単行本未収録コミック付
己で刻んだ印を背負い、愛を求め続ける男たちの物語
面白いと言うよりは、魔力があったという方がしっくりくる。
読んでいるというより、勝手に頭の中に入ってくる感覚。
面白いも何も…ちょ、まって、まだ、まだ駄目…!駄目…!みたいな感じで、世界についていけないんです。
これは作品として減点なのかというと、そうではない。とんでもない。
ついていけてない私が駄目なんである!と。
思いもよらない展開と、見せ方、時間軸、視点、表現、描写、加えるなら表紙の装丁までも!
どれをとっても、素晴らしい!!
蛇龍どくろの「エンドレスワールド」がしっかり構築された現実世界での薬物による幻覚症状を上手く見せたのに対し、阿仁谷ユイジの「刺青の男」はしっかりとしている筈の現実世界を最初ッから歪ませて幻覚を見せているかのように表現している…その見せ方も凄かった。
雰囲気が同じカテゴリかな?というので引き合いに出してみましたどくろさんの「エンドレスワールド」…。(こっちも素晴らしい漫画です是非どうぞ)
表題作「刺青の男」のシリーズのあとに、別の読みきり二話分も収録されています。
この「はるのこい」はいつものユイジワールド全開な内容なのですが。
これも密かに才気を感じさせる出来で舌を巻きました。
かつてこれほどのエロス表現を見たことがあるだろうか!?いやない!!(反語も飛ぶ!)
これほどのオリジナリティあるエロシーン…
背中から蝶が飛び立つ睦言なんてそうそうあるわけない!
もちろんこちらも、本を開いたまま掲げて「スバラシー!!!」と叫んだのは言うまでもありません。
「僕のカタギ君」「ラナンキュラスの犬」「狂い鮫とシンデレラ」「みんなの唄」(描き下ろし)
「はるのこい」「ゆめのあんない」⇒春野(大学生 女好き)×安奈(大学生 ゲイ)
「僕のカタギ君」~「みんなの唄」は主人公がそれぞれ違い独立して読める作品になっているのですが、他の作品に登場したキャラがまた登場していたりとリンク作になっています。「僕のカタギ君」~「狂い鮫とシンデレラ」までは掲載誌の「OPERA」で連載され、「みんなの唄」は描き下ろしだったようですね……
皆さんのレビューでも言われているとおり、この作品は読後痛い・哀しいという印象を強く残す作品です。でも実は「僕の…」~「狂い鮫…」までを読む限りではそういう雰囲気はないんですよ(なので掲載誌しか読まれていない方にとっては「そうだったっけ!?」と思われるんじゃないでしょうか)。
その雰囲気がガラッと変わってしまうのは描き下ろしの「みんなの唄」を中盤くらいまで読み進めた頃でしょうか。読み始めはむしろ甘々なくらいなのにいきなり「アレ!?」と思うようなシーンが出てきて、そこがちょっと引っ掛かりつつも読み進め、また甘々な感じに…と思ったら一気に突き落されます。そこからはホントに急転直下という感じで哀しい現実が明らかになります。今まで読んできた3作がここでこういう形で収束されるとは…としばし呆然となってしまいました。
正直、最初に読んだ時はショックが大きく「もうこの作品読めないかも…」くらいの事を思いましたが(でも評価的には[神])、少し時間が経って落ち着いて読んでみるとまたちょっと違う印象を持ちました。だからと言って私の分類の中でこの作品がハッピーエンドに思えるようになったという事ではなく、ラストのページ(Thanksページみたいなところ)にある“幸せの雛形なんてどこの誰が作ったの?”という言葉を受け入れる余裕が少し出てきたというだけなんですけどね。
「はるのこい」「ゆめのあんない」のシリーズは、片思いの相手の生霊と夜な夜なエロいことをしてしまうというちょっと変わっている話なんですが、こちらは安心して楽しめる!?作品でした(まぁあちらと比べてしまえばねぇ…)。最後に実物とHをするというシーンで、今まで攻だと思っていた方(ずっと片思いしていた方)が受になるのはちょっと驚きましたが、むしろその予想外な感じに結構萌えました。
いつ散ってしまうか分からない裏社会で生きる男たちの壮絶な生き方が描かれています。
それぞれの話の時系列が一度読んだだけではよく理解できず、二度読んでようやくすべてが繋がりました。
そして鳥肌。
結末が結末なだけに万人受けするとは決して思いませんが、未読の方に是非オススメしたい一冊です。
「僕のカタギ君」
背中一面に美しい牡丹を咲かせる<潟木>と、その恋人<久保田>の話。
仕事に行きたくないと駄々をこねる潟木とそんな彼をなだめる久保田の甘ったるい朝の光景から始まるのですが、久保田が潟木のスーツの胸ポケットに入っていたある物を見つけたことで話が急展開します。
公私を混同することなく自らの責務を全うする久保田の男らしさには惹かれずにはいられません。
「ラナンキュラスの犬」
亡くなった前組長<鶴子>との約束を守って胸に大輪のラナンキュラスを刻む<武藤>と、前組長と現組長の間に生まれた一人息子<坊>の話。
物語中盤で坊から武藤に突きつけられる二択が非常に痛ましく、武藤にとってはどちらを選んでも鶴子との約束が守れなくなってしまうのですが、それでも真摯に結論を出します。
このすぐ後のページで二人が幸せそうに笑い合っている何気ない一コマが結末を知ったあとだと胸に突き刺さりますが、外の世界を知らずに大人たちに守られて育った狡くてエゴイスティックな坊はどう見ても井の中の蛙。モチーフのラナンキュラスとも繋がります。
「狂い鮫とシンデレラ」
金と権力がすべてで、腕に狂い鮫を飼う<埜上>の話。
不貞をはたらいた自分の女を容赦なく窓から突き落とし、相手の男にも後を追って飛べと言い放つ衝撃的な場面から始まります。
周りには影で「かわいそうな男」と言われていることも知らずに、自分のことを「王様」と発言しているさまはまさに裸の王様。鮫の刺青がよくお似合いです。
そしてこの章で描かれている久保田について。
普通の感覚からすると彼のやり方は狂っているとしか言えず、果たしてここまでする必要があるのかと理解に苦しみましたが、ラストの「みんなの唄」で自分達のような人間が何のために存在しているのかを潟木に語るシーンを読んでようやく腑に落ちました。
加えて、久保田が埜上の性癖を最初から知っていたとすれば…?
何を狙ってあのような不可解な行動や発言をしているのか推測できます。
「みんなの唄」
前半の武藤と坊のエピソードがこの物語全体の悲しさと行き詰まり感に拍車をかけます。
とはいえ坊と武藤が取った行動は組からすればやはり裏切りでしかなく、「ラナンキュラスの犬」で鶴子が武藤に語っている通り、ヤクザ社会にいたこの二人には遅かれ早かれ似たような結末しか待っていなかったのだろうな、とも。
後半の潟木と久保田のエピソードは、潟木の久保田に対する愛と久保田の潟木に対する愛が本物過ぎて泣けました。
ズタボロにされた背中の牡丹は潟木の勲章、その通りだと思います。
この二人には最後のその日まで全力で生き抜いて欲しいです。
どの話にも登場人物が決断を迫られる場面が出てきます。
あの時こうしていれば彼らの未来は違っていたのではないかとついつい思わされるのもまた、現実的な生々しさがありました。
「はるのこい」「ゆめのあんない」
ハタチの大学生二人が登場人物の、表題作とは全く別モノのお話です。
恋愛モノでふわっとしていて安心して読めるのですが、よくよく想像すると吐き気をもよおす気味の悪さです。
こちらは★3つくらい。
とにかく、鳥肌がたちました。
ユイジさんはミスター~から読み始めましたが
これを読んだ瞬間、大好きな作家さんになりました。
雰囲気が全然違う…!
始めて読んだ時も思いましたが、表情が妙にエロい。
そんなに露骨に表現している訳でもないのに、なぜでしょう…。
ただ、暴力が嫌いな方は止めておいたほうがいいです。
後、リバが苦手な方も。
ちなみにわたしは大好きですが(笑)
そのわたしの意見ですが…
わたし、刃物を使うのは苦手なんです。
だけど殴った青痣は大好物です。
青痣だらけのこの1冊。
堪らない。
普通の漫画に飽きてしまった方、是非読んで下さい。
オススメです。
好きです。すごくっ
刑事×ヤクザっていうのがたまらないし、ヤクザ物大好きな自分には、かなりきましたっっ。
中でも「狂い鮫とシンデレラ」の久保田が大好きです。
女装って久保田綺麗すぎっ
首絞められちゃうとことか、殴られちゃうとこがお気に入りですっ
ほんと大好きっ