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予備知識無しで考察。
【はじめにポイント】
作中に登場する『寄生生物』の定義は肉体へ物理的に寄生するパラサイトではありません。特定の人間の脳内を媒介としてその者の望む人間に変身する、実体を持たない思念のような生き物です。寄生先を見付け、はじめて人間としての個体になります。個体情報は、あくまで寄生体の記憶を媒介とする為、寄生先が変われば、別個体に『生まれ変わる』ことを念頭におきます。上記は作中「変異体」に出会い明かされます。※外見変更で寄生以前、寄生先変更後も歴代の宿主の記憶を引き継いでいたかは不明。
「禄斗」が人食だと七海が気付いたきっかけは、上記の作家の設定と違い、あくまで私の推測で『食』の本能は生物に備わっている為とします。赤子の本能と同様です。尚、七海の行動は人間としても信者としても赦されざる行為ですが、聖書において「交わりの生け贄」と呼ばれ、神に感謝や誓願を立てたりする行動に「献肉」があります。その意味でも七海にとって神様から貰った「プレゼント」である「禄斗」への行動は行き過ぎているとは言い切れないでしょう。また、禄には天から与えられた幸いの意味があります。
【以下結末までの考察】
※括弧は存在定義を区別する為使用。
20歳頃、七海は学校で出会い[恋人になった人物]を亡くし鬱病を罹患します。悲しみに暮れていると『寄生生物』に出会います。『寄生生物』は、純粋に七海を見て可哀想と思います。『寄生生物』が七海の脳内を覗くと[恋人であろう人物]を見つけ、七海の記憶の通りその人物の姿になります。そこで初めて『寄生生物』は七海から「禄斗」と名付けられます。
物語は進み、彼らは幸せな日々を送りますが「禄斗」は七海が自分に何かを隠していることを確信します。
12/22[禄斗]の誕生日とされる日、七海とのデート中「禄斗」は『同種』と名乗る「変異体」の人食を目の当たりにします。そこで語られたのは、「禄斗」が人間でないこと、寄生体の手を借りて人間を食べる『寄生生物』だということ。パニックになる「禄斗」を見付けて七海は家に連れ帰ります。帰宅すると「禄斗」から『寄生生物』の実態について「変異種」から説明されたことを話します。全てを七海に打ち明けていないようなシーンですが、私一個人の目線では、尺の問題で割愛されているように感じます。『寄生生物』の実態を七海は全て聞いたことでしょう。
隠し事の真実を知った「禄斗」は七海の重ねた罪から自責の念に駆られ拒食します。そして七海への懺悔の後『生まれ変わって人間になりたい』『俺を終わらせて』と涙を流しながら言います。この言葉の裏には『寄生先を変え別の生き物として生まれ変わる』2人の終わりを孕んでいます。これは「禄斗」から七海への決別の言葉でもあります。七海はこの言葉の意味を理解しています。(解放するのか?俺の手から)「禄斗」を解放するには七海の存在が邪魔です。寄生体を失い『寄生生物』は自由を手にするからです。最期の言葉で「禄斗」は「なんで俺と一緒にいてくれたの?…ごめんね、ごめんね七海…」と謝るんです。元々拾われた生命であると七海は思うからこそ「俺の生きる理由になってくれてありがとう。ふふ、なんで謝るの?」と返すわけです。「禄斗」が純粋な個体だからこそ、七海は喜んで逝けました。また拒食は個体として(もう人食できない)と認識し肉を吐き出すが『寄生生物』としては違います。一種の生命維持警告にも捉えられます。生存本能が作動すると寄生体を変えようとする習性が備わっているのでしょうか。
更に[亡くなった恋人]から言われた「幼馴染だったら良かったのに」と「禄斗」から言われた「誰よりも早くお前と出会って俺だけのものにしたい」で2人の言動が重なることも七海の決心を固める材料になっています。七海は[失った恋人]のことも「禄斗」のことも愛していたのです。だから「呪いをかけ合った」=神に背く=ずっと一緒=七海が「禄斗」の生を願うこと+「禄斗」が生まれ変わり七海に再会したいと願うこと。記憶の塗り替えでなく曇らせるの表記にも着目します。更に冒頭「6と名付けて愛している」が「禄と名付けて愛した」の変化も確認されたい。皮肉なことに同じ「足りない」人間だと思っていた「禄斗」は死の概念がなく、まさに神のような存在だったと知るのです。
