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これが初恋だなんて気づかなかった
表題はじめ4本の作品にそれぞれその後日談が相手の視点で付けられており、本編では恋愛未満で終わっていたそれぞれにその後を見ることができます。
表題に限らず、この1冊を通して、
人を好きになるって素敵な事だな~と、改めて思わせてくれるような何かが含まれているような気がして、とてもキュンキュンさせられて、、、というのではないのですが、心がほっこりとあったかくなるよな、そんな柔らかさが、手描きのラフな線で描かれる絵が訴えてくるのです。
表題は特に、少年期の心というものがピュアに描写されていて、始まりから心を掴まれます。
中学3年の二学期に家の都合で都会から越してきた藤本。
見た目もイケメンなのに、笑わない愛想のない表情に、皆距離を測りあぐねて遠巻きで見守るしかない。
背が小さい太一もまた彼を見ているだけだったのだが、藤本がバスケをやりたいと先生に訴えているのを聞いて、家にバスケのゴールがあるからと彼を誘う。
それがきっかけで仲良くなる二人。
都会と田舎の対比なのか、まだ恋をしたことのない太一と、それを恋と自覚する藤本の気持ちの差が、
二人が仲良くしていることからクラスでたったホモの噂に傷つく太一の姿があったりして、
そんな場面が思春期らしくて、キュンとさせるものがある。
藤本が高校は地元に戻ってしまうと聞いてほっとしてしまう太一の心もとても理解できるものだ。
こうして友達として彼等が迎える別れ。
切ない初恋物語で終わっていた本編に驚愕の続きが!!
ここでは、チビだった太一がでっかくなって登場しています♪
愛からわず田舎言葉丸出しで(微笑ましい♪)そしてワンコでv
彼等の再会がキセキだという藤本に、これは運命じゃし、、と言い切る太一の成長したことよ!
太一のショタキャラも、大学生になったキャクターも素朴で、とても魅力的なのです!
『春は半歩先』
花屋で働く恋人に仕事に専念したいからと振られた冴えないサラリーマン森口。
海外出張から帰国した社長の甥で、調子者の朝見に、花屋の女の子が好きだと誤解されて、俺が取り持ってやるからと色々とちょっかいを出してくるのがいちいち神経を逆なでする。
本当は元カレに嘘をついてふられていたと知ったとき、彼は酔っ払って朝見に本音をぶちまける。
まだきちんと恋愛をしたことのなかった朝見が、森口を見直す話。
そして後日談は・・・あいも変わらずな(笑)
『オフィーリア』
卒業生の書いた絵に一目惚れして美術部に入った由良は、学園祭でその先輩・葉山に出会う。
その時から葉山を慕って彼のもとを訪れる由良は、彼の絵に描かれている人がきになって誰だか聞くのですが、それは亡くなった恋人だったのだという。
無邪気で天然な由良に葉山が救われるお話で、その後日談は・・・(笑)
『クリスマスブルー』
彼女にクリスマスプレゼントにブランドものの財布をおねだりされてバイトをなんとかしないとと焦る大学生。
そんな彼に「時給4千円で話相手になってください、君の事が好きなんだ」というバイト先定食屋の常連の会社員が声をかけてくる。
金の為にそれを受ける大学生だが、毎日ただテレビを見たり、何かを手伝ったりと、普通に過ごすだけ。
ただ一緒にいたいだけという彼の気持ちに、、これで本当にいいのかな?と疑問を抱く大学生。
本編は、会社員に謝礼を返すシーンで終わっています。
そして続きは・・・何故か正月を一緒に過ごしている二人(笑)
『まほうのおくすり』
作者さんのデビュー作品だそうです。
同性愛なのは病気なんだと、自ら野草やハーブを調合してそれを直す薬を作る母親を持つ主人公。
大人になった彼には、同性の恋人がいます。
今彼は幸せなのに、母親は幸せになれないと思っている。
その母親が調合した薬には何かの種が・・・
いつか、母親にも幸せなんだということがわかってもらえるといいな~と想いを馳せるマイノリティのお話でした。
