君が好きだ。……嘘みたいだ

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唇にキス 舌の上に愛 ~愛と混乱のレストラン 3~

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表題作唇にキス 舌の上に愛 ~愛と混乱のレストラン 3~

フレンチシェフ・久我修司
支配人・鷺沼理人

あらすじ

瀟洒な一軒家のフレンチレストラン「ル・ジャルダン・デ・レーヴ」。支配人として出向してきた理人には、この店を足掛かりにフレンチの老舗「ゴルド」を買収するという目的があった。上司の叶はよき理解者だが、父に遺棄された理人は当時の思い出に絡む叶の想いを受めることができない。その理人の心をさらにかき乱すのは、シェフという立場を超え内面に迫ってくる久我の存在だった。怖いのに優しくて、出会ったときから自分を壊してしまうとわかっていた男――。嵐のように奪われた一夜が明け、理人の目の前にいたのはしかし。

作品情報

作品名
唇にキス 舌の上に愛 ~愛と混乱のレストラン 3~
著者
高遠琉加 
イラスト
麻生海 
媒体
小説
出版社
二見書房
レーベル
シャレード文庫
シリーズ
愛と混乱のレストラン
発売日
ISBN
9784576090382
4.2

(90)

(56)

萌々

(16)

(9)

中立

(1)

趣味じゃない

(8)

レビュー数
19
得点
372
評価数
90
平均
4.2 / 5
神率
62.2%

レビュー投稿数19

壊されたいか包まれたいか

面白かった!主にBL以外の部分が!(笑)
人間関係は近いところでつながり絡まり合っていったが、世界の狭さがマイナスにならないストーリー。やっとメインキャラ3人全員分の背景が描かれ、場が整う。シリーズ3冊分が収束していく食事シーンは圧巻だった。

冒頭は久我のフランス時代のお話。今の久我ができあがる過程が、異国の空気を感じる描写とともに語られる。まるで同じ景色を見ているような、同じ匂いをかいでいるような、その場所にいる気分を味わえる。このシーンだけでも高遠さんのファンになる。

現在軸に戻ると、今度は社内でのいわゆる内ゲバ、しかもそこにメインカプの攻めが絡んでいないというBL小説らしからぬ方向に。これがしっかり書き手の中に一度落とし込まれた後に出てきた文章で綴られていたことに驚いた。
はっきり言ってBL小説で専門用語を書き手が理解していると感じることは少ない。作者が元々詳しいことと、書くために調べたことでは、明らかな違いが出る。それを取り繕うのが上手い作者はいても、ここまで一定の安定感を保っているのは希少。料理・企業・異国の描写がどれも地に足が付いている。

肝心の恋愛に関しては、叶が家族愛を超えた恋情を持っていたという嬉しい誤算(?)。久我とは正反対の男で、この三角関係には懐かしさがある。
久我と叶、刺激的な恋か安定した結婚か、点滅する青信号を手を引いて走って渡るか立ち止まって一緒に待ってくれるか、そういう太古の話を思い出した。理人にとっては自分を壊す男と包んでくれる男。

この作品の始まりがレストランの再建であることを考えれば、そこに関わってきた理人が選ぶ相手は久我しかいないのは分かる。作品の流れに沿った自然な選択。
だが叶の想いの長さを考えたら辛すぎて、心情的には叶に一番幸せになって欲しかった。「横顔が寂しそうな人」って表現がたまらなくきゅんとくる。当て馬に肩入れしたくなる作品というのも好みなので、とても良かった。

シリーズの締めとなるラスト付近の理人の食事シーンは、贅沢にたっぷりページを割いていて、丁寧に3巻分をまとめてくれて泣けた。ちょっと走馬灯のような雰囲気もあったり。
直接的に久我の魅力は分からなくとも、理人を通した久我の存在の大きさはよく分かる。共感や萌えとは違うが、作中キャラの内面を理解する形で納得していく。これはこれでとても楽しかった。

あらゆる点で刺さった作品。理人が逃げ過ぎだったりクサい表現があったりするのは、書かれた時代のせいかな?高遠さんの新しい作品も読んでみたくなった。

0

完結巻

とっても人気シリーズだと思っていましたが、どうも自分には"とっても"程は響かず。叶視点の作品だったらと想像すると、修司なんて大事に愛してきた相手への強姦魔でしかない。そんな訳で自分は叶派なんですけど、やっぱ修司みたいなちょっとワイルドな男が人気あるものなんですかね…悲しいね。
フランス修行編は好きですが、修司の行き当たりばったりさもひしひし感じ、本当にこの人と生きていって大丈夫か!という気持ち。ま、理人もなかなか行き当たりばったり感があるからお似合いか!

