愛に執着するあまり、心がすれ違う男たちのたどり着く結末は・・・!

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表題作HOME (新装版)

片想い相手の甥 黒田直己・18歳
弟の恋人の甥を引き取った会社員 青木篤・33歳

その他の収録作品

  • HOME 2
  • HOME others
  • あとがき

あらすじ

片思いしていた男が死んだ。篤は男が育てていた姉の子供を、彼と思い引き取って育て始める。少年は篤にまったく打ち解けなかった。
やがて子供は大学生にまで成長したが、愛した男の面影は見えなかった。
篤は自分の役目が終わったことを感じ、結婚して身を固めようとするが・・・。
書き下ろし20~30ページ!
木原音瀬、衝撃の問題作!!
(出版社より)

作品情報

作品名
HOME (新装版)
著者
木原音瀬 
イラスト
藤田貴美 
媒体
小説
出版社
蒼竜社
レーベル
Holly Novels
発売日
ISBN
9784883863891
3.9

(78)

(36)

萌々

(17)

(13)

中立

(7)

趣味じゃない

(5)

レビュー数
22
得点
294
評価数
78
平均
3.9 / 5
神率
46.2%

レビュー投稿数22

いたずらがすぎる…

期待を裏切らない、斜め上からくるオチ…、ピリっときました。いえ…、
”ぎゃーーーーーーーー!”
と叫びたくなりました。”神”でもいいのかもしれませんが、、個人的にはどうしても攻視点がほしかったな~、、と思ったので、”神”寄りの萌2とさせていただきました。

攻受どちらもヤバいひとです(笑)。キャラクターは割と木原先生の定番の印象で、、ちょっと”COLD”を彷彿とさせるところもあったりするのですが、、今回のオチは今まで読んだどの作品よりも怖かったです。”そっち行くのか…(絶句)”と。読者すら絶句させるような行為に対して、当事者は軽い悪戯をして、”ちょっとやってみたかったんだよね~”という態度なので、その温度差に震えて叫びたくなったのかもしれません。ちょっと受が不憫に見えるところがあるかもしれませんが、自分が進んで背負った重すぎる十字架に振り回されている、まさに望んで振り回されているので(たぶん)、そんなに可哀想じゃないです。

書き下ろしは10年後の二人なのですけど、まぁ第三者の視点が2人を的確にとらえてますね→”頭おかしい”と…。でも、他人がどう思おうと2人は幸せそうです。間違いとか正しいとか、常識とか非常識とか、当事者にしかわからない幸せのかたちがあるということを改めて思い知らされる、地味にパンチの効いた作品でした。

0

究極な、言わなきゃわからない説

木原さんの作者さま買いです。
昔買ったものを読み返してレビューです。

やはり薄暗さ満載。読み応えあります。続きが気になりますが一気読みは無理な作品でした。
決して、ダラダラして一気読みが無理と言うのではなく、繊細な気持ちのすれ違いや感情に、押しつぶされてと言うかなんというか。。文章も割とぎっしり。情景などダラダラではなく前後の文章でわかるような、作品。

よく振り返ると言わなきゃ気持ちは伝わらないなぁと思いますが、その究極なお話です。執着がお互いすごい。ちょっと実際に会ったら関わりたくない感じな方ですね。笑。それくらい怖い。。

やはり最後はハッピーエンドですがそれまでが本当に薄暗い。笑。

兄弟間での劣等感などがとても繊細に書かれていて、かなり共感しました。
好きになった人は自分を見ていないその切なさ。
自分も辛さを知っているのに、同じことをしてしまう人の弱さとかも細かく描かれていて胸が痛くなりました。

最後のオチがまさかの整形で、酒乱で見間違得たのではなく実際にその実らなかった初恋の彼の顔にしていたという。。なんとも切ないけど怖い。
またそれが超美形から、普通の顔にへの整形と言うものは、最後のothersで明るい学生のキラキラした世界の中でめっちゃ薄暗い怖いものが見えて、ぞぞっとしました。しかし、キラキラした世界にも普通に薄暗いものってたしかにあるわね。と共感もしました。女の子のあざとさもよく出ていてこの最後のothersも良かったです。

その後2人が幸せに執着しあって生きているのだろうと、ハッピーエンドで良かったです。

0

書き下ろし

最初はあまり惹かれない作品だったが、書き下ろしで印象ががらりと変わった。
エゴだらけの恋でも、本人達が幸せならそれでいいのかなと思えるようになった。
書き下ろしが主役視点の話ではなく、第三者の視点で進むのも予想外でびっくりした。
客観的に見ても理解できない・ありえない関係の二人なのに、それを納得させる先生の力量に感動。
最後の独白がこの作品のすべてを物語っているように思える。
とても人間らしい、素晴らしい作品だった。

1

気持ちを伝え合わな過ぎだよ

“同じ腹から生まれ、同じ容姿で、それでいてどうしてここまで違った運命を辿るのだろう”

今回も凄いですね…
「美しいこと」は主人公のもともと持っていた顔のつくりの美しさを利用し、そこから始まった恋や愛のお話。この作品では顔が瓜二つだけど正反対の性質の双子と、顔が全く違う叔父と甥の運命が描かれます。
コンプレックスを持つ人達の話で、大体の人は「整形をする」と知ってからこの作品を読むと思います。
どちらの作品も結局中身が大切で、見た目なんて中身程重要ではないという筋になるのですが、こちらはより狂気だっていてゾッとさせられます。

