「僕なんかだと、すぐ飽きられそうだ――」

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表題作彼と、彼

ホテル経営 新見吉彰
陶芸家 三嶋祐

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

私がきみを好きなのが、気に入らないのか?
陶芸家の三嶋 祐は、ある日、有名ホテルチェーンの社長である新見吉彰と知り合う。三嶋の作品を気に入った新見は、作品展に出品していた三嶋の作品すべてを買い取り、そのうえ新規オープンのカフェの器を依頼したいという。育ちのよさからか鷹揚な雰囲気を持ち、女性にももてる新見だったが、男である自分へのすぎるほどの好意に三嶋は警戒心を強くするのだが…… 正直な男と、素直になれない男の恋が始まる!

(出版社より)

作品情報

作品名
彼と、彼
著者
椎崎夕 
イラスト
北畠あけ乃 
媒体
小説
出版社
大洋図書
レーベル
SHYノベルス
シリーズ
非保護者
発売日
ISBN
9784813012306
3.2

(17)

(3)

萌々

(6)

(4)

中立

(1)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
4
得点
52
評価数
17
平均
3.2 / 5
神率
17.6%

レビュー投稿数4

カンチガイ攻め

面白かったですが、これ、攻め視点で見たら全然違うお話になったのでは、と思います。
「非保護者」のスピンオフ作品で、両方読まないとどちらかの意味が通じないという事はないですが、同時進行でリンクしているので両方読むとより楽しめるという類の作品です。
非保護者の主人公、征の出番も結構多めで、あちらはわがままな感じがしたんですが、こちらの主人公・祐視点で見たら健気で頑張り屋で前より可愛く思えました。

お話は若手陶芸家の祐と、祐の器を自分のホテルで使いたいと契約を申し出てくる新見のビジネスを通じて恋になっていくというストーリーです。
この二人は途中ですれ違いが多く、どんどんドロドロした感じになっていくのですが、祐視点で見ているからか、相手の新見に対してもやもやしっぱなしでした。酷い攻めが苦手な方には向かないお話しだと思います。

二人は惹かれているのに意志の疎通ができていない、最後の最後まで結ばれないお話です。
基本的に祐は面倒が嫌いで誰にでも愛想よく丁寧でニコニコしている大人しく見える人間。しかし陶芸のことになるとプライドが高く一歩も譲らないという姿勢を見せます。
新見は最初は物腰柔らかく紳士に見えましたが、次第に独断ぶりが目に余る様になって…私は少し、というかかな~りイライラしました。

誤解は全て最後に解けますが、この人は最後までどうしても好きになれませんでした。
自分がやりたいと思ったことはどんな手を使ってもその通りにしてしまい、周りの忠告も聞かずに暴走します。それを自分でもわかっていて、秘書にたしなめられるというのも大人、しかも社長としてどうなのか、と思います。
祐の事が気に入ってる(それも行き過ぎなくらい)というのが最初からわかりやすいのですが、それが返って佑に「身体を求めてパトロンになってくれる 」「陶芸の歳能でなく祐の身体が欲しい」と誤解されても仕方ない気がします。

災害にあった祐が「納品出来ない、他の人を紹介する」といってるのになら違約金をキャッシュで今すぐ払えと言うのも、勝手に家に入ってきて作業場を改造するのも、女の人をわざと伴なって祐の反応をみようとする姿勢も個人的には誠意が見えずかなり感心できないものでした。
でも勿論この性格あってのお話だとは思います。
しかし、新見は一体いつ祐と自分が恋人になったと思っていたんでしょうか…。

祐の性格も新見の視点で見たら掴みにくいものなのかもしれません。
誤解やすれ違いを楽しむ、という意味ではストーリーはかなり楽しめました。
わたしは長い間お互いに勘違いを続けて最後にスッキリくっつくというストーリー構成が好きなのでこのお話は好みでした。しかしながら、新見のどこにそんなに惹かれたのかが私にはわかりにくく(やりての紳士という以上にひどい目や不憫な目に合わされ独断に振り回されるというシーンが多かったため)どうしてもマイナスなメに合わされたという印象が強かったです。
何をおいても、ガツンとこの人がカッコいい!というシーンを入れないと、納得できないと思う読者もいるのではないかと感じました。

6

ツンデレなのかい?

