本誌連載時から話題を呼んだ平安愛憎劇、ついに単行本化。

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表題作華なるもの

大貴族の息子 智実
武家三男からの成り上がり者 高前

同時収録作品そののちは

近衛中将 藤原敦満
従者 高前

同時収録作品雅楽師の恋

雅楽の師匠
院御所に呼ばれた雅楽師 由陽

同時収録作品いと、おそるること

北面の武士 高前
蔵人 千里

その他の収録作品

  • つきあかり
  • ひびくもの
  • しのぶれど
  • さくら
  • おまけまんが

あらすじ

院御所を騒がすは美しい犬。

「私がすがるなど」

時は平安末期。
武家の三男と卑しい出自でありながら、
権力者たちの寝所を渡り歩き、上皇の寵人となった高前(たかさき)。    

美しい成り上がり者として
畏怖と羨望の視線を集める高前だったが、
有力貴族の御曹司・智実からは素直な好意を寄せられ、その余裕を不愉快に感じる。

しかしある日、二人の関係が決定的に変わる
事件が起こりーーー。

引けぬ意地と激情が絡み合う
切なく底深い大人の恋愛劇、
〝数年後〟を描く掌編を描き下ろし。

著者:西つるみ

作品情報

作品名
華なるもの
著者
西つるみ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
祥伝社
レーベル
on BLUE comics
発売日
ISBN
9784396783303
3.7

(69)

(31)

萌々

(12)

(13)

中立

(7)

趣味じゃない

(6)

レビュー数
25
得点
249
評価数
69
平均
3.7 / 5
神率
44.9%

レビュー投稿数25

犬は犬

手段を選ばず努力して、高いところに昇ってみても犬は犬。美しく着飾った犬でしかないのだと、思い知らされました。
高前に感情移入はできませんでしたが、彼の境遇や人生には同情します。

愛憎の果ての高前の物語は、最後は穏やかで幸せなものだったのではないかと思います。言葉にした確かなやりとりはなくても、心はきっと通じ合っていたのでは。

しかし作中の高前の心中は多く語られないので、私自身がそう信じたいだけです。
BL的要素を摂取したというよりは、高前という1人の人間の人生を読んだ感覚でした。

この終わり方が、彼に最もふさわしい最期だったと思います。

1

意見は別れるかも…

自分の美貌を武器に
成り上がろうとする高前

反対の位置にいる智実

そんな2人が出会えば……

高前の成り上がろうとする欲が
なければ
幸せな結末を向かえたのか
それは
分かりません
智実の親友を罠に嵌めなければ
など
タラレバですが

高前は歪んでます
怖いくらいに
成り上がった先に
何をみていたのでしょうか
成り上がったとして
あのままでは
結局寂しい晩年を向かえたでしょう

智実の呪詛
それはある意味高前には
幸せな言葉だったのではないでしょうか
それは
智実にもいえますが
結ばれる事のない
2人はその言葉で
結ばれていたのだと
思います

だから
最後はハッピーエンドではないですが
実はハッピーエンドかもしれないな~

0

荘園時代 身分差の壁に独り挑んだ武士の物語

西つるみさんは、今何か作品を出しておられるのでしょうか?
知らない作家でした。この作品は、耽美風の名作だと思う。
絵柄は派手さが無くて、鄙びた平面顔。ほのぼの系の絵で幼さを感じるキャラが、エグイ方法でのし上がるギャップに、魅力が有るのかもしれない
耽美風のまとめ方で、全部を書かない、余韻を残す印象に残る作品

「華なるもの」
発売当時の写真を見たら、帯文は「院御所を騒がすは美しい犬」。
犬、です。貴族の驕りを感じる。
当時の武士は、貴族の使い捨ての武力に過ぎなかった時代。
武家の三男の高前は、野心家。
高前の野心は、切ない武士の立場を変えたいという願望が源になっていたのだと思う。
捨て駒の野垂れ死にを疎み、高前は才覚と美貌を活かし衆道の人脈で貴族社会の上を目指す。
高前のやり方は、庇護を受ける今の愛人の人脈を食い尽くしていく方法。
今の愛人の上の権力者に取り入り、次の宿り木に今の愛人を処分させて縁を切る。
割り切って渡り歩くために、情を絶ち、愛に背を向けて進む高前。