これには、その後がありません。
でも、彼等は幸せなのですから。。。
「恋」という心に真摯に向き合ったお話たちだったと思います。
切なさも悲しさもすべてひっくるめて、素敵だな~とおもえる彼等です。
三田さんの作品に登場するキャラが好きです。
声高に主張せず穏やかで人当たりが良くて、それゆえ時々傷つくようなことがあってもどこかグッと我慢しちゃうような読んでてつい愛おしくなってしまうキャラたち。
そういうキャラが出てくると、どうかこのキャラがこれから先、辛い目に会いませんように…とか、さらなる幸せがいっぱい降り注ぎますように…とか読みながらついつい願ってしまうことが多いのだけど、この一冊の中にもそういうキャラがたくさんいます。
【白のころ】【青のころ・描き下ろし】
これが一番好き。
都会からやってきた転校生の藤と太一は仲良くなるのだけど、藤からキスをされてしまい…。
藤は恋を自覚しているけれど、恋を知らない太一はクラスメイトに揶揄われたこともあって俺はホモじゃない…と動揺してしまいます。
そんな矢先、藤が再び横浜に戻ることが決まり、これで全部元どおりじゃ!モヤモヤともおさらばできる!と思った太一は、藤に「ふるさとに戻れるんじゃ!ほんまに良かったー!うれしいじゃろ?わしもうれしいっ!」と笑顔で言っちゃう。ぎゃー残酷。
藤がキスしてきた意味もわからないような太一、そしてこんなことを面と向かって言えてしまうくらい太一は子供だった訳で…。
再会してからのお話はとても嬉しい。藤が幸せすぎて不安に感じるほど太一のことが好きなんだというところが、なんだか過去の思い出と相まって切なくなるのだけど、「運命じゃ」と言い切る太一が身長だけではなくちゃんと心も成長したんだなと思わせてくれて好きです。
その次に好きなのが【クリスマスブルー】
彼女からのクリスマスプレゼントのリクエストは5万円のブランド財布。それを買うためにバイトを掛け持ちしようかと思っていたところ、それを聞きつけたバイト先の常連から時給四千円で話し相手になってほしい、好きです…と告られて…。
この告ってきたリーマン・むっちゃんは普段はきっと物静かで控えめ(どころか引っ込み思案だと思う)な人だと思うんだけど、ただただ一緒にいたい…!という気持ちが募った末の申し出でして、恋は人を大胆にするんだなと。
あおいは友人からぜったい掘られるぞ!なんて警告を受けていたんだけど、そんな雰囲気はさらさらなく二人でのんびりこたつにあたっておしゃべりしたり、テレビを観たりしてまったり過ごすだけ。
むっちゃんが純でめちゃくちゃいい人なんで、このむっちゃんのことを絶対に傷つけないで〜!あおい頼んだぞー、お前がしっかり幸せにしてやれよー!といつも思ってしまう。
【春は半歩先】【春がきちゃった】
花屋勤務の恋人に振られてしまったゲイの森口。彼の事が諦め切れなくて、変装して花屋で働く元恋人の様子をこっそり伺っていたところ、同じ会社で働く社長の甥っ子にその現場を目撃されてしまいます。
おまけに花屋の女店長狙いだと勘違いされてしまい…。森口さんの恋を応援する!とおせっかいを焼かれるのに辟易していた森口が、俺がつきあってたのは、ずっと見てたのは男の方だ!バァーカ!と泣くところが切なくなります。
【オフィーリア】【その後のふたり ~葉山のきもち~】
高校の美術室にある絵に一目惚れして美術部に入った由良。その絵を描いた葉山先輩と出会って…。
絵のモデルは高校時代の葉山の恋人(男)でこの絵を描いた直後にそのモデルは事故で死んでしまい…という過去持ちの葉山。
由良が超ワンコ気質で可愛いんです。
悲しい過去を抱える葉山のことをこのままほおっておけない、なんとかしたいと思った末に、辛いことがあったらためこまないで俺に言ってね、「先輩より若いし、長生きするし、だから安心して大丈夫!」とか何そのセリフ、かわいいー。長生きするし…とか癒される。
「恋ってどういうものですか?先輩とこうして二人でいると楽しくてドキドキしてこれって恋なのかなぁ。こんなの初めてでよくわかんなくって…っ」って葉山に聞いちゃうところもかわいいんです。