主人公である篤はそっくりの双子の兄 隆と正反対で、言いたい事を言えない静かで思慮深い性質。好きなようにやっていて周りから構われ好かれている隆を見て、自分より隆が愛されていると僻んでしまう篤。感情や欲するものを口に出来ない気持ちがとても共感出来て、そして自分に一番近い人間が自分よりも愛され好きな人と結ばれている辛さが痛くて痛くて、最初の30ページで読むのが辛過ぎました…。
ハッキリと区別はしても誰も表立って「隆の方が良い」とは言わない、でも感じ取ってしまう篤。初めて認めてくれた人(伊沢)が同時に否定を決定的にした事で、他の人に告白されても、30代になっても自己否定を引きずっている。
墓参りにすら同じ顔だから出ないというの、辛い…

でもそんな、特徴が余り無いような、BLにならなそうな普通でしかない人でさえ、木原さんはいつもその人だけの魅力を説得力をもって描いて愛おしく思わせてくれるしBLになるので、それを希望に読み進めました。だから彼女の本は好きですし、ネガティブな自分も救われます。

篤にした直己の暴力は本気で駄目だと思います。
もうずっと立原にしか加担出来ない。
でも篤は隆と自分を比べてずっと選ばれない人間だと決めつけて生きてきました。そんな人なので、たとえ自分に酷い暴力した相手だとしても自分だけを頼り甘えられてきたら、それに抗えないなとも思います。
とにかく篤も直己も、自分の気持ちを言わない!分かってくれと思ってるけど理解し合わない!
作中で「こんな自分、もったいぶることなんてなかった。」という言葉があるように、もっと自分の事を言わないとこれだけすれ違って幸せになるのもなれないよ!という教訓のようでした。

そして書き下ろしのお話で、凡庸である篤、激情の直己もまた普通の学生から見れば冴えない講師でしかないことが描かれるのが良いラストだと思いました。どんな激しく逸脱した人生で強烈な思いを抱えていても遠くからは見えないことにホッとする気持ちと、彼らでしか分からない狂気の秘密とで、余韻が凄い。
それでいいのかっ理解出来ん!!という気持ちに何度もなるのですが、結局は二人が良いなら外野は要らないんですよね。

0

この二人じゃなきゃこうはならなかった

終始心がジクジクして痛みを引きずっていました。
だけどそれがいい。
中毒のようにその痛めを求めてしまう。
そんな欲求にどの作品でも潤いをくれる木原先生に頭が上がりません。


今回のお話。
前半はなかなか考えが読めない直己(攻め)の姿もあって、メイン二人が幸せになるビジョンが真っ暗でなかなかに戸惑いました。

好きだった男の面影を探すばかりで直己自身を見てあげてはいなかった。
衣食住をしっかりさせても、篤(受け)は無自覚ながらも直己の心に触れ合うことはなく…直己がそう育ってしまったのも無理ない部分が感じられるからこそ直己の凶行(レ●プ)も読者としては酷い奴だと蔑みきれなくて…。

ここらの塩梅が絶妙なんですよね。
どんな奴でどんな事を仕出かそうと心から憎みきれるキャラがいない…先生のマジックとも思う。


お弁当の話は心に残りました。
男が作った弁当だとからかわれないように気を使ってこだわって。
見た目も栄養もきちんと考えていたんだろうな。
でもきっとこれが直己の好物だから多めにいれてあげようとか直己の喜んだ顔とか考えることはしていなかったんだろうな…と思うとまた痛みが…orz


しかしそれでも好きになる流れの欠片が見えてきて…あれ木原先生にしては緩やかで穏やかじゃね?と思った矢先の直己の事故…。
突然の衝撃、悪夢。
中盤早々死角からパンチぶっ込まれましたよ。

それから後はずっとずっとつらい…胸が痛いしか言っていなかったです(私が)

両想いなはずなのにうまく噛み合えない。
根本的に合わないところは確かに存在していて…それを覆す術をもたずともそれでも好きが消えずに光見えぬところでもがいている姿に胸が締め付けられました。

直己と篤。この二人じゃなければこんなことにはならなかっただろうな…というありきたりさを感じさせない展開……たくさんの人に読んでほしいです。

終盤は眉間の皺が取れてきて良かったです。ホッ。

0

そうきたか!

木原先生にハマり、立て続けに数作読みました。その中でも1位2位を争うのではないかというほど、驚愕に次ぐ驚愕…
主役の2人もかなり歪んでいて、何度も「ひーーッ」と読みながら叫びました。ほんとに。
攻めの直己が可愛らしくいじらしい姿を見せても「いやいや、ほんまはなんか裏があるんじゃないの?」とつい疑ってしまう。なんか薄ら怖い。篤に愛されたいが故の行動がぜんぶ怖い。

はっきり言って「ときめきたい」人は読むお話ではありません。そんな生半可な気持ちで読むと痛い目に遭います。ほんとに。
だけど、とにかく面白い!そう、面白いんです!
展開がまるで読めないし、私たちの持つ「BLってこうだよね〜」みたいな馴れ合いを全て蹴り飛ばしてくれる。新鮮な驚きが絶対にある。
なんだか、BLとしての新しい在り方を見せられたような気がします……

木原先生は、ほんとに天才だと思いました。

0

成長のない人たち

だけど、世の中成長できる人達ばかりじゃない。とあとがきを読んで、確かにその通りだ。と、深く納得しました。


事故が、事故さえ無かったらなぁ〜
なんて思ってしまうけど、それが無ければ話も進まないから仕方ない。

途中で本人も気付いてたけど、篤が一度は反省?してたはずの直己への接し方と同じ事を繰り返しているっていう腹立ち( -᷄◞ω◟-᷅ )

