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表題作エブリデイ・マジック -あまいみず-

上狛零士,28歳,アンティーク店併設カフェの店員
赤野井三矢,20歳,演劇サークルに所属する大学二生

その他の収録作品

  • めんどくさがりの恋
  • あとがき

あらすじ

辛い体験から恋に臆病になった三矢は、穏やかな雰囲気を纏うアンティーク店店員・上狛に仮初めに付き合ってもらっているのだが…!?
(出版社より)

作品情報

作品名
エブリデイ・マジック -あまいみず-
著者
崎谷はるひ 
イラスト
鰍ヨウ 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
シリーズ
エブリデイ・マジック -あまいみず-
発売日
ISBN
9784344824997
3.4

(61)

(8)

萌々

(22)

(25)

中立

(4)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
17
得点
207
評価数
61
平均
3.4 / 5
神率
13.1%

レビュー投稿数17

おぼこい主人公をとりまく魑魅魍魎

大学生になったばかりの三矢は好きだった人に騙されていたことが分かり絶望の淵にいた。
偶然入ったカフェ「エブリデイ・マジック」の美形のスタッフ上狛は三矢の話を聞いてくれて、悩みまくる彼に、「付き合ってみる?」と唐突に提案してくる。
ピュアな19歳の男の子が年上の恋人との関係性にぐるぐるもだもだしながら恋を自覚するお話。


結構分厚い文庫なのですが、大きな事件も起こらず、主人公の三矢が19歳の誕生日から20歳の誕生日を迎えるまでの一年間、どんな風に恋心を育てていったのかが丁寧にじっくり描かれています。
そして終始悩みまくっています。
恋に悩み、所属している演劇サークルの人間関係に悩み、前述の騙された系のこともありますし、大学1年生ということもあってまあピュアっピュアです。
この三矢くんのおぼこい感じ、なんだかんだ周囲の年上族に可愛がられる感じ、悩んでいるといってもそういう青春のきらめきみたいな感じ、これって実は結構読者を選ぶのではなかろうか、などと読みながら思いました。
本人は素直でただただ一生懸命なだけなのですが、度が過ぎるのギリギリの線というか、自分の気持ちがわからない、彼の気持ちも分からない、これは恋なのかなんなのか、っていうのを、ぐるぐるしているので、イライラする読者もいるかもしれないなと。可愛いなあと思えるかが鍵かも。
まあ主人公がそのようなキャラなので、周囲のキャラがいちいち際立って濃くて魑魅魍魎で、バランスが取れてるせいか不思議と読みやすくなってると思います。
三矢の同期・夏木が、サークル長で天才脚本家の一坂に食ってかかるのは裏返しにしか見えないので、こちらメインの話を読んでみたくもありますが、一坂が相手にしなさそうだなとか、絆される位はあるかもしれないな、など妄想したりしました。
巻末の「めんどくさがりの恋」は上狛視点の後日談で、短いけれども魑魅魍魎側の目線が楽しかったです。目顔で一坂を見抜いて脳内ブラックリストから名前を削除したり、反対に夏木に要警戒認定するなど。そんな上狛がどのくらいめんどくさがりなのかは、著者短編集「はるならい」に掲載のSSで知れます。

0

鎌倉にはこんなお店があるのですか

かなり分厚くページ数の多い本でしたが、読みやすくてサラサラ読めました。
おもしろかったです。

受けの三矢が可愛くて、良い子で、一所懸命で。
ついつい応援したくなったのですが、その反動?なのか、攻めの上狛がちょっと…笑。

上狛のビジュは完璧好みなんです。
ハーフの高身長イケメン。
そして、メガネ!!
メガネ攻めですよ、皆さん!!

ビジュだけでなく、料理上手なところも、変人なところも、えっちがねちっこいところも、全てが(私にとって)満点!な攻めです。

なのに、途中ところどころにあった、三矢に対しての意地悪な言動に、その度にイラッとさせられたので減点。
それさえなければなー。

Sっ気が強いゆえ、といえばそれまでなのかもしれませんが、三矢が素直で純粋な子だったから、かわいそうに思えて仕方がなかったです。
もう少しそこに甘さがあれば、三矢だってあんなにもぐるぐるしなかったのじゃないの?と。

でも、その意地悪に感じた部分以外は、三矢が所属する演劇サークルの活動の描写も丁寧に書かれ、登場するサブキャラの魅力も充分で、楽しく読めました。

最後にちょっとだけあった上狛目線のSSが、良かったです。
三矢に対する溺愛&執着に溢れていて、これで上狛の減点がなくなりましたから。



0

この分厚さに戸惑ったのは私だけではなかったのね…

これはメリハリが効いて盛り上がるタイプの小説とは違い、攻めが受けに対して両想いの意味をきちんと理解しているかどうかを問いかけて、答え合わせまでの過程を辿るかのような演出になっている。

