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「お前の血も肉も全て俺のものだ」戦神と癒し手、魂を預け合う恋。
on BLUEって、マジで外れが少ない。表紙も素敵。ついつい手に取ってしまう。
で、山中先生のBL作品、すごくお久しぶりな気がします。
ということで、個人的神タッグのon BLUE×山中先生、ということで発売を心待ちにしていました。
山中先生というとファンタジーもの、というイメージが強いのですが、今作品もそのイメージを損なうことの無いファンタジーもの。
痛く、切なく、流血描写もある。
なのに深い愛情も、きちんと描かれている。
語彙力消失するほど、素晴らしい作品でした。
ネタバレ含んでいます。ご注意ください。
世界中で諍いが堪えなくなった地球が舞台。
各国がしのぎを削り研究する軍力、それが「イキガミ」。
いかなる武力をもってしてもけがをさせることはできない特殊能力を持つ「イキガミ」によって、その国の民間人の平和は保たれている。が、そのイキガミにダメージを与え、そして殺めることができるのも、イキガミだけ。
ゆえに、各国はイキガミを増やし軍力を高めることに心血を注いでいる。
そんなイキガミを治療できるのは「ドナー」と呼ばれる人物。
ドナーを見つけるために5年に一回検査が行われている。
という世界が舞台のお話です。
主人公は高校教師の吉野。
平凡な日々を過ごす吉野だけれど、彼は彼の住まう国の優秀なイキガミである鬼道のドナーだと告げられる。
ドナーになったことで、吉野の生活は一変する。
ドナーの体液が、イキガミを治療する唯一の手段であり、吉野は鬼道に引き合わされるが―。
鬼道という青年は10歳の時からイキガミになるべく訓練を受けてきた。
イキガミであるがゆえに両親から持て余され、イキガミであるがゆえに起こる副作用に悩まされてきた。イケメンで、人気の高いイキガミとして命を懸け闘う彼だが、鬼道は実に、
俺さま。
です。
吉野の都合など構うことなく、ケガをすれば治療のために吉野になめさせ、キスをし、何なら無理やり抱こうともする。さながら狂犬のようです。
そんな鬼道のドナーとなった吉野先生。
「イキガミ」である鬼道を、尊敬もしているし彼らの孤独も理解する。優しく、けれど時に叱咤もしてくれる吉野先生に、少しずつ懐いていく鬼道がめっちゃ可愛いの…。
もうね、山中先生の描き方が素晴らしい。
鬼道の過去、孤独、そして彼が求めてやまないもの。
それらを、少しずつ、けれど読者の心にしっかり届くように魅せてくる。
イキガミはドナーの存在によって「身体」は治療される。
それは、ドナーの血を採血しておくことで賄うことができる。
けれど、鬼道と吉野先生は二人で過ごす時間があり、そして二人の間に、愛情と信頼関係も育っていく。
過酷な子ども時代を過ごした鬼道にとって、吉野先生は、親であり、友人であり、そして好きな人になっていく。はじめ不遜な態度を取った鬼道ですが、それは人に対してどう接していいのかわからなかったから。「イキガミ」として育てられましたが、彼は「人」として周囲の大人たちから接してもらうことはなかった。それが、吉野先生との出会いにより、人として少しずつ育っていく。
彼らの心の交流に、読んでいて思わず落涙してしまいました。
鬼道は力の加減が分からずに吉野先生にケガをさせてしまうシーンがあります。
自分のために、命を削って助けてくれる人。
自分の大切な人。
そんな吉野先生を、再度傷つけまいと彼は吉野先生と距離を置くのですが、その時に鬼道が手に入れる「もの」があります。吉野先生を感じることのできる、とあるモノ。
健気です。
可愛いです。
はじめ狂犬だった鬼道が、ワンコになったよ…。
上巻は、ドナーという存在を受け入れ、そして鬼道を愛し始めた吉野先生が、自分の感情を受け止めるところまで。
うん、ココで終わらないんだよね。
もっと過酷な試練が彼らを待ってるよね。
というところで次巻に続きます。
これ、上下巻で購入されることをお勧めします。
ここで終わるとか、とんでもない寸止めプレイになります。
上下巻同時発売って素晴らしい…、と思いつつ。
オンブルー連載で上巻くらいまで読んでて、絶対に買う!と決めていたこちら。
というのも、最強の殺戮兵器人間であるイキガミの孤独が徐々に見えてきて、それがもうたまらない気持ちになるんですよ。
強いと思われてるヒーローの弱い部分ってキュンキュンさせられるじゃないですか、まさにそれ。
「イキガミ」は国を守るため、己の身体一つで日々戦っている人間兵器。
戦いで傷ついた身体を治す方法は、ただ一つ。
この世にたった一人しか存在しない「自分のドナー」の体液をもらうこと。
検査によってイキガミの鬼道のドナーだと判明した吉野は、強制的にパートナーを組まされます。
最初は、「俺のドナーなんだから俺の好き勝手にさせろ」と俺様だった鬼道。
突然ドナーとなってしまい戸惑っていた吉野も、鬼道の生い立ちや孤独を知って、「俺が鬼道を守る」と思うまでになる過程は、ぜひ読んでほしい!!