その方法は、下品で遺恨を残す、そして先のことを考えていない。
貴族社会の世間は狭い、血族の網は意外と密。
何時かしっぺかえしが舞い込む危険がある事が念頭にない。
ただ目の前のチャンスを掴んで渡り歩いているだけ。
権力者たちの寝所を渡り歩き、上皇の寵人となった高前。

容貌が容色の衰えを自覚するころ、本当の恋を知る。
高前と智実の恋というより、情念の裏返し。
最後はバッドエンド、愛を捨てた遺恨の因果応報を受ける高前。
都を偲んで泣く「足摺岬」に似てる。

「雅楽師の恋」
それと真逆、愛の為に全てを捨てた物語が同時収録されてます。
どちらが良い人生なのか、第三者には判断尽きかねます。
主人公と一緒に悩んで考える作品でした。

2

美しい犬

久々に読み返して発売当時より断然好きになっていました。花散るときに召される姿は色んな作品で見られますが、美しいです。

高前が目指したものはなんだったのだろう。序盤は出世欲が非常に強いようにも思えましたが、結局のところ媚び切ってまではその地位を守ろうとはしない。彼のプライドの核が分かるようで分からない。言葉で説明はしがたいけれど彼の望むところは分かるような気もする。

敦満がまた出てくるかと思いきや、出てきませんでしたし。
高前は翻弄された人生というよりも、己が手で自分を追い込んでいったようにも思う。ただ右大臣家の一の姫のように心を手放さず済んだのは、その強靭な心と、あの最期からも智実への想いがあったからなのでしょう。それにしてももっと生きやすい道があったのではなかろうか。

皆さんのレビューを拝見したら同じような感想をお持ちの方がいらして、嬉しいです。

0

あまりに頑なで、凛とした生き様

 綺麗で優しいタッチで描かれる、平安時代の愛憎劇。表紙の雰囲気から予想していたよりも遥かに人間関係が複雑で、当時の身分制度もしっかり鑑みられた作品でした。画のタッチのおかげで、どろどろしていた、という印象はあまり残らなかったのですが、無情さを感じるシーンは多々あり、人が皆平等ではなく、各々の生まれによってはっきりと位が定められていた時代の恐ろしさを改めて思い知ります。

 主人公は武家から成り上がった高前という美男子。頭がよく切れ、歌の才もあり、落ち着いていて隙がなく、複数人の夜伽の相手も難なくこなしてしまう青年です。冒頭でこそ、健気に抱かれているように見えますが、それ以降は体でのし上がる自分に対して悪びれも悲しみもせず、常に誰のものにもならない掴み所のない人間として描かれていて。生まれによって、自分より剣術や勉学、歌などで劣っていても偉く、自分を簡単に愛人にしてしまえる彼らへの意地だったのでしょうか。己を侮辱し陥れようとする者に復讐するために、罪のない第三者を犠牲にすることさえ厭わない非情さすら見せる彼。綺麗な見目に隠れた棘が恐ろしく鋭い人物なのですが、それこそが彼をより魅力的に見せてもいるのだと思うのです。

 涼しい顔でさらりと毒を吐き、誰にも甘い睦言など囁かず、理性を失わない彼が唯一苦手なこと。それは、自分が心から望むものを、素直に欲しいと言えないこと。完璧な彼の、唯一にして最大の弱点。指の間から零れ落ちる砂のように、数多の人間の間をさらりと身を躱して通過してきた彼は、最後に誰からも引き止められない孤独を知る。本気、本音を誰にも見せないということは非常に強い武器だけど、それは孤独と切っても切り離せないもの。流刑さえ淡々と受け流してみせた気丈な彼は、自分に会いにきてくれた智実を追いかけはしても、けっして縋りはしない。本当に最期までその生き様を貫いた彼の人生が、気高くもあり、馬鹿らしくもあり、美しかった。それでも智実が高前が迎えにくるのを見ることができたのは、年々高前の彼への想いも募っていったからなのでしょう。

