イラスト入り
攻めが14歳年上の元痴漢男(笑)って凄いですよね。
助けた男性とかではないですから。
BLらしいご都合惹かれはなく、弱みをちらつかせ金だったり居場所だったり都合よく攻めを使い始める受けがいます。
どう考えても問題しかなさそうな組み合わせなのですが、目が離せないんですよね。
相手の容姿とかスペックとかそこまで重視されず、惚れてしまった心には自分自身ですら打ち負かせないどうしようもない感が見え隠れしているところが好きです。
木原先生の作品では惚れた相手が完璧には程遠くても好きで好きでたまらずもがく男たちがたくさん見れるので病み付きになります。
今回も最高の男に出会えました。大宮の元恋人、千博です。
もう好きしかない。
ずっとずっと彼のターンでいてほしかった(笑)
その後のスピンオフ切望しちゃうくらい。
我儘で自分勝手で自分の浮気はオールオッケーでも相手には絶対許さない。
冷めた空気が流れ始めていたのに、大宮が別れを切り出してからもう大変。
病的な執着、乱れようにドン引きしつつも美しい男の脆い部分を見るのが大好きな私はゾクゾクきてしまいました。
千博主人公の作品だったらきっと神評価にしてた(笑)
お話としてもメイン二人の出会いから落ち着くところまでたっぷりじっくり読めるので大満足です!!
「僕はあの子以外の誰にもそんな、気持ちを壊されそうになるほど強い感情を持ったことはない。あの子だったら、あの子とだったら……もうどうなってもいいと……」
「わがままばかりで、いい加減で、口が悪い乱暴者で、人を脅すような性悪で……それでも君を愛してる。大事な仕事を放り出しても、首になっても、何を引き換えにしても欲しいと思うほど……」
歳の差のお話だと、年若い方がおぼこかったり、美しくてそっけなかったり、歳上が翻弄されたりするのがやはり典型的な面白い部分だと思いますが、この作品はそれ以上に運命的で特別でその人しか考えられない夢中さがひたすら甘くて可愛かったです。
歳下の北澤は中学生の時に痴漢に会い、犯人の大宮を突き止めます。お金をせびり、大宮の好意を利用して塾通いをサボる際の居場所を確保します。まず痴漢をしてしまった大宮には強い嫌悪感を抱く(「箱の中」を先に読めば、特に)のですが、それでもこの北澤の悪どいせびりはやり過ぎ感否めません。
そして北澤を嫌な奴と判断しそうなところで、親が離婚し自分が要らない存在なのだと聞かされ、彼に少し同情的になるのです。親に必要とされない寂しい心を埋める大宮の存在を、自分の好きなようにあしらいつつ(生臭いのは嫌いだからキスだけ)、好きなように愛を確認し、手離せない中学生の北澤が可愛かった。
大宮は堅実で地味な印象な男ですが、北澤に振り回され職を無くし宮崎まで車で走らされ、結局振られて(と思った)、5年後に突然再会し思いが通じればとにかく夢中で突っ走ります。コンビニであからさまなお泊りセットを店員の目も憚らず買い、彼のアパートに走るのがとにかく可愛い。その様がとにかく羨ましいくらいで。
この作品はとにかく台詞がどれも素晴らしいのですが、上記の台詞にあるように自分を破滅させる程の恋の相手に出会うって、なんだか久々に羨ましく感じちゃいました。
この作品では登場人物が一人として完璧な可哀想で同情を買う存在にならないよう、多少の残酷さも含めて配慮されています。
大宮と同棲していた千博は浮気性で奔放、高慢な男で、大宮が北澤と再会し別れる気でいると知ると自暴自棄になり、脅迫を繰り返し自殺まで図ります。もし彼がここまで激しい存在にならなければ、付き合っている人が運命の恋に出逢ってしまい別れなければいけない可哀想な存在になると思います。しかし千博にもセーフティネット(というとひどいですが)高野が張られていて良かった。
私はデザイナーも書店員もほんの少し関わったことがあるので、デザイナーの孤独で誇りある仕事も、書店員の社会性ある仕事どちらも理解できます。なので千博が大宮の仕事を馬鹿にするのは一番許せなかったです。大宮がレジでカバー掛けるのを心の中で面倒臭いと思っているのはあるあるで笑いました(笑)
小話は本当に甘々でいくらでも読みたかったです。恋人がいることや行為に慣れない北澤も可愛いし、丁寧で美しい挿絵の体格差も最高でした。
今まで読んできた木原さんの作品で一番甘かったです。また何度も何度も読み返し妄想したくなる、すごく好きな作品です。
タイトルのB.L.Tは、ベーコン、レタス、トマト、マヨネーズ、パンというシンプルな材料で作られるサンドイッチのこと。ベーコンの質や焼き加減、レタスの種類、トマトの収穫時期、マヨネーズの美味しさ、パンの種類やトーストの有無等で、無限のバリエーションがあるのだそうです。
なんだか恋愛と似ているような…。恋愛は心と体と言葉があればできるシンプルな行為ですが、B.L.Tのように、ひとりひとりの恋愛観は実に様々な気がします。どんな恋愛が好きか、どんなセックスが好きか、どんな話をしたいか。タイトルの意味がすごく気になるたちなので、つい物語と結びつけて考えてしまいます。
表題作「B.L.T」のメインの登場人物は、書店の店長・大宮(ゲイ)と恋人の千博(ゲイ)、千博の前の恋人・高野(ゲイ)、大学生の北澤(ノンケ)。大宮は、5年前、中学生だった北澤に恋して、電車内で痴漢をしてしまい、それを盾に北澤に振り回され、挙句に失恋した過去がありました。
