愛を乞う男たちの物語

  • 紙書籍【PR】

表題作イルミナシオン

人当たりのいいバーテンダー
恋愛そのものに萎えてる公務員 幹田

その他の収録作品

  • ラブとかいうらしい
  • ばらといばらとばらばらのばらん
  • あの人のこと
  • 神の名は夜
  • separation? セパレシオン?
  • きみはばらよりうつくしい。
  • NOBODY BUT GOD KNOWS

あらすじ

公務員の幹田はホモでもないのに男に恋心を抱いている。
女たらしの幼なじみ小矢に。
恋心を隠して友達づきあいを続けることに限界を感じ始めた幹田は、居酒屋で出会ったゲイの州戸と一夜を共にする。
一度きりの関係のはずが、再び州戸は幹田の前に現れ、幹田の日常は壊れてゆく・・・。
表題作シリーズ他、短編4作、さらに描き下ろし後日談を収録した、最新作品集。
出版社より

作品情報

作品名
イルミナシオン
著者
ヤマシタトモコ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
宙出版
レーベル
メロメロコミックス
発売日
ISBN
9784776794967
3.5

(40)

(11)

萌々

(7)

(17)

中立

(1)

趣味じゃない

(4)

レビュー数
15
得点
135
評価数
40
平均
3.5 / 5
神率
27.5%

レビュー投稿数15

鋭い話、宙に浮く話、恋だけではない話

新装版が2018年8月に発表されています。今から読む方はそちらをどうぞ。
本作は2008年発表。
ヤマシタ作品らしく(?)、BLと非BLの狭間のような空気感、恋愛の当事者ではない脇の人物からの視点、また当て馬・ライバルの立ち位置ではない女の子。

冒頭の表題作は、痛々しい片道通行の想いが行き交う。
愛されたい、ではなく、愛する人をください、という祈りのような。
次の「ラブとかいうらしい」でもノンケの友達に片想いしてる子が出てきます。表題作の隆氏も、この子も、恋愛よりも友情が大事なんだね。友情の方が続くから。それはデビュー作の「神の名は夜」でも繰り返されます。
オリジナリティを感じるのは、何と言っても「あの人のこと」。
ある男の死によって、周辺の証言から少しづつその男の辿ってきた日々、気持ちが浮かび上がる…

エロはごくごく薄い、もっと感情の繊細さを感じられる作品集で、なんか純文学系の短編小説を読んだような気分になります。
あ、ヤマシタ女子も1人いますよ。イキのいい子で、読んでて気持ちいい。

0

夢はまだ叶わないけれど光が見える

自己啓発度★5 おちゃめ度★3 BL度★1 心の闇と光度★5
男:女=8:2 光:影=8:2

 ちょっとだけ悩みを抱える人達が、ちょっとだけ成長する短編集。神推ししたい気持ちでいっぱいですが、表紙の隆氏が「BLではない。たまたま主人公が男だっただけだ」という表情なので萌×2にとどめました。
 その表紙の隆氏が暗いせいで作品も暗いかと思われがちですが、影を見せて光を感じさせるような明るさと救いがあります。ヤマシタキャラ的な表現をするなら、文学的な分かりにくい表現で曖昧さを残した心情が、複雑な形のすき間に染み込んで心が悦ぶ感覚。です。

◆幹田隆氏29歳公務員
 幼馴染の小矢に寄せる想いを長年隠していたが、居酒屋で出会った洲戸に抱かれ、隠せなくなり。「心も体も誰ともつながりたくない。神様おれをひとりにしてください」この台詞に世界が大号泣しますが、次の瞬間にはみんな普通に生きていくという話。
◆洲戸清寿24歳バーテンダー
 要領良く生きているようで一番要領が悪い洲戸。「世界はおれを置いて進む。世界が俺を拒む」この台詞に世界に激震が走りますが、やっぱり何事もなく進んでいくという話。
◆小矢直巳29歳八百屋家事手伝い
 趣味合コンのアホな男。突然現れた洲戸の存在に焦り、幹田との心地良い関係が壊れたことにダダをこねるアホな男。「神様。もしも世界にふたりきりなら」…アホな男。
◆ラブとかいうらしい
 大事にしたい気持ちがある。おもしろいとか悲しいとかじゃない、大事な気持ち。
◆ばらといばらとばらばらのばらん
 2つの片想い。いじめ。どうしたら良いか分からない気持ちをどうにかしたい気持ち。
◆あの人のこと
 大人になって途切れていたものが突然繋がる話。強くないけれど確かにある糸。
◆神の名は夜
 唯一BL全開な話。台詞は極道なのにやってることはラブラブというとても萌える話。
◆「イルミナシオン」「ばら」「神の名は夜」の後日談。
 それぞれの光の面をチラ見せ。純粋に明るく幸せな気持ちになれる後日談。

0

切な過ぎた

ヤマシタさん好きです
好きなのですが、好きになれない作品も多い
でも、かならず買う

この作品も発売してすぐ購入したものの好きになれずに
手離しましたが、何年後に又購入するという
ことを引っ越しの度に繰り返した記憶があります
表題の作品はわりと好きです

部屋の中に入らずに
マンション通路面に向いている
小窓から話しかける習慣のアングルとか
ごちゃごちゃありながらも、これからも続けていく
関係であるだろうことも
すっきりしない終わり方だってある
これが好きです

