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表題作レディ・ジョーカー(下)

あらすじ

※非BL
消エルコトニシタ……。レディ・ジョーカーからの手紙が新聞社に届く。しかし、平穏は訪れなかった。新たなターゲットへの攻撃が始まり、血色に染められた麦酒が再び出現する。苦悩に耐えかねた日之出ビール取締役、禁忌に触れた記者らが、我々の世界から姿を消してゆく。事件は、人びとの運命を様々な色彩に塗り替えた。激浪の果て、刑事・合田雄一郎と男たちが流れ着いた、最終地点。

作品情報

作品名
レディ・ジョーカー(下)
著者
高村薫 
媒体
小説
出版社
新潮社
レーベル
新潮社文庫【非BL】
シリーズ
マークスの山
発売日
ISBN
9784101347189
5

(5)

(5)

萌々

(0)

(0)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
3
得点
25
評価数
5
平均
5 / 5
神率
100%

レビュー投稿数3

終幕と匂いの正体

合田シリーズ第三弾の下巻。
ここまでたどり着くことで、やっと匂い系として堂々とおすすめできる(笑)最後の最後になるが、合田の内側に押し込められ燻っていた加納への感情が、はっきり言語化される。いわば匂いの正体といえるものが表出する。

中巻から続く事件は、収集がつかないほどの広がりを見せ、暗部にもどんどん突っ込んでいく。しかし追い詰められているのは、犯人でなく読者のような錯覚を覚える。人の澱みを見せられ続け、自分が削られていきそう。警察も会社もマスコミも、世界の全てに理不尽と閉塞感が漂い読むのが辛い。

合田は徐々に自身に対する破滅願望を募らせていく。その変調に加納が関わっているかは何とも言えない。今まで合田自身が必死に見ないようにしてきた節があり、そこに目を向けてしまった影響が現れ、体の変化は無視できない。苦悩する合田に「萌え」という単語を当てはめて良いものか迷うが、見守る腐女子にぴったりの言葉はそれ以外思いつかない。
対する加納は、シリーズ中初めて激しく感情を吐露し、弱さを見せる。その後の立ち直り方はカッコ良かったし、検事として暗躍する姿も見れて良かった。

物語は各所で始末が付けられ、提起された問題に答えはなくとも、終幕としての納得がある。
合田と半田の関係性の深いところは分からなかったが、合田が選んだ最後に感じるカタルシスは尾を引いた。死の淵で、もしかしたら人生最後になっていたかもしれない瞬間に、合田の口から出てくる言葉があれなのも。萌えっていうよりなんか泣く。

萌えが詰まった終章は、意外にも合田のその後が上向きで、仕事も加納との関係も明るい希望が見えるものになっていて良かった。
しかし加納の告白は年数を考えると衝撃だし、応える合田があんなに素直に今後を願う言葉を発するとは思わなかった。

今後も続く合田シリーズ。第四弾はまだなのに、なぜか第五弾が先に文庫化されている。しかしまあ……合田と加納を中心に読んでいくなら、次は第六弾の「我らが少女A」を薦めるかな。五十代後半の合田と加納に会える。

ずっしり重い読後感で、心が激しく疲労する。もしかしたら、読むには忍耐力が必要かもしれない。ぜひ気力と体力があるときに読んで欲しいと思う。

3

検事粘り勝ち(萌)

犯罪小説・警察小説・企業小説(ビール会社・マスコミ)として非常に読み応えあります。それぞれの組織の人物の視点から詳しく深く描かれてるので興味深く、感情移入もしやすく、長編だけど一気読みできる面白さ。大企業の社長って大変だな、なりたくないな、と心から思いました(なれない)。

以上全巻通しての本筋の感想終わり。ここはちるちるなのでここからは自分の妄想も入りつつ腐目線の感想行きます。すごいよこの作品は。上巻はいきなり昭和22年の難しい手紙からはじまり前半はひたすら人生に疲れた競馬サークルの男達の悪だくみ、事件への導入部分だったのでちょっと読むのに時間かかりましたが、やっと上巻の半分くらいで我らがスニーカー・デカ、合田雄一郎の登場です。