悪意ある大学のサークル仲間に手痛いからかいにあった三矢は、話を聞いてもらい慰めてもらったのをきっかけに上狗と新たに付き合う事となる。

そこから上狗が三矢とすれ違う事がないようにと、じっくりと恋愛を温めているかのような時間の掛けようには読んでいて戸惑った。
出会いからエッチに進むまでが早い他のBLとは勝手が違い、「この歯痒さと焦れったさがこの本の分厚さの正体か!?」と最後まで読めるか不安になったが、なんとか完読できたのでほっとしている。

肝心の二人が歯痒い分、主張の強い脇役に目が行きがちになって、個人的にはその中の一人の一坂先輩が好きだ。
中でも三矢の悩みに対して「初恋乙女」の例えは言い得て妙で、こういった軽快で核心に的確なアドバイスがいい。
三矢の悩みって思考回路がどことなく女の子っぽく感じたので。

崎谷さんの小説は今回が初読みで、プロローグから最初の部分にかけては回りくどさを感じて読み辛かったものの、受けの三矢→あだ名サイダーくん→タイトルあまいみずってセンスがキラ光りしているところはいいなと感じた。
この人の話は脇キャラも何気に美形にこだわっているみたいで、エッチシーンは濃厚でって作風なのだろうか?

エッチシーンといえば、終盤になっての上狗の豹変ぶりには「おいっ、ここまでの慎重さをどこに飛ばしたんだ!!」とビビった(笑)。

1

鎌倉スローライフ+演劇サークル青春ドラマ

やっと電子版が出ました!

東京での大学デビューに失敗した堅物大学生が地元鎌倉でハーフの美形お兄さんと出会い、ゆっくりまったり関係を進めるお話。年上包容攻が悩める受ちゃんを手取り足取り導く、崎谷先生の王道です。

他のレビュアー様がおっしゃるとおり、アクの強い脇役に比べ、攻が目立たないです。私は攻の思考が一番共感しやすかったので、攻目線で受を愛でながら読みました。

演劇サークル内の青春ドラマはさすがに面白かったです。崎谷先生が描く学生同士の衝突はいいな〜手加減無しのぶつかり合いはドキドキします。

作品の特徴としてはメインカプが鎌倉・江ノ島・横浜の定番デートコースを散策するので、ちょっとした観光気分を味わえます。鎌倉には男性スタッフのみの隠れ家レストランが実在しますw

2

バランスの問題?

三矢は、大学の演劇サークル仲間(♂)に告白されて付き合うが、
これが実は悪質な賭けのネタだったことを、
19歳の誕生日のその日に知る。
傷ついたまま偶然入った不思議にレトロなカフェ、
泣いている三矢の話を聞いてくれた美貌の店員上狛は、
自分のセクシャリティに悩む三矢に、
「とりあえず付き合ってみる?」と提案する……


8つ年上の上狛とキス止まりだけれど、甘やかされた関係が続く1年。
少しずつ近づいて本気になっていく三矢の気持ちを丁寧に描いているとも言えるけれど、
個人的には、正直途中で怠くて読むのをやめようかと思いました。

これは三矢のキャラに共感できるか?が大きいのかも。
嫌いなキャラではなかったけれど、挿絵の影響もあるのか
なんだか初々しいというよりは幼くて、
焦れったくて切ないというよりは、面倒くさい気分に……

カフェのオーナーの銀上、サークル長の一坂、
何かと三矢につっかかる夏木などの脇キャラはなかなか面白い。
読んでいる最中、彼らは別な作品の人物で
本作はスピンオフだと思い込んでいたのだけれど
後から違う事を知り、それを思うと描き方が中途半端だなぁ!


