ボタンを押すと即立ち読みできます!
◾️一話 絵師と力士
こういった主役が旅をしつつ問題解決していくタイプの作品には必ずある、結局主役が手出ししないタイプの物語。2巻といえど初っ端からは珍しいですが。契約したら次の世は望めないわけで、眩しい終わり方ではあるものの、憎い仇どもには天罰が降ってほしいとも思う。
◾️二話 土蜘蛛
つまり彼らは異父の実兄弟。なんとも業が深い。芳さんはみんなの記憶に残っていても、契約を果たした吉祥のことは彼女たちも覚えていないのが切ない。
◾️三話 海馬
この「今がいい」のシーンが大変好きだったことを思い出しました。これで終わりなのが勿体ない!千載の謎は何も明らかになっていない…!!
人の願いを叶える代償に魂を喰らう千載と訳あり剣豪の話。
とは言っても2人の事には毎話深く触れることなく、あくまでも話の進め役。
話の中心は代償として魂を差し出してでも叶えたい願いを持つこれまた訳ありな依頼主たち。
願いに対する代償が魂というのが重いか軽いかは難しいけれど、主人公たちが変に同情したり深入りしないところがいい。
佐紀螺の話は泣いた(;_;)
(2013.3.11)
「千」第2弾。
こちらも昔萌評価だけ入れてしまって今更変えられない…今の評価は「萌x2」でお願いします。
前巻「長夜の契」では、魂喰いの千載と相棒の草薙の活躍も重要でした。
本作ではこの2人がどうこうというより、彼らが出会う人々の背負う愛ゆえの闇そして業、の方により焦点があるように感じました。
贔屓筋から裏切られた力士は、陥れられて命を落とす。
その力士に心底惚れ込んでいた錦絵絵師は、復讐のために千載を頼るが…
死してなお、力士は絵師を護っているのです。彼は絵師に魂を売らせないし、復讐などさせはしない。そして絵師もまた力士のこころを感じて、生きて次の世を待つのです。
続いては押し込み盗賊・土蜘蛛一味にまつわる子捨て/子殺しの狂気の連鎖。
優しかった兄が皆殺しを続けるようになる、その地獄を断ち切ろうと自らの魂を差し出す弟。
輪廻と因縁の輪から逃れた赤子のこれからの幸せを祈る…
3話目は海賊・海馬党と江ノ国水軍の抗争と兄弟の禁忌愛。
兄に惚れていたが疎まれたと思い込んで酒浸りになり、そこを間諜につけこまれた弟。
弟が阿片で朦朧とする中で署名した書状でおびき出された兄の軍は、全て捕らえられ処刑された。
生き残った弟は魂を差し出し、処刑された海賊たち全員を生き返らせた…
だが弟は知らなかった、兄もまた弟に恋をしていた事を。
契約を果たすその瞬間、無数の海馬が海を渡り天に昇る…その瞬間の高揚、死を超える法悦。
千載と草薙の旅は永く続くのでしょうが、本作はここで終わります。もっともっと読みたい気持ちが募ります。
こちらでもメイン以外に3組のカップルが登場しますが、どれも前巻よりかなり重々しい雰囲気で、より2人の絆を太く感じられたので評価を上げました。冒頭の絵描きと力士の話で既に心を持っていかれたのですが、次の2組の兄弟ものでは、弟の愛が深過ぎて、読んでいて息苦しくなってくるほどでした。読後の余韻が凄まじく、悲しいような、でもどこかすっきりした気分でもあるような、不思議な感覚を味わいました。
親がいなくてもまったく寂しさを感じないほど、兄に可愛がってもらい愛情を注いでもらった2人の弟達。兄のためなら何でもできる、自分の生さえ顧みないほど潔い決断に、頭が下がります。もちろん兄の方も、弟に対してはこれ以上ないほど慈愛に満ちているんです。2組目の兄は、自分も幼い年齢であまりにも惨い目に遭いながら、それでもさらに幼い弟を恨むことはなく、立派に育て上げた。3組目の兄は、弟への家族愛を超えた感情を殺しながら、自分の懐刀として技術を惜しみなく教えた。どちらの兄も、本当の親や大人達よりずっと出来た人間ですよね。
そんな素晴らしい愛を受けて、弟達は兄のために千載と契約する決断をします。自分のせいで兄の人生を狂わせてしまった、駄目にしてしまった、だから新しい明るい人生を生きて欲しいという切実な願い。その代償はあまりにも大きいですが、彼らの意志は固いんです。弟の契約のことは知らず、弟を許し最後まで責めなかった兄、最後に弟に自分も愛していると伝えてくれた兄。最期の瞬間の弟達はきっと人生で一番幸せな気分に包まれていたでしょう。その愛を受けて、今度は兄達が明るい希望に満ちた人生を歩み始める。いくら言葉を尽くしても言い表せなくてもどかしいですが、心から読んで良かった、出会えて良かったと思える作品でした。
時代物ファンタジーの続巻。
魂と引き換えに願いを叶える千載と、ひょんなことから同行者となった草薙主税の物語。
第1話はちょっとイレギュラー、依頼者の呼びかける声にたどり着いたのに、依頼を受ける前にその願いは解決してしまう。美しい力士と絵師の話。
第2話は吉祥菩薩と盗賊団の兄弟の話。
第3話は海馬と海賊団の兄弟の話。
こうしてまとめて描くと2話と3話は陸と海との差はあれど、似たような設定かと思われるかもしれないが大丈夫、全然違う展開のお話です。
それにしても、第1話に登場する力士・北龍の美しさよ。
多分、この話は雑誌で読んだことがあって、それの収録コミックスだから、以前に出ていた本も遡って一緒に購入したんだったと思う。
この本、エロのためのエロや、うふふきゃっきゃなラブいちゃストーリーのBLとは別世界ではあるけれど、人を恋する気持ちの切実さが切なくて、何より、こういう時代物ファンタジーは、何時読んでも、現代の、現在時間の流行風俗とは関係なく楽しめるので、結構前の本だけど、どこかで見かけたらぜひ読んでみてほしいです。