何をやってるんだい!って言ってやりたい…。

直己の篤への想いは、いじらしいを通り越して痛ましかったですよ˚‧º·(˚ ˃̣̣̥᷄⌓˂̣̣̥᷅ )‧º·˚
辛い事たくさんあったけど、それでも最後が幸せそうで本当に良かった。。

0

二人の強い執着が羨ましい

篤と直己は、気持ちが伝わらなくても傷ついても、相手へ執着し続けます。
直己は篤を振り向かせるために無理やり体をつなげたり、果ては篤が昔好きだった男の顔に整形してしまいます。篤は直己に食べてもらえない食事を作り続けたり、喪失感から逃避するためにアル中になってしまい…。

そういう「好き」にはゾッとしながらも、強い執着を羨ましく感じます。
特に篤が、なぜ直己を諦められないのか、なぜ自分は悲しいのかと、自問し葛藤する描写にはとても共感しますし、そういう生き方は真面目で不器用だけれど、とても好ましく思いました。過去の恋に執着して直己を引き取らなければ、直己を好きになることも過去に決別することもなかったでしょう。
直己の振る舞いは乱暴ですが、それは篤にもっと自分を見てほしい、愛してほしいという叫びであり、直己にそうさせてしまったのは篤だったのですね。過去の想い人の面影を直己に求めて、直己自身に関心を向けてこなかったから。引き取られた理由を知り悔し涙を流す姿は、小さな子どものようで、可哀そうでかわいい。ハンストしたり、「あんたのココロが欲しいな」と言う直己もいじらしくて。
互いに強く執着するからこその二人の苦しみや無様な姿が、とても愛おしいと思いました。
恋愛において執着は甘く苦いエッセンスなのかもしれません。強くなればなるほど、より甘くより苦くなる…。

HOME2の最後で、篤は直己に「帰っておいで」と言います。篤は直己のHOMEになるためにどのように変わったのか?具体的なエピソードを読んでみたいと思いました。厳しく叱るとか、どうしてダメなの?と踏み込むようになったのかしら。本編とはうって変わってほのぼのとした話になる気がします。
書下ろしのothersでも直己の毒舌ぶりは相変わらずですが、生徒の前でゲラゲラ笑ったり、整形したのは好きな男のためだと話したり、だいぶくだけた感じがします。でも元の顔には戻していないところに、篤への「ずっと自分を好きでいてほしい」という強い執着が垣間見えて、やっぱり直己だなと笑ってしまいました。

2

愛情の表現って難しい

こちらのお話、めっちゃ好きです。木原音瀬さんの痛々しいまでのパンチの効いた話が読むのをやめられなくしてしまう。すっごく単純な「好き」っていう気持ちを自分で気づいたり、伝えたり、分かったりするのにどうしてこんなにも傷ついて傷ついてお互いをここまで落としてしまうのか…人間の良くも悪くもの内面がよく描かれた作品で旧作も手元にありましたが新装版が出版されるにあたり改めて購入しました。その後の2人が気になっていたので、書下ろしが読めたことが嬉しかったです。

3

凄いということと、好きだということ

木原さんの作品とは相性が悪い。
読む作品読む作品、筆力には脱帽しながらも
肌に合わないというか、好きじゃないというか……
でもコミカライズをきっかけに一気読みした「吸血鬼と愉快な仲間達」が良くて
じゃあ、久しぶりに何か読んでみようかと手に取ったのが、本作。

好きな藤田貴美さんの挿絵。
表紙の淡い色合いを見ながら、イヤ、こんなはずないでしょ?と読み始めたのだが
こんなはずないどころか、ほのぼのしたタイトルと表紙とは真反対の作品でした。
油断させられて突き落とされる的な?衝撃的なある意味木原さんの凄さ全開の作品。
ああ……

               + +

一卵性双生児の篤は、親や世間の顔色を見ながらビクビク生きている。
そんな自分をちゃんと見てくれたと感じた相手に恋をするが、
彼は、同じ顔だが性格は対照的なの双子の片割れと恋人同士になってしまう。
諦め切れず気持ちの折り合いをつけられずに過ごす日々、
そんな時事故で二人が一度に亡くなり、
彼らが育てていた恋する人の甥・直己を引き取って育てることにする。
年月が過ぎ、子どもだった直己が高校を卒業する年齢になったところから
物語は始まる。

愛を求めて暴力的な行動に走る、寡黙な直己と
相変わらず顔色をうかがって生きる篤。
恋した相手の面影を求めて引き取った故に、
ちゃんと生身の直己に向かい合わず年月が過ぎ、
一つ屋根の下で暮らしながら、様々なボタンが掛け違っていく二人。

一途というか自己中心的な直己の愛は、ある意味ホラーだが、
本当にどうしようもないのは、更に自己中心的で自己完結している篤。
そういう意味では究極の似たものカップルなのだと思うし、
これからも強固な閉じたHOMEの中で生きていくのだろう。


お互いにそれで幸せならば、傍からは何も申せませんが、
正直、私は見たくないというか、見せられたくないというか……
だからこそ、閉じた輪の中から篤を救おうとして力及ばなかった立原に
いたく同情してしまうのだった。

               + +

人の幸せや愛の形なんて、本当に様々で、それを評価する権利なんて誰にもない、
分かっていてもモノ申したくなる、そんな自分の中の驕りや偏見に満ちた思いが
あぶり出される気分が不快なのかもしれない、と、思いながら本を閉じる。
それをあぶり出す木原さんの筆は凄いと思うが、
好きと思えるかどうかは、全然別の問題なのだといういつもの結論。

