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小説


素晴らしい作品でした。
こういう素敵な作品に出会えると、私がBL作品に求めるものは「幸せな読後感」なんだなとしみじみ感じます。
読後しばらくはその余韻に浸り、また読み返したいと思える。
そんな素敵な作品に出会えることは稀ですが、この作品はまさにそれでした。
受・シリルがとにかく不憫で、彼が虐げられるシーンも多く、心が痛くなりました。
この作品に出てくる「悪人」は、本当に根っからの悪人ばかり。
実は事情があって悪事を働いていただけで、根は悪い人じゃなかった…みたいな人は一人もいません。
嫁いだ先の侍女だって、最初は「この人達も、心優しいシリルと触れ合う内に改心して優しくなったりとか…」と少し期待していたのですが、そんなことはなかった。
結婚する前も、結婚してからも、根っからの悪人達に取り囲まれて暮らすしかないシリル。
なのに心が綺麗過ぎるがゆえに、自分が虐げられていることすら気づかない。
根っからの悪人達なので、ラストで断罪されていく様はスッキリするだけで心が痛むこともありません。
攻・エセルレッドはもうとてつもないスパダリで、最初からずっとシリルに優しく真摯です。
完璧な男性であるはずのエセルレッドが『愛され夫』になるための参考書を頼りに空回りしている様子は微笑ましく、シリルへの愛に溢れていて心があたたかくなりました。
また、国王と王妃、王女、他国の第三王子、シリルの家庭教師、新しく雇われた執事や侍女達、エセルレッドの部下達など、今後も味方になってくれそうだと判断出来る優しい人達も多く、二人の幸せを願うばかりです。
素敵な作品をありがとうございました。
とても面白かったです!シリルとエセルレッドは勿論どのキャラも立っていて、作品に入り込んで夢中で拝読しました。
数多散らばる伏線、それを綺麗に回収していくストーリーに感服。2段構えの見事なざまぁにもスカッとしました。
私は健気で聡明、時としてかっこいい受けが好みです。今回のシリルは好みのど真ん中でした。なので怖かったであろうに体を張って不正を糾弾する姿には感動しました。シリルの覚悟や聡明さが現れたシーンでした。またエセルレッドがシリルを抱いて泣いている姿にも感極まりました。
そして「愛され夫」、10年前の出会い、番う2人と驚きと笑いと幸せに満ちたラスト。素晴らしかったです。また奈良先生のイラストも美しくて眼福でした。表紙の華やかさがこの作品にぴったりでした。とても幸せな読書でした。
滝沢晴先生の作品は常々間違いないと思ってますが、その中でもやはり私にも好みがあって、今作は間違いなく今の私にはドンピシャでハマった作品だと思います。多くの方に読んで欲しいです。
まず、緩急の付け方が絶妙で、序盤のシリルが馬車で襲われるところから黒幕の正体を想像するのが楽しかったです。
大公家でのシリルの冷遇の理由とかが思ってた通りで、エセルレッドが真相に辿り着くまでのワクワク感とかがお約束通りでページを捲る手が止まりませんでした。またシリルの家族達も分かりやすいヒールなのですよ。
健気なシリルにエセルレッドが夢中になって行く過程も良く、とても読後感の良い作品でした。
またシリルはエセルレッドの為に悪事を暴く強さも持ってて、とても善良で愛すべき人物だった点も良かったです。
そしてその世界観を盛り上げてたのが間違いなく奈良千春先生のイラストでした。
個人的には「俺が君を愛することはない」からの溺愛が大好物でした。
不憫な受けチャンがめちゃくちゃ愛されて幸せになるお話ってご褒美ですよね♡
シリルもまぁこれでもか!ってくらいはたから見たら不幸なんですけど(周りのいじめ方がひどすぎて1周回っておもしろいレベル)、本人はすれてなくて健気で一生懸命で、ちょっとズレた発言がまたかわいい。
表紙でもかわいく目立っていたし仲間内でも話題になっていたクマのぬいぐるみはシリルの内職によるものだったのですね。
エセルレッドと内職についてあれこれ相談するくだりがほほえましくて大好きです。
エセルレッド様御用達の指南書はタイトルに吹きました笑
番になったふたりのラブラブ、もっと読みたいです♡
貴族の使用人をしていた母親が主のお手付きになり生まれたΩの受けが、母親の死後、父親の屋敷に引き取られ、兄弟や継母、使用人たち全員から虐げられます。そこに突如現れた王弟殿下のαに見染められ(最初は恋愛感情はなく、不憫に思って家から連れ出してあげた感じ)、大公妃となって幸せになる話で、BL版シンデレラといった感じでした。
実家や嫁ぎ先でも攻めと教育係の婦人以外、全員が、受けに悪意を持って接してくるので、すごくわかりやすいですが、生身の人間らしさが感じられず、おとぎ話を読んでいるようでした。脇役も立場によって色んな思いや葛藤があるほうがお好みな方は物足りなさを感じるかも。
それだけ虐げられても受けがあまり悲観的にならず、兄弟を妬んだり自分を憐れんだりせず、受けに性愛を示すαの兄の仕打ちもゆるめ(鞭で打ったり体に触れるだけで無理やり性的なことはしない)なので、シリアスになりすぎないところはよかったです。ただ、鈍感な受けが、当て馬の令嬢(出戻りの攻めの従妹)や弟の気持ちは慮るのに、攻めの気持ちについては、令嬢や弟のことを鼻にもかけていないことや受けを溺愛していることが言動に出ているのに、自分と離婚後は令嬢や弟と再婚するつもりだから、という認識をいつまでも持ち続けるので、鈍感で可愛いと思うよりも、「何でわからないのかな?」と疑問に感じる場面も多かったです。
攻めのほうも、少年期に発情したΩに襲われそうになり、Ωのフェロモンの残り香を嗅いだだけで嘔吐するので、「俺が君を愛することはない」と最初に断言するのも理解はできますが、白い結婚でも伴侶として愛することはできるだろうし、まだよく知りもしない相手にそういうことを言うところには傲慢さを感じました。
なぜか受けのフェロモンにだけは拒否反応がおこらず性的な関係を持つようになり、その後は溺愛モードになりますが、好きと告白することもなく恋愛指南書に頼るばかりなので、ただでさえ「愛することはない」と最初に断言しているのだから、いち早くはっきり気持ちを伝えてほしいと思いました。
当て馬の令嬢を追い出したあと、令嬢の父と受けの兄が結託して隣国から麻薬的な植物を密輸し、その責任を攻めに押し付けようとしますが、それについては、式典に招かれていた隣国の第三王子が「自国の第一王子が貴国の貴族と結託してやったことだ」と白状し、攻めはピンチを逃れます。第一王子と第三王子が不仲だったにしても、それを理由に貿易において不利な条件を飲まされたりなど自国に不利益を持たらす可能性が高いのに、よくあっさり認めたな、とちょっと上手くいきすぎな感じがしました。あと、以前は戦をしていた相手なので、第一王子を失脚させるためだったとしても、第一王子と英雄大公(攻め)が結託していたことにし、この機会に隣国の戦力を少しでも削いでおこうと図るほうが、第三王子の立場としては納得がいきます。
恋愛面においては感情の起伏はゆるめでしたが、悪人たちを断罪する場面で、受けが、市井の人々の暮らしを知り、歴史を学ぶことで、辛い過去も心を乱さずにパズルのピースとしてつまめるようになり、「自分史」を組み立てられるようになった、と自己分析する場面があり、その考え方には深く共感できました。
