イラスト付き
BL的にも事件的にも、ものすごい読み応えのある作品でした。
恋愛面では、両片想いのジレモダ系。
事件面では、身内から差し向けられた国家反逆シリアス系。
恋心がうまく噛み合わない中、2人で協力しあって敵に立ち向かっていくハラハラドキドキのストーリーは、読みどころがいっぱいで、いやはや…参りました。
オメガバース作品ですが、オメガバース要素をそこまで意識することなく読み終えたのは、ストーリーがオメガバースに頼り切ってないからです。
発情期とかつがいとかのワードはもちろん出てきますし、2人が夫婦となり子を身籠ったのも発情期がキッカケ。オメガバーステイストを全面的に出ていても不思議ではないのに、物語の展開やキャラクターたちの魅力に押されて、そいやオメガバースの作品だったね、くらいの存在感でした。それくらいストーリーが素晴らしかったです。
テオドアの叔父の謀反から国王殺しの罪を着せられて、一夜にして罪人扱いの逃亡生活をするテオドアとエミール。国内で身を潜めながらこっこりと子どもを産み、市井の生活にまみれて国民の実情を知っていく……こうした潜伏生活によりテオドアの王として立つべき人間の資質を育てることに繋がる展開がめちゃくちゃ面白いんです!
汗を流して労働し、エミールと子のために身の回りの世話までするテオドアの姿はイクメンパパそのもの。地に足のついた生活にすっかり慣れ、不自由ながらも家族3人で過ごすことに幸せを感じるテオドアは、もう「氷の王子」なんかじゃありません。
叔父の裏切りは悲しい現実ですが、国民の生活を知る意味でも、人として当たり前の振る舞いの常識を知る意味でも、テオドアにとって意義のある経験となったのは言うまでもなくです。高貴な血筋ではなく、人としての温かな感情が大事なことを知ったテオドアの成長をしっかりと感じる物語からずっと目が離せずでした。
それもこれも全てエミールのおかげ。エミールがしっかり者のいい子なんですよ。
王族然として何もしない、感謝の言葉も言わないテオドアに、感謝の言葉をちゃんと伝えろと。匿われている分際で偉そうにすんなと、ハッキリもの言う姿に惚れ惚れしました^ ^
その他にもエミールに助けられる場面がいっぱいあり、エミールの勇気がテオドアを奮起させていく"あげまん"っぷりが最高に楽しいです。
こんな2人なのに、実は想いを交わし合っていないというのが、マジで謎(笑)
テオドアの、大事なことを言葉にしない不器用さとプライドのせいで、よくもまあここまで拗れたものだと逆に感心しました。
空気を読みすぎるエミールもエミールで、テオドアは自分のことを好きじゃないと思ってるし、そんな勘違いをしているからテオドアもエミールは自分のことを好きじゃないと思ってる。……2人、早く話し合いなさいよと言いたくてウズウズでした。
元々お互いに惹かれ合っていた2人が逃亡生活を経て、ますますお互いのことを好きになっていく恋愛模様の見守りが最高に楽しい物語でした。
表紙に赤ちゃんがいるのが確認できると思いますが、このチビちゃんは物語のキーマン。パパとママを結びつけたのも、国を救う足がかりとなったのも、そして国を幸福に導くのも、全てこのコの導きによるものと良いって良いでしょう^ ^
最初から最後まで面白さが突き抜けたストーリーでした。
素晴らしい読後感と素晴らしい幸福感にありがとうの気持ちでいっぱいです♪
笠井先生だしるのあ先生なので購入。攻め受けともめちゃタイプという訳ではなかったので萌にしました。受けがしっかり者なんだよね。お話も王道テイストで、とてもしっかり。しっかりしたお話が好きな方でしたら、きっと嬉しいと思います。本編300Pほど+あとがき。先生、30周年おめでとうございます!
パールレイム王国の男爵家で婚外子として生まれたエミール。父の遺した借金返済のため宮殿で働き、得られた給金を義母にそっくり渡す日々が続いています。ある日任されていた温室に、王太子が一人でいるところを見かけ・・・と続きます。
攻め受け以外の登場人物は
受け義母、義弟、攻め叔父3名、シド(攻め側近)、受けの下町時代の仲間等。シドが苦労人っぽくて励ましたくなったぐらいかな。
++
攻めはあまり感情を出すことなくクールで氷の貴公子という二つ名を持つ方。でも叔父の策略により苦労して、国民に寄り添えるようになったキラキラスーパーイケメン。受けの事も息子の事も溺愛していて好感度大。まあ真面目系統ですね。
受けは父の遺した借金を働いて返そうと頑張る、健気しっかり者さん。キラキラ王子の事が気になっていたんだけど発情に巻き込んでしまって、さっくり子供まで生まれて、ほんでもって策略に巻き込まれ・・・とかなり波乱万丈。頑張るなあ。一点の曇りも無い善人スーパー頑張り屋さん。勿論攻めの事は大好き!
そんな二人の頑張るお話でした。内乱話もしっかりあってちょっとドキドキするオメガバ話でした!
とてつもなくハッピーで爽快な気分にしてくれる
真船るのあ先生のオメガバース、大好きです(*´∀`*)
新刊のこちらは、先生初の四六判。
あとがき入れずに309ページ、大ボリュームで嬉しい読み応え。
もーーーーまず、笠井あゆみ先生の表紙絵だけでも
テンション爆上がり⤴︎
まるで一枚の宗教画のよう…
Xに笠井先生ご自身がアップされているラフ画があるのですが、
そちらと見比べるのも楽しい♪
剣を構え、しっかりエミール(受)を抱きしめながら
こちらを見つめるテオドア(攻)、男前すぎて眩しい。
長髪美人攻め最高。
そしてエミールの腕の中にいる、金髪(テオドア譲り)で
濃緑色の瞳(エミール譲り)の赤ちゃん・レイの愛らしさたるや…!