と、こんなに長いのに、どうもピンぼけ感が否めない作品でした。
気の抜けたサイダーみたいな感じ?
甘くてほんわかエブリディな感じとも言えなくはないのだけれど。

終盤、上狛の実はSっぽくてブラックなキャラが判明し、
シツコイHもあって、ほおーっと思ったのですが、
分量の配分としてもうちょっと全体にコンパクトにして、
上狛のキャラの面白さも、もっと出せばよかったのにと思う。
そんなこんなで、全体としては乗り切れない印象でした。


*このH場面で、三矢の柔軟やっていてよかったというセリフに爆笑した。
 いや、常日頃からBL界の方々、身体柔らかいねぇ……
 日々Hに備えて柔軟でもやっているのか?と思っていたので……w

4

甘いですが上狛のために萌×2

崎谷さんの作品は自分の好みのカップルならば「かなり好き!」となるのですが、最近なかなかドンピシャ作品に当たらずにいました。
が、この作品は好きです!
攻めが良い!
結局わたしの好きは、攻めが好きかにかなり左右されます。


受けの三矢(と書かれていたのを見てユ○ジと繋げてしまい、頭にチラつきました…)は大学生。

攻めはカフェ店員の上狛。
ハーフで素敵男子という王道攻めですね。


三矢はサークルの仲間から賭けの対象にされます。
それがきっかけで『自分がゲイなのでは?』と、今まで考えてもみなかったことを突きつけられ、深く傷つき悩み、涙します。
そこをなぐさめ、試しに自分とつきあおうと言ってきたのが上狛。
年の差カップルです。

一年間という長ーーい交際期間ながら、三矢はその間、上狛の本心がわからずグルグルスパイラルしています。(……乙女)
崎谷さんにはこういう受け、多いですね。

上狛はひたすら優しく、結局三矢が自分の気持ちを整理できるまで待ちます。
そんな優しい上狛ではありますが、見た目王子のわりに実はS属性のようで、そのギャップ萌えでした。
ただ上狛は、天然系で不思議王子キャラのわりに、その辺りを感じさせるエピソードが少ないというか弱いというか。
もう少し、その辺りにページ数を使って欲しかったなあと思います。
せっかく変な人(?)なんですから。

えっちはラストに一回。
崎谷さんですからページ数もあってなかなかですが、回数が一回ということもあり若干物足りなさも。
なんといってもかなりの厚さのある作品なので、よけいそう感じてしまうのかな。
その厚いページ数のほとんどが三矢のグルグルにあてられているので、途中から「わたしラストまで読めるかな?」と若干不安になりましたよ。

6

あまいだけじゃない!

 大学生の赤野井三矢は、サークル仲間から好意を持ってると思わされぶりな態度をとられ、実際に三矢が泊まりの旅行に来るかどうかという、悪質な賭けの対象にされてしまう。
 そのため、図らずも自分が男性に恋する性質であることを自覚してしまう。
 そんな時にふと入ったカフェ『エブリデイ・マジック』で店員である・上狛零士に話を聞いてもらううちに泣き出してしまう。
 そんな上狛から、唐突に「男が本当に大丈夫かどうか、お試しで付き合おう」と言われ、「恋人」として付き合うことになる。
 それから一年、恋人であるはずの上狛に三矢は片想いし続けて……。

 という話でした。
 気持ちを自覚する前に「お試し」とはいえ、付き合ってしまった三矢は、だんだんと自分の気持ちが上狛に向いていき始める。
 しかし、まだ10代のままの彼に対して手を伸ばすのはどうかと思い始めたこともあり、「ゆっくり待つよ」と言ったまま、上狛は三矢に手を出して来ない。
 最初にすぐに手を出された時に、思わず拒否してしまったのが後をひいてしまっているのか、まったく手を出してこない。
 自分が本当に上狛のことが好きなのか、そうでないのか……。
 一度目の恋だと思ったものを無惨な形で終わらせることになってしまった三矢は自分は本当に上狛のことが好きなのか、上狛は本当に自分のことが好きなのか……思い悩むけれど……

 という話でした。
 恋に失敗した男の子に新しい彼氏ができて、思い切り甘やかされてだんだんと癒されていくけれど、恋人同士になって始まってしまった恋は、どうやってこの形を変えればいいのかがんじがらめ。
 甘いだけの恋だと思ったら、時々酷く冷たいSな上狛に三矢は振り回されっぱなし……。

 実際に一歩進んだら、ものすごーくエロエロですごかったです。
 普段笑ってる人ほど、怒らせると怖いんだよね……という話でした。
 タイトル通り「あまい」んですけど、それだけじゃない話がとっても面白かったです。

5

あまいみず

崎谷さんの書き下ろし作品は、実に甘く、あまーく、あまやかすお話。

19歳の誕生日に、同じ大学サークルの「男」にこっぴどく裏切られた三矢。
地元である鎌倉の町で、偶然たどり着いて初めて入った店「エブリデイ・マジック」は不思議な雰囲気の店で、そこにいたのは灰色の髪と甘い声の恐ろしく美しい男・上狛でした。