「マークスの山」の時は合田は攻めかな?と思ってたけど今回はお坊ちゃんぽくバイオリンも弾いちゃうし、やたらと義兄の事で乙女のように思い詰めてるしで私の中で受け度がかなり上がりました。加納検事は押しかけ女房じゃなく好きな子を衣食住から支えてあげたいスパダリだった?!あくまで私の感想ですが。

お互いに合鍵持って泊まり合って、加納は夜電気ついてるのに他の同僚刑事に居留守をしながら合田の部屋の掃除機かけてアイロンかけて料理作って…周りから固めていってるとしか思えません。さすがエリート、策士です。中巻でのお気に入りシーンは多摩川でフランスパンとチーズを肴にワインのラッパ飲みというワイルドな男ピクニックです。加納の「お前(合田)に会いたいという知り合いの記者がいるから昼は3人で会って夜は2人で美味しい物でも食べよう」って、それ完全にデートの誘いだから!と色々ツッコミが止まらないシーンが多くて困りました。楽しくて。

合田は記者とか大企業の社長とか同僚刑事とか第三者視点からの描写も多くて「端正な近衛兵」とか「刑事というより剣士のよう」とか「じっくり愛でる愉しみのある純粋な生贄」とか…色々な男達に魅入られてしまう魔性の男です。私の1番好きな男前刑事受けってやつです。周りから見ればクールで優秀な刑事に見えるけど内面は繊細でいつも色々悩み、傷つきながらも強くあろうとして努力を怠らない。加納検事が出会って18年片想いし続けるのも頷けるいい男です。

だからBL(あれはもう匂い系ですらないわ)っぽく甘過ぎる終章は加納と腐女子読者へのご褒美ってことでいいよね。本当に検事が報われてよかった。意地っ張りな2人はあれくらい切羽詰まらないと本音が言えなかったってことよね。あの年のクリスマスイブに2人は結ばれたってことよね。最低でも思いを伝え合いキスぐらいはしたよね?(一応)一般小説なので妄想でしか補えないですが。妄想を差し引いてもあの章はかなり青春してます。36歳男2人の青春…ええなあ。

次は「照柿」を読む予定でその後の合田シリーズでは40代・50代の検事×刑事を読めるみたいなので全購入しました。今からワクワクが止まりません。「レディ・ジョーカー」が匂い系としては1番萌パワーが強い作品みたいですが、2人を好きになった者としてはその全てを見届けたいです。

1

ももよたん

コメントありがとうございました!
私もLJというか、BLを語れる人が居ないので、お相手していただけてとても嬉しいです!

今回初めの手紙のくだりを理解しながら読むのが結構大変で、大丈夫か?と思いましたが、萌えを頼りに読了できてよかったです。
下巻はスルスル読めました〜。

合田と半田、あのような関係をなんと呼ぶのでしょうね。
お互い、自分に執着してる変態と思いながらも自分も頭から離れなくなってるとか…恋なのか?
城山社長も合田の事をかなり気に入ってましたよね。
合田ってほんとに男をたらしちゃう性分なんですね(萌

前2作よりかなり萌え頻発で、感謝しかない気持ちで読んでました。
次作はちょっと難しい感じ…?なので躊躇してしましますが、多分読むと思います。
40代、50代の彼らに会えるのが楽しみです。
LJの文庫本も是非入手しようと思ってます!

甘食

すみません。レビュアー本人ですが、このLJ下巻を読み直し、感動が止まりません。雄一郎萌えばかり言ってる私ですが、クライマックスで自分の正義の為に闘う加納祐介がカッコよくて仕方がない。正義の決断と覚悟を決めた城山社長も。2人とも漢だわ。その前の根来の事で取り返しのつかないミスをした時、夜中の3時に雄一郎の枕元に現れ自分の弱さを曝け出す祐介も良い。いつもニコニコ雄一郎の世話を焼いてる時と全く違う顔を見せてくれた。雄一郎は祐介の弱い部分を見てもリスペクトは変わらず彼を信じ続ける。祐介も雄一郎に対しては何があっても全肯定するし全面的にいつも味方なんだよなあ。この2人の関係って萌えの一言で言い表せないくらい素敵。最後、警察や政治家に見捨てられても孤軍奮闘する東京地検特捜部の元義兄が男前すぎて思わず書いてしまいました。やっぱりベストカップルや(結局そこに落ち着く)。この20年後も2人は共に独身で穏やかに交流し続けていると思うと本当に嬉しい。(2021.6.9追記)