3

愛されたがりの二人

木原先生の作品を読むのはこれが3冊目です。
読むたび、すごいなあ…と思います。
何がすごいって、こんな2人がくっつくのか?とか、
こんな最悪な状況からどうやってBがLする展開になるんだ?っていう
無理としか思えない状況から、男たちが愛しあう結末までもっていくところ。
特にすごいのがその展開が全然無理矢理じゃないところ。
心理描写が卓越。展開や結末に納得させられてしまう。


受けの篤は、想い人が自分の双子の弟のものになってしまっても尚、彼を諦めきれなかった。
その想いのあまりに、彼が亡くなってしまった後、彼の育てていた子供・直己を引き取る。
引き取った理由が、好きだった人と遺伝子が近かった、いつか成長して似ればいいと思ったから。
ご飯を作ったり衣服を用意したり生活の世話はするけど、「植物を育てるように子供を育てただけだ」とは言い得て妙。
直己から懐かれている感じはしないし(本当は違うんですけど)、共に暮らしているのに会話はほとんどなく、家族らしさもない。
引き取った理由が理由だしなあ…と思いましたが、毎日3食用意して、学校行事に会社を休んで参加して、叱るときに手をあげたこともないっていうのは、素直に偉いことだと感じました。
自分の子でさえ、育児放棄したり暴力をふるってしまったりする人もいるのに。
篤は、直己が好きだった人に似るんじゃないかと期待していた育てていたんでしょうけど、それだけじゃなく、好きだった人に似た人からではなくとも誰かに愛されたかったからという理由もあるように思いました。
直己からの見返りがないのにこれだけ献身的になれるのって、それでも、どうしても見返り=愛を求め続けたからじゃないのかな。
でも直己も愛されたい側の人間なんですよね。
「自分が存在している価値が見つけられなくて苦しかった」という言葉が切ない。篤も同じものをずっと抱えてて、似た者同士だなあと思いました。
双子の弟と比べると素っ気ない印象を与える篤だけど、本当は寂しがりで優しい。
普段は無口で仏頂面だけど、素直になった直己はとてもいじらしい。

篤も直己も本当に不器用で、どちらかが、あるいは両方が酷い目に遭うというきっかけがないと感情を伝えられない、素直になれない。(強姦やらハンストやら事故など…)
篤の友人・立原の方がよっぽど二人を理解している。

私は、割れ鍋に綴じ蓋的な関係のBLが大好物なのですが、この二人はまったくの逆で立原が言うように『合わない』。「ほかに行くところがない。あんたのところしか帰る家がないんだ」と直己は言うけど、『帰れる居場所』に篤はなれているのか正直疑問。傷つけあわなければ正直な感情を吐露できない。一緒にいて、お互い高めあったり成長していける関係じゃない。なのに、すごく萌えてしまった…。

HOME2で、自分が身代わりに引き取られた事実を知って篤を憎むようになった直己だけど、やっぱり憎み切れなかった。愛せなくなんてならなかった。愛して、愛されたくて整形までした。
異常とみるか、究極の愛とみるか。

やっと好きと伝えられて良かった…!と思った矢先HOME2でどん底まで重苦しい現実を見せられて、しんどい…と辛くなりましたが、ラストでとりあえず落ち着いたので良かったです。othersで二人が社会的な生活をちゃんと送れているんだとわかって、ほっとしました。
この二人が一緒にいることは最良ではないのかもしれないけれど、篤は直己じゃないとだめだし、直己も篤じゃないとだめなんだなあ…と。
愛は、相性の悪さも乗り越えるものなんですかね。
好きだとか愛してるだとか語り合う話よりも、こう、どんなことがあっても傍目には狂気としか見えなくても、互いを強く求めあう話が自分の萌えなのかなと思いました。いや、どうなんだろう。萌えって難しい。


初レビューでした。お目汚し失礼しました。
自分で文章を書いてみるとその難しさから、木原先生および作家の方々の凄さを改めて実感します…。

5

他人にどう思われても、二人はこれが幸せというなら

「HOME」 木原音瀬先生 読了
つい夜ふかしして一気に読み終えてしまいました。これは…涙腺崩壊するやつだ!読み終えて、ストーリーの内容を振りかえすと、タイトルの意味がさらに切なく思える。
篤はおそらく直己が自分とどこか似ていると思って、その彼に惹かれているんだろうね。二人ともこの世の全ての人に捨てられ、否定されてきた自分を、唯一に認めてくれた人を好きになった。しかしそれも告げることができず、長い年月にその苦しい片思いを抱いて生きてきた。
篤の場合は結局好きな人は昔っから自分と比べされてきた双子の弟と付き合うことになり、さらに一緒に事故で死んだ。死んでも二人は永遠にいることに羨んで、悔しくて悔しくて、弟に代わりたいとでも思う篤を見ていて涙が止まらなかった。木原先生が書いた片思いはいつもとてつもなくリアルで、胸に刺さる。
小説を書くこととは、言葉の羅列で、ストーリーを組み立てることだと思う。なんの難しい言葉も使っていないのに、木原先生の文章はなぜかすごく心に響く。やっぱり文章力がすごすぎる!しかも木原作品ではBLによくある「キラキラ設定」はあまりなく、逆に普通な一般人がけっこう出てくるので、読んでいて「世の中ではきっとこのような人間が生きているんだな…」と思ってしまう。現実味が帯びている一方、これこそ人生だ!とまた違う意味で楽しめる。むしろ木原作品は、ボーイズラブがメインではなく、ボーイズラブを手段として世の中の平凡な人々の生活を描いていると思う。
直己目線も読みたかったが、定番(?)の第三者目線が読めて大満足でした。あの形ではありますが、なんとかお二人が幸せになってくれてほんとに良かった。まぁ衝撃な終わり方なので中々消化できず、しばらくこの余韻が抜けないと思うけど(笑)。
今回も素敵な作品、ありがとうございました!

5

HOMEとは居場所のこと (。・_・。ゞ

「HOME」というほんわか温かみのあるタイトルや、淡い色調の表紙イラストからは、優しいイメージしかなく、どんな衝撃的展開が待ち受けているのか、興味津々で本書を手に取りました。

目次
HOME(篤視点)
HOME2(篤視点)
otheres(大学生の裕太視点)

とても面白かったです。この作品も、私のお気に入りの一冊となりました。毎回思うのですが、木原先生の作品には先の展開が読めない面白さがあります。一体このあとどんな展開が訪れるの?BLとしてこの展開はあり?もしやバッドエンドか?などドキドキハラハラしながら読み進めるのが楽しくて楽しくて…時を忘れて読み耽ってしまいます。

「HOME」のあらすじ
青木篤(受)には忘れられない初恋の男がいました。その男は篤(受)の双子の弟と恋人同士になり、2人とも交通事故で他界。篤(受)は、男の甥で遺児の黒田直己(攻)を引き取り育てることを決意。8年が経ち、篤(受)33歳、直己(攻)18歳になったある日、篤(受)は母が勧める見合い写真を持ち帰ります。その見合い写真を偶然見ることになった直己(攻)は逆上し…。

衝撃的な展開が幾つかありました。
まず、養い親の篤(受)が、養い子の直己(攻)に無理やり襲われるシーン。とはいえ恋愛ものとしては割と王道(苦手な方はご注意を)。

次に、上記のことがあってから篤(受)が直己(攻)を怖がり、ひたすら避け、逃げ回り、恐怖に怯えるシーン。私がこれまで読んだ恋愛小説の中で、これ程まで相手を恐れ戦く主人公っていませんでした。大抵は相手を毛嫌いしながらもなんとなく意識し、だんだん惹かれていくパターンが多く、篤(受)のように震えあがりビクつく主人公は、ある意味斬新。

そして直己(攻)がバイク事故を起こし、死の淵を彷徨いながらも生還するシーン。この事故をきっかけにようやく本当の自分の気持ちに気づく篤(受)。母親にも「恋人は直己(攻)」だときっぱり宣言。明るい未来が開けそうと思った矢先、直己(攻)は障害が残ることを憂い、飛び降り自殺を図ろうとします。でも篤(受)はそうはさせまいと必死で止めます。愛の告白をし、生きて欲しいと伝え、最後こんな言葉で語りかけるのです。

「早く元気になって、家に帰ろう。一緒に帰ろう」
「家に帰ろう」は、正にタイトルの「HOME」。心に沁みました。



「HOME2」のあらすじ
「HOME」の続編。バイク事故で、左目と左耳と左足に障害を負った恋人・直己(攻)。めでたく退院出来たものの引きこもり気味。篤(受)はなんとか外の世界に連れ出そうと、週末ごとに直己(攻)をドライブに誘うものの、乗り気ではないと分かり…不機嫌な恋人を持て余していた篤(受)に、突然の直己(攻)の別居宣言。寂しがりの篤(受)はアルコールに救いを求め始め…。

こちらの続編も衝撃的でした。前半は、重苦しい閉塞感の中で私たち読者は我慢を強いられます。後半は篤(受)の思わぬ失言から、篤(受)の過去の想い人が直己(攻)の叔父であったことを直己(攻)に知られてしまいます。

「悔しいよ。どうして叔父さんに似なかったんだろうって、そう思う自分が悔しい…。結局、あんたはどこまでも『俺』を否定するんだ」
これは直己(攻)のセリフですが、重みのある言葉です。直己(攻)も篤(受)と同じ寂しがり屋でした。きっと篤(受)に引き取られた当初から、自分という存在を認め、肯定して欲しいと心ひそかに願っていたのでしょう。

直己(攻)は家を去る際、こんな捨て台詞を残していきます。
「俺はもう何の迷いもなく、あんたを思う存分憎いって思うことができる」
愛と憎しみは表裏一体。恐らく直己(攻)は、自分が篤(受)を愛するのと同じ分量の愛を貰えていないと感じ、憎むことによって篤(受)を忘れたかったのかもしれません。

二人ともとても不器用。似た者同士が恋をして空回りして弾けてしまった。でも心の中では今でもお互い相手を想って苦しんでいます。篤(受)は直己(攻)を失った寂しさをアルコールに求め、その間、直己(攻)は顔の整形手術を繰り返していたのかな。

そう…直己(攻)は篤(受)の想い人と同じ顔に作り変えていました。ショックでした。そこまでする人なんてなかなかおりません。いや皆無でしょう。でも、だからこそ「究極の愛」を感じました。

「いじらしさに胸が詰まった。直己(攻)はおかしい。考え方も、やり方もおかしい。それでも自分を好きだと言う気持ちは痛いほどわかる。わかるから…切なくなる」
ホント!切ない!!一言相談してくれれば良かったのに…!