ざっくりぶっちゃけると、店で泣き出した三矢と上狛はお互い一目惚れでお付きあいが始まるわけですが、
「好きだと思った相手に騙された痛さと、セクシャリティに対しての不安と怖さと、人間不信になりかけているのが三つ巴になってる感じ」の三矢には、上狛の
「じゃあ、つきあおうか」がすぐに理解できるわけもなく、
お付き合いしながら、たっぷり甘やかされながらも片思いしている気分と状態のままの、恋に右往左往しつつ、ちゃんと大学生活やサークル活動からいろいろな経験をしていく1年間がたっぷり(たっぷり過ぎるほど)描かれます。
この、たっぷり1年間、不安やら葛藤やらでしっかり三矢君を醸した上で、二十歳の誕生日、三矢が未成年でなくなる日に、満を持して、上狛が喰う。
隅から隅まで舐め尽くしてしゃぶり尽くして、万遍なく満たして、ドロドロにする。
確かに上狛のしていることはわかりにくくて、ある意味意地悪ですが、「食べられる時期をしっかり待って、食べるとなったら余さず喰らい尽くす」こういうキャラクターの造形や、ストーリーの展開に到達したのはとても好ましいと感じたのでした。

3

分厚いですが

なんとか読みきった読後感は良かったです。挫折しそうになりながらも少しずつ読み進めていく方法で読みきった感じです。でもその分、二人が結ばれたときは達成感がありましたし、読んできて良かったと思えるものでした。たまにはこういう焦れじれしたのもいいかもしれません。上狛のS具合が垣間見える最後のほうのシーンも良かったし、三矢くんが拒否した行為?とかもいずれさせてもらえたらいいね、上狛。と思いました。
そのへんも含めて続編もアリかな?と思いますが次はもうちょっとコンパクトにまとまってると嬉しいかなと思います。

2

設定は良かったけど・・・

崎谷さんの地元・鎌倉が舞台ですが、この度は海沿いではありません。(笑)

友達(+アルファ)に騙されて傷付いた三矢が、雨の中をさまよい訪れた変わった喫茶店
きれいで不思議な雰囲気の店員・上狛に出会い、思いがけず慰めてもらい、試しに付き合ってみよう…?と誘われて・・・
付き合ってるのに、両想いじゃない? と悩みながらの恋模様、1年間。

作者がおっしゃってた通り、日常の何気ない恋の描写を…というのは分かります。

けれど、ちょっと長過ぎて、その割に1年!という時間経過も感じられず、
要らない気がする部分に反して、攻めの上狛描写は少なすぎて、
崎谷作品としてはイマイチの部類に入ると思います。

とにかくじれったく、初心?なんだか??な三矢と、鈍い?のか何なのな上狛。
上狛がかなり黒い部分もあって、「セックス好きなんだ」なんて自己申告しちゃうのは
良い設定なのに、それが、ほんの最後近くまで活かされない感じですね~。

信号機シリーズの「ミントのクチビル」に近いモノがあるのですが、
こっちの方がキャラが見えず、初Hも最後に詰め込んだ感じで、ドキドキ感とか足りなかったですね~。
親戚のツテで凄いマンションに住んでるという上狛が、ふわ~っと喫茶店員してるアヤシサみたいな所も、謎な骨董屋さんの伯父さんも未消化だったせいもあるかな。

もう少し序盤を整理して、黒い?上狛キャラをばらした後の二人、とか
後日談でも描き足してあったなら、もう少し納得できたかもしれません。(希望♪)

4

なんでこんなに分厚くなったんだろう・・?

がっつりエロが読みたくて!
エロといえば崎谷先生でしょう!とこの本を読み始め・・・
おっおかしい!?いつもならもうイチャついてもいい頃では・・・と思っているうちに
終盤にさしかかりやっと!(T0T)病んでてすみません・・・
なんか攻様も1年位オアズケくらってやっとのイチャだったけどきっと私のような
心境だったのではないかと。
1年も受様の気持ちが固まるまで待つような攻様ってなんてこころが広いんだと
思っていましたが只のドSだった模様。
受様がぐるぐるしているのを途中から「ふふふ」とほくそ笑んでいたのでしょう。
攻様曰く、かなりイチャは大好きでしつこいらしいのできっと続編がでたら
2/3はイチャイチャで占めてくれることでしょう。
なんか他作品の人物のお名前がちらほら出ていてまた、再読したくなりました。
それにしても久保って受様のこと実はほんとに好きだったのかな~?

