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一生好きだなんて、言葉だけで十分だ
2010年発表の短編集。
「願う言葉」
誰とでも寝るセックス中毒者の健二に恋してる種(たね)。
健二は種も誘うけど、種は応じる事ができない。
だが健二は言う。「好きって何?」
種は思う。届かないなら自分のエゴ、と。
いつか種は健二を受け入れるか?
なんか哲学的。
「ナナハチ」
好きと言われて疎遠になって。同窓会で再会して。
青春がまた始まったカンジ?
「雪山途上、山小屋にて」
生徒にトキメいてた高校教師。
でも(当然)失恋して突発的に雪山に登る。
遭難しかけたけど山小屋を見つけて、中にいたヒゲ面男に散々自分語り。
だがその男は…!
…というお話。軽いギャグというかこんな出会いもあるのねというか。
「シュガーフリー」
お誕生日のどんちゃん騒ぎの翌朝、俺の布団にゲイが居た。
そのゲイはオトナでシブくて男前でやさしくて。
ぜってームリだけど、ムリなんて言えないんだ。だから一周回って受け入れるんだ!
って言ってもコレ勘違いなんだけどね。
「揺らぎ」を面白い切り口で読ませる作品。
「物語は死で終わらない」
表題作。
主人公自身の葬式から始まります。
幸生は20才で事故死。あの世に行く駅でしばらく「この世」を眺める事にする。
見るのはツレの新吾。
幸生は死ぬ数日前に新吾から告白されていた…
飽かず、眺め続けて。新吾はずっと一人で。
一生忘れられない恋って呪いみたい。
一生分眺め続けてしまう罪悪感は、その呪いのせい?
ただし、この呪いは幸いにも浄化されますよ。あーよかった。
「サイエンス オブ ゴーストのロマン」
難解な空間論というか…
部屋に「幽霊」を見て、過去または未来が現在に侵食していると考える。
またはこのいっとき「五次元」が出現したのか?
で、結局何だったんだろう?
どれもエロは無くて、でもストーリーとして非常に面白い、というか興味深い。
表題作と「シュガーフリー」、そして所々挟まってる「担当さんと私」のコラムがよかったです。
◆シュガーフリー
ゲイとノンケの駆け引きがとっても可愛い作品でした。泥酔した夜、一線を超えたかどうかをどうしても思い出せない虎。悶々とする彼に答えを与えることなく、ゲイである琉王は会う度に着実に虎の心へ引っかかりを残していく。琉王の飾らないけれど余裕のあるところ、ノンケ相手だからけっして強引には迫らないところ、それでも虎が惹かれずにはいられなくなる魅力が、素敵だなと。結局、自分の方から好意を伝えてしまう虎が可愛かったです。
◆物語は死で終わらない(表題作)
最後は自然と涙が出ました。二十歳という若さで事故で他界してしまった幸生が、直前に自分に告白してきた新吾の人生を見守る話。映画やドラマのように、生者である新吾を危険から守ったり、話しかけたりすることなんかできなくて。ただ、天から見ることしかできないんです。告白した方もされた方も、未練があってどうしようもなくて。幸生を忘れなかった新吾の人生も、彼の最期まで見届けた幸生の人生も、大往生だったと思います。短編でも余韻をしっかり残してくれた作品でした。
◆あらすじ◆
大学の友達の新吾に告白され、返事をしないまま数日後に事故死してしまった幸生(表紙絵)。
何故かあの世へは行かず、あの世に旅立つ駅・彼岸前駅の駅前広場にあるベンチで、ベンチの前の蓮池に映る「この世」の光景を眺め暮らしています。
幸生が死んで何年、何十年経っても、幸生を想いつづける新吾を見て、早く自分を忘れてほしいと願う幸生ですが――
表題作のほか描き下ろし含め6作(+1ページ漫画「担当さんと私」シリーズ)が収録された短編集です。
◆レビュー◆