結果、自殺で七海という宿主(寄生体)を失った途端「禄斗」は元の『寄生生物』に戻り、新たな寄生先を探して彷徨います。ラストのアリの巣の情景は、雪の降る12/25キリストの誕生日と定められた日。根拠は、作中描写の無い人物や「変異体」が上がります。あれは「禄斗」だった『寄生生物』の辿った軌跡ではなく、アリの巣が世界の縮図≒地球であり巣の人々の情景一つひとつに別の『寄生生物』が関わっていることを暗示しています。その為、作中に出てきた数々の事件の真相は、数多の『寄生生物』や寄生体が個々に起こしたものとなります。
こうして、ブランコの少年を寄生体に選んだ『寄生生物』は[少年にとっての誰か]として公園に降り立つエンド。以前の記憶があるのかは証明できません。時刻は午前5時少し前。スカイツリーを中心とした朝焼けが美しく東京を照らしています。積もらなかった雪が憎らしく、あのホワイトクリスマスは跡形も無いです。だが、七海と「禄斗」の間には……確かに「愛」がありました。
【以下感想】
本当にあくまで一個人の妄想。先生にはお礼を言うばかり。説明し過ぎないシンプル故に様々な見解がある、そんな余白を感じる作品。電子特典無の媒体購入で齟齬があるかも?七海の意識が無くなる今際の際、一体「禄斗」はどれほどの葛藤をし『寄生生物』に戻ったのかと思い涙が。それだけにラストの見開は願いと残酷さが。アリの巣と時計の時刻に私は転生説を棄却しなければならなくなった。
やーー…
ラストシーン、何度も何度も読み返してしまいました。
凡乃ヌイス先生の、攻めに攻めた一冊だー…!
ダークで、ホラーで、幼馴染で共依存。SF的要素もあり。
(一部グロいシーンもありますので、苦手な方、ご注意ください)
ヌイス先生の新作、背筋のゾクっとする恐怖がありながら、
切なさに胸締め付けられるホラーBLでした。
幼馴染で恋人で、同居している二人(禄斗×七海)。
しかし、禄斗(攻)はずっと、七海(受)が何かを隠している、
という違和感を拭いきれない。
そしてその”違和感”の正体が分かる決定的な出来事が起こりー
と続きます。(超ざっくりです;)
タイトルの「6」と「7」、最初は単に禄斗(攻)× 七海(受)の名前から
とったのかな、と思っていたのですが。
読み進めて(&ちょこっと調べて)、なるほど…
キリスト教カトリックの中で、「7」は”完成”を意味し(”7つの基本的な徳”から)、
「6」はそれに一つ足りない=”不完全”を表し、
あまり良い数字とはされないとのこと。
作中の七海(宗教2世)の独白によって明らかになる真実に
このタイトルの意味するところが重なって、背筋が凍りついてしまうー…
物語序盤、七海が警官を見かけてサッとマスクをつけたり、
セックスの最中に彼がやたらと”ナカ”に欲しがる理由。
そしてワンコ系の禄斗がセックスの時に見せるSっ気ある姿。
描かれる二人の日常の中に、怪しさと物語のヒントを仄めかせるパーツが
散らばっていて、不穏な未来を予感させます。
禁忌を犯した二人に、どうしたって”明るい未来”は見えないのだけれど、
どうかずっと一緒にいられるようにならないものか、、、と願いながら読んでーー
(行き着く先はぜひ見ていただきたい。。)
水族館デートや、屋上での花火、
不器用な禄斗が手作りしお揃いでつけたミサンガ…
二人の日常の、そんなささやかで一瞬の幸せと
胸の痛みを噛み締めるラストでした。
先生の「てぺとる!」や「愛してるから嵌めさせて」などが大好きなのですが、
お笑い・コミカルなものからドロドロとした闇の作品まで、
本当に幅の広さをお持ちの先生だなあ…とあらためて感じさせられる一冊でした。
すごいわ。。(語彙力;)
「萌」とはちょっと違うかもしれないのですが、
物語世界に没入し、圧倒されたこと。
そして忘れ難い一冊になったという点で、「神」評価とさせていただきました。
★修正について(紙本):
tnにトーン+ぐしゃぐしゃ線+先っぽに白短冊数本
形はしっかり分かります
結合部ア○ルに白線
アンソロで読んで、わー!こういうの好き、と思っていたら続きが出て本になっていたんですね!