そして超無自覚&超ニブチンなんだけど、自覚したら無敵のワンコになって葉山のことを愛情でくるんでくれること間違いなし。
【まほうのおくすり】
同性愛を治すお手製の薬をせっせと作り続けている母親。同性愛が治る薬があったら死ぬほど欲しいと願っていた時もあったけど、今、恋人と幸せに暮らしているからそんなものがあったとしても必要ないと思える二人。
同性愛を病気だと決めてつけている母親という何とも胸がざらつくようなキャラが登場するけれど、後味は悪くないです。お母さんはお母さんなりに幸せを願っているんだと思えるからかな。
萌萌よりの神です。
三田さんの作品読みたい病真っ最中で久しぶりに読み返しましたけど、やっぱり好きだー。
コミックス未収録の短編をまとめたやつでいいので、来年はコミックスなにか出てほしいです。
『白のころ/青のころ ~藤のきもち~』
中学生の太一の通う学校に都会から藤が転校してきます。
田舎っ子たちの間で都会の子として浮いている藤でしたが、
バスケをきっかけに2人は仲良くなり…。
坊主頭に太眉の純朴な太一とイケメンで
同年代の子たちに比べると大人びた藤。
恋の甘酸っぱさを先に知ったのは藤でした。
友情から恋に変わるとき、一足先に恋をしてしまった藤と
真っ白なままでまだ恋を知らない太一のすれ違いが切ない…
このまま終わってしまうの?と思ったら…
なあんだ、そういうことか。
思わず頬が緩んでしまいました。
描き下ろしは2人の再会と恋人同士になるまで、なってから。
小さくて、子ザルのようだった太一が大きくなっていてびっくりです。
これは完全に攻受交代です(笑)
でも、中身は相変わらずで、大きくなっても素直なまま。
幸せいっぱいな2人がすごくいいなぁ~
『春は半歩先/春が来ちゃった ~幸男のきもち~』
彼氏にフラれてしまった森口。
気持ちの整理がつけられず、元カレの花屋を覗きに通っていると、
現場を社長の甥っ子に目撃されて、花屋の〝女性〟店員に恋している
と勘違いされてしまい…。
社長の甥っ子・幸男が能天気でおせっかいで、
はじめのうちはそんな彼にイラっ☆としてしまいました。
だけど、ちがった、本気で良かれと思っているみたいで、いい奴でした。
酔った森口にゲイであることをカミングアウトされて、
「ゲイの苦しみがわかるのか」って言われて、
引くでもなく、逆ギレするでもなく、真顔で考え込んで
「わかんないや」と真摯に答える姿にイメージアップ!
描き下ろしでは
「俺のこと好きになってもいいよー」なんて言われて
赤面しちゃう森口と、ゲイじゃないくせに
そんな森口の反応にドキドキしちゃう幸男のやりとりにニヤリ。
もはやバカップルでは?と恋の予感を感じ終えます…。
『オフィーリア/その後のふたり ~葉山のきもち~』
一枚の絵が繋いだ2人。
学園祭の催しで由良はずっと憧れてきた絵画の作者に出会います。
過去に悲しい恋の思い出を抱える葉山だけれど、由良に救われて良かった…。
描き下ろしでは由良の憧れが恋に発展して…。
葉山の方ではとっくに恋になっていたんだね。
鈍くて、初々しくて、もじもじする由良が可愛かったです。
葉山先輩、頑張って!
『クリスマスブルー/お正月ピンク ~むっちゃんのきもち~』
彼女に高価なクリスマスプレゼントを買うために
掛け持ちバイトを探していたあおいに常連客の睦彦が声をかけてきます。
それは突然の〝愛の告白〟と、〝話し相手になる代わりに時給4000円払います〟
というものでした。
怪しみながらもお金が必要だったこともあり、引き受けてしまうあおい。
そこにある想いは誰よりも純粋なものなのに、
お金という不純な動機から繋がった睦彦とあおい。
はじめはただのお金目当てで、睦彦には無関心なあおいだったけれど、
一緒の時間を過ごすうちにあおいの中で何かが変わり始めて…。
「俺ホモだもん」なんてそんなこと言わないで。
お金でしかあおいを繋ぎ留めれないって思ってるの?
