好きになってはいけない、恋してはいけない相手だなんて、知らなかった──

  • 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作はじめてのひと

喫茶店のマスター 江島香
祖父と2人暮らしの夜学生 川村真巳

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

家族を交通事故で失った川村真巳は、入院中の祖父と一緒に毎日をつましやかに暮らしていた。コーヒー好きの祖父のため、持ち帰りができる店を探していた真巳は、隠れ家のような喫茶店『翠雨』を知る。誰にも頼ることを知らず、甘えようとしない真巳を、店の主人である江島は優しく見守っていた。そんな江島にどうしようもなく惹かれていく真巳だが、江島の存在を知った祖父から、彼とはもう会わないでほしいと言われてしまう、彼は赦せない相手だから、と。混乱し、納得できずにいた真巳だが、そんなとき、男にキスしている江島を見てしまい!?
(出版社より)

作品情報

作品名
はじめてのひと
著者
椎崎夕 
イラスト
穂波ゆきね 
媒体
小説
出版社
大洋図書
レーベル
SHYノベルス
発売日
ISBN
9784813012221
3.7

(40)

(12)

萌々

(11)

(13)

中立

(2)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
7
得点
145
評価数
40
平均
3.7 / 5
神率
30%

レビュー投稿数7

ぜひ読んで欲しい

いつもレビューをする時に、タイトルに困るのです。
というのも、良いところが沢山ありすぎて、一言にまとめられないからなのですが。

椎崎先生の作品は初読みで、好きになるはずがないを購入するついでにたまたま少しだけ興味が湧いて、健気受け、年上攻め、登場人物のおじいちゃんに惹かれ手に取りました。

ですがまさかまさかの、好きになるはずがないよりも断然こちらの方が好みでした。

元々健気受けが好きなので好みの問題かもしれませんが、受けの真巳が本当にいい子。
いい子というか、健気受けによくある女々しい感じや不幸に酔ってる?感じが一切ありません。

椎崎先生の文体の影響なのかもしれませんが、辛い日々や過去も淡々と描かれていて、だからこそ胸にぐっと迫るものがありました。

そもそも登場人物が皆いい人過ぎるんです(褒めてます…)
おじいちゃん筆頭に、駒沢さん。
駒沢さんのんて、マジで良い人すぎて、一瞬江島さんの存在が掠れるほどでした。
この方のスピンオフ、出ないのかなぁ。読みたいなぁ、と思いつつ、けれどももう少しの間は、真巳の保護者として目を光らせて欲しいという淡い期待も無きにしも非ず…

そしておじいちゃんとの場面。おじいちゃんが絡んでくる一つ一つ、もう、駄目ですね。
涙腺崩壊も甚だしい。
真巳におじいちゃんが居てくれて、本当に本当に良かった。
愛を知らないまま育たなくて本当に良かった。

また、江島さん。
攻め様。なんなのこの穏やかなのに、えっちいキスをするお方は。
中盤で、最初で最後だと思い、他に好きな人が居るけれども処女は面倒くさがられてるからと言いつつ真巳がお願いするシーン。
あのやり取りは本当にもう、悶えて悶えてたまりませんでした。
だってどう考えたってその態度、江島さんは完璧にもう真巳に落ちてるじゃないですか。
なのになのに何も言葉にはしてくれない。
真巳は江島さんの真意なんて知るよしもないですから、夜明け前に目が覚めて隣で眠る江島さんを目に焼きつけるんですよ。
もう最後だってわかっているから。
たまらんよ…なんて切ないんだ……

そしてすごく良かったなぁと思うのが、挿絵で物語の先を想像できてしまう小説とは違って、いつ何が潜んでいるのかわからないという物語展開。
ギッシリ2段構成で、丁寧に綴られた恋物語は本当に素敵でした。

小冊子で続きが読めるそうなのでどうにか手に入れられないかと画策中です。

何度も何度も、読みながら手を止めて、切なさや愛しさ、辛さにぐうううっと唸ってしまいました。

思わぬ所でこんなに素敵なお話に出会えると思いませんでした。

穏やかで、けれどえっちい年上攻めの余裕のない態度が見たい方や、切ない生い立ちにありながらも健気に真面目に優しく生きている受けが幸せになる話を読みたい方、ぜひ読んで欲しいです。

1

珈琲屋さん

2010年作。椎崎先生の過去作品おっかけで購入したのですが、やっぱり先生好きだなあと再確認したので萌2にしました。美味しい珈琲が飲みたくなるせつなさたっぷりの一冊です。本編2段組230Pほど+あとがき。

両親は亡く入院中の祖父と二人の真巳(まさみ)。昼間は工場勤務、夜は高校の夜間部に通い、合間に祖父のお見舞いという生活です。ある日、コーヒー大好きな祖父のために、美味しいと聞いた珈琲屋さんの珈琲をテイクアウトできないかと立ち寄ったところ・・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
受け祖父、駒沢(昔受け祖父に世話になったという弁護士)、桧山(受け友人)、規一(攻め元カレ)ぐらいかな。駒沢さん良かったなあ。この方のスピンオフってないのかな。