「蝶尾」が好きだったので、作家買い。4冊目です。
冒頭の「願う言葉」も好きなんですが、やっぱり表題作が一番インパクトがありました。
主人公の幸生の葬式から始まるレアなお話。
ただ、死後の世界という重苦しさは全くなく、むしろ前半はくすっと笑いがこみあげてくる感じ。
死者が彼岸へ渡るための(電車のw)駅があったり、よく駅前広場にあるようなタイル張りの池がこの世を見通せる池だったり、死んでるはずの幸生が生きてる時のままのTシャツ姿で妙にあっけらかんとしてたり・・・トジツキさんの笑いのセンスが詰まっています。
それでいて、メリハリもきっちり。
幸生が何気なく蓮の花を髪に挿す場面からシリアス調に転調するという見せ方、すごく好きです。
幸生の死後も彼の「答え」を求めて、幸生の繋がらない携帯に電話をかけ続ける新吾と、そんな新吾を蓮池から見ている幸生。
二人を隔てる死者と生者という超えられない距離感が、幸生が髪に蓮の花を挿してあの世の住人の気配を纏うことで不思議なほどクリアに見えてきて、一気にやるせなさが押し寄せてきます。
クライマックスは、不覚にも泣きましたね。
ただ――
これはもう読む側個人の問題ですが、新吾の変わらない愛、私には少し重く感じる部分もあります。
多分、年齢的なものも大きいかも・・・
昔は私も、変わらない愛に憧れて、普遍の愛を描いた作品を求めていた気がします。それがある年齢を過ぎると、そういう愛に少し息苦しさを感じるようになってきて。
忘れることこそが生きるための救いに思えてくる・・・そういう年齢の曲がり角って、あるのかもしれません。(都合の悪いことは忘れて生きてきた自分の人生の言い訳かな?( ;∀;))
そんなわけで、この二人の物語には、感動しながらもどこか浸りきれないものを感じてしまいました。
昔の私なら、きっとどこまでも無心に泣けたと思うのですが。
幸生と新吾がこの世で一緒に過ごしたのはたった2年間、その2年間に育った幸生への想いが、幸生の死後も新吾の中で育ち続ける・・・
愛情って、何なんでしょうね。
愛という感情を理解できない男・健二が、彼を好きだと言う種(たね)に
「おまえの云う好きって何?」
と問いかける「願う言葉」から始まるこの短編集が、死後も育っていく愛情を描いた表題作で終わる構成になっているのは、多分偶然ではないのでしょう。
読み終わった時、「好きって何?」という健二の言葉が、じわじわと心に沁みてきます。
それにしてもこの本のぶっ飛んだ口絵は!!
作品の合間に挿入されてるギャグ漫画「担当さんと私」に「②口絵の攻防」として口絵のデザイんをめぐる裏話が描かれているんですが、私は担当さんの意見に一票かな・・・(^_^;)(や、絵としてはすごくステキなんですけども。)
『物語は死で終わらない』。
これを読んで名作少女漫画の
作中劇の台詞を思い出しました。
「死んだら恋が終わるとは思わぬ」。
(そう、『ガ○スの仮面』です)
ああ、そういうことなんだなぁ、と。
それを読んだ時もひどく
心に残ったことを思い出して、
恋が終わらないからこそ、
あっさりと結んだマンガ自体の
最後の1コマまで、静かに泣きました。
個人的に、いつも短編集よりも
1作まるまる同じCPの話を
好んで読むほうですが、
このお話は自分の琴線に触れたんだろうな。
たった34Pでこの引力だとは。
死で終わらないと言うか
死んだところから物語はスタートする。
普通「死ネタ」が描かれる作品は、
誰かが死んで残された人たちが
悲しんだり葛藤したり引きずったり。
とにかく主体は「この世」なことが多い。
でもこのお話は「あの世への中間点」から
「この世」を見続けるお話しで。
ファンタジーなんだけど都合よく
奇跡は起こったりしない。
幸生の性格も生きてるまんま。