4

はーやっと読めました!分厚くて読み甲斐アリな作品です。

エブリディ・マジックという言葉をこの作品を読んで初めてしりました。
言葉と「ちょっとふしぎ」という意味、ちょっとふしぎ・・・教訓めいた意味もあるそうですが、日常に起こるちょっとふしぎ、気が付いていないけれど色々あるのかもしれない。
ひょっとしたら見落としているものがあるのでは?と考えました。

受けが恋愛に向かう気持ちが面白かったです。
事細かに書かれてはおりませんが、一年を通してのふたりの恋物語が綴られています。
物語の視点は受けの三矢側からで、読者は主に三矢のセクシャリティや付き合っているのに恋人に『片思い』している理由、自分の本当の気持ちって?好きって気持ちがどうやったら伝わるの?という部分に加え、恋人が自分をどう思ってくれてるのか?などぐるぐるした悩みを読み進んで行くことになります。
ゆっくりゆっくり穏やかで、でも漣のような心のざわめきもある。
じれったくもそわそわする、そんな感じです。

三矢は上狛にお試しで付き合おう、その間にゆっくり自分がどうなのか考えればいいよ、と言われる。傷ついた三矢を慰めるためにそんなことを言う上狛はなんて人だろう、と思った。
付き合うって?男相手にさらっとお試しでも言えることなのか?
一番初めに浮かんだ疑問なのですが、この辺りの上狛のセクシュアリティや恋愛観などは最後の最後に明かされます。
これが、なんともギャップのあるもので。そう来たか・・・穏やかそうな顔して、実はSよりだったか、でした。このギャップはここまで読み進めたご褒美と捉えました。
三矢の事を可愛い可愛いしています。それはもう、激しく可愛い可愛いです。

三矢ですが、何処にでもいそうなとても普通の大学生です。演劇サークルに所属しているが、素晴らしい演技が出来るわけでもない。小道具作りを任され作業しても、物凄く上手に作れるわけでもない。
けれど、真面目で一生懸命で悩み多き青年です。
同級生の前では言葉使い男の子だなぁと感じるけれど、好きな人の前では戸惑いや恋心がそうさせているのか、ちょっと可愛くなる。
年上でふしぎな存在で掴めているような掴めていないような上狛に戸惑ったり、そうかこういう事なのか、と納得したり。
でも、本当のところ、核心は掴めていなさそうな部分。
好きって気持ちをぐいっと押しだせない遠慮。
それは全て『お試し』と言われているからで、自分は好きだけどじゃぁ上狛さんはどう思ってるの?
頑張って考えるけれど、分らない気が付けない。

ここを乗り越えてやっとふたりは本当の意味で恋人になれる。
なので、晴れて両想いになった時の爆発っぷりが凄かった(主に上狛が)です。
短編では上狛視点、腹黒い、・・・いや策士、・・・いや独占欲の塊か・・・な彼氏が垣間見えます。

2

舞台が活かしきれてない気がする・・・

こういう『等身大キャラクターの地味な日常』はすごく好きなんですよ。それだけでもよかったです。確かに、この上なくじれったいんですが、ゆっくり心情を追っているので、分厚さのわりに飽きることもなく読めました。結構好きですね。

私は、特に受が恋に悩んで、いろいろぐるぐるしてストーリーが進まない(結果長くなる)のは一向に構わないんです。ただ、問題はその中身。
大学(演劇部)関係の描写が多過ぎて、ちょっと焦点がぼけたようで残念でした。もちろん、演劇部の中ですべてが展開していくのなら別ですが、そうではないですから。なんのための『アンティークショップ&カフェ』なのか、と思うくらい、本来のラブの舞台のはずのカフェの存在感が薄いと感じました。

演劇部関係の描写が不要だと言っているわけではありません。特に、最初の三矢が騙されて、それによって『自分のセクシャリティを自覚してしまう』というのは、ストーリーの根幹ですし、その後のフォロー的に、演劇部やそこでの同期、また相談相手としての一坂(演劇部のサークル長)が絡むのはいいんです。でもそちらの描写にページを割き過ぎて、肝心のラブや、上狛のキャラクターが薄くなったら本末転倒でしょう。
正直、あとがきで言われたように『恋』がメインなら、そもそもページ配分が違うよ・・・と思ったんです。

そう思ってしまうくらいに、上狛の掘り下げが足りなかった気がしたんです。単に私が読みとれなかっただけなのかもしれませんが(あるいは『ふしぎくん』だから掴みどころがないままにわざとした、というわけでもないでしょうし。いや、もしかしてそうなの?)。