++攻め受けについて

攻めに傲慢さ俺様風味が無かった!穏やかなじっくりゆっくり包容力たっぷりという印象です。受けさんは何もなければごく普通の高校生活をおくっていたであろう子。ただ両親+義兄がもらい事故で死亡し、父が事業を傾けていたせいで家を無くし、じいちゃんとほそぼそ生活するしかなかった苦労人。高校出てないのはやっぱりキツイです。そして祖父は病で倒れちゃうし・・不憫さんです。ひねくれず忍耐強いのは、本当に凄いです。

せつないお話の正統派、王道だと思うのですが、じいちゃんの親心が私を泣かせて、駒沢さんの恋心も悲しくて、とても沁みました。一生懸命頑張ってたら、幸せになっていいんだよ、とエールを送りたいお話でした。

2

物語として面白かった

主人公の受けと家族との関係性や、受けと攻めの関係性の進み方や背景など、BL要素だけでなく面白い作品だなと思います。物語の中心となる「翠雨」という喫茶店など、世界観にまつわる物事の描写がきれいでわかりやすく、内容に浸ることができました。主人公が後半に攻めに対してヤケクソになってしまうシーンに胸を締め付けられ、その後の展開描写も切なくて印象的でした。攻め側にも受け側にも当て馬的な存在がいるのがいいスパイスだったと思います。

1

主人公の気持ちに寄り添ってしまう

9年前の作品……確かにそういう香りはします。
お話に『完全に没入!』となりきれない部分も感じるんです。
でも、それを凌駕してしまうのは、真巳の心情に寄り添ってしまわざるを得ない文章の所為。
少女の頃に戻ったごとく、素直に泣けました。
名作っていつになっても名作なんだなぁ……

交通事故で父と義母、義兄を亡くした真巳のたった1人の肉親である祖父は病院で不治の病に冒されています。父が亡くなった時、経営していた会社に借金があったため、真巳は高校を中退。働きながら夜学に通っています。食欲がなくなった祖父のために、真巳は祖父の口に合うコーヒーを探しています。友人の紹介で行った喫茶店のマスターに親切にしてもらい、また、そこの味を祖父が気に入った為、足繁く店似通う様になる、という形でお話が始まるのですが、この後、真巳を次々と不幸が襲うんですね。
失業と、それに伴う金銭的な苦慮、日を追うに従ってどんどん衰えていく祖父。そして決定的だったのは、心の支えになってもらい、いつしか恋してしまったマスターが真巳の因縁の人であり、余命幾ばくもない祖父から喫茶店に行くことを止められてしまうこと。

一部を除き、出てくる人の殆どがいい人なんですよ。
だからこそ真巳も、相手のことを考えて本当のことを言えないんです。
そして、自分を更なる苦境に追い込んでしまうのです。

「いくら何でもこの不幸は盛りすぎなんじゃないの?」と思う位だったのですけれど、椎崎さんの丁寧な語り口の妙のおかげで、いつしか真巳と一緒に、悲しくなり、絶望し、空っぽになった様な孤独感を味わってしまいました。
でも、冷静になって考えてみると、悪い時って言うのはとことん悪くなったりしますものねぇ……

真巳の祖父を恩人と慕う弁護士が当て馬の位置で登場します。
この人もとってもいい人なんですけれども、ちょっとばかり私には唐突に感じられちゃいました。
しかし、その違和感があっても、かなり満足いたしました。
これからお読みになる方は、電車とか公共の場では読まない方が良いと思います。
泣いちゃうかもしれませんので。

3

いろんな意味ではじめてのひと

帯に「好きになってはいけない人だった」って書いていたんですが、本編を暫く読み進めてなんとなくハッとさせられました。
こういう攻めと受けの複雑な関係の話は難しい立ち位置なために葛藤して、どういう結論を出すのか、そこが着目すべきポイントだと思います。
ただお互いが好き、それだけでいいじゃない。と割り切ってしまえば簡単な話です。ですが、そういう人間味の感じられない話は好きではありません。如何に受けと攻めがその問題に対面して、受け止め、解決するのかがこの物語の裏のテーマだったんではないかと感じています。そうであってほしいです。
途中まで攻めの名前が出てこないまま、むしろBLのBの文字も出てこないまま、話が進められていって、これはLOVEになるのか?と不安でたまりませんでしたが、受けが攻めの前で泣いて、バイトをするようになってから関係性が変わって、俄然読む気が沸いてきました。
攻めの友達(・・・)の規一さんが意外と良いキャラしていましたね。登場シーンが、あんなだっただけに、もっとヒールなのかと思っていましたが、そんなことはありませんでした。あと、受けの友達も、おじいちゃんとも友達のような関係らしく、性格もからっとしていて好感をもてました。
弁護士の先生の駒沢さんについても、どうせお前もそうなんだろう?とBL脳のわたしは淀みきった目で見ていたんですが、間違っていなくてほっとしました。彼には是非とも幸せになってもらいたいものです。受けの体に触れる時の描写が壊れ物を触るように繊細な手つきだったし、中断してあげたところに大人らしさを感じました。
攻めのいざ致すってことになり、我に返った受けが逃げ出そうとして引き留めるシーンが一番どきっとしました。普段やさしく振る舞っている人のスイッチが入った言動ってたまりません。
暫く受けと攻めがすれ違って会わなくなるところまでが、わたしの中で一番盛り上がりがあったように思います。その後は、とんとん拍子に進んで、最終的に丸く収まったようですが、なんとなく納得いかないというか、ちょっと背景などを考えて、あっさりしすぎな気がしたので、この評価です。

2

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP