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表題作ふじむすめ

長唄教室の仲間
川村斗馬・20歳
杉森一年
額縁営業の社員、29歳

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

仕事中、長唄(三味線音楽のひとつ)教室から聞こえた三味線の音色に足を止めた杉森一年は、中で聞いていかないかと誘われる。待っていたのは、三味線の先生である岡本竜市、杉森を誘った竹田楓、そして生徒の川村斗馬の3人との出会いだった。
「一緒に長唄やりませんか?」「俺達、仲間が欲しいんです」
熱心に誘われる杉森。彼らの作り出す空気に不思議な居心地の良さを感じながらも、杉森は誘いを断るために自分がゲイであることを告白してしまい……。

歩田川和果の最新作は、長唄の調べを乗せて描く、心を揺らす純愛ストーリー。
(出版社より)

作品情報

作品名
ふじむすめ
著者
歩田川和果 
媒体
漫画(コミック)
出版社
廣済堂出版
レーベル
Hugコミックス
発売日
ISBN
9784331900611
3.7

(19)

(5)

萌々

(7)

(6)

中立

(0)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
14
得点
71
評価数
19
平均
3.7 / 5
神率
26.3%

レビュー投稿数14

他愛のない会話、思いやりに溢れた会話が耳に優しく心地いい…。映画のような作品です。

大大大好きな作家さん。
デビュー作で衝撃を受けて以来、ずーっとお慕いしております。(〃ω〃v)
ラフな印象で、幾重にも線を重ねたようなタッチが特徴的な独特のイラストなので、好みは分かれるかもしれません。
そういう点で絵柄に関しては一見拙さがあるものの、妙に色気のあるキャラ、柔和なキャラ、誠実なキャラなど…それぞれの個性がにじみ出るような描き分けがなされていて、すごいなぁ…と感心してしまいます。
拙いわけではない、これが個性で味なのです。
なんだろ…? 明治カナ子さんの作品に初めて出会った時の印象と似ているかも…? あの時も「下手なんじゃなくて、これが個性なんだ…!」と同じようなことを思って感心したものです。

映画を見てるような深みのあるシナリオ、温度のある会話の構成、余韻、間……そういったものが絶妙に組み合わさっていてすごく精緻な読物だと思います。
驚いたのは、そうやって丁寧に丁寧に作られているのがわかるのに、作家の作為をまるで感じない「ナチュラルさ」があるところ。
実際に存在する人たちを描いているのかと思うくらい、キャラが自立してるというか……思考力を持って、作家の手を離れて独自に動いていると思えるくらい、自然な空気感で綴られてます。
それは、すぐ横道にそれちゃうような会話のやり取りとかからも感じられて、実際、おしゃべりってこういうムダが多いもんだよな~…とおかしく思いながら、「それを漫画の限られた紙面の中で再現しちゃってるのがすごい!」と感心してしまうのでした。

あらすじとしては、真面目が取り柄の冴えないリーマンが、ひょんな縁で長唄教室に通うことになり、気さくで大らかで面倒見のイイ連中に囲まれながら、長唄の楽しさをしり、居心地のいい空間を手に入れていく…というお話。

長唄教室への勧誘はやや強引だったので、冴えないリーマンは断る口実として、自分がゲイだということをカムアウトしており、
「あなた方に惚れるかもしれませんよ」と脅しますが、
あっさり「いいけど」と受け入れられてしまいます。
加えて、門下生の一人に「俺もそう(ゲイ)」と打ち明けられ、師範1人、門下3人、うちゲイ2人…という男4人の長唄教室がスタートするのでした。

ということで、カップルは
年下の門下生×冴えないリーマン、という9歳差の歳の差カップルになります。
感情表現乏しくて毒舌だけど度量が大きい年下と、バカ正直で不器用な世渡り下手なリーマン。
このコンビ、意外にも攻めが積極的でアクティブだったのが非常に面白く、ツボです。

初対面で自分のウィークポイントを晒してしまったバカ正直な受け。ゲイである異分子の自分が参加したことで教室の和やかな雰囲気を壊すまいと気を配る受け。
…そんなリーマンを見てるうちに好きになっちゃった無愛想な年下くんが、ストレートに口説きまくるのがすごくよかった。
自分を過小評価し、恋を諦めてる年上リーマンがいろいろ言い訳を並べて断る端から、「あーだこーだ」と突っぱねて、最終的に説き伏せる辛抱強さが素晴らしく、強引で乱暴な物言いはするのに、絶対に相手の意思を尊重する真摯さがあって、受けじゃなくても惚れました。
かっこ良すぎます。