大宮は、ちょっとズルくて気が弱いけれど真面目。恋愛に関しては一途で、優しく触れ合うセックスが好き。
千博はプライドが高く我儘で自己中心的な美人。大切なのは容姿とセンスとセックスの上手さ。
高野はカフェを経営するスタイリッシュな40代。千博の良き理解者。昔は他人の恋人をとるのが好きだった。
北澤は中学生の時に親が離婚したため、セックスに忌避感があり。口が悪いけれど、明るく素直。
どう見ても相性がいいのは、大宮と北澤、千博と高野の組み合わせなのですが、ままなりません。北澤に振られた数年後、大宮は北澤の面影を千博に見て、同棲します。その恋愛にも疲れた頃、北澤と再会して、やがて再び北澤を好きになりますが、千博に阻まれて。4人の人柄と恋愛観の違いがとても興味深く、恋愛の甘く、切なく、時として苦く残酷な感情に、圧倒されました。
大宮が初めて北澤を求めるときの穏やかな言葉遣いと優しい行為に、彼の人柄が滲んでいて。そんな大宮だから、セックスに忌避感のあった北澤も体を預けることができたのでしょうね。回数を重ねるうちに、無邪気に素直に求めてくる北澤も可愛くて。大宮と北澤はセックスの前後も最中もよく喋るのですが、互いに心を開いている感じがして、その甘く楽しい雰囲気がいいなあと思いました。
対照的なのが、千博。乱暴なセックスが好きで浮気を繰り返していたくせに、大宮が別れたいと言うと、狂ったように大宮に執着し、自殺未遂を繰り返します。追いつめられた大宮は、北澤に別れ切れない恋人がいることを話せないまま、北澤と別れることを選んでしまいます。大宮が千博の恋人を演じ続ける虚しさを高野に吐露する場面が、この物語の一番の山場だと思いました。北澤との最初の出会いと再会を運命だと感じたこと、気持ちが壊れそうなほどの愛しさ、千博を殺したくなくて北澤と別れた自分の弱さ、北澤を失った辛さ…。不器用な男の涙に、胸が痛いほど、切なくなりました。
そんな大宮を助けたのが高野。大宮の辛い気持ちを聞いて心が動かされたのでしょう。北澤に大宮の事情を話し、自分が千博を引き受けるから待ってやってほしいと言い、そのおかげで北澤は大宮の元に帰ってきます。実は、高野のこのアシストに、本作品中で一番感動しました。いい男だなあと思いました。後日談の短編で、高野と千博が上手くいきそうな気配は、ずっと待っていた高野へのご褒美でしょうか。
B.L.T、自分で作って食べてみたのですが、人に食べさせるレベルに作るのは、結構難しいと感じました。材料がシンプルな料理なので、材料の扱いや仕上げにコツがいるのかもしれません。美味しいB.L.Tを作る高野は、きっと4人の中で一番人の気持ちに敏い人だった気がします。
一冊の作品の中に、大宮、北澤、千博、高野、それぞれの想いがあふれていて、胸がいっぱいになりました。
電子書籍で読了。挿絵有り(旧版の方のイラストも見たいなぁ)。
「木原作品にしては痛くない」という噂を聞いて気軽に手に取ったのですが、痛いよ。私がもう若くないからなのでしょうか?『ライン』と『B.L.T』の二作はかなりきつかった。同人誌と書き下ろし分が幸せ・あまあまなのはバランスを取ってなんじゃないかと。
『以前から気になっていた中学生に痴漢をしちゃう20代後半サラリーマン』と『それを逆手にとって欲しいものをねだる行き場のない中学生』の出会いって……一歩間違えたらコメディかドロドロ犯罪ものになっちゃうのに、木原マジックは『出会う度に心を奪われてしまう男』と『普段は意識していない寂しさを抱え込んだ子ども』の切ない恋のお話にしちゃうんです。で、読んだ私は「恋って何なんだろう?」と何度も考えこむことになります。
過去にこっぴどく振られたから近寄らない様にしていてもどうしても惹かれてしまう気持ち、好きなのか曖昧だけれどずっと自分を想っていて欲しいと願う気持ち、相手の心がもう自分から離れてしまっていると解っていても別れることが出来ない気持ち、自分以外の人に口説かれて心が動いた恋人を自由にさせてしまう気持ちetc.etc.主要な登場人物四人の心の動きは全部違うけれど、全部恋のなせる技だ。組み合わせひとつで、途方もなく幸せになることも出来るし悲劇に突進していくことにもなるのですねぇ。
と、またしても木原作品で考え込んでしまうのでした。やっぱり木原さんは巨匠だなぁ。
タイトルだけ見るとどんな感じなのか分かりませんでしたが、歳の差ラブのステキな話でした。
攻めの大宮と受けの北澤は14歳差で、大宮が中学生の北澤に痴漢をしたのが二人の出会いです。時にドロドロでいて微笑ましいラブが「ライン」から「dessert box plus」の4編に渡り描かれています。
中学生に振り回される大宮と、不安定な中学生からいい感じの大人になっていく北澤と、美形なのに酷い役回りの千博と、マスター。登場人物全員に私は萌えました。
これまで、攻めは年下のが好みでしたが改めてオーソドックス(?)な年上もいい、と再認識。
大宮と千博のエッチシーンはたまりません!「君は僕以外、一生知らなくていい」とか、コンドーム初体験の酸っぱい北澤とか、とても心にきました。
木原先生の作品の中では、あまり知られていないのかもしれませんが、大好きな一冊になりましたよ。
そして、「BLT」とはそのまんまの意味、ベーコン・レタス・トマトサンドでした。