「otheres」のあらすじ
裕太はN大学フットボール観戦会のサークルメンバー。同じサークルの女子に恋心を抱いています。その女子が「黒田先生がタイプ」だと聞き、濃い色の眼鏡をかけ、左足を引きずって歩く背の高い男を思い浮かべ…。

10年程、後のお話です。裕太という、N大学に通う学生の視点で物語が進行します。ここで「黒田先生」の面白いエピソードが語られるのです。それは「黒田」は女と経験がなく、裏で「妖精さん」と呼ばれているということ。もう一つは、男前だった顔を、整形で前よりも悪くしてしまったということ。

この二つの情報はとても貴重で、楽しく読ませて頂きました。女と経験がないと言うことは、直己(攻)の最初の相手は篤(受)だったことになります。直己(攻)は篤(受)一筋だったのだと分かるエピソード。嬉しかったです。

もう一つは、男前だった顔をそれよりも悪くしたのに、「俺もこの顔は気に入ってるんだよ」と笑って言える直己(攻)。直己(攻)は一般人の感覚から相当ずれている。でも人に迷惑をかけるわけじゃなし。それで当人が幸せなら、私は良いなと思いました。

8

所々に散りばめられた育て子(攻)の狂気と、衝撃の展開。

想いを寄せる男の甥を育てる受様のお話です。
余談ですがこういう設定大好きです。

読み進めて思ったのは、直己(攻)と篤(受)は似通った部分があるのかなーと。想いを秘め過ぎて、器用な表現がまるでできていなくて、長い時間をかけてふたりはこの結末へと動かされていったような…。

序盤、篤が直己に対して度々恐怖するシーンですが、私も読んでてリアルに何度かブルッてなりました。後ろから抱き締めてきたり、ニヤリとするシーンとかに直己の狂気やらが垣間見えてて、すごく引き込まれました。

読了後は、無意識に何度もため息が出ました。是非、未読の方には予備知識を仕入れずに読んでいただきたいなと思います。

7

篤、逃げてー!超逃げてー!!

最近の木原作品を読んでからだったので、こういうものをベースに今の作品が出来上がったのかと感慨深いものがありました。

正直、今の作品に比ると小品といった印象で、展開もいつものパターンです。この追うもの・追われるものの立場逆転パターンは、木原作品ではもうお約束なのでしょうか。

ずっと好きだった人に双子の兄(?)と付き合っていると聞かされた時に、篤の心は一度壊れてしまっていたのかもしれません。
その辺のエピソードは篤がかわいそうで、伊沢と隆に憎しみを覚えました。いくら篤がおとなしくて自己表現できないと言っても、隆が無神経すぎる。生まれた時から側にいる相手の気持ちもわからないなんて、人の気持ちをほんとに考えない子なんだな、と引きました。でも、周囲はみんな隆を評価するんですよね。なのでますます自己表現できなくなる悪循環。かわいそう。この双子カプの対比は、リア充vsぼっちみたいで篤が不憫すぎました。
で、この不憫な篤にはぜひ幸せになってほしいと思うのですが、これまたヤンデレ攻にほれ込まれてあえなく引きずり込まれてしまうのです。
直己(攻)の性格がかなりやばく、何考えているのかわからないあたりはヤンデレなのかサイコホラーなのかもはやわかりません。
篤も最初は抵抗するのですが、もともとメンタル耐性低いのに打撃が重なり、弱ったところを浸食されてしまうのです。これまた可哀相。

唯一篤を救おうとしてくれるのが友人・立原です。
ほんとにまっとうないい友人で、篤が変な方向に行かないように一生懸命頑張ってくれるのですが、差し伸べた手をことごとく篤自身に裏切られていくという報われないお方でした。どんどん深みにはまっていく親友の姿を見守るのは辛かっただろうなと思います。
メンタル弱かった子が自ら沼に飲み込まれてゆくのを助けられないもどかしさ。読んでいて、「なんでこれ立原とくっつけてあげないんだろう…」と木原さんの鬼っぷりにガクブルでした。

後日談「other」では、二人の仲の良い様子も見られるものの、やっぱり直己は性格破綻したままで、「篤、これでほんとによかったのか?」と心配が拭えなかったです。

4

夏に読みたい

夏の夜に読みたい、ちょっと怖い話。

人間って、言葉を介さないとなにも伝わらない。
どんなに愛していても、どんなに憎んでいても、
自分の心の中で思っているだけでは、
それは、何もないのと同じ事。

お互い、自分自身の心の中で思っているだけで、全く言葉にしなかったために、無駄にすれ違うお話。
木原作品って、意思の疎通、意志の不通で、勝手に自分を不幸に追い込むパターンが多い気がする。
だから、主人公がどんなに自分が不幸だと嘆こうと、それは自業自得でしょって、
それに、最後はちゃんと、どんな形であれ「分かちがたい番」に落ち着いて、本人達は納得して一緒に暮らすようになるので、途中がどんなに痛くても平気で読めるのよね。

4

こんなはずじゃなかった……!!!