シリーズ3巻合冊版では、専用あとがきが収録されています。

萌〜萌2
理人の告白シーンが好きです。

0

食べるということ

ただただ、フレンチのフルコースを前菜から食べて行く様子が丁寧に描写されているのを読んで、こんなに泣く日が来るとは思いませんでした。

食べることは生きることで、生きることは誰かの命をいただくこと。
ジビエが苦手な受けに、その肉や血を飲みこませて、それがお前の血や肉になるんだと言った攻めの食との向き合い方もすごく良かったし、最初はその攻めに「俺の前で食事を残すな」と言われて怒られるから無理やり飲みこむだけだった受けが、最後には「攻めのご飯で生きていきたい」と思えるまでに変わっていく過程が本当に素晴らしい作品でした……
美味しいを知らなかった受けが、無理やりじゃなく食事しながらそこに込められた作り手の意思に触れて涙を流すので、わたしも具合が悪くなるほど泣きました。

10年以上前の作品ですし、攻めの多少の横暴さや無理やりに近い性行為はご愛嬌かなと思います。
その後にめちゃくちゃ反省していて、自分に怯える受けに理不尽な憤りをぶつけることもありませんし、とにかく食事を食べたか、食べていないならと簡単な料理を作って食べさせてくれる愛に完敗です。

何年経っても、素晴らしい作品の素晴らしさは色あせませんし、今読めて良かったです。

3

幸福な食事

愛と混乱レストラン 本編の完結版。

レーヴの支払人から離れ本社の仕事に没頭する理人。
念願だったゴルドがいよいよ手に入りそうなのに、心も晴れません。
いつも曇り空のような理人が、より一層追い込まれていく姿が見ていられませんでした。

レーヴが閉鎖の危機に追い込まれてようやく自分が大事にしたい場所に気付いた理人がスタッフの事を思いながら食事をするシーンは切なかったです。
スタッフみんなのおもてなしも最高にあたたかたったです。
理人が食事を美味しいと思えて本当に良かった!
素敵な作品でした。

それにしてもお互いの気持ちに気付いた理人と久我の関係が急激に
甘々になって読んでいる方が恥ずかしかった(笑)

3

心に染み渡る食事

理人も修司も叶も、『ル・ジャルダン・デ・レーヴ』も『ヤガミ』も『ゴルド』も一気に激変に晒されたクライマックス。
フレンチ・レストランの老舗として君臨するゴルドへの執着で凍っていた心が溶けてようやく前向きになったと同時に、自身の感情の機微にてんで疎かった理人にも大きな変化が。

一冊目から待ちわびていたシーンがついに出てきて、美味しそうに食事をしなかった理人が、じっくりと作った相手を思い浮かべながら味わうまでに変わった。

修司も最初は暴力シェフと誤解されていたのに、常に筋の通った主張を曲げる事なく『ル・ジャルダン・デ・レーヴ』を軌道にのせ再建の為に大きな力になった。
何よりも理人がこれだけ変わったのは彼の力だもんなぁ…。

普通シリーズを通して読んでいると、この場面のエピソードをもう少し読みたいっていう点がいくつも浮かんでくるのだが、この話はそういった引っ掛かりがない。
それだけ過不足を感じる場面がなく、ジグゾーパズルが綺麗に仕上がったかのような完成度の高さは見事だ。

あ、でも欲を言えば最後に叶が紳士としての理性を振り切って理人を強引に奪っていく位の気概が見たかった。
きっと修司とまともにぶつかり合う様子もいい勝負だっだんだろうになぁ…と、惜しいものを見逃がした感じ。

話の途中では無理矢理な場面もあったが、それ以外はキスシーンとか相手を抱きしめるだけのシーンでも萌えが満たされるほどで、修司、サラ、叶がそれぞれ好きな相手を想う気持ちがひしひしと伝わってきた。

心に染み入るような満ち足りたラストに拍手を送りたい。

3

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