ボタンを押すと即立ち読みできます!
ノンケ×ノンケは評価がとても難しいです。
2人とも彼女と別れたばかりで、それで突然男性と恋人にまでなれるかなぁってところがどうしても引っかかってしまって。それ以外の流れとかは好きだけどもやもや。
小乾(後輩)の、元カノと浮気で別れてるとか、居候してる部屋に合コン持ち帰り女を連れてくるとか、その辺のだらし無さがな〜。田中(黒髪 先輩)だけへの忠犬っぷりはすごく好きです。
描き下ろしの田中が可愛い。
露骨な当て馬だった、ゲイで王子の橘くんに幸あれ。
この作品、好きなんですよね。
ワンコと言われると誰にでもコロコロと可愛がられて八方美人的な人物を想像してしまいますが、この作品の暁はみんなにも愛されるキャラではあるものの、ご主人様第一!のワンコです。
忠犬ハチ公とご主人様の話です。
フラれると同時に彼女と住んでいた部屋を追い出された暁は、高校の先輩だった明の家に居候中。
合コン三昧で新しい彼女を見つけようとするも不発。明ららも5年付き合った彼女と結婚するから早く出て行けと言われながらも、居心地の良い生活に何だかんだと慣れてしまっていた。
そんなとき、明が彼女にフラれてしまい…。
後輩の暁はプロのヒモの素質ありというくらい家事全般できる、誰かと一緒にいないとだめというタイプ。ヒモと違って仕事もちゃんとやるし、一緒に暮らしたら楽そうだなと思うのですが、前の彼女にフラれた理由が「暁の浮気」。だめだ、こりゃ。甘えたがりの弟体質という感じの子です。
先輩の明は仕事はできる、家のことはだめというタイプ。暁を居候させたり、無職になったときは仕事を紹介したり、良い兄貴分気質でもある。
こうやって見ると既に「自分にないものを相手が補う」といういい相性なんですよね。
先に恋心を自覚するのは後輩の方です。ただきっかけがすごく微妙。
デートで留守だと思っていた先輩と合コンでお持ち帰りした女子を鉢合わせてしまって(居候している家に連れ込むことへの賛否は分かれそう。女子へのガツガツ感がそこまで出ていなかったので、わたしはそこまで気にならず)、酔ってたまった性欲処理からなんですよね。先輩だからというのではなくて、目の前にいるひと誰でもよかったみたいな。
でもそのときから少しずつ意識してしまって、合コンで知り合ったゲイの橘に相談するのですが、ここでできないのがよかった。あっさり橘と試して「男もイケる!」という自信をつけて、先輩にぶつかるというパターンも結構ありますが、安易にできない、先輩じゃないとだめだと自覚するという選択が良かったです。
先輩の方ももだもだするけれど、ちゃんと側にいてほしいと言える先輩で良かった。
しみじみノンケ×ノンケの場合「男全般イケる」わけではないので、同性に恋したときに選択肢が全人類かそのひとかの二択になるのが痺れます。女性か、そのひとか、じゃないんですよね。もう女性も男性も含めて、そのひと以外は意味がなくなる。これがいいのです。
先輩の上がる時間を待って、先輩のためにごはんを作って、家事をやって。
元カノに「誰かのためという大義名分がないとだめなやつ」と言われて凹んでいた暁ですが、いいじゃないかと思います。先輩のため、結構!これからの人生全部、先輩のために使ったらいいよ、と思います。
当て馬風に登場した橘は元々ゲイ。ゲイだからカラダの付き合いも軽い感覚だし、簡単に「試してみる?」とも言える。暁のことを気に入っていても可能性のないところに深追いはしない。むしろ先輩を焚きつけるような言動までできる。
この橘の働きがなかったら、先輩の方はここまで自分の気持ちとしっかり向き合うことはなかったんじゃないかというくらいのgood jobっぷりなのです。
橘にも素敵な恋人ができますように、と願わずにはいられない。橘の話も読みたい。そう思わせるほど魅力的なキャラでした。
ただ明と暁。おなじ名前にした設定はあまり生かされていなかったような。
付き合い始めてから「名前で呼んでいいっすか?先輩も俺のこと、名前で呼んでくださいよ」的な流れを期待してしまいました。なかった…。ふつうに「暁」「明さん」って最初から呼び合ってた…。
高校時代の先輩・明(受け)との付き合いは10年になる晃(攻め)は彼女に振られて先輩の家に居候しながらも合コンに明け暮れる日々。
お互い女の愚痴を言い合って飲んでいたはずなのに目覚めたらまさかの裸。
その後、晃は自分がホモなのか確かめてみたいと知り合ったゲイの当て馬くんをホテルに誘っちゃうんです。
……おーい!