匂い系超えてきたー

単行本の上下巻のうち、下巻の感想です。

日之出麦酒や新聞社、警察が犯人に翻弄され、その影を追いかける展開のスピード感にこちらも読むスピードが加速しました。
なかなか犯人視点にならず、レディー・ジョーカーの動きが不気味なのもハラハラし、巧みな話運びをかなり楽しみました。

出口のない日々を紛らわせる為に競馬場に来ていた男たちの、起こした誘拐・恐喝から企業と裏組織の関わり、そして政治家との黒い繋がり…など事件が思わぬ方向まで波及していく重厚なストーリーは読み応え抜群です。

そして!合田と加納の関係なのですが、後半にきて一気にググッと来ましたね!
お互いが辛い時に泣きついていくのですが、義兄がこういう姿を見せるというのがかなりレアだったので、合田も狼狽えてましたが、私もドキドキしちゃいました。
そこで肩でも抱いてやれば、歓喜だったのですが残念ながらそこまでには至りませんでした。

やっぱりこれが匂い系の限界か…と思ってたところへ、爆弾が投下されます。
合田は事件解決のためにまた危ない単独プレーをして命の危機に瀕するのですが、その時の義兄の感情の迸りときたら…。
シリーズ3作目、終章にして濃厚な芳香!
もう完全にねBL(ML?)でした。
義兄の話を司祭にする合田が、惚気てるみたいに思えてニヤニヤがとまりませんでした。
そして退院後に書いた手紙がまた…「声が聞きたい」だもの!

こんなダークで硬質な刑事物語にぶっ込まれた元義兄弟の激重感情に萌えが止まりませんでした。
結局イヴは2人で過ごしたのでしょうか?
仲直りして、義兄の手料理食べて、イチャイチャしたんでしょうね♡←願望

また半田と合田の間にある、嫉妬や羨望、憎悪、盲執的な感情にもただならぬモノを感じて、何とも言えない気分になりました。
ヤンデレ、喧嘩っプルが好きな姐様はこちらの2人にも萌えると思いますよ。

他のレビュアーさんのレビュー通り、萌えが前作を軽々超えてきてて、長編を読み切ったという達成感と萌えを補充できた満足感で満たされました。
順番通り次は『太陽を曳く馬』を読もうか、『冷血』を読もうか悩みます。

1

甘食

こんばんは。またコメントしにきてしまいました。LJの完読おめでとうございます。ももよたん様も義兄弟萌えして頂けたみたいで嬉しいです。ストーリーも萌えも最高の作品ですよね。

半田さんと合田の関係も確かにちょっと萌えます。「じっくり愛でる愉しみのある生贄」とか「啜り泣かせたい」とかもう変態やん(萌)と思います。様々な男達を狂わせ執着させてしまう雄一郎は罪な人です。加納さんも良い意味で雄一郎に狂わせられています。彼はひたすら甘やかして可愛がるタイプですが。

単行本の加納さんは感情的で人間味のある感じですが、文庫ではだいぶセリフも減らされ、スパダリっぽさが増してて、逆に雄一郎はモノローグでもっと赤裸々な部分を読者の私達に吐露してくれます。どちらもそれぞれ良いのでパラレルワールドを読んでいるような贅沢気分になります。文庫の(下)は特に変更が多いので機会があればぜひ比べてみて下さい。

なかなかLJのお話をできる人がいないのでまた長くなってすみません。「太陽を曳く馬」以降の中高年になった義兄弟もぜひいつかご覧くださいませ。30代の時のようなギラついた感じは減りますが、少し大人になって落ち着いた雰囲気の2人も私は大好きです。

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