく神評価だったと思いました。

ただ、第二皇子が深く関わって来てからは、リナルの美徳がマイナスに思えて来てかなり焦ったく思ってしまいました。

あらすじに「帝国に反旗を翻す逆転ファンタジー浪漫!!」とありますが、個人的には逆転もしてないし反旗も翻してないと思っています。

なんだか玉虫色の結末でスッキリしませんでした。こういうファンタジーものは相手をギャフンと言わせてこそスッキリすると思うので、なんだか違ったと思ってしまったんです。リナルにしてもイトゥリにしてもそれだけの力を持ってるだけに、実に惜しいと思ってしまいました。

リナルのキャラ設定上はこの結末なんだろうと思いますが、きっと渡海奈穂先生の作品は私の好みとは違うのだろうと分かっただけで良かったと思いました。

2

常勝国に潜む闇を見つめて

今回は帝国が滅した国の末の王子と伯爵家三男のお話です。

宮廷魔導士ながら魔力が低い受様が
捕虜となった攻様と心を通わせて幸せを掴むまで。

受様の生家である伯爵家は
名だたる騎士を輩出してきた名家で
父も2人の兄達も勇名を馳せる騎士ですが
受様は宮廷魔術師です。

帝国では穏健派だった先帝が亡くなって10年
現帝は世界の全てを帝国色に染めるかのように
戦いの頻度が上がっています。

この国で魔術師が出世する為には
軍属となり戦場で役に立つのが一番で
回復が三流、防御が二流、攻撃が一流とされていますが

魔力が低く魔術学校で凡庸な成績しか残せなかった受様は
宮廷魔術師となったものの要職に就けず
実家の力で図書館の管理者となったと言われ
他の魔術師からは三流以下と見なされています。

受様は波風の無い人生を愛していましたが
第ニ皇子にアルヴィド国の捕虜となった攻様の世話を
任された事で生き方を変える事となります。

第二皇子は民に穏やかで物足りない皇子と言われますが
皇帝が狙った国への侵略作戦は第二皇子が考え
皇太子が実行する事により領土を拡大している事は
宮廷にいる大半の者が知っていました。

帝国に蛮族扱いされるアルヴィド国の民は
魔術を知らぬ上に耐性をもつ民らしく
攻様は多くの帝国軍の兵士や帝国の造った魔獣を
殲滅させた戦士でした。

第二皇子は攻様を殺すのではなく
今後り戦力して配下とするために
兵士も魔術師も匙を投げた攻様の世話係を命じます。

魔術師の中で受様が一番暇であり
宮廷魔術師としてたまには役に立てと言うのです。

攻様の囚われた地下牢はとても清潔とは言えず
手足を鎖に繋がれ足に傷つけられた上に
ろくな食事も与えられていませんでした。

受様はまずは攻様の治療と住環境を整えるために
地下牢に日参し・・・

帝国に敗れて捕虜となった攻様と
第二皇子の思惑で攻様の世話係となった受様の
王宮策謀ファンタジーになります♪

物語の最初から受様は帝国史上主義で
他国を蹂躙する自国の在り方に懐疑的です。

受様は帝国が侵略したからこそ
攻様は抵抗して多くの帝国兵や魔獣を倒したりであり
攻様が強く抵抗した事を責める権利はないと考えます。

それは伯爵家に生まれながらも騎士とならず
魔術師としても魔力が低いことに根ざしているのかと
読者には思わされるのですが

攻様と関わっていく事で
受様の真実とタイトルでもある"嘘"が見えてくるし
受様と攻様の恋の行方にハラハラ&ドキドキ!!

受様が攻様との未来を選ぶまで
とても楽しく読ませて頂きました (^o^)/

八千代ハル先生の受様がすごく儚げなイラストなのも
ミスリードに一役買ったいるなと思います。

2

面白いのに後半が惜しい

傷付いた他国の捕虜の世話を命じられた、おちこぼれの宮廷魔術師のリナル。
国単位でものを考えれば敵同士である2人。
そんな2人が心を通わせ合うというのは、定番ながらやはり秘密の関係めいた背徳感があります。

リナルが暮らす帝国の領土拡大のやり口があまり気分が良いとは言えないものばかりなのもあって、他の者のように前にならえ精神がないリナルのまともさには好感が持てました。
言語不通なイトゥルへの献身的とも言える寄り添い方も美しい獣にそっと手を差しのべるかのようで、少しずつ地下牢で育まれていく名前のない信頼関係が素敵。2人だけの秘密って良いですよね。
お互いの国の言葉を教えあったりと、2人の距離感の縮まり方は好みだったのですが、個人的には早めに流暢に話せてしまっている気がして、もう少し言語不通のままの方が面白かったかもしれないなあなんて。
イトゥルのあの一言がより効いてくる気がします。

リナルの嘘に関しては、序盤からなんとなく匂わせているなと感じていたからか、やっぱりそうだよねと思うところもあり…うーん。
嘘が明らかになってスカッと気分爽快になれそうでなれなかったのは、同時に彼の迂闊さとやや爪が甘い部分が見えて決め手に欠けたように思えたのかも。
面白くは読めたのだけれど、ものすごくハマったかと考えるとそうではなかったかなと。
あともうひと息盛り上がりのある展開がほしかったですし、あれほど執着を見せていたサグーダの引き際が小物すぎてちょっと勿体ないです。
掘り下げたら面白そうなんだけどなあ。
後半の展開に期待を膨らませるも、駆け足気味で終わってしまったのも惜しかった。
どっぷりとはハマりきれず、今回は2.5寄りのこちらの評価になりました。

3

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