全面改稿 待望文庫化! 「あの人殺しが遂に死んだか」 暑すぎた夏、2人の男が堕ちていく。

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表題作照柿(上)

あらすじ

ホステス殺害事件を追う合田雄一郎は、電車飛び込み事故に遭遇、轢死(れきし)した女とホームで掴み合っていた男の妻・佐野美保子に一目惚れする。だが美保子は、幼なじみの野田達夫と逢引きを続ける関係だった。葡萄のような女の瞳は、合田を嫉妬に狂わせ、野田を猜疑に悩ませる。
『マークスの山』に続く合田刑事第2幕。
(出版社より)

作品情報

作品名
照柿(上)
著者
高村薫 
媒体
小説
出版社
講談社
レーベル
講談社文庫【非BL】
シリーズ
マークスの山
発売日
ISBN
9784062752459
4.2

(4)

(2)

萌々

(1)

(1)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
17
評価数
4
平均
4.2 / 5
神率
50%

レビュー投稿数2

雄一郎は弟キャラ

上下巻読みました。私は「マークスの山」→「レディ・ジョーカー」→「照柿」の順で読んだので「マークスの山」の時のペコさんとか又三郎とか森君が出てきて嬉しかったけどこの巻で彼らとはお別れです。皆時が経てば立場も変わるし、大人になってゆく…雄一郎この巻で既に34歳だけどね。

物語本編は重々しく、それまで普通に生きてきた人々が道を踏み外し堕ちていく様子が生々しく描かれ、怖かったけど読み応えありました。

このシリーズは合田が一目惚れした女を追いかけまわす…というBL的には(本当は匂い系)結構キツイ展開、とこちらのレビューなどからも覚悟してたんですが…雄一郎ヘタレだった。女に全然相手にされてない(笑)。彼は色々な男を惹きつける体質だけど女にはあまりモテないらしい。ヤクザの組長には「刑事さん、3Pしよう、SMしよう」とそっち方面から興味深々にされてたようでした。男の嗜虐心を煽る男。雄一郎には確かに縛って苦しそうな顔をさせたくような所があるよね…ってあらヤダ私何言ってるんだろう。

合田の大阪時代の幼少期を知ることができたのも良かった。彼には兄弟のように育った幼馴染がいました。破天荒で乱暴者の出来の悪い兄のような存在。今は同い年なのに出来のいい兄貴のような存在の加納祐介が近くにいる。永遠の弟キャラ。合田は頭も容姿も良くて仕事にも一生懸命だけど、実は傷つきやすくてどこか危なっかしい奴。加納義兄さんはそんな雄一郎がほっとけなくて可愛くてたまんないんだと思う。あいつを(精神的に)守ってやれるのは俺だけだぜ、みたいな。庇護欲を煽るっていうか。実際合田が落ち込んでる時にはいつも駆けつけるヒーローなんだよね。攻め気質。

今回下巻じゃなく上巻の方で総括レビューをしたのは上巻ラストの方の合田の義兄さんの水戸の実家訪問シーンが素晴らしすぎたからです。「事件の事話してごらん」「いやや。ウィスキーがまずくなる」って…関西弁受けか!合田の甘えた感じが可愛すぎる。2人きりの時はこんな感じなんだな。あと手を取りあってお互いの手相を見るシーン、イチャイチャしすぎだ!もっとやれ。その後の「あんたにも、意志ではどうにもならないことがあるわけか」「目の前にいるよ」「そんな真顔で言わんといてくれ。ドキッとするやないか…」…って、こっちがドキッとするわ!萌え死ぬわ!そうそう妹との関係はやはり三角関係のような微妙な関係だったらしいよ。妹は絶対「兄さんのお気に入りの雄一郎は私がもらったわ」って感じだったと思う。双子はシンクロするらしいから。時が経って兄に奪い返されたけど。あー萌える。
 
やはりこれは匂い系小説の金字塔「レディ・ジョーカー」の前日譚でした。そして今回も腐目線に偏り過ぎた感想で申し訳ありませんでした。刑事×検事派の方も申し訳ありません。ぶっちゃけあの2人ならリバも全然アリだと思います。

1

主人公の過去がチラ見え

合田シリーズ第二弾の上巻。
できれば第一弾の「マークスの山」を読んでからが良いと思う。しかし「マークスの山」で得た合田像は容赦なくぶっ壊されるので要注意。このシリーズを読み始める際、「照柿」を一冊目にするのはオススメしない。

今作は序盤からリアルな工場描写が続く。熱処理工程が詳細に描かれ、機械油の臭いや工場内の熱気が眼前にむわっと漂ってきそうな緻密さ。専門用語が容赦なく降り注ぎ、視点主の達夫は魅力的とは言い難い人物。
その後合田視点に移り、今度は捜査用語が飛び交い、同僚たちは説明もなくあだ名で呼ばれていたりする。前作で履修済みならここは安心感を持って読めるため、物語に入り込みやすい。

合田は一つの事件を追っているが、ミステリがメインでなく、人間を描写することに重きが置かれている。これがもうとにかくすごい。人の深淵を描き出そうとしているようで、達夫視点でも合田視点でも陰鬱で醜悪な心の内側を見せてくる。

上巻ラストでは、合田が職業を考えれば信じられない狂気に呑まれる。ここで出てくるのが義理の兄というのもまた一興。今作唯一の萌えポイント。
達夫との出会いで合田の子供時代が垣間見え、元義兄とのシーンでは元妻を含めた三人の過去がチラ見えした。シリーズの主人公・合田を知る上では重要な情報といえるかもしれない。

しかし今回合田を突き動かすのは一人の女の存在。達夫との三角形ができており、男女のドロドロした感情が渦巻いている。BLサイトにレビューを書くのが非常に難しい作品。

上巻ではまだ今後の展開が見えず、助走段階。欝々とした心理描写が続き、人の持つ闇を覗くような読み心地で、万人に薦められる内容ではない。とはいえ確かな読み応えがあって、下巻終盤で一気に面白さが増していくので、苦しくとも読み進めて良かったと思えた。

シリーズは順に「マークスの山」→「照柿」→「レディ・ジョーカー」と読んで欲しいが、今作に過度な萌えを期待すると辛いかも。そうでなくても、読む前にちょっと心の準備が必要な作品。

2

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