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身も蓋もない言い方をすれば、女から男に乗り換えるノンケ男のお話。何も簡単には進まないし心理描写も丁寧なのに、暁行が遥を“恋人”として選ぶ流れに納得感がない。リアルとファンタジーのバランスがいまいちに感じた。
合間合間に暁行の独白ブログを挟む、懐かしさあふれる雰囲気。彼女の真希と友人の遥とはもうそれなりの長さの付き合いで、どちらとも関係は深い。物語の始まりは、遥が暁行に告白したところから。
BLだから仕方ないが、描写もその丁寧さも最初から遥にだけ寄りすぎで、違和感がある。自然に結婚を思い描くような彼女という設定なのに、暁行の心理描写の中で真希は全く存在感がない。さらに遥が性欲の対象外である点への踏み込みもない。
丁寧に書けば書くほど作者のBLに持って行きたい圧が見えてくるようで、キャラを捻じ曲げていないか不安になる。読みたいのは無理矢理男同士をくっつける話でなく、キャラ本人の感情で相手を選んだと思える恋物語。
描写不足に不満を抱く場面は何度もあり、でもここをきちんと描くとBL読者のウケが悪くなると分かってしまうところばかりで、BLというジャンルの縛りの多さを実感した。そもそも暁行のノンデリ程度で賛否分かれそうなとこあるし。
一夜の過ちを犯す心境が分かると言っていた暁行は、その伏線を回収するかのように、いつか自身の言葉通り“うっかり子どもをつくって”しまいそう。遥との十年後より、そちらの未来の方が容易に想像できると思った。
表題作の終わり方と、そこから遥視点に切り替わる構成がとても好き。
直接的なネタバレはありませんが、踏み込んで語るためネタバレの設定をします。
友としての「好き」なのか、恋としての「好き」なのか、曖昧な関係を描いた青春物語の傑作です。
行き過ぎた友情の延長線上にある関係や恋が好きな人におすすめです。
両刀やらゲイがたくさんいて男同士の恋愛も問題がないなど、BLに都合がいい世界観の作品がたくさん出版される中、本作はマイノリティへの心の拒絶が残されており、生々しさが切なく歯がゆいです。
家が裕福で美人な彼女を持ち、就職も一流企業への内定が決まっている、まさに理想的な人生を送って来た攻めがひょんな事から受けに告白をされてしまいます。
人生で初めてぶつかった壁が「良い友人」だと思っていた男からの恋慕。
友情なのか恋愛なのかわからずとも、受のことを大切に思っている事だけは確かで、恋愛対象でないはずの男性に対しての想いや葛藤、これから先の人生への迷いが描かれていきます。
受けは生来のゲイであることに苦しみを抱えています。
昨今は多様性などと恋愛対象がノーマルでない事への理解を認めようと努力する社会になっていますが、心の内では隔たりがまだまだあります。
さらに社会に多様性が認められたとしても当事者が「自分は普通でない」と理解したときの苦しみがなくなるわけではありません。
ノーマルの相手が自分を愛してくれるようになるわけでもありません。
そんな心の孤独を抱く受けからの愛情を受け入れることができず、
だからと言って大切な相手からの感情を拒絶することもできす、どうする事もできない板挟み攻め。
そのあいまいな関係や、内に秘めた激情を丁寧に描いています。
攻めの葛藤にやきもきしながらも、受けへの確かな愛情を感じて萌えます!
受けを大切に思っているが、その「大切」という感情は今の自分の恵まれた人生を捨てられるほどのモノなのか?
攻めが本当に一番大切に思っているものは何なのか?
長い葛藤の先にたどり着いた答えが尊い…
尊すぎて「エッチシーン要らないんじゃないか」と思うぐらい、
攻めと受けの二人の曖昧な関係は思いやりと真心で出来ています。
あるならありがたくいただきますが、エロがなくても良いと感じるBLは珍しいです…。
一穂ミチ先生の比較的初期の作品ですが、登場する人物の職業や生活などのディテールが細かく、しっかり下調べを行ったであろう作品の土台と、
言葉にできないあいまいな感情をも表現する筆力はこの頃から健在です。
どこまでも青い夏の田舎の情景を想像しながらお楽しみ下さい。
夜の観覧車のなか、親友からの突然の告白。
…という、そのまま流されるか?気持ちが揺れるか?というBLにありがちなシチュエーションから始まるけれど。
暁行は清々しいほどに『ノンケ』で、
遥から想いを告げられても良くも悪くも意識は何も変わらず。
でも決して遥の気持ちを軽々しく扱わないところに誠実さが見えていたのかな、と。
ただデリカシーの無い発言にはかなりモヤっとしてしまい、どこか線を引いているような暁行が許せないかも。と思った部分もありました。
でもその場の雰囲気に流されたり簡単に気持ちを変化させたりせず、あくまでも自分を貫くところこそ暁行の良いところなのだと気付かせてくれるストーリーになっていて、
彼への印象も変わるし遥が好きになったのも理解できるような展開だったなと思いました。
そして。あえて多くを望まないようにしている、控えめな遥の健気な想いに触れたとき。
暁行の感情が一気に爆発したのがすごく良かったです…!
どうやったってこえられないと思っていた壁を乗り越えたあとの暁行は潔くて強くて、
ブレない想いで遥を見ているのが伝わってくるのがすごく嬉しかった。
そしてこれまでひとりで何もかもを抱えてきた遥が幸せになってくれて本当に良かったなと思いました。
遥のいじらしさに泣いたー。
とはいえ、遥自身の心はとても強くて、人の心の機微もわかり、愛想はなくても人を傷つけることなく真っ直ぐに生きている子だなと感じた。
暁行は素直、初めて知った遥の想いに戸惑いながらも真摯に友達付き合いを続けて。
決して、簡単な恋愛ではないし、諦めから始まったような恋が、少しづつ暁行の心に染まっていく。
いや、気付いたのかも。
潜在的に暁行も恋をしていたのかな?気付いていなかっただけで。
遥の梯子は強かった、末長く幸せで。
終始独特な雰囲気に包まれた作品で、とても惹き込まれました。
p.64の"時々、自分があの透明な〜"という台詞が胸にグサッと刺さりました。
他にも付箋を貼りたくなるような表現が沢山。
(これはどうでもいいんですが)表紙の手前のキャラの指が青く染まっていて、あらすじに"爪の先をいつも青く染めている遥"とあったので、てっきり手前の子が遥だと思って「ビジュアルが一般的な組み合わせと逆で珍しいな」と思いながら読んでいたんですが、違いました...笑
〜以下、私情〜
暁行のデリカシーの無さとフラフラしてる感じが何とも...
遥が健気受けすぎるくらい健気受けで、暁行のことでいくら傷ついても一途に想い続けていたからこそ、暁行の気持ちがそれに見合っていない気がして不安になりました。
本当に同情じゃないのかな?と。
ただ、最後の描き下ろしは二人ともラブラブで惚気ていたのでその調子で愛し合っていてほしいです!☺︎