アンソロ自体がホラーな感じのアンソロだったので、こちらのお話もホラー的な感じです。
人ではない存在が出てきたり、その人ではない存在は人間を食べるので、好みだったり読む人は選ぶかな、と思うのですが刺さる人にはめちゃめちゃ刺さる作品だろうな、と思います。
ホラーだったり、不思議なお話、ダーク系を好む人にもおすすめです。
ストーリーとしても、私はアンソロで1話は読んでいたのですが、そういう展開か!みたいな気持ちにもなりました。
そして何よりがラストですよね〜
ちるちるさんはもちろんシーモアさん、とにかく皆さんのレビュー読みました。
すっきりしたラストではなく、含みを持たせた、読む人がこうかな?と考えるようなラストなので、私の中ではこうかな、はあっても他の人の意見も聞きたくなりました。
私は生まれ変わり、また出会えたのかな!?と思ったのですが、そのまま生まれ変わっていたらまた繰り返すような気もするし、ちょっと複雑ですね。
現世では幸せになれなくても、生まれ変わって来世で…と明記はされていませんが、そんな未来のように私は捉えました。
怖いだけじゃない、どうにもならない愛は悲しくもあり、その先の幸せを願わずにはいられませんでした。
欲を言えばその先を知りたい訳ですが、それはこちらに委ねられてるのかなぁ。
タイトルが秀逸です。6と7にそんな意味が!となりました。
そのシンプルで内容を想像させないタイトルと白い百合の花の表紙に惹かれ、試し読みをした『6と7』。
試し読みの数十ページから受けた印象は、既に付き合っている二人による緩やかでちょっとシュールな生活ものストーリー、です。
そのような第一印象でしたので、試し読み時点では、ネタバレを含まない口コミなどの情報で “ダーク” “メリバ” という語句が目立つことにむしろ不思議さを感じました。
この話がどのように進むのかひどく興味をひかれ、全編を拝読するに至りました。
カラリとライトで肩の力の抜けた雰囲気の入口を入り中へ進んでみると、こんなにも深く薄暗く未来のない空間が広がっていようとは。
人間の闇と影を淡々とドライに紡ぐその語り口、余白を残した構成が物語の魅力を更に押し上げています。
個人的に一番心に刺さったのは物語後半、七海の「…なにがダメなの」「…あ 知らない奴だからか」の台詞です。
これを、もう本当に、何の感情もなく淡々と言うんですよ…。この2コマから背筋が冷たくなるような狂気がうかがえます。
自らのことを知ってダメージを受け心身が弱っていく禄斗、それに並行し加速度的に壊れていく七海。
でも初めから、この二人の生活に明るい未来などあり得ないことは七海には分かっていたわけで。
“禄” の字が名前に使われるのはあまり見かけないよな、と思い、意味を調べてみました。
「禄… 神の恵みによる幸運」(小学館 デジタル大辞泉より)
文字の意味を知って、余計に胸が痛いです。
彼を “禄(6)” と名付けた七海。
既に先の無かった七海にとって、彼は正に神様からの贈り物、天からの授かり物だったのだな、と。
私はラストはこれ以外あり得なかっただろう、と考えています。
ぜひ人の闇と影を味わいたい方に読んでみていただきたいです。
発売日楽しみにしていました。
雑誌の連載を追っていたのですが、途中から読み始めていて最初の方は初見でした。
まず導入部分でネタ明かしはされていて。
初めて雑誌で読んだ時に作画が好きだったのと雑誌の特集がホラーとかで惹かれて、雑誌を購入したのですが、そのまま続きが気になり購読続けました。たまに読みたくなりなす。怖いもの、バッドエンド系が。
そしてわかっていても、でも途中切なくて、一瞬のデートの幸せさとか、二人だけの箱庭で楽しい部分が生き生き描かれていて嬉しいけれど、他は暗部が多くてその分の対比が切ない。ラストがどのように閉められるのかが気になっていたのですが、本誌の時も何回も読み返したけれど、単行本になって一度にまた読みたいと思っていました。やはり印象は変わらず。表現の仕方も好きでした。
また読めて良かったです。最後はいつもどういう事なんだろう、といろんなパターンを想像してしまい、自分の中でぐるぐる考えてしまう。でも自分で二人を考える事、考えられる余白があることがまた楽しいです。本当に切なくて、良いお話でした。