0

互いの精一杯ですね

はあ…タイムトリップしました。
平安時代のお話です。おどろおどろしい政治の中で生きていく為に、身分が下位で有るところから寵を得てのし上がる。

とはいえ、のし上がる事が目的ではないのかもしれないです。
髙前は、ずっと誰かに寵を得てもなお自分らしさと気高さを失わなかった。
何人目の情人か、分かりませんが最後の人は後の右大臣の智実。
どちらも、政治の世界では窮屈で思うようには生きれなかったなぁ。

髙前が佐渡に流されて、屋敷の桜を見続けた日々は確実に智実だけを想っている。智実も、そうあれと仕向けているわけで。
後に、佐渡で逢うようになっても再び逢瀬を交わすことはなかったですけど。

当時の世界では、お互いの精一杯だったのでしょうね…

読むと、胸が締め付けられる。
来世で、逢えるかな。桜咲くこれからにお勧めしたいお話です。

0

人の命は、桜のように儚く散りゆくもの

最初は短篇集かと思いました。
でも、主人公の高前という
ひとりの男の半生を描く物語でした。

美しくも儚い、移りゆく桜のような半生…。

隆盛を極めたところから没落していくまでを
描いています。

自分の美しさを武器に、主人を捨て、
院の寵愛を受けることになります。
そこに自分を救ってくれそうなほどの眩しさを持つ
敦満に出会います。
お互い惹かれ合いながらも、周囲の状況がそれを許しません。

正直、読んでいて、高前にムカムカしてました。
あらゆる人間の汚さ、奸計、それを武器に
政治を揺るがしていきます。

しかし、それに自分自ら火に入るように飛び込み、
高前は流刑となります。
これは、想い人である敦満への詫びだったのでしょうか。
親友の命を奪った高前にできる最高の詫び、
そうだったのでしょうかね。

敦満は最後、高前に
「私だけを恨み、思い続け 果てろ」
と言い捨て、去ります。
二人の胸に去来するものは何だったのでしょう。
惹かれ合いながらも、決して相容れなかった二人。
あまりにも悲しいです。


最後、高前は流刑地で毎年見続けてきた桜が散るのを
見届けようとしましたが、
それを見届けることなく、満開の桜の下で
天命を全うします。

人の命はなんと、儚いものなのか…
人の想いも同じでやはり儚いのか…

そう想わせてくれる作品でした。

-------------------

美しい物語だったのですが、
汚い政治のあり方に辟易してしまい、
正直、全く萌えがなかったため、この評価でお願いします。

3

散る桜の美しさと儚さ

作者さんのコメントで
"冷血成り上がり者の平安総受けライフ"
と、書いていらっしゃいますが、
まさにその通り!な、お話しでした。
ラブ度も萌え度も低めなので、読む人を選ぶかもしれませんね。

1話めの恐らく高前の最初の足掛かりにした貴族男・敦満を閑職に追いやった話は悲しくもぞくっとしたし、
そしてこの本のなかで唯一、高前とさほど接点のない話であった雅楽師の師弟話は権力に屈しない想いにほろっとし、
とてもよかったと思えました。

そのあとは高前と智実の愛憎劇。
元々後ろ楯なく身体と策略でのしあがってきた高前もついには身を滅ぼすのですが、
それでも最後まで毅然とした高前の姿に、どうして彼はこういう人生を選んだろうかと物悲しくなります。
人から愛されることの免疫がなく、人を愛することを怖がったからこその結末。
智実を羨みつつも愛し始めていたのに、相手を傷付けることしかできなかったあまりの不器用さが心に痛いです。

しかし高前の成り上がり時よりも転落時のほうが、事があっさりとしてしまったのが残念。
高前に抵抗する気がなかったからでしょうか?
だとしても、話の性急さを感じてしまいました。
また最後の展開は少しばかり蛇足ぎみで、そこはページ数を減らしてもよかったかも。
難しい判断になると思いますが、後の話をあまり書かないほうがよりドラマチックになったような気がいたします。

