金が欲しければ俺に身体を売れ!

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表題作拾い犬

鉄輪巧,グレーゾーン金利で金を貸す金融会社社長
志摩遥,攻様の賃借人に雇われていたバーテンダー

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

違法すれすれの裏金融を生業とする鉄輪は、ある日、借金の取り立て先で、謎めいた美青年・志摩と出会う。家も仕事も失った志摩を、鉄輪は気まぐれでバーテンダーとして雇ってやるが、従順な態度とは裏腹に、決して他人に感情を見せようとしない志摩に苛立ちが募ってゆく。彼の心を暴いて自分のものにしたい! それが恋だと気づかないまま、鉄輪は金と引き換えに志摩を抱くのだが。
 静かに胸を熱くする、大人の純愛ストーリー。

(出版社より)

作品情報

作品名
拾い犬
著者
火崎勇 
イラスト
森原八鹿 
媒体
小説
出版社
アスキー・メディアワークス(角川グループパブリッシング)
レーベル
B-PRINCE文庫
発売日
ISBN
9784048869959
3.9

(27)

(10)

萌々

(7)

(9)

中立

(0)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
4
得点
105
評価数
27
平均
3.9 / 5
神率
37%

レビュー投稿数4

犬の姿になった受け様が浮かぶようです

タイトルにズバリ犬なんて言葉が付いている作品ですが、この犬は心優しき野良犬。
それも昔は普通の所できちんと飼われていたような雰囲気がありながらも、
コマンドを出してくれる飼い主は突然いなくなってしまって、途方に暮れてる、
そんな感じに思える犬さんです。
ワンコと言う言葉よりも犬さんの言い方の方がしっくりくる感じなんですよね。
BL的に犬と言うとやんちゃで飼い主に懐きまくりなんてタイプが多いけれど、
今回の犬さんは、甘える事も、望みを抱く事もない辛気臭くて虚無感を抱えてる雰囲気。
攻め様はヤクザ一歩手前みたいなグレーゾーン金利の闇金融系の社長で、
今回の主役二人はギリギリ裏の世界の人間ではないけれど、グレーな世界で暮らしてる。

内容は借金の取り立てに行った攻め様が、その店でバーテンをしていた受け様を
何となく拾ってくる事から始まります。
攻め様の暇つぶしで、借金のカタにとった店を仕事も住まいも無くした受け様に
任せる事になるが、運転資金も店の家賃もしっかり取る所は、やり手の金融屋。
それでも、受け様は何も当てが無かったから一言返事で受け入れる。
きっちり考える事も放棄してる感じだけど、言われた事にハイって返事しちゃうまさに犬。
気まぐれで拾った受け様、でも何を欲しがるでもなく、感情の揺れ幅も少なくて
考えてる事が見えない、次第に攻め様は受け様の事が気になるようになる。

恋だとか愛だとかが前面に出てくるような話ではないのですが、いつの間にか執着や
独占欲を受け様に覚え初め、それを恋なんて言葉で片付けられるほど簡単でもなく、
それでも受け様が欲しいと思う気持ちは強くなる。
ラストの方まで、恋愛的なものが直接は見えてこないのですが、訳ありの大人の恋って
こんな風に始まる事があるのかもと思えるお話でした。

5

ほの暗さの中で浮かび上がる麗人のシルエット

電子書籍で読了。挿絵あり。あとがきなし。

違法すれすれの金融業者、金輪の視点のお話なので、志摩が何を考えているかは謎のまま物語が進みます。
それ故、志摩のミステリアスかつ儚げな美しさが際だつという「お上手!」と手を叩いて賞賛したくなる様な一冊です。

借金を払えなくなった借り主から担保に入れていたビルをせしめた金輪は、そこで働いていたバーテンの志摩を拾います。行く所がないという志摩に金輪は運営資金を貸し、潰れたバーの運営を任せることにしました。真面目に仕事をし、返済も滞りなく行う志摩でしたが、ある日、女のためにまとまったお金が必要になってしまったので更に借金をしたいと求められます。気まぐれで拾っただけと思っていた志摩に対して独占欲を抱いていることに気づいた金輪は、借金の代償に奉仕を求めるのですが……

志摩が印象的に描かれるシーンの多くは雨が降っていてほの暗い。
暗い中に、色の白い、端正な志摩がぼんやりと浮かび上がって見えるのです。
それは金輪の心象風景でもあるんではなかろうか、と思うんですね。
ヤクザではなくてもかなりグレーな仕事をしている金輪は、ちょっと疲れているのです。嫌々やっている訳ではないのですが、他人の事業の失敗が金輪の利益になっている訳ですから、その手の暗い情景ばかり見続けてきていて、それにちょっと倦んでいるという感じでしょうか。
そこに、ワケアリなのに清潔感のある志摩が浮かび上がってくる、という。
いやー、こんなのどんどん惹かれていっちゃうのは必然!