そんな簡単に皆がくっつくわけないですから
表題の作品だけだったら萌え×2です

他の作品が全く受け入れられませんでした

苦手な作品とはなりましたが
ヤマシタさんの作品らしいといえば作品らしいのかもしれません

突飛ないっちゃっているほうではなく
重くて暗い、終わりがない
それも、一面です

1

なかなかに面白かった

ヤマシタトモコさんの作品は全部読んでいないけれど、
自分が読んだ作品のほとんどに、作品が中途半端に終わっている印象を感じました。

内容が中途半端という意味ではなく、作品の内容がこれからも続いていきそうな場面で終了してしまっているように感じるという意味です。
続きがありそうな終わり方と言うのかな。それとも、どこが終わりか分からない場面で終わっているのか。とにかくそんな印象です。この作品も同じことを感じました。

かといってヤマシタトモコさんの作品は、内容を途中でやめて読者にその後を丸投げするタイプとも違う。何かしら作品の中で言いたいことは描かれた上で、途中で終わっているというか。

表題作もまさにそれでした。登場人物の三人の想いがそれぞれに決着を見せず、三人の関係はこの先どうなるのだろうという所で終わっているけれど、決して中途半端というわけではないのです。

高度なテクニックだとは思うけれど、完結しない作品には勢いがそのまま残るという効果を狙っているならすごいと思います。たいがいこういうやり方すると読者はちゃんと最後まで描いて欲しいと思って不満が残ることが多いですし。
でも何かしら読者に効果を与える終わりかたをしていると思います。

3

ちぎれた指は愛情

「…おっとよく分からんな。あと何回か読もう」と、ヤマシタトモコさんファンの私は時折こういう感覚に陥ります。
ヤマシタトモコさんの世界観に入れず、縁に立たされている感じで読み終わってしまうのです。
こちらの作品も例外ではありませんでしたので、あぁ読もうと思いついては手を付けて読んでいました。

やっぱり、昔の画風が好きだ。
発表年を見ると、デビュー作(と思われる)の【神の名は夜】が2005年と一番古い。
コマ割りも今よりゴチャゴチャしているし(「少女漫画ではなく青年漫画の感覚で描いていた」と本人談)、褒められるような美は一切感じないのだけれど、ヤクザという設定も手伝ってか暗い雰囲気が漂っているのが何とも好きなのです。

表題作の他、【ラブとかいうらしい】【ばらといばらとばらばらのばらん】【あの人のこと】【神の名は夜】。
描き下ろしとして、【separation?】【きみはばらよりうつくしい。】【NOBODY BUT GOLD KNOWS】。

その中でもダントツで好きな作品を1つ。


――【神の名は夜】【NOBODY BUT GOLD KNOWS】――
実質、作者のデビュー作らしい。
何でしょうか、この後ろ暗い雰囲気。決して世の中の日なたには住んでいないような表情。
何も信じて居ないような、でも1つだけは信じたいような、諦めたような希望を信じる表情。

ヤクザ、中学からの同級生。
組織の中でも幹部候補でエリートヤクザのミカと、フラッと自由に現れたり消えたりして組織の邪魔者扱い・須賀のお話。
須賀が居ないとうまく眠る事も出来ないミカは、上司から須賀と切れた方がお前の為だと言う話をされる。
会えばいつも体を重ね、「これで最後だ」「次はない」と繰り返し須賀に伝えてきた。
けれど、何事もなく自分の元へと戻ってくる須賀に、ミカは結局強く出る事が出来ない。
抱かれた次の日、いつものように行方をくらませ――と進んでいきます。

いやー、本当にいいですね。
ヤマシタトモコさんは割と詩的だと言われたり、何を言いたいのか分からないと言うお声を聞いたりしますけれど、この作品は違います。
ミカの弱さ、須賀のダメっぷりとミカへの思い、ヤクザという組織から足を洗う為の出来事等々、ヤマシタ作品の中ではとっても分かり易い描かれ方をしていると思います。

安らかな眠りを連れてくる。それが須賀でありミカであるという、なくてはならない存在の二人。
「二度と来るな」は「ずっと傍にいてくれ」と同義語。そういう二人。
素直さで言うと須賀の方がそうで、ミカへの思いもしっかり言葉に出すんだけれど、それを真っ向から受け止めず、それでも自分の中の須賀への思いが膨らむ事に苦しんでいるのがミカでした。

自分の小指1つで二人とも足を洗えるなら――と、潔い姿を見せてくれた須賀。
本当に彼はミカに捨てられたくないんだろうな、と思うのと同時に、ミカはヤクザを辞めたかったのかな、という思いも生まれました。
というより、須賀が辞めさせたかったのかな。好きな人を危険な目に遭わせたくないとか。

最初から最後まで「暗く他を寄せ付けない薄幸感」満載のお話。
なのにあのあとがき!
やっぱりあぁいうオチ、好きですねぇヤマシタさんはさすが(笑)
そして「須賀は素直な男なのだなぁ」と改めて実感しました♪
自分の事を「淫乱」とか「M」とか看護師さんに話されているのも目の当りにしたら、そりゃ生真面目ミカも、THE・お見舞い品を廊下に置いて帰りますよ(笑)


アクの強さは、上記作品がダントツでした。
今より好きです。

1

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(コミック)一覧を見る>>

PAGE TOP