それにしても、装丁がなんともよいです。
高前と智実は憎しみ合い、すれ違い続けてしまったけど、読後感は爽やかです。
時代ものがお好きな方にはおすすめです。

4

日本的な美意識で描かれた作品

BLには珍しく、がっつり悲恋もの。
身分卑しき武士・高前(たかさき)は、美貌を武器に出世をもくろみ、男を踏み台にして宮中に足掛かりを得ます。
高前という美しき花を手折らんと群がって来る高官たちに惜しみなく体を与え、手玉に取る一方で、心は誰にも許そうとしない高前。彼には、自らの出世を邪魔する人間は容赦なく地獄に突き落す、冷酷な一面も。
そんな高前が、公卿別当の子息・智実の求愛だけは頑なに拒み続けます。体を許せば、智実の眩しさに心も奪われてしまいそうで。
しかし、そうするうちに、高前は意図せず智実の友人の命を奪う結果になってしまい、二人は憎しみ合う関係へと…

愛し合っているのに、憎しみ合うことでしか繋がれない高前と智実…もう二人の情念まみれの関係性だけで萌えます!
ジャパネスクには、報われぬ恋がよく似合う?!
いやいや、こういうストーリー大好きです。
ただ、高前は何故誰にも心を許そうとしないのか?彼は何故幾人もの人間を陥れてまで出世にこだわるのか?という辺りの描写がないので、どうも今ひとつ高前に感情移入できないのが残念。
かなり歪んだ面を持ったキャラだけに、高前の生い立ちや彼が何を目指しているのかについてもっと知りたかったな…と。(1話20ページ前後の連載物なので、そこにページを割けなかった事情もよく分かるんですが…)

当初は、現代モノっぽい甘めふんわりな絵柄にかなり違和感を感じましたが、最終的にはあまり気にならなくなりました。
むしろ絵は軽めのほうが、淡々と哀しみを塗り重ねていく智実と高前の心模様がシュールに伝わってくる気もして。
ただ、絵とストーリーの相性に関しては、人によって意見が分かれるところかもしれません。

それにしても平安BL、思った以上にイイ! 髪を結い上げ公家装束を纏った男性って、それだけでハンパなく妖艶…これはもう平安マジックとしか。
濡れ場はほぼイメージ画像止まりですが、智実が、憎しみと愛情を刻み込むかのように高前を犯すシーンなんか、すごく妄想を掻き立てられます。満開の桜の下というシチュエーションがまたその後の二人の生涯を描く上でも効いていて。
単に現代モノのストーリーを時代だけ平安に置き換えたというんじゃなくて、平安という舞台にふさわしい和の美意識で練り上げられた作品だと思います。
「平安愛憎劇」の看板に偽りなし!でした。

6

はずれ

設定に興味を持って購入。

でも、絵柄と内容が合っていないので残念。
暗い情念の世界を感じさせてくれるわけでもなく、とっても薄味。
キャラクターのかき分けも残念だし、主人公が美しく見えないのが何よりも残念。
美しい犬、これのどこが? というかんじでした。

装丁はきれいだけど、パッケージに騙された印象。
しかも、ここに感想を書きに来て、あまりの評価の高さにびっくり!
みなさん、よく訓練された読者というか、脳内補完がとっても上手なのかも? わたしは同じ本を読んだと思えないような感想ばかりで、本当に驚きました。

絵柄そのものは悪くないけど、平安の雅な雰囲気を味わえず、権力を得るために美貌を駆使する主人公にも魅力を感じられず、残念づくしの一冊でした。
次のコミックスが出ても、手に取らないと思います。

7

平安愛憎劇…アオリそのままです。

まず初めに、歴史的背景についてあまり突っ込み過ぎるといけないかなぁ…と(笑)
あくまで平安時代をただの舞台と捉えて、男色の文化など詳しい史実については一先ず気にせずに読むことをお勧めします。

内容は、優美を極める平安の世でのBLです。時代背景を生かした描写も見られ、内容もとても充実していると思います。詳しいことはここで書いてしまうより、読んでみた方が絶対に良いと思うのであえて書きません。大まかには、「高前」という主人公を主軸として繰り広げられる愛憎劇です。

メインCPは高前と智実ですが、二人の恋の形は歪で、とてももどかしく、切なく、悲しくも美しい関係性です。物語のクライマックスに向けて涙があふれます。

レビューを書いておいてなんですが、前情報は無い方がいいと思います。(笑)その方が楽しめます。

5

平安に生まれなくてよかった

怖い。
どろどろしている。
人がここまで冷酷になれるものなのか。
高前という人間の汚さに嫌気がさした。
美しい犬と呼ばれてちょーしに乗って落ちた。
きれいな男が成り上りだけでどこまでいけるのか、
期待と腹だたしさがあった。
出生がいやしい者だから必死になってこうなったのか。
それは高前にとって必要なことだったのか。
この人はなにになりたかったのか。
最後までよくわからなかった。
何がしたくて生きて死んだのかよくわからなかった。
そんな男を好きになってしまった智実はかわいそうな人だと思った。
見た目は美しいけれど美しくない。
腹立たしいのに悲しい。
読み応えありました!!

4

美しい犬。

時は平安の世。
身分は低いながらも、美貌で寵愛を得て出世を果たす高前。
身分の差という壁に阻まれながらも、求めてくる貴族たちをあしらい翻弄してきた高前だったが…
美貌の成り上がりの生きざまを描く、雅なピカレスクロマン。

BLでは珍しい舞台設定なので興味を惹かれたのですが、キャラクターの麗しさの描き分けが今一つだったので、高前が特別抜きん出た美貌の持ち主に見えず……orz
それから、当時男色がここまで一般的ではなかったと思うのですが…私の認識が間違ってるのかな???
現代日本でシリアスな展開なのにゲイしか登場しない設定のBLを読んだような違和感が拭えませんでした(ゲイバーが舞台なら別ですが。)
話は面白かったけど、モヤモヤ感に阻まれて萌評価です。

4

じわじわくる

BL…というよりは平安時代を舞台にした権力争いが軸のサスペンスのように読めました。
わかりやすくキュンキュンするような恋物語りではないのですが
個人的には、こういうじわじわくる二人の絆を見せられたほうが興奮しますね。
終盤になると受と攻のあいだに憎悪の関係が生まれ、それは死ぬまで続くことに
なるのですが、これこれ!こういうの!待ってました!と思いました。
コミックス1冊分でこれだけの世界を見せていただけるのは素晴らしいですね。

7

感情移入せずとも胸を抉る物語ってあるんだな、と。

心が苦しいです…
間はどうにせよ、最終的には
ハッピーエンドと言えるBLばかりを読んできたため、
この幕の閉じ方は泣くしかできなかった…


自らの見目麗しさを武器に
成り上がる主人公高前。
身分の高さゆえ色や才を武器にせずとも
全て手に入れられる智実。

智実はただ「智実である」というだけで、
高前の触れてほしくないところを
刺激してしまうような存在だった。
ただ、高前のやり方は冷たく卑劣で、
美しいから許されるのか、と思うと余計に切ない。


1・2話あたり、作者様迷っていらしたのですね。
1話目で登場する高前の主・敦満が、
またどっかで出てくんじゃないかとか
途中まで思ってしまいました。
しかし読み進めるうちに、
智実との関係に息を呑み引き込まれてしまって
そして読んで泣いた後にまた敦満を思い出しました。
敦満の高前への愛情が真っ直ぐだったように思えたから、
そのままだったのはちょっと残念だったのが本音。
だけど、最初の主を自ら裏切った高前の行為が
枷の様に高前自身にまとわりつき、
主を持たない一生を送らせたのだと思うと
これでいいのか…とも思えた。

