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胸ふるわせる、初恋スウィート・ペイン
2012年刊。
月村さん作品の受け=ネガティブってのをよく聞くが、この話ではこじれた関係になってしまってからの再会ってのもあるせいかそれほど気にならなかった。
格好いい幼馴染み・颯の上京にくっついて行って懸命に尽くす姿が重かったのか、冷たく別れを切り出された諒矢。
二年後に再会して友人としての付き合いが復活しても、一方的に別れた(と思い込んでいる)のに未だに好きなんだって気持ちを悟られたくなくて虚勢を張っている諒矢の姿が健気だった。
結果としては、颯なりの真剣な思いやりが誤解を生んだ形だったというのが判明して元の関係に収まるけれどね。
こじれた関係もそれほど深いものでもなかったからってのもある。
意表を突くといったような展開はないものの、全体にまったりした気分で読めた話だった。
誤解が解けた後の、諒矢が颯の事を恋人として意識する心の揺れ動きってのも落ち着いて読めた。
それにしても、諒矢は周囲の人達にも恵まれているね。
諒矢の母親も無理に上京していった息子を心配しているし、二年前の颯との別離で傷付いていたところを偶然出逢った大森ファミリーが献身的に面倒をみて第二の家族になったりと、誰かしらが心配してくれる優しさが沁みる。
電子書籍で読了。挿絵有り。
若い!
変な言い方なんだけど、一番の感想が「この月村さんは若い!」。
うーん、どうしてそういう風に感じちゃうのかな?登場人物が人気絶頂の俳優だったりするキラキラしさからそう思うのでしょうか?
でも、行き場のない諒矢を拾ってくれるマスターやその家族、颯と同じ事務所の人気女優、諒矢の義父など、登場人物は人情たっぷりの下町風味。おまけに、攻めの颯くんが夢を追いかける人で、受けの諒矢くんが『颯の夢の実現のためだったら頑張れると思っちゃう健気な人』というのは、ちょっと昭和風味。
お若い方も、お姉様も、追いて行かれることなく安心して読めるお話だと思います。
久しぶりに好きだったころの月村さんの旧作を読み返してから、買ったままで積んであった本を引っぱり出して読んでいます。
最初に、こういうのが苦手で読まなくなったんだったわ・・・・というのに当たったので、そのまま読まずに処分しようかと思ったんですが、好きなイラストレーターさんだったので、こちらを読んでみました。
結果、それなりに読めました。
悪くはなかったです。
おバカで流されやすい健気受け、言葉が足りない攻め、人気芸能人、ほっこり系のカフェというよりも昭和風の喫茶店、このあたりが定番のテンプレ設定ですね。
幼馴染みから恋へと発展した二人の王道ラブです。
颯は、本当に男前ですね。
芸能界で成功して美人で可愛い女優さんや、モデルさん、アイドルなんか(あるいは同性からも)から誘われることが多々あっただろうに、ずっと一途に諒矢だけを思い続けていたんだー。しかも、こんだけイケメンで慣れてる感じなのに、
「こういうこと全般、今日が初めてだけど」
で、キュン!でした。全般だから、DTってことですよね!
二人がジャンケンをするところも、颯は諒矢が何を出すか分かったうえで負けてあげてたんですね。昔から。
それだけ諒矢のことが好きだったら、実家に帰るよう告げたとき、それから諒矢から好きな人と暮してる、と聞かされたときは辛かっただろうな。
それから…大森さんよ、あんたええ男や。
諒矢の命を救ってくれただけでなく、諒矢が一番辛いとき側にいて居場所を作ってくれたし、颯から殴り飛ばされても冷静に対処して、その後はあっけらかんと二人を許すとか…器がでかすぎる。
幼なじみで、一度離れ離れになった二人が再会する再会ものです。
再会ものというより、やり直しものという気がします。
といっても颯と諒矢の二人の主人公は付き合っていたわけではなく、諒矢は二人の間には意思疎通が出来ていると思い込んでいて、それを勝手にテレパシーだと言って気持ちが通じている気でいます。
「好き」とか「付き合おう」とかの言葉も、キスや手をつなぐなどの行為もないまま、自分たちは恋人だと信じ、颯の上京に付いてきてバイトをして彼を支え・・・
けれどある日、颯に「ウザい」「迷惑だ」といわれ、颯のもとを離れて死のうと思っていたところを他の男性に拾われ、2年後に芸能人として成功を収めた颯と再会。設定だけ見れば痛々しい感じです。
諒矢が颯に拒絶され、地元に帰る切符を渡されたにも関わらず途中で降りて見知らぬ街で死のうとする・・・このあたりの件は可愛そうでじんとしました。
私は貧乏な二人が地元を離れてコツコツ支えあう「成功を夢見て同居」みたいなべた設定にすごく弱く…。最初らへんからぐっとお話に引き込まれてしまいました。
最初から、颯が「うざい」と言った本当の気持ちもなんとなく察しはつきます。しかしながら、2年後再会してからの展開がなんとなく軽かったのが少し残念でした。
あんな酷いことを言ったのに会いに来て「また友達にもどりたい」と言った颯も、虚勢をはって「お互い今幸せだし、あれでよかったよね」という諒矢も、そんなスタンスでいいの??という感じでした。
最初のせつない雰囲気がとても胸にズッシリ来てよかったらので、最後まであの雰囲気だったら・・・と思いました。
どちらかというとライトでわりとサラッと読めるお話かもしれません。
長いすれ違いと誤解を解いて二人が結ばれるシーンは心からよかった!という感じでしたが、やっぱり颯がしたことは最後に一言二言「悪かった」で終わらせられるものじゃないような気もします。
もっと最初から話あっていれば二年も離れることも、諒矢が何年も辛い思いをすることもなかったと思うので。下手すれば2年前、諒矢は死んでいたかもしれないし。
しかしそういう意味では諒矢もテレパシーなど信じないできちんと普段から話あっていればよかったのだからお互い様かもしれません。
このテレパシーという設定は素敵だと思いました。
幼なじみやせつないすれ違いがお好きな方におすすめの作品です。