でもだからこそ、普通の恋愛漫画と同じように、
幸生の気持ちがわかるんだろう。
他作品、『願う言葉』は
文学的な言い回しが多く、
若干読解力が必要だと感じました。
でもこういうことは誰でも
ちょっとは考えたことある気がする。
「共感はできても理解はできない、
所詮は違う人間だから。
でもでも好きってのはその人を
理解したいなっていう
気持ちなんじゃないのか?」
っていうこと。
最初読んだときはそんなに
好みじゃなかったけれど、
ゆっくり読みといたらスルメ系に感じました。
健二のセックス依存症みたいなとこも
全部否定せずに終わる感じが
淡々としていて悪くない。
ラストの
『サイエンス オブ ゴーストのロマン』は
私の中に今までなかった未知の考え方で
難しかったけど、間間に入ったエピソード
『担当さんと私』と併せて読んで、
トジツキさんの描きたい感じが
なんとなーく分かるような気がしたな。
全体的にチャラい若者が登場人物ですが、
想いの純度とかはそういうの
関係ないんだなと感じた。
今まで読んできたBLにはない雰囲気だけれど、
エロはおろかキスすらもなくても
(襲われてはいるか…)
これは恋だって感じることが出来ました。
表題作以外はスルメ系でしたが、その分、
読み重ねて解いていく面白さがあると思います。
あまあまじゃない、雰囲気のある作品を
探している方にはおすすめしたい。
受ける印象は萌えとは
ちょっと違う気はするけれど。
私表紙も好きでした。
BL感は確かに薄いけれど、トジツキさんの好みを
反映しているなーと思ったので。
そう思ってMY神作品の一覧を見直してみると、
全体的に私はBL感が強すぎない
装丁が好みのようだ。
自分的に間違いなく神評価です。
それぞれ別のお話が6編収録されています。
でも、この本は表紙で損をしているような
気がしなくもないです…。
・願う言葉
いきなりの濃厚シーンと喧嘩シーンで
掴みはバッチリな感じでした。
体の関係のみで心が置き去りで、
人を愛することを知らない健二の
「お前の云う好きってなに?」という
不思議そうな台詞がすごく悲しかった。
それを踏まえてのラストの
「…好きになれたらって思うよ」という台詞が
深く、胸にしみました。
・ナナハチ
好きって言ったり、言えなかったり
言ったことを後悔したり
甘酸っぱかったり苦かったり、な
高校生~10年後の同窓会のお話。
時間の経過というのは優しいんですね。
・雪山途上、山小屋にて
遭難!二人きり!萌えシチュ!キター!
…ではなくて(題から早とちりしました)
おかしみあふれるやりとりで、
下山してからの再会も面白かった!
水木先生の妄想がたくましすぎて
あちこちで噴出してしまいます。
・物語は死で終わらない
この作品だけで神評価です。
新吾に告白の返事を伝えないまま
幸生は20歳で死んでしまう。
そして…、
繋がらないと分かっていながら
幸生の携帯に電話をかけ続ける新吾や、
自分似の甥の姿に目を奪われている新吾、
「忘れられない奴がいる」と
人と付き合おうとしない新吾などを
幸生はずっと天国から見つめているのです。
そして再会。号泣しましたが、
長く引っ張ることはなく、
5コマで程度でエンドなんですよね。
この潔い終わり方がすごく素敵でした。
映画を見た後のような余韻がありました。
・サイエンスオブゴーストのロマン
見えちゃってるイケメンの幽霊。
数頁のお話でありながら
科学的に分析されたりしていて
すごく丁寧に描かれている印象です。
そして最後のオチ!
こういうの大好きです☆
どのお話も、扱っているネタ自体は
シリアスに転じやすいと思うのですが
明るめで笑いのあふれる展開になっていて
トジツキさんのセンスを感じました。
次回作も期待したい作家さんです。