そう思うと2話目の「雅楽師の恋」で、
高前がふたりを許したのは、
無自覚のうちに真実の愛を求め、
ふたりを羨ましく思ったからじゃないのかな、と
も思えるのです。


一度だけ、智実の言葉を受けて
心からほほ笑む高前の顔が忘れられません。

そして智実の言葉、
「私だけを恨み 思いつづけ 果てろ」。
怨念とも、呪いとも、執着ともとれる、
この台詞は胸というか首まで締め付けてくるかのようでした。

毎年姿を合わさずとも、
高前は智実の来訪を喜んでいたのだろうと思う。
存在がすぐ近くにあるということに。
結ばれなかった二人は天の上で、
或いは他の世に転生をして、
次こそは一緒にいられるだろうかと願ってやまない。

描き下ろしの2ページ。
呪いは自分に跳ね返るとかよく言う。
智実もそうだったのではないかと思える。
智実も高前を思い続けて果てたのだと。
そして百助が高前のその後に、
智実に仕えていたことがじわりと胸に来ました。


全編通して高前のやり方にはぞっとするし、
感情移入もしにくい。
智実の素直さも育ちの良さ故かと思うと
少し反感を持ったりもする。
でも、終始、物語に惹かれてやみませんでした。
キャラに感情移入が出来なくても、
こんなに胸を突く物語ってあるんだなぁと。

私は普段歴史ものに興味はないのですが
これは純粋に良い作品だと思えました。
勿論、歴史もの好きな方にはおすすめですが、
そうではない方も読みにくさはないと思う。
ただ、バッドエンドの香りがあるので、
万人にはおすすめしません。
切なく泣ける話に魅かれる方には
読んでみてほしいと思います。


ドロリとした美しい物語。
表紙絵も装丁も、とても美しい。
on BLUEの装丁は素敵なものがとても多い。

14

月と陽と、そして桜と

本屋のBLコーナーに平積みしてあって、表紙のため息の出る美しさに手に取った一冊。
珍しい平安ものBL。

平安末期、武家の三男という低い身分から美貌を武器に、
権力者達の寵愛を受けて成り上がっていく高前(たかさき)。
その彼に惹かれ、まっすぐな好意を向ける大貴族の御曹司智実。
月のような高前と、太陽のように明るく輝く智実。
高前もまた実は惹かれながらも冷たくし、人々の思惑も絡んで運命はすれ違っていく……

というのがストーリー。
設定やキャラクターも好きだし、現世では結ばれることのない魂で結びついた二人……
というバッドエンドに近い美しく切ない結末のは大変好みではあるのですが
惜しいのは全編もうちょっと緻密に描けばよかったのに、ということ。
割にトントンとエピソードが綴られていくので、物足りなかったかな。

最初の敦満さまに感情移入してしまったので、彼に関しての余韻がないのも残念。
二つ目の楽師の師弟愛の話は、綺麗にまとまっていて話としては平凡だけれど、
好きでした。

8

「い」が在って「ぶ」は無し

一人の武人の出世物語、と額面通り捉えれば
かなり不快な物語かも知れない。
しかしながらもしも彼が日常の殆どを能で言う所の
直面で演じていたとすれば、どうか。
それでも不快と言う人は居るだろうが評者は
その直面の皮の厚さを天晴さと讃えたい。
その見事さが時折ほころびて隠し遂せたと
思った筈の心がこぼれて慌てる様も
又一興だろう、と。

描かない事で却って鮮やかになる彩り。
それは躍起に探した時には却って見つからない。
だからこそ、見つかった時には尋常でない程に
愛しいのだろう。

8

これぞ平安時代のBL

新刊チェックで初めて知り、あらすじを読んで平安時代ということで、
これは ぜひ読んでみたいと思い、特典ペーパー付きのお店で購入しました。


詳しい内容や感想は、敢えて書かないことにしました。

受けの高前さんと攻めの智実さんが結局、結ばれることが無かったので、
出来れば この作品のような結末は あまり見たくありませんでしたが、
それでも最後のお話、特に最後の2ページで涙が出ました。