でも、そういう商売をやっている金輪ですから、とことん夢中になって恋に飛び込む訳ではないのです。読んでいるこっちはジレジレしました。
ラストに用意されているのは『小さな幸せ』で、爽快感はないのですが(これもある意味『裏社会もの』に分類される様なお話だと思いますのでね)その小さな幸せにたどり着いた二人に、安堵の溜息をついてしまう様な満足感をもたらしてくれます。
しっとりとした大人の恋物語の佳作だと思います。

3

大人の甘々ストーリー

違法スレスレの金貸し鉄輪と、鉄輪が拾った男・志摩のお話。
全編通して仄暗い、じめじめした空気感だったのに、読み終わった第一の感想が「コイツら甘々やーん」だったという不思議。
何これ、火崎先生マジックなの?

志摩は、ミステリアスで陰のある男なんです。
バーテンダー姿が、色っぽいんです。
美味しいご飯を作ってくれるんです。
鉄輪が、気まぐれで拾ったはずの志摩に、徐々に惹かれていく描写が秀逸でした。
志摩を手に入れようと積極的になる鉄輪は、カワイイ男でした。

鉄輪の年齢が不明(出てました?)だけども、この二人、10歳以上の年の差ありますよね。
共依存に近いものがありますが、なんだかんだお互いに甘いし、特に鉄輪は、志摩をズブズブに甘やかしそうです。

重すぎず軽すぎず、の良い作品でした。

1

作家がよくわかるお手本のような本です

前回のビープリ執筆作品は、軽さを出そうとして何かスカスカな感じがして評価できなかったんですが、今回のこの作品は普段の火崎作品らしさが実に簡潔に、
そして、お手本のように上手く作られたというか、この作家さんの特徴が多分火崎初心者の人にもよくわかりやすく簡素化しながらも、その持ち味をよく出していると思います。
作品としては、すごく既視感のあるモノで目新しさはないですが、作家さんの実力を見せつけられたような気がします。
本当に、この作家さんはすごいな~と。
登場人物への萌えとか、作品の萌えとかいうよりも、小説の作り方という点でなるほどーと思わせます。(本当、お手本みたいw)

話の進行は、攻めの一人視点で進んでいきます。
受けの気持ちの描写はありませんが、攻めとの関係・会話・状況だけでそれが汲み取れるので、物足りなさはありません。(←多分ここがスゴイと思ったところ)
それに、人物の設定だけでその対比もできて、それが状況を読み取るのに足りているのです。

ヤクザではないが、ヤクザまがいの金融業をやっている鉄輪(かなわ)は借金の取り立て現場で、職も住居も失った青年・志摩と出会います。
どこか捨てられた犬のような、ほうっておけないモノを感じた鉄輪は、彼が生活していくためにバーを一件、借用書を書かせて経営させます。
金貸しをしている鉄輪にとって、欲にまみれた人間をたくさん見てきただけに、
質素で、何も望まず欲も言わず、つつましい生活を続ける志摩の存在が、気に掛かり心にとまるようになるのです。
そんな何も望まない志摩が突然借金を申し出る。
金のかかる女の為と聞いた鉄輪は、彼の体を借金の担保として貸すのですが、更に借金を申し出る志摩は、それから音信不通になってしまう。

欲と煩悩にまみれた世界と人間の中に現れた、綺麗な存在。
それが志摩であり、鉄輪の惹かれる理由。
志摩には理由があり、ただそれだけのために働いて生きてきた。
生きるよりどころはそこにあったのに、それをなくしたとき、不安になったとき側にある存在が鉄輪であった。
そういう結びつきですから、とても自然だったのです。
いつもの、ラストで怒涛のように明かされる秘密。。。という展開はお約束ですが、それは後付けのようには全く思えず、説得力がありました。
いつもの淡々とした温度の低い、でも低温やけどをしそうな熱が火崎作品の持ち味だと思います。
それが実に明瞭にわかりやすかった作品でした。
そして、付け加えるなら、、、
鉄輪もちょっと変わったのかな?
少しは人の良心というものを信じる人になったのかもしれないな、と思います。
火崎作品入門編にぴったりなわかりやすい出来でした。

9

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