読んだ作品がたまたま似たような設定だっただけなのだと思う。そのおかげで、作家さんのツボ設定と自分のそれが重なるのがわかりました。

『非保護者』のスピンオフですが、わたしはこちらの方が好みだったかな。大人の男と生真面目で芯の強い、純な年下のすれ違いラブストーリー。『好きにならなくてもいい』にハマってしまい、大人の男が秘めやかに恋に溺れる(しかもツンデレ)王道がブームになってしまった…。

陶芸家である三嶋の作品に惚れ込んだホテルチェーン代表取締役の新見が、新しいホテルをオープンするにあたり、花器やカフェレストランの器を彼に依頼するところからお話は始まります。いやさー、すれ違いにも程があるよねってくらい噛み合わない二人なんですけど、三嶋が徐々に新見への気持ちに気付いていくプロセスに一緒になってドキドキしました。ビジネスにおいては少々ワンマンでやり手な大人の男なはずの新見が、三嶋の要求をのんで暫く連絡を取らなかったり、三嶋の気を引きたくて目を合わせなかったり、わざと女性連れで彼の前に現れたり…。コドモかっ!ってスリッパで後頭部にツッコんでやりたくなるんですけど、恋してるって感じで可愛いじゃあないですか。なのにイタしてる最中、欲情していても相手を気遣う余裕のギャップがですねぇ…はうぅ…。

アクシデント的に身体を繋いでしまったことがすれ違いの始まりなのだけれど、その後の相手の腹を探り合う攻防が醍醐味。椎崎先生の会話文の美しさ、恋する者の物憂い心情の描き方が、雰囲気があってとっても好きなのです。大人の男を愛でたくなったら先生の作品ですかねぇ。椎崎ワールドが確立しているので、登場人物のホモ率の高さとかあんま気にしないでおこう。。うん。

タイトルは、やはり仕事の上でも恋愛の上でも二人は対等であるということなのかな。シンプルなタイトルのセンスも素敵なんですよね。

飽きっぽいので同じ作家さんを立て続けに読めないのですが、しばらく集中的に読んでしまいそうな予感がいたします。

3

ツンケンギスギス

なんというか…
ずーーっと言い合いと冷戦と無視と当て擦りと。
それがケンカップルというのではなくて、本当に誤解とすれ違いのせいでギスギスしっぱなし、という。

主人公は陶芸家の三嶋佑(たすく)。
作品展で見知らぬ男が佑の作品を全て買い上げた…
…という場面から始まります。
買った男は、ホテルチェーンの社長・新見。
新見は、佑に今度新しくオープンするホテルの花器と1階に入るカフェレストラン「月下」用の器を依頼したい、と持ちかけてくる。

そのタイミングで、時期外れの台風により自宅に隣接している「登り窯」が地崩れで崩壊してしまう、という大事故が起きる…!
茫然自失の佑を助け、落ち着かせるために(?)佑を抱く新見。

ここで(?)と書いたのは、新見の心境が描かれてない、その上抱かれた佑の方は訳がわからないうちに抱かれたように描かれている、から。
もちろん新見は佑に好意/興味は持っていたし、弱っている時につけ込むような人物ではないのだけれど。
その後佑の意思を聞かずに整地や窯の再建など、置いてけぼりで怒る佑に対してホテルの食器のオファーを盾にしてまるで脅すように強引に数千万単位の援助をしてくる。
その勝手さや、距離を詰めてくる強引さに佑はついていけない。
遊び人の道楽として、自分を自由にしたいから仕事を頼むのか?
それは嫌だとキレて援助を断ると怒鳴ったり。
新見は新見で、ならば違約金を払えと冷たくあしらったり。
そんなやりとりばかり目立つ中盤。
視点が厳密に佑側なので、どうしても新見の行動の真意が読者にも伝わらない。
恋人の可愛い誤解とか切ないすれ違い、なんていうのを越えて、リアルに怒って言い合ったりする場面が多い作品です。
で、最終盤急に甘くなる。私的にはアラアラという感じで…中立寄りの「萌」で。

0

若干ネタバレがあります。

決してつまらないわけではないのですが、ちょっと攻の男性が私は好きになれない感じでした。やさしいひとではあると思うのですが、金にものを言わせて強引に事を運んでしまうところがあり、その強引さが悪い方向に働いてしまっていると言うか。
受の三嶋が怒るのも無理はないし、同じことをされたら私も腹が立つだろうなと思いました。肝心なところでひとの感情に疎かったり子どもっぽかったりして、その辺りも首を傾げてしまうひとつだったかも知れません。友人として付き合うならおよそ理想的なひとなのですが、もっと近しい関係性を築くには少々難しそうなひとであるように感じました。
受の三嶋は陶芸に対する姿勢が真摯で、だからこそそれが絡むと頑なで、そこを苛立たしく感じる方もいるかも知れませんが、私は好感が持てました。譲れない唯一のものであるからこそ守りたい矜持は誰にだってあると思いますし。
終盤で陶芸に関するいざこざがあるのですが、そこを読んで怒らせて本当にこわいのは三嶋の方かも知れない、と思いました。その辺りは読んでて楽しかったり。
絡みのシーンは椎崎さんなので濃くはありません。ライトな方だと思うのですが、そこはかとなく色っぽかったりきれいだったりします。
あ、因みに関連作品として『非保護者』がありますが、こちらは未読でもこの作品は充分楽しめます。この小説と時間軸は同じだそうなので、先の作品も併せて読むと、空白の時間の補完にはなるかと思います。
三嶋はすきだし、彼の作り出す陶器は文中でしか描写されていないにも関わらず、すごくうつくしい作品を作るのだろうなと想像できました。胸がきゅんとするようなときめきではなくしっとりとした話かと思います。

4

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