読了したあと無意識に呟いてしまっていました…。ほんとに何が起きたか理解できなかった…これはわたしの認識が間違っているんじゃないかとラストは何回もページを戻らせたほどです。

歪んでる。
人生の狂い方が尋常じゃない。
篤と直己の思いの交錯が心千切れんばかりに伝わってきて、痛くて、重くて苦しくて切なくていろんな感情が芽生えました…
何でそうなっちゃったの……

もっと幸せになれる方法はなかったのか…
切ない切ないBLが大好きなわたしでも、2人のハッピーエンドを望んだほどです。2人にとっては最高の結末なのかもしれないけれど、第三者からしたらその歪んだ愛の気持ち悪さといったらない…

しかしそれがいい。木原先生しかできないだろうこのあり得ないストーリー展開!先が全く予想できないのはいつものことですが、これほどまでに濃い作品があるでしょうか。

最初の強姦まがいのことから始まり、事故、川に落ちたりアル中になったり…ほんと詰め込みすぎですって…
読んでいて苦しくて苦しくてたまらなかったです。整形。まさかとは思いましたけど。そんな形に行き着いてしまうなんて。


この本に出会えてよかったと思うのと同時に、この本を超える、何物にも言い表し難いこの感情を、味わわせる作品が他にあるでしょうか?!三日寝込みたいほどに辛いです、今。


そして功労賞を与えたいです立原。彼は本当に最後までいい人なんだから…!逆に彼が歪んでしまうんじゃないかと思うとハラハラしました。彼には幸せになって欲しい……!!

9

な・なんでこうなっちゃうのだろう・・・

最後まで衝撃を受けっぱなしでした。
イタタタタ・・・。でも甘い。読み終わった後は呆然とするのみ。魂の抜け殻。
只今 心臓が尋常ではない速さで打っております。高速ドキドキが止まりません。
(普段よりも脈数がものすごい速い数となっています)死にそう。
木原先生独特の感性な世界をたっぷり浸ることが堪能出来るニクイ作品です。

愛する人の為にアナタは自分の顔を整形できますか?

怖いです。主人公二人のドウシヨウモナイすれ違いが生んだ悲劇作です。片方が一方的に悪い訳では決してありません。どっちもどっちな鈍い二人なのです。お互い相手を想う愛の気持ちが強すぎて それに繋がるもどかしい行動が やがてゾワゾワと背筋が凍っていく愛の為への整形へと繋がって行きます。
『家族』がこの作品のキーワードです。主人公二人が欲しくて堪らなかったもの。
題名の『HOME』とは何か? 家族の繋がりなのか それとも恋人の繋がりなのか。
執着愛がもたらす愛の儀式なのだろうか。
最後はハッピーエンドなんだけど 二人は幸せなんだけど 埋められない何かがきっとまだこの先の二人には有る様な気がしてなりません。
それほどまでにこの作品 衝撃が襲います。
ホラーがお好きな方にぜひ!お勧めです。




5

言葉もなく…

言葉もなく分かりあい、理解しあうのは至難なんですよね…とにかくこの2人互いに言葉が少ないし、不器用すぎて2人は愛を知らなすぎる。上手くいかないんですよホントに。直己が何を考えてるのかわからなくて悩む篤。そして、父の劣等感に苛まれて苦しむ直己。2人とも耐えがたい悲しみを背負っています。

互いに知らぬ間に傷つき、傷つけられて気付かない。想いも届かない。
木原さんの作品ってほぼそうなんですが「キタキター」っておもったら見事に突き落とされるんですよね。そのスリル感がいつもたまらないですw
今回も、何年も一緒に暮らしてきてやっとこさ2人に光が見えたと思ったのに一瞬にして光が閉ざされました。互いにまた闇に陥って、また海の底でもがく。何度も同じ過ちを繰り返す。読み手としても息ができないくらい苦しくて切なくてじれったくて…なんとも言えない衝動に駆られました。

最後に直己が選んだ道…すさまじかった。理解しがたい、でもそれが直己が選んだ道であり、篤を想ってのこと。

ラストの番外編あってよかったです。ホントにホントに救われたし、2人らしい生活が垣間見えて安心。

6

直巳の切なくもいじらしい愛の形

 この作品を買う前、いろいろレビューを見てどんなものかと思っていたけど、読み終わって直巳がいい!
 もう切ない、いじらしい、収まるところに収まってよかったねって感じだった。
 途中もう出口のないところをぐるぐるしている時は、苦しくて息がつまって辛かったけど、アルコール中毒に主人公がなったような感じの時に直巳があらわれるところからもう、ああやっと二人に希望の光らしいものが見えたねと思い、キュンキュンした。
 最後の直巳の働く大学の生徒の視点で書かれた作品は、二人のその後が見られてよかった。
 ちゃんと社会の中で生きている直巳に安心した。
 この作品も読後、自分が浮上するのに苦労した。
 ズシっとした作品を木原先生は本当にうまい。落ちるとこまで落ちた後、最後の方の浮上感、今回も脳内麻薬が出っぱなしだった。

7

糖分補給に向かないどころか、糖分を奪われかねない話

萌萌。(MAX:萌萌萌:神に近い)
施設行きになるはずの子供を、好きな男の甥だからという理由だけで引き取った主人公。
BLではさほど珍しくないそんな材料も、作り手が変わればこうも腹にもたれる一品となるのだなと妙な感心をしてしまった1冊。
少しずつ食い違った思いが縺れ、やがて歪な愛を編み出してしまう。
ホラーというか一種の悲劇なのですが、この本はBLだと思わずにむしろ一般の小説を読むぞ~という心構えでいた方が、素直にその面白さを味わえるかもしれません。

登場するのほぼ3人。
好きな男の甥を引き取り育てている篤と、篤に引き取られた直己、そして友人の篤を心配する立原。
コンプレックスがあったり、やや屈折していたりするけど、特にこれといっておかしな人達ではありません。
ただ共通しているのは、3人とも自分の思いに少し固執しすぎていることでしょうか。それぞれの思いが独りよがりなんですよね。
何がいけなかったのか、どこで間違ってしまったのか。誰かが特別悪いわけではないけれど、せめてこうしていれば…と観客の読者は思わずにいられないのです。
本当にもどかしい。