表紙についてだけでもまだ大分語れる気がしますが、
以下、内容についてレビューを。
主人公は義母に虐げられ、父親の借金を返すために
王宮で下働きをしている男爵家婚外子・Ωのエミール(受)。
手入れをしている温室を時々訪れる美貌の王太子・テオドア(α攻め)に
淡い恋心を抱いていますが、初めての発情期が来た際、
偶然居合わせたテオドアに抱かれてしまい、その後妊娠発覚。
堕ろそうか、どうしようか…と迷い悩んでいるところ、
必死の形相で追いかけてきたテオドアから
王位継承の事情を踏まえた”契約結婚”を提案され、了承します。
ところが結婚式当日、王弟(攻めの叔父)が謀反を起こし、
二人は王宮を追われ、逃亡生活が始まることとなりー
と続く、王座奪還を目指すオメガバースラブストーリー。
まず”きゅん”としたのが、序盤、攻め視点で描かれる
テオドアの無自覚な恋愛感情!
温室で仕事をしているエミールを盗み見ることが
密かな楽しみになり、彼に会えないと寂しさを感じ、
この感情は一体なんなのか、と側近に聞いて「恋」だと言われ驚く。
無自覚の初恋、良いー...
二人が初めて身体を重ねた日も、
「この私が一夜を恵んでやる」などと”上から目線”の言い方をしているのですが、実はこの時、嬉しくてたまらなかったんですね。
テオドア視点で”怪我の功名だった”なんて書かれていて
不器用な一途さにきゅん..としてしまう。
咄嗟に口にした「契約結婚」ですが、まずは形から入って
徐々にエミールを懐柔していこう、そうすれば大丈夫だー
なんて思ってるところが可愛らしすぎる。
「氷の貴公子」というニックネームとのギャップに
萌え転がりました(*´◒`*)
王宮にエミールを連れてきてからも、
「ピアノは胎教にいい」なんて言いながら暇を見つけては
ピアノを弾きにエミールのもとに来てくれたり、
子どもの名前は何がいいか?と、
30近い数の名前候補を考えてきたり。
もーーーーその気持ち、言葉にして口にしようよ!
エミールだって喜ぶよ!と言いたくて、
焦ったくて仕方ない。。
だけど、このじれじれ感がたまらない(*´艸`)
そして一方の受け・エミール。
その男前な性格に、読みながら何度も惚れ惚れしました。
男爵家の婚外子とはいえ、市井で育った彼は
やんちゃで逞しい。
その逞しさは、テオドアとの逃亡生活の中で明らかにされます。
森の奥の小屋で始まった平民としての潜伏生活に、
慣れないテオドアは当初、文句ばかり言うのですね。
「こんな粗末な部屋で寝ろと言うのか?」と言い放ったり、
二人を色々手助けしてくれるエミールの友人・アランに対しても
”やってもらって当然”という態度をとる。
また、信頼していた叔父から裏切られたということが信じられず、
そのショックから何日も何もせずただぼうっとしていたりする。
と、そんな時!
「落ち込むなんてテオドア様らしくない」
「アランにちゃんとお礼を言ってください」
と、エミールからの”説教”発動!
でもこれは、実はエミールなりの必死の励ましでもあるのですね。
今はとりあえず庶民として暮らし、働き、
生まれてくる我が子を一緒に育てて欲しい、
父親としての自覚を持って欲しいー
と、そんな思いが言葉になって出たもの。
「そなた、猫を被っていたな!?このようにきつい性格だとは思っていなかった」
なんてムキーっと言い返しながらもw、
ハッとして態度を改めるテオドアの意外な素直さも、
グッときて萌えるポイントでした。
攻め受け二人のキャラがどちらも立っていて
好感が持て、掛け合いが最高に楽しかったです✧
そして「王座奪還」へと動くストーリーも、
陰謀やサスペンス好きな自分としては外せない”見どころ”の一つでした。
ここでもエミールの男前っぷり、その覚悟が光ります。
王座奪還のための準備が整うまでの時間稼ぎのため、
レイを連れ一人王宮へ戻ることを決意するエミール。
王宮へ戻ってからのメイビス(テオドアの叔父)との対決は、
ややエミール側に都合よく運んだかな?
メイビス、詰めが甘いかな?と思うところもあったのですが;
受けの大ピンチ!に颯爽と駆けつけてくれる攻め、
王道と分かっていても萌え転がらずにはいられません。。(ˊ˘ˋ* )
このシーンの笠井先生の挿絵、テオドアが格好良すぎて
ひっくり返りそうになりました。
ページを凝視してしまうこと、間違いなし。
で、じんと沁みたのが、剣の切っ先を叔父の喉元につきつけた
テオドアが言う一言です。
「恐怖や支配ではなく、民と共に生きる王になりたい」
この言葉…!エミールと共に小屋で暮らし、
市井の人々の暮らしを目で見て実感したからこそ出てきた言葉なんですよね。
エミールと出会ったことで初めての恋と愛を知り、
愛しい我が子という守るべき存在も得、意識も変わって…
テオドアの内面の成長っぷりにグッときます。
エミールに酷い仕打ちをしてきた義母にも
きちんと制裁が下り、読後感はスッキリ。
「契約結婚」を終え、しっかりとうなじを噛んで/噛まれて
番になる二人の描写に歓喜しました。
甘さとシリアスの配分が絶妙な、
王座奪還・オメガバースファンタジー。
もう一度読み返して、男前な二人に繰り返し惚れ惚れしたいと思います☺︎