なんでそんな悲しいこと…
だけど、きっとこんな風に自虐的になるしかないような
たくさんの辛いことがあったのかな…と切なくなりました。
睦彦が健気で、一途すぎて泣きそうに泣きそうでした。
描き下ろしではそんな睦彦がほんの少し報われます…よかった~(´;ω;`)
本編でがんばった睦彦へのご褒美パート。
睦彦の健気さに心打たれ、やっと正面から向き合いはじめたあおい。
まだ恋にまではいかないけれど、これはきっと恋の予感♡
ばあちゃんが寝たふりしたり、フォロー入れようとしたり
しているのに笑いました。
『まほうのおくすり』
同性愛者の息子を病気といい薬を作り、
幸せになれないなんて呪いの言葉を吐き続けてきたお母さん。
だからこそ、今、好きな人に出会い、愛し合い、
幸せそうな2人があることにこの上なく幸せを感じた。
ある意味、このお母さんもちょっと病気なのかもしれない。
ありのままの自分を見ようとせず、受け容れるようで拒み続けてきた
母親を捨てるでもなく、受け容れようとする終わりは意外に後味は悪くない。
恋未満のお話から、恋が成就するお話、
恋に破れてまた新たな恋の予感が訪れるお話、
と色んな恋の形が詰め込まれた短編集でした。
決して派手ではないけれど、どれも心に突き刺さる
すごく素敵な話ばかりでした。
一つ一つのお話が読めば、いとおしさで胸がいっぱいになりました。
描き下ろしだけでは物足りなくて、もっともっと
その後の彼らのお話を読んでみたいなあと思ってしまいました。
◆白のころ(表題作)
初っ端から可愛い中学生達だなぁと、萌えと胸キュンが止まらない2人でした。背が小さくて丸っこく、目も純真でくりくりな太一が可愛いのはもちろん、思春期に都会から田舎に転校になりもっと不貞腐れていてもおかしくなさそうな藤本が、バスケや雪ではしゃげるところも年相応で可愛くて。藤本の告白によりぎこちない別れになってしまった2人は大学で再会し、恋人に。ここで体格差が逆転して、太一が攻めなのがまたたまらないんです。顔は可愛い系のままだし、おっとりした性格も変わらないけれど、幸せ過ぎて不安がる藤本を、穏やかでどっしり構えた言葉で安心させるところに、イイ男になったなぁと思いました。
◆オフィーリア
好きな絵の作者だという先輩・由良を、真っ直ぐ追いかけ続けた葉山が素敵でした。何か気に障ることを言ってしまったかも、と思ったらすぐ戻ってきて話したり。本当に素直なんです。一緒に海に行って楽しそうにしている様子も、これは愛おしいと思わずにはいられないよなぁと。傷心だった由良が、新しい恋に踏み出せた嬉しそうな表情が印象的でした。
◆クリスマスブルー
大学生に時給4000円を払って話し相手になってもらうサラリーマンの話。なかなかのトンデモ導入ですが、あおいとただ一緒に過ごしているだけで満たされている睦彦を見ていると、いくつになっても純粋な恋ってできるものなんだなぁと温かい気持ちになります。でも、今までの寂しさが募りに募って爆発した、彼の本音は切なくて。結局はなあなあで付き合っていた彼女と別れたあおい。彼はただ孤独な睦彦に絆されたわけではなく、今まで共に過ごした時間が彼の心に沁み込んでいたんだろうなぁと思います。
作家買いしてる三田織先生の短編集でした。
5つのお話と、4つにはその後の描き下ろしつき。
最後のお話は三田先生のデビュー作だそうで、描き下ろし無しでした。
どのお話も優しさに満ちていて、読後はほっこりとした温かい気持ちになれます。
短編だけでは物足りない部分を描き下ろしで補足してもらえる、安心感。そんなところまで優しい。
どれかにフォーカスするとすれば、最後の『まほうのおくすり』でしょうか。
高校時代の辛い思い出から、出会い、幸せな現在の2人の生活。
"まほうのおくすり"はもう必要ないんだよっていうお話なのですが、くすりの中身をああいう風にすることで母親の気遣いや愛情も感じられて、ちょっと辛い設定ですがそれを昇華できる展開になってるのが素晴らしいと思いました。
こんなに短いお話で色々考えさせられて、読後感の良い作品はなかなか無いのでは。
こういう作品をもっと読みたいなぁ、って思える一冊です。