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①ぐるぐるトランキライザー
タイトルの「トランキライザー」は、抗不安薬、精神安定剤の意ですね。
両片想いの二人が両想いになるショートストーリー。好きだ好きだと冗談めかして伝えていたのは、彼なりの保険かな?
②あなたに届く声
ふとした事からお互いが気になって、、BLにしては呆気ないけど、現実にはこんなスタートが溢れているのかな?と想像力を掻き立てる作品。
③満つる月の下
書の大家と。エモ。
④うつしみのて
相方が怪我して、、っていうのが。本人の意識があったから?病室に入れたんだろうけど、そうじゃなかったら、法的な関係にない二人はそばに居られないんだろうなぁ、、とBLっぽくないことを考えてしまいました。
⑤欠けた鎖
最初から最後までメリバ感。相互依存?光属性には辛いです。
⑥窓辺で朝食
ドーテーくんがかわいい。
⑦ホーム・スイートホーム
⑥の続編。お預けガマンできずにごはんを、ほっぽってサカっちゃう年下攻。
⑧最後の三月
エ、エモォ……切なすぎる、というか不器用すぎるぜDK…そんないきなり入るわけないのにあきらめないで好きな相手が嫌がってるのに無理矢理シちゃうところも含めてエモォ、、。
一編一編登場人物の人となりや関係性などをじっくりと考えてしまいたくなる小品が詰まった短編集でした。
つくも号さんの絵は、絵だけで言うと好みの絵というわけではないのですが、「やはりこのストーリーにはこの絵でじゃないと!」と納得させるだけの力のある絵です。「ショタ」という部分を強調して語られがちですが、「かわいい男の子のエッチな姿を愛でましょう」というだけの作品でもなく、いつも否応なく考えさせられてしまうのです。
今回は、やはり表題作が良かった……というか刺さりますね。「若さゆえの衝動」とかでは済まされないよ! という感想も分かるのですが、お話の舞台がごく小さな離島であることも含めてのどうしようもない閉塞感も相乗効果を成しての主人公の暴挙。彼はこの記憶をいつまでも心の中に刺さった棘として持ったまま生きるのだと思います。
読後感の爽やかな作品ばかりではありませんが(というか、ささくれを残すタイプのお話の方が多い)、だからこそ心にひっかかる作品集だと思いました。
ショタ地雷で何となく避けていたつくも号さん。しかし腐姉さま方のレビューを拝見して手に取ってみたら、何ともまあ、非常に良かった。
さてさて感想を。
「ぐるぐるトランキライザー」
片思いだと思っていたら両想いだった、というある意味王道なストーリーでした。
攻めの子の片側だけつけているピアスでチャラ男なんだよ~(イヤ、実際はチャラ男ではないのだけれど)という表現や、受けの子の切ない片思いが、表情や仕草で端的に表せるって凄いなあ、と。
最後の受けの子の嫉妬心も良し。「自分のものだ」っていうね、彼の想いがよくよく伝わってきました。
「あなたに届く声」
無口だけれど優しい先輩に、健気な後輩。非常にツボな組み合わせでした。
しかし、あの流れで事をイタすのはいかがなものか、とも思いましたけども。まあ、それだけ相手を欲していたってことなんでしょうかね。
「満つる月の下」
書道家×弟子。
読み始めたときは攻めと受けが反対だとばかり思っていながら読み進めていたので、おお、そっち?と思ったりもしました。
直接的な表現は少なく、また言葉も少ないですが、お互いに対する愛情や想いがにじみ出ている作品でした。
「うつしみの手」
わんこな攻めにトラウマ持ちの受け。これも良かった。
受けの気持ちを尊重して、ことを急がないわんこが漢でした。
「欠けた鎖」
DVもの、なんですけどね、すごく深かった。
暴力を受けている受けの子が、ストックホルム症候群なんじゃないの?とか、典型的なDV男とその被害者、という関係なのかな、と思ったのですが全然違いました。暴力を振っている方の彼の過去に何があったのか、そこまで描かれていないところがまたニクイというか。
DVは個人的に許し難い行為ではあるのですが、彼らでしか相手を癒すことができない、そんな関係に純愛を感じました。
「窓辺で朝食」「ホーム・スイート・ホーム」
大学受験の時に出会った、同じ大学の後輩×先輩CP。
受けの子の、切ない恋心にキュンときました。バカップルと言えばバカップルなのですが、可愛らしい二人にほのぼのしてしまいました。
「最後の三月」
凄く良かった。
この年頃ならではの悩みとか。
恋心が、体に直結した相手への欲情とか。
最後がこういう終わり方っていうのも斬新だなあと。
つくも号さんの魅力って、心のバランスの危うさだと思うんですよね。心と体の抑えが自分でも効かない危うさがあって、だからショタのような子どもだと余計にそれが顕著に表れるっていうか。画力も凄いので、深いところまで読み取れる。
だから半面、読んでてちょっとハラハラする。そして最後の何とも曖昧な感じがまた良い。
その後の彼らが、どんなふうに過ごしていくのか、どんな関係になるのか、そこは読み手の創造力や好みで補完してね、っ言われてる気がします。
そしてあのシモの描き方がねえ、リアルなんですよ。今なら規制に引っ掛かるんじゃないかなと思うのですが、それがまたよかったです。
こちらはショタは表題の1作のみで、あとは大学生とかリーマンとかが主人公の大人メインの短編集です。
つくも号さんの描かれる大人はどことなく井上佐藤さんと近しくて、顔そのものに色気がありますね。
いわゆるBL絵じゃなくて、少女マンガ的でもないし、男性向けともまた違うし、こういう絵柄好きです。
7カップル8作品入っていますが、お気に入りは中でも群を抜いて暗くて痛くてイビツな愛の形を描いた『欠けた鎖』
DVモノです。
間違いなく好き嫌いが分かれると思いますが、今回一気読みした3冊の中で私はこれが一番良かった。
受けてる側の瑛がとにかくタフで、ヘラヘラせず、逃げもせず、覚悟を決めてDV彼氏の洋介に寄り添おうとしているのが良かった。
DVがダメなことくらいは百も承知ですが、もし恋人がそうなってしまった時、瑛の向き合い方と温もりは洋介に多少なりとも救いをもたらせはしまいかと。
ただ現実的にはこんな風にタフで居続けることはきっと無理だろうなぁ。。
もうひとつ好みなのが、文学的なエロスと美しさが漂う『満つる月の下』
書の先生とお弟子さんのお話です。
男性の着物姿は良いものですな。
逆に他のレビュアー様方の評価が高い表題作の『最後の三月』は、若さゆえの衝動で済ませて良いものとは到底思えず、私はダメでした。
いじめと一緒ですよね…
やった方はこの主人公のように、苦々しさは残れどやがて日常に戻っていくんでしょう。
でもやられた方はそうじゃないでしょう。消したくても消えない記憶として心に深い傷を付けたまま大人になるしかないのですよ…
こちらのレビューでこの作家様が男性だと知って、色々腑に落ちた感があります。
ショタの方は特にBLのショタモノとは趣が違っていましたが、登場人物の年齢が上がっても、やはりどこか女性が萌えを込めて描くモノとは違う味わいがあります。