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一穂先生の初めての御本。教師×生徒の表題作と、その2年後を書いた続編「手のひらにきみの気配が」の2本立て。
読みながら、大層複雑でした。本当に複雑でした。
同時に相反する二通りの読み方をしてしまう自分がいまして、折り合いをつけられず最後までそのままでした。
この作品を楽しむには年を取り過ぎてしまったのかもしれない。後述します。
表題作においては、主人公の志緒は高校1年生15歳、志緒が好きになる相手は国語教師の桂27~28歳。
志緒は中学受験も高校受験も、受験当日に体調を崩して志望校の受験ができなかったという過去があり、悔しくてもう一度高校受験をし直そうと転校を目論み、仮面受験生のように家でも学校でも勉強三昧の日々。
そして、一方の桂先生は自分が高校生の時に、担任の女性教師に大恋愛をして凄まじい修羅場を経たという過去があり、その相手とは別れそのとき出来た子供とも会うのを禁じられている。
この志緒と桂先生が惹かれ合って恋愛関係になるのですが、まず、戸惑いました。
志緒→桂先生は分かる。でも、桂先生→志緒は分からない。
一度なんでだろうと思ってしまうと、端々に違和感を感じます。たとえば「俺はロリコンじゃない」という科白もそうです。
20代後半の成人男性が、15歳の子供を好きになるだろうかと。
15歳の志緒を女の子に置き換えると違和感の正体が明らかになるのですが、でもこれはBLだし、志緒は女の子ではないし、そうは思いたくない。
ただ、この構図を受け入れがたいと思うたびに、ひっかかる諸々があるのは事実です。
これは後半の作品になりますが、初詣に行って誰に見られるか分からないのに外でべたべたしたり、卒業するまでは手を出さないと言いつつフライングがあったり、これらを微笑ましく思えるかどうかが、道を分けるポイントかもしれないなどと思いました。
「相反する二通りの読み方」をしてしまっていた、と先述しましたが、すべてはこの桂先生→志緒の感情に尽きます。
俯瞰するたびに違和感と嫌悪感を抱くので、反対にその感情に寄り添おうとズームし、何度か噛み砕いて理解につとめました。
桂先生は自分が高校生のときに好きで好きでたまらない気持ちを抱えあぐね、相手の女性教師にぶつけまくるくらい直球の人で、志緒にその頃の自分を重ねて、放っておけないという気持ちが高じて大切に思うようになっている。つまりは自己愛の延長なのかと。
十代の瑞々しさ、純粋だからこその感性の豊かさに惹かれるのはそうでしょうけれど、そこに惹かれるということは、やはり私は嫌悪感が先に立って受け入れがたい。
デートしたりLINEしたりしているときに、これ知ってる?あれ知ってる?と知識を共有するのも、これが同年齢とか逆の立場だったら良い関係と思えるところが、大人と子供だと思うと、うーんと思ってしまう。
桂先生のキャラクター自体は好きなんですよ。
この彼の過去のもろもろについても愛おしく思ってしまう。
最後にお相手の女性と再会しますが、この女性含めて好印象です。
なので、志緒のどこに惹かれたのかが、私の想像の上を行くもっと違うものであれば(瑞々しい感性とか、自己愛の延長とかじゃなく)もっと良かったのにと思いました。寧ろそうであって欲しかった。実は文字数の関係でこうなってますが本当はもっと違うのでは、と期待する自分もまだ居ます。
また、この作品を読んだ私の年齢が、志緒の年齢に近ければ、違う感想を持ったのだろうなとも思っています。
ずっと読みたいと思って、いまさらですが休み中に読破。
商業デビュー作品。とにかくめちゃくちゃ面白かったです。
一穂ミチ先生の文体が自分には合うようで、とにかく読みやすくて、すらすらと頭に文章が入ってくるし、読んでいてイメージもわいて読み進めるうちにもっともっと読みたいと思ってしまいます。
学校生活で不幸な出来事でも起こるようなら嫌だなぁと思っていたらそんなこともなく、順調に?卒業へと。
印象に残っている、志緒の性格を表しているエピソードは色々あるけれど、りかを振ったことに対して怒りそのまま告白するところや唐突な北海道訪問や思わぬところからのストレートな感性がカッコ良すぎて、とにかく好きです。もっとたくさん感想伝えたいけれど、とにかく大好きな作品です。まだ若い二人がこれから成長していくんだなぁという感慨もあり。何度も読み返して幸せな気持ちに。