篤と直己は、立原が言う通り合わないのだと思う。
性格や価値観が違うから合わないのではなくて、愛されたがりというベクトルが同じだからこその噛み合わなさ。
自分を認めて愛して欲しいという欲求が強い二人は、手を伸ばされることを待つばかりで、自分から手を伸ばすのは下手っぴな似た者同士です。これまでの人生で望んだ愛を得た経験がないから、愛し方が全く分からない。
そりゃあ上手くいかないよ。

なのになぜこんなにも執着し合うのかと考えた時に思い浮かぶのは、タイトルの「HOME」という言葉です。
HOMEというのはいつでも帰れる場所、いわば心の拠り所を指しているのだと思う。言い換えれば、アイデンティティを支える土台のようなもの。
それは惜しみなく注がれる愛情であったり、自分を肯定して受け入れてくれる場所のことであったり。たいていは家族の存在がその役割を果たしてくれるのです。
でも、二人には家族がいても、そういう意味でのHOMEはありません。

同じ容姿でありながら、友人も親も好きになった人ですら自分よりも双子の弟を好きになる。そのことに傷付き続けた篤は、根深い劣等感を抱き続けています。
比べられたくないと思いながらも、反面、誰よりも弟と比較してなお自分を選んでもらえることにこだわっているのが透けて見える。
その空虚の中にするっと入り込んできたのが、直己という「弟よりも自分を選んでくれる存在」なんだろう。
だからこそ、いくら他人に好意を寄せられようと友人に合わない相手だと言われようと篤は、自分にとって直己は特別でたった一人の存在なのだと執着するのかもしれません。

そして直己にとってもまた、篤はたった一人の存在。
篤のように自分を選んでくれたからという理由ではなくて、単純に、直己にとっての家族のような存在が篤しか残らなかったからじゃないかな。(直己視点がないので勝手な推測ですが)

要するに、篤と直己の人生にはお互いしかいなかったという点で、これまた合致するのですね。
この二人の互いへの執着は、他の作品と比べて恋に浮かされている熱度が(私的に)感じられないのですが、恋情の果ての執着というよりも、自分の居場所を求める切実さが勝っているように感じたからかもしれません。
結末だけを取り上げるならホラーじみた壮絶な執着ものなのですが、その根底にあるのは、群れからはじかれた寂しい者同士がどうにかして寄り添おうとする痛ましくも健気な話に思えました。
他者からどれだけ歪な執着に見えようとも、そりゃ手放せるわけがない。
自分にとってたったひとつのHOMEだもんなぁ…。

担当さんに「二人の関係にダメ押ししましたね」と言わしめた書き下ろしは、怖いような切ないようなほっとしたような、何とも言えない後味でした。結構好き。

他の絶版ものも、ぜひぜひぜひぜひ新装版で出して下さい。

10

木原さんは心のホラーのスペシャリストだと思う

やっと、絶版だった作品が新装版で出て嬉しいーー!!
そして、何と旧版になかったラストその後の二人の様子が第三者を主人公にして語られる『others』が入っているのです。
新装版の醍醐味は、こうしたその後が入っていることですよね。
多分、旧版のままのラストでもきっと二人の未来は予想できるものだったかもしれませんが、それを裏付ける、不器用なままだけど、きちんと心が通じ合っている幸せな二人を見ることができて、本当ほっとさせられました。

しかし、正直怖かったです!!
そしてとても痛かった。
とてもとても切なくて、涙がボロボロ、、主人公・篤と自分が同化してしまい身を切られるようなひと時を体験しました!!
木原作品なんだから当たり前なんだけど、コールドシリーズとかその他の痛い作品の色んな痛い要素が詰めあわされたような・・・
だから余計にうちのめされちゃうんですね。

この篤と直己、何となく似た人なんです。
欲しいモノを欲しいといえずに、不器用な事をしてしまう。
ボタンの掛け違いではなくて、歯車の噛み合いがうまくいかなくて
相手の気持ちが通じたと思えばすぐにすれ違い、
追いつかない追いかけっこをしているような~
それは、本当は愛とぬくもりが欲しいのに素直に言えない、
その気持ちを自分の中に抑圧してためてしまう、
どうやって表現したらいいのかわからない。
だから傷つけあってしまう。

それは、直己の生い立ち、
篤の双子の弟と、本当は片想いをしていた弟の恋人へのふっきれなかった想いのせいでもあるのですが。
それがあるから、それを何年も抱えたまま過ごしてしまったから溝をいつまでも埋めることができずにすれ違ってしまうのです。
二人とも真面目で不器用過ぎる!
篤の友人・立原が篤の為に良かれと思ってすることは、彼の正義だ。
それは篤を救いもするけれど、ある時は篤も直己をも傷つけて苦しめ、そのすれ違いを深くする。
彼の言った言葉で、直己が傷付き、篤が壊れかかってしまうが、立原は決して悪くはないのです。
彼の言動は、ある程度の常識人のする当たり前のことだと思う。

人が人を追い詰めて、壊れてしまう様は、
その生立ちやトラウマがあるにしろ、一番怖いものだと思う。
木原さんは、こうした心のホラーを最上級の表現で魅せる人だと思う。
でなければ、こんなに痛く、苦しくなるはずがない!
本当、復刊してくれてよかった、ありがとうと言いたいです。

12

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