まぁその後は先輩への気持ちを自覚するも、先輩の気持ちが全く読めず距離感がつかみかねてしまう。
晃はゲイの橘くんに本物を見た!とか言っちゃうし、居候身分なのに女を連れ込もうとするし、彼女と別れた原因も浮気だしなんか人間としてどーなの?と思う部分が多々あって好きじゃない。
夜明けの犬と「犬」がタイトルに入っているし、小乾という苗字繋がりで先輩への態度が忠犬のようだから「子犬」くんと同僚女子達から呼ばれていたり、あとがきで小犬ではなく成犬です、と紹介していたりとワンコ扱いしているんだけど、ワンコに思えなかった……。
ワンコ攻めってそういう犬表記だのネーミングだの、尻尾を描いてみたりだのして「ワンコ」だと読者に認識させるのではなく、そんな事をしなくても行動の端々に滲み出てしまって、「あぁこの攻めってワンコだなぁ」って読者が勝手に気づくものだと思うんですよね。
いくら先輩への気持ちがまだ定まっていなかったとはいえ、当て馬相手にホテル誘うのは駄犬ですよ。
ただ受けのことが好きでちょっと頑張っている程度でワンコなら、世の中ワンコだらけだと思います。
ワンコにこだわらなければ、ノンケ同士、そして同居する先輩後輩という二人の距離感が変化していく揺れ動くお話としてなかなか面白かったのですが、無理やり「ワンコ」を絡めようとしてきたので、ワンコ攻め大好き人間としてはワンコの資質のなさに異議申し上げたくなった次第です。
というわけでこの攻めに「いとしいワンコを愛でる会」の会員資格はございません。
表題作「夜明けの犬」の長編全6話と、描き下ろし3ページ「犬は待たない」を合わせて、1冊丸ごと表題作の二人です。
暁(攻め)は、高校の先輩である明(受け)に、仕事の斡旋、部屋を間借りと世話になりっぱなし。暁は彼女にフラれてから合コンに明け暮れるも、どうにも楽しくない。そんな中、明が2か月ぶりのデートをドタキャンされ、二人でヤケ酒を呑むことになる。翌朝、気がつくと裸で…という内容です。
酔っぱらっての行動で、二人の関係性が変わっていくという、良くあるキッカケではあるのですが、それからの二人の心の揺れがとても面白かったです。眠れないからするという身体だけの関係でもなく、でも想いを認めるには至らず…というのが、何とも良い感じでした。
暁の目線でストーリーは進んでいくのですが、明の内情が表情でなんとなく感じるものがあり、ラストの告白が唐突でなく自然に受け入れられました。片方が片方を振り回しているのでなく、互いにあれこれ考えている様が良かったです。
「暁」と「明」は「あきら」と同じ読みで作中なのですが、漢字も「暁が出て、空が明るくなる」と繋がりも推測できるので、題名と絡んで暗示的だと思いました。
軽いようで結構真面目な後輩攻め、短髪が色っぽいサラリーマン先輩攻め、悪い人がでない作品がお好きな方にお勧めです。