紙は絶版のようで、本当に再販して欲しいです。
一穂ミチ先生ならではの心理描写かな、というお話です。タイトル通り、DKとその担任の先生のお話なんですが、特に2人ともゲイという訳では無いのです。ノンケの2人が何故、どうやって恋愛感情を抱くに至ったのか、というところがエロありきのストーリー展開ではない、一穂先生ならではのお話で引き込まれてしまいました。
過去に苦い経験をして贖罪のように生きている先生の意外な一面を見た志緒少年。志緒ちゃんの行動力に胸を打たれ、新しい人生を歩み始めようと思えた先生。
成績は優秀なのに中学、高校受験に失敗している志緒ちゃんの言動には筋が1本通っていて、悪くいうと頑固なのかもしれないけどそのブレなさ、思慮深さが先生には眩しく映っていて、それは本を読む私にも同じように眩しく、輝いて見えました。
大なり小なりあったとしても、何も失敗なく大人になる人はいないと思うので、大人であれば先生に共感できるところがあるんじゃないかな…。
そしてこのお話で好きなポイントのひとつは、志緒ちゃんが成人するまでは手を出さないというところです。もちろん学生のうちに最後までやっちゃうお話も好きなんですが(笑)、先生の大人としてのケジメをつけるところが、志緒ちゃんの生き方とも合っていて良かったです。
そしてこの本編を読んだら「林檎甘いか酸っぱいか青、赤、黄」を読むことをオススメします!本編で辛いことがあった分、甘々補完の短編集になってます。ちなみにりかちゃんとの仲をこじれさせようとしてくれた栫くんのお話は「meet,again」という1冊がありますのでよろしければそちらも読んでみてください。
電子書籍サイトで割引になっていたからこそ出会うことができました。感謝
背景、景色、色、想い、どの描写をとっても言葉の選び方があまりにも繊細で美しい。
受験の失敗が重なり親にも周りにも意固地になってしまった志緒が先生でありながら先生らしくない色々な面を見せる桂に出会い、自分が抱えている悩みなんてと思ってしまうほどの過去を知り、そしてついにはそんな桂を思ってか、それとも自分のためか、札幌にまで1人でこっそり行ってしまうという行動をとってしまうほどあまりにも桂を好きになってしまった。そんな志緒の想いを受け止め、自分からも返した桂。そんな2人のハッピーエンドのような展開で終わった1話。
個人的には2話が本当にしんどくて、でも美しくて、すごく刺さりました。
想いを寄せ合って、付き合って、幸せなように見えるのに、どこか考えがすれ違ってる。でも決定的な何かを目にしないから解決もしない、そんな状態にいる志緒を見ていてあまりにも胸が締め付けられた。真綿でずっと絞められているようなそんな不安に晒されていた志緒が桂から離れる未来を選んでしまわないか、もうずっと不安でした。嫌いじゃないけど別れを選ぶってこういう言葉にできない不安に晒され続けたからなのではないかと。
そんな中起こった栫くんと葉子さんの出来事。これがどう転ぶか、決着がつくまで本当に手に汗握るような気持ちで読み進め、最後にようやく息ができました。あまりにもリアルで、本当に心に刺さる。。
何より志緒の不安に寄り添い続けた結果、桂の気持ちが見えなくなってしまって、好きって言ってきたのも唐突だったし、とか色々考えていた最後の最後に桂の志緒への愛を、惚気をぶつけられ涙が出るほどホッとしてしまった。志緒はちゃんと愛されているんだなぁと思うとあまりにも嬉しかった。
本当にキャラクター1人1人に、でも誰よりも志緒に寄り添って読んでしまう1冊でした。心のカロリー消費が激しく、でもずっと余韻に浸っていたくなるようなすごい作品でした。
この作品に出会ってから今迄なんどもなんども読み返しています。2人の思い出の地に聖地巡礼するほどで実際の土地が出てきたり食べ物やお酒の名前が出てきたりするのも一穂ミチ先生の作品で好きなところでもあります。色林檎を通して今後のふたりの人生を覗き見できるというのが本当にうれしくてしあわせな気持ちになります。過去のこと、現在のこと、未来のこと、それぞれに向き合って志緒ちゃんと先生はふたりでいてくれるそんな安心感があります。