また、ウジウジしたネガティブキャラは嫌いですが、このリーマンのネガティブさはそういうウジウジとは違っていて、とても好感がもてるものだったのも魅力でした。
それは、周りの人間を気遣う「優しさ」と、自分の身の丈にあった振る舞いをすることが染み付いている「自制心」のようなものが混ざり合った逡巡で、闇雲に「自分はダメだから…」と消極的になってるわけではない。
自分のことも周りのこともちゃんと客観視できているので「一人よがりなネガティブさ」ではないのです。
だからこそ、攻めは硬質な受けが放っておけなくて、楽しい恋を端から諦めてるような態度が心配になってしまったのでしょう。
辛抱強く、時には強引に、幾つもの言葉を重ねて愛を乞う年下の男は、健気でカワイイです。
付き合うようになってからわかることですが、意外に嫉妬深く甘えん坊なところがあるのもカワイイ。
ずっと読み続けていたいコンビです。ぜひとも続きを描いて欲しいです。

大らかで人のいい長唄教室の面々が好きです。
そこで交わされる他愛のない会話も、思いやりに溢れた会話も耳に優しく心地いい。
作家の手を離れ、生身の人間のように自由気ままに動くキャラたちがいてこその魅力。
そんなキャラや世界観を、傍観者のごとくさらっと描けてしまう作家さんのセンスや技術に感服いたします。この方にしか描けない手法かと。
イラストが独特なので敬遠されてしまうのかもしれませんが…もっとたくさんの人に読んでもらいたい作品です。

《個人的 好感度》
★★★★★ :ストーリー
★★★・・ :エロス
★★★★★ :キャラ
★★★★★ :設定/シチュ
★★★★★ :構成/演出

5

三味線の音色

習い事を始めてみよう!と思っている方、こんな習い事どうですか?
『三味線』(長唄)いかがでしょう?
興味がアリアリでしたら是非ともこのコミックを読んでみては?
あらゆる縁が繋がり『三味線』(長唄)を習ってしまう男性の物語。
友達っていいなとあったかくなるお話がふんだんに入ってます。
応援したくなる恋のお話ももちろんあります。
1冊丸ごとじっくり楽しめました。

三味線の何とも言えない音色がたまらなく好きです。
激しい情熱的な恋の唄だったり。
物悲しい寒々とした悲恋の唄だったり。
日本人で良かったな。

3

確かに面倒臭い

評者はまず一言申し上げたい。
この本と距離を置くならせめて三度は読んでから
断を下して戴きたいと。
さらりとした一読ではこの本の中に生きてる人達の
腹の中は多分見透かせないでしょうから。
悪い人達じゃないんですよ。ただ意識無意識に
かかわらず腹芸を応酬し合ってる人達なだけで。
だからやる事やってとりあえずに収まっても
まだ何か燻ってるんだろうなと中々に安心できない。
それでもそれぞれにどこかしらお約束を何か崩せた様
ですから、これから先は少し違った応酬があるんじゃ
ないかなと。
大人だって何かに寄りかかりたい時はありましょうしね。

4

個性的な絵だけど

とっても読みやすかった。

前の本(エディドヤとか)に比べると、わかりやすい恋愛マンガで、ちゃんとエチまで行きつくし、1年がかりでじっくり連載していただけあって、1冊の本としては非常に満足度高いです。

人物の影側がベタ塗りだったり、シルエットだけの遠景画や、キャラのシンボル付の吹き出しといった、個性的な絵も、画面全体のデザインとしてメリハリがきいているので、見やすくて好きです。
室内を真上から描いたり、床の高さから描いたりと、視点が多彩なところもいいなぁ。
特に、座敷に座っている人物達を、床から見るアングルが好き。

3

クールな外面の下は意外に…

初読み作家さんです。
絵柄がとても独特で個性的ですね。好みが分かれるかもしれませんが、私は嫌いではありませんでした。むしろ味があって好きかも。
お話はごくごく日常的な出来事が描かれているんですが、主要人物がみんな性格が違って中々魅力的な人達ばかりでした。
小さい頃から家族のようによく知っている3人の三味線をやっている仲間の中に、主人公の受け様が強引に誘われて三味線を始めるのですが、あまりに熱心な勧誘に3人を疑ってしまうとか…うんうん、分かる。普通、そうだよね~(笑)。
台詞の部分がとても多いのですが、それは私たちが普段普通に会話している内容が省略されずに書かれているから。
挨拶の受け答えとか、誰かの意見に同意する相槌とか、やたら丁寧に書きこまれてる。でもそれが自然な会話の流れに感じられます。
こういう台詞の使い方も個性的だと思いました。
この作品で一番印象強かったのは、一見クールでカッコイイ攻め様が、どうにかして受け様を落とそうと迫るシーン。
30ページに及ぶ2人の会話がまるで問答を聞いているみたいでスリリングでした。色々攻める角度を変えて(台詞でですよw)受け様を言い含めようとする年下の攻め様が頑張ってました(笑)。
あんなクールな仮面の下に意外な執着というか情熱を潜めていた攻め様が可愛かったです。

1

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