キュンキュンするから。
ちなみにドナーはイキガミが損傷した場合の臓器や皮膚の提供者でもあるんです。
自分が死なない程度に、できるだけ提供しないといけない。
だから世間的には、あまりイキガミとドナーは私情を挟まないほうが良いとされているんだけど、彼らは違う。
本人達の意思とは無関係に、肉体的なパートナー(ちょっと運命の番っぽいと思う)を組まされた二人が、心のパートナーにもなるまでの過程が、ほんと読んでて、くはぁ〜たまらないぃぃ!となります。
ちなみにどちらかが死ぬと、パートナーは解消となるんですね。
周辺国との戦闘が絶えない日々。
鬼道の命は大丈夫なんだろうか?吉野も大丈夫なんだろうか?というハラハラを残して、下巻へと続きます。
『500年の営み』に続いて読んだ山中ヒコ先生の作品です。
イキガミ 鬼道と高校教師 吉野 優希のお話。
「イキガミ」とは、飛行能力と重力コントロールに優れ、兵器戦闘にはほぼ無敵…我らがJ国の最強戦闘種。
但し、全世界に存在する「イキガミ」の呼び方は、国によって異なります。
ある日、高校教師をしている吉野は健康診断の再検査で病院を訪れました。
ところが、検査ではなく別室に待機させられます。
現れたのは医師でも看護師でもなく、防衛省防衛政策局戦略課イキガミ班の柴田でした。
その柴田から衝撃の事実を告げられます。
「イキガミの「ドナー」と判明しました」
イキガミは兵器戦闘には無力化ですが、イキガミ同士での戦闘で負った傷は治療不可能です。
しかし、イキガミにはドナーと呼ばれる適合者がおり、このドナーの血液や唾液、体液までもが治療薬となります。
イキガミの中でも一騎当千のモンスター 鬼道のドナーが吉野でした。
山中ヒコ先生の『500年の営み』も独創的な世界観でしたが、この作品も引けを取らないストーリー展開です。
イキガミ一人に対してドナーも一人の唯一無二の関係。
そして、そのパートナーシップを解消するには、イキガミが即死すること、移植が必要ないほどイキガミがダメージを受けること、ドナーが死亡すること…。
10歳の頃にイキガミだと判明した鬼道は国立医療センター内で訓練と治療を受けながらイキガミとして国を守ってきました。
傍若無人な鬼道…でも、それは仕方ないことかも知れません。
鬼道は10歳で親元から離され、国のために戦う「資源」として扱われてきました。
孤独だった鬼道には人間らしい感情が欠如しているのでしょう。
そんな鬼道を心から心配してくれるのがドナーの吉野です。
傲慢ながらも少しずつ吉野に心を開く鬼道に読んでいて胸が熱くなりました。
「いつか出会えるドナーは君を愛してくれるかも知れない」
鬼道はずっと待っていたんだと思います。
自分を愛してくれるたった一人のドナーを。
脇キャラでは、国立医療センターの医療スタッフ、イキガミの仲間たちが登場します。
とくに重要なのは、防衛省の柴田さんですよ!
個人的なイチオシは、鬼道の指導官 岩尾一尉…ギャップが凄すぎる(笑)
Hシーンは、本編最後にあります。
エロさは薄いですが、吉野の気持ちが伝わります。
同情ではなく愛情だと思いたい。
国を守る最強戦闘種というだけでもスケールが大きいのに、そこにBL要素が盛り込まれているので読み応えがあります。
もっと壮絶な戦闘シーンがあったら臨場感が出て良かったかも?
それでも、山中ヒコ先生の丁寧な心理描写で物語に惹き込まれ、最後までドキドキしながら読めました。
最後の「俺はお前を守りたいんだから」という吉野のセリフが全てに通じています。
優しく強く、そして思いやりに溢れている吉野と接して、鬼道は失った人間らしさを取り戻しているんだと感じました。
イキガミとドナーの唯一無二の関係は、この先どうなるのでしょうか?
上下巻が同時発売で本当に良かった〜。
ほんのりネタバレ
上巻だけ読んだ感想
ひっさしぶりのヒコ先生作品を噛み締めながら、空白とかページの隙間と暗転で読ませる先生だったな~~と思い出した。
セックスは手こき1回、貫通1回。
がっつりエロじゃないけどお互いがお互いのことを思う度にえっちな雰囲気を感じてしまって(それが恋になるのよ~)
設定はファンタジーだけど、それ故に攻の孤独が浮き彫りになるストーリー。上巻では受の吉野が攻の鬼道に向ける気持ちがなんとなくほっとけなくてから感情を自覚して急接近まで。
吉野と鬼道の双方の視点を行き来しながら吉野がだんだん鬼道を理解していく過程が丁寧に描かれていると思う。
吉野の職業が教師という設定が、この鬼道の気持ちを推察するのにとても大事な点だったんでないかな~~~。ただのサラリーマンじゃいけなかった。子持ちの研究員とかでもいけなかったとおもう。
この世界観、すごい。
on BLUE作品のハズレのなさと作品テーマの幅広さったら。
そして、山中ヒコ先生の心理描写の上手さ。
このレーベルと山中先生の相性がものすごく良い。
"イキガミ"という、人でありながら人を超越している存在。
人工的に造られた兵器よりも更に強い、いわゆる人間兵器です。
この世界の中では、ごく当たり前に教科書にも載っているような存在なんですよね。
日々、国のために文字通り身を挺して戦う彼らによって人々の生活の平穏が保たれていると言っても過言ではありません。
ただ、上巻の時点では、この世界の一般人のイキガミに対する反応がどこか他人事なんですよ。
ここがすごく上手いなと。
もてはやしたり、ぼんやりとヒーローやアイドルかのように憧れてはいるけれど、あんないつ死ぬかわからないものにはなりたくはないと言う生徒。
中学校教師である吉野が、世界史の授業で生徒にイキガミについて語るシーンでは寝ている子がいたり、興味がなさそうに下を向いている子がいたり。
何気なく描かれているというのに、なんだか妙に印象的でした。
自分と同じ「人」が命がけで戦っているのに、扱いが「人ではない何か」のようで、彼らにとってイキガミとはあまり現実的なものではないのかも。
現代で言うのなら、他国の戦争をTVのニュースでご飯を食べながらなんとなく見ているような感覚というのかな。
なんだか、イキガミという存在にどうしようもない孤独を感じました。
そんなイキガミの1人、鬼道の"ドナー"に選ばれた吉野。
イキガミは、兵器による攻撃は無効化出来るけれど、イキガミ同士で負った傷は治療方法がなく、ドナーと呼ばれる適合者の血液や体液でしか治せないというもの。
巨体な兵器は簡単に壊せるのに、小さな風邪ひとつで苦しむんです。
強さと引き換えにしたようなアンバランスな体質という設定が効いています。
ドナーには拒否権はなく、なぜ自分なのか?と戸惑う暇もなく鬼道を癒すことになる吉野。
でもそれはイキガミも同じことで。
能力が偶発的に判明することがほとんどなので、ごく普通に暮らしていた人間がある日突然イキガミになってしまうんです。
人間兵器としての教育を受け、ただただ毎日戦う。
戦う理由を見つけられたイキガミはまだ幸せなんだと思う。
けれど、幼い頃から戦うことしか知らなかったら…?
吉野がドナーになったことによって、序盤で描かれていた、ちょっと現実味がない存在だったイキガミが、一気に身近に居そうな「人」に変化していくんです。
ここの描き方も本当にお上手だと思います。
鬼道という、愛を知らないごく普通の男の子の本来持っていた姿が見えて来るようで、そしてそれがあまりにも孤独で悲しい。
孤独を抱えた鬼道の殻を少しずつ丁寧に剥がし、殻の中から甘え方も知らなかった不器用な青年を引っ張り出したのは、吉野という優しい人でした。
交互に入れ替わるような2人の視点で、心が通い合っていく様子が自然に描かれています。
鬼道が強くあるのは、いつか出会う自分のドナーを守るためだったんですね。
けれど、きっと今まで鬼道が強かったのは、自分にとって守るものがなかったからのようにも思えるんです。
だからどんな無茶でも出来たんだと思う。
しかし、唯一無二の自分の半身のような「ドナー」と出逢ってしまったら…?
いくら怪我をしても治す。守るものがないと言う鬼道のことを守りたいと言う吉野。
その言葉に、鬼道は何を感じたのか?2人の今後は?
ヒリヒリとした世界観の中で育つ2人の関係性の行方に注目をしつつ、このまま下巻に進みたいと思います。