私はメインのキャラクターは結構好きです。本来、『S気質攻』はキライなんですが、この上狛は確かに『S気質』には違いないんですが、そこへの持って行き方が上手いので、まったく気になりませんでした。『ま~、これもアリかもね』と思えたんです。最初から本性剥き出しだったらまず無理でしたが、相手を思ってきちんと隠せる理性があるならセーフです。
三矢はよかったですね。こういうタイプは好きです。以前の崎谷さんらしいキャラクターのような気がしました。

ただ、上狛が『ふしぎくん』というわりには、特にその『ふしぎさ』を強調してるんだな、というシーン以外は、それほど感じませんでした。だからどうというわけではなく、単にそう感じたというだけですが。

あと、他の方も言われているスピンオフについてですが、私はスピンオフそのものは別に求めていません。作品・キャラクターが好きなほど、スピンオフより続編が欲しい(すべての作品に続編を求めるわけではありません)と思うし、本編のキャラクターが好きになれなくて、スピンオフの方がいい、というのは作家さん問わず実際ありますが、それはあくまでも結果ですから。

この作品に限って言うなら、演劇部関係(一坂と夏木?)のスピンオフは、正直カケラも興味ないです。ハッキリといらない。アンティークショップの銀上も別にいい。もし書くなら、せめてメインCPにしてください、という気持ちです。

9

攻めさんのなかなかけっこうな豹変が印象的でした。

ゆっくり穏やかな感じで進んでいく恋でした。大きなモチーフが演劇ってところがとことん崎谷さんらしいなぁ。他作品で見知った名前がばんばん出てきて、本当に崎谷作品全体がリンクしているんだなと感じました。バルザックの「人間喜劇」とか、ゾラの「ルーゴン・マッカール叢書」みたい。そういう「繋がっている」感じは結構好きです。
鎌倉を舞台にスローペースで進んでいくこのお話、お菓子や料理やアンティークや高価なテーブルウェア等々、視覚的・感覚的に想像しやすいアイテムがてんこ盛りなので、文章は色のついた感じで脳内再生され、なかなか楽しかったです。ちょこちょこ挟み込まれるマメ知識もお役立ち。
主人公の三矢は個人的イメージだと「あしたのきみはここにいない」のミオみたいな可愛い感じの素直な男の子で、挿絵ともよく合っていました(表紙の凝った感じのアングルも中のカットも、この作品の挿絵はどれも良かったです)。そんな彼の彼氏が上狛というちょっと高等遊民のような青年。彼はカフェで働いていますので正確には高等遊民とは違いますが、イメージがそんな感じなのです。キレイな眸を持つ素晴らしい容姿の彼は、心ないからかいに深く傷つきセクシャリティの問題にも悩む三矢を優しく慰め、じゃあつきあってみようか、と。そこから約一年かけてふたりが結ばれるまでを丁寧に辿っています。
ただ、三矢の所属する演劇サークルの活動や彼を取り巻くそこでの人間関係にかなりの重点が置かれているから仕方ないのかもしれませんが、上狛のキャラクターがいまいちよく見えませんでした。いや、丁寧に書いてくださってはいるので、人間性はもちろん把握は出来るのですが、三矢やサークルのメンバー・一坂や夏木に比べると実体性(キャラクターの生き生き感とか厚み)が少し乏しかった気がします。前3人が空気いっぱいの風船なら上狛はちょっと空気の抜けかけたゆるっとした感じのそれ、というイメージでした。いい意味でも悪い意味でも覇気がないというか。でも彼はかなりのふしぎさんの上、少々掴みどころのない感じの人だから、それはそれでいいのかもしれないのですが。
とはいえ、穏やか~に草を食む草食系とみせかけてのラストの獣化ターンはかなり意外でGJです。う~ん…二面性が凄いなぁと私的にはびっくりでした。この作品は最後の最後まで(途中、ごくライトな触れ合いは少しありますが)そういうシーンがなかっただけに、一気に畳みかけるかのように非常に濃く、エロティックな描写が続きます。何だかあれこれいろいろ具体的で、ねちっこくて、そこそこ執拗な描写なので、実際よりもページ数が多く感じました。先ほど三矢はミオに似た感じと書きましたが、それこそベッドシーンでの上狛は「北原先生だ、北原先生がいるよ…!」という感じのしつこさというかアブナさでした。ここまでじっくり読んできたご褒美を貰った気分です(笑)
本編終了後、ほんの数ページですが上狛目線のショートがあり、これはいいです。やっと彼が何を考えている(いた)のかが見えてきます。そして、三矢にやたらとつっかかってきた夏木の複雑な心情の断片も。かなり面白いので、もう少し長く書いて欲しかったなぁ。本当に短いのですが、上狛という人を理解するには欠かせないショートだと思います。
攻めがちょっと個性的なキャラでしたが、総合的には好きなお話でした。心底イラっとくるような人はいないので、ストレスフリーでお読みになれるかと思います。

余談ですが、私も茶鬼さんに同意で、あまりにスピンオフが増えるのはなぁ…という気持ちになります。ことに崎谷さんはそのパターンが多いので、どうしてそんなに風呂敷を広げたがるのかな?と単純に不思議になります。なにも崎谷さんに限らず、BLにはどうしてこうもスピンオフが多いのでしょうか、去年BLにハマった時、最初に感じた違和感がそれでした。読んでいる時に向けた対象(=主人公CP)への感情や視点のズレる感覚があまり好きになれず、自分はスピンオフをそんなに読みたいとは思わないので、作家さんが書きたがる気持ちはよく解るのですが、いち読者としてはいまいちついていけない時があります。どうせなら白鷺シリーズや慈英・臣シリーズみたいに同じ人物たちと彼らに起こる出来事をとことん掘り下げていって欲しいかなぁ。脇CPはその中にちょっと入れてくれればいいや。脇の人たちにそこまで興味がわかない自分の読み方に問題があるのかもしれないのですが。スピンオフお好きな方はお気を悪くされたらすみません、でも全然それを否定するつもりはありませんし、むしろスピンオフも本編と同じように楽しめる人の柔軟性というか心のキャパの広さが私はすごく羨ましいです。残念ながら自分は多分許容範囲が狭いんだろうなと思います(´_`)

3

日常の中で育つ思い

とにかく・・・長い。そして面倒なくらいじれったくて話が進まないお話。
だからと言って内容がお粗末な訳でもなく、主人公の受け様の感情や戸惑いを
丁寧に描写してる作品でもあるし、相手役のちょっと不思議系の攻め様の
つかみどころの無いような個性的な雰囲気手伝ってゆっくり心が成長していくような
ストーリー展開の作品になっているようでした。

出会いから1年間の二人の関係と、受け様の大学サークルでの活動や友人関係を
受け様視点で描いた作品で、初めから悩む必要の無かった攻め様の存在を1年かけて
受け様が、悩み貫いて、空回りしながらもハッピーな展開になるお話。

切っ掛けは、演劇のサークルに所属している受け様が、あまり素行や評判の良くない
グループの一人から告白され、付き合った事から始まるのです。
でもその付き合いは、そのグループでの悪い賭け遊びで、初心な受け様は騙されて
賭けの対象にされていて、まるで美人局のような最悪な賭け遊びなんです。
一応演劇サークルにいる受け様は機転を利かして、逆に騙していたように見せかけて
その場を逃げるように去るのですが、ホントは初めて同性に恋して騙されていたことで
かなりのショックを受けていて、偶然雨宿りも兼て入ったアンティークなカフェの店員に
泣きながら経緯を話してしまうのです。

そして、受けさ様は騙された事によって、もう恋愛出来なくなったかもと・・・
性的にマイノリティかもしれないと気づいてしまったことの戸惑いもあり落ち込む。
そんな受け様に、初対面のカフェの店員攻め様にだったら付き合おうと言われ
流されるように付き合う事になってしまう展開でした。

一見するとかなり地味な話の流れなんです、異彩を放つのが何を考えているのか解らない
でも、受け様を甘やかしてくれる攻め様の存在。
付き合い初めに抱こうとした受け様に拒絶されてから、気長に待つと言った言葉通り
1年間の間に手を出そうとしない攻め様、その事で逆に悩む受け様。

同情とお試し感覚で始まった付き合いだと思っている受け様は、次第に攻め様との
関係にも悩み始めて出口のない迷路状態になっていきます。
受け様のスタート地点と攻め様のスタート地点の思いの違いが後々まで響くことに。
そこに、サークルの先輩や苦手な同期でキャラ起ち出来る個性的な面々が出ていて
なかなか進まない二人の関係への隠れた後押しキャラとして活躍してたりします。

攻め様の一見すると優しい穏やかな感じが実はかなりのSっぽさが隠れているような
キャラはやっと本物の恋人同士になった受け様の未来がかなりハードになるのでは?
なんて思わせる掴みどころのない攻め様は隠れ萌えを感じる。
短編の攻め様視点での話で、攻め様の受け様には気取らせないようにしてる腹黒さが
垣間見えて、結構ゾクゾクしちゃいます。

0

身近な恋

突然王子が出てくる訳でもないし、ドラマチックなお話ではありません。
でも、その日常の中で、身近に感じられる恋であったことで、
より、じっくり読むことができました。

大学生の三矢は、演劇サークルに入ったところ、
同じ男に告白され、お泊りの旅行へ行こうとしたところ、
実は、それは騙されていて、本当に三矢がホモで、
旅行にひょこひょこ来るか?という賭けをされ、
騙されていました。
でも、一番三矢が、傷ついたのは、
この男が騙しでにせよ、告白してきたことで、
自分がゲイであることに気づかされてしまったことです。
それまで、恋をしたこともなかった三矢にとっては、
ひどい痛手でした。
で、その騙された帰り道、偶然入った鎌倉のカフェで出会った
店員さん・上狛と付き合うことに。
三矢にとっては、上狛が同情してくれて付き合ってくれていると
思っているのですが、だんだん、本当に惹かれて行ってしまいます。

ちょっと話がそれますが、
三矢という名前からあだ名が「サイダー君」で、
タイトルが「あまいみず」
崎谷さん、うますぎます!!!
ストーリー世界観ともマッチしすぎです!
と感心してしまいました。

本作は、三矢が、演劇サークルということで、気になるキャラが
出てきます。三矢のところは、落ち着いたお付き合いが続きそうですし、
是非、その人のスピンオフも読みたいな~と思ってしまいます(笑)

0

根気強さは愛の証?

久々のシリーズ続編でない書下ろし新刊は、あとがき込みで何と!382Pの超ぶあつい本。
一体どんな大きなトラブルめいた事件があって、どんな出来事が二人の間にあるのかと思いましたら・・・・
それはそれは実に、日常の何でもない風景。
気持ちを上手く表現できなくて悶々とする主人公の演劇サークル活動が中心で、
彼の気持ちがはっきりするまで、一見天然とも思われる根気強さで彼を温かく見守り続ける恋人。
一番のヤマは、やっと主人公が自分に何がたりなかったのか気がついて(それが実に出会ってから1年!)結ばれるラストのシーン。
丁寧に、丁寧に、「日常」というものを綴りながら、恋愛と学校生活と、そこでの人間関係を通して、主人公が成長するというお話でした。

同じサークルの仲間に嵌められて、自分が本当にホモかもしれないと思うと同時に傷付いた三矢が、偶然入ったカフェで出会い、涙を流す三矢に「付き合おうか」と言ってきたとても素敵なカフェ店員の上狛。
何となく付き合いが始まるのですが、キスに驚いたり、初エッチへ、、という過程で驚いて逃げ出してしまった三矢に、上狛は優しく見守るように接してくる。
上狛を好きなのに、どうして二人は進展しないんだろう?
そんな悩みをサークルの先輩に相談しながら、そして上狛とのお付き合いも続きながら日常は過ぎて行く。

この三矢とても初心いです。
ひょっとしたらスれてない等身大の18歳かもしれません。
恋愛をしたことがなかったから、仲間に恋心を踏みにじられたから、トラウマになったとは考えがたいですが、男性を初めて好きなるということで、女性とは違う付き合い方を学んで行くという設定なのかもしれませんね。
名前から”サイダー”ってニックネームなんですが、上狛に言わせると彼はシュワシュワしてるってwww何となくイメージは伝わってきますが、この子すごくいい子だよね!とか萌える~とかそういうキャラではないです。
本当にちょっと鈍目の普通の子です。

1年という時間をかけてだからこの厚みなのかもしれないが、どうにも攻めとなる上狛が不思議な人です。
2年前からそこで働いていると言う、ノルウェー系アメリカ人の父と日本人の母との間に生まれたハーフで、金持ちの親戚が海外に行っていると言うことで、そこの留守管理を兼ねて豪華な部屋に住んでいる。
一体どうしてカフェで?彼についての謎はいっぱいありますよ。
そして、そのアンティーク&カフェの店主もイケメンなんだけど、不思議な人で。
主人公・三矢をかって助けてくれるサークルの代表とか、三矢にいつも突っかかるサークルの中間の俳優・夏目とか、何やらまたまたシリーズ化しそうな、フプンプンと匂う人達が沢山登場しております。
えっ!?ひょっとしてまたスピンオフとか続編とかなの~と、若干食傷気味なのは自分だけでしょうか?
丁寧に綴ってくれるのはありがたいのですが、これだけ厚みがあるから、もったいぶらないでもう少し上狛に踏み込んだり、こう1冊にビシっと上手くまとめられないものでしょうか(苦)と、密かに思わなくもないです。

8

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