作品の最初に登場した、高前さんを支えていた敦満さんの、
高前さんへの想いに対して、結局は踏み台にされたような敦満さんの
処遇が何とも遣り切れない思いでいっぱいです。


今回の評価は「萌×2」と「神」で迷いました。

絵は好感が持てて安定していて、不快に感じる部分が一つも無かったです。

作中の言葉遣いも、当時の言葉で統一されており、当時の用語などで
注釈を確認しながらでないと理解が難しい場面が何度かあり、
理解しながら読むには少し時間がかかってしまいましたが、
何より現代語が混ざっていなかったのが好(高)評価です。
平安時代の世界観が伝わってきて、とても良かったです。

その他、物語の展開や人物設定など、幾つか気になる点はありますが、
最後のお話、特に最後の2ページで、気になる点が全く気にならなくなりました。

読み終えて、「そうそう、こういう平安時代のBLが読みたかったんだ」と
あらためて思いました。

時代物のBLに求めていた理想的な歴史モノBLに最も近いということで、
今回は最終的に「神」評価にしました。

8

華とは

万人受けするかどうかは疑問です、が、私は読後にため息が出ました。たまりません。
舞台は平安、華やかな世界です。時折出てくる、知らない言葉には必ず説明がコマ外に書かれているので、平安時代の詳細を知らなくても大丈夫です。
やんごとなき世界、のはずなのにきっとこれくらいどろどろとしていたのでしょう。華やかな世界の裏側は、その反動がさぞ大きいものだったと思います。

主人公である高前の気持ちはいつも冷めています。すごく、さみしいくらいに。
いち読者である私は、結局最後まで高前に共感することはできませんでした。でも、すばらしかった。普通は、登場人物に共感するからこそ、物語に没入し、世界を羨ましく思ったり妬ましく思ったり純粋に楽しんだりするのですが、この話に限ってはそうでなくとも十分満足しました。
がっつりしたエロはほぼありません。そういうのを求めてはいけません。
またすべて読み終わったあと、ふと「ところで結局敦満のことはもう良いのかな?」と思う時があると思います。模索していたのがカバー下で判明しました(笑)
あとストレートに言いますと、ずば抜けて絵が巧いわけでもありません。さらりとしています。表紙は淡く美しいので、そういう甘いものを想像して手に取ると、真逆でがっかりするかもしれません。でも、そんなことなにもかも飛び越えてしまうほど狂おしいものが胸に溢れました。

高前は素直ではありません。したたかです。決して「良い」身分の出ではないので、階級社会であった平安の世、しかも貴族のなかでは生きるに難しかっただろう、という前提での話です。だからこそ、自身の武器である「万人を惹きつけるほど美しいすがた、かたち」をフルに使います。
その高前のひとつひとつの表情を見ると、なんとも言えない気持ちになります。すこし苦しそうなとき、すこし嬉しそうなとき、明らかな策略で作った顔でないときの、確かに人を惹きつける仕草がこちらにも十分に伝わってきました。

中盤以降、高前は智実という貴族の御曹司に出会います。高前は月、智実は太陽。
この比喩が終盤でぐんぐん効いてきます。ただ静かに静かに、誰に疎まれようが恨み言を囁かれようが熱く反論することなくするりと躱していた高前。その高前にぐいぐい近寄って文をしたためつづけた智実。ふたりを裂いたのは智実の友人の死。
それでも、それであっても高前の心に深く刻みこませた智実。たった一度きりの夜は、純粋な愛だけではなく、忌まわしさと悩ましさと抗えぬほどの情念の夜。
なんとも言えません。考えれば考えるほど苦しくてたまりませんでした。

全編通して、高前の瞳が印象に残っています。強烈に。
だれかを見つめる目、智実を見つめる目、諦めたような目、悲しんでいる目。どれもどこか憂いに満ちていて、手に入れることを諦めていて、哀しさを感じました。
智実が桜の木の下で言った、「私だけを恨み 思いつづけ 果てろ」 これがまさにすべてです。
あと、最後の最後、2Pの描きおろし、これで涙腺壊れました。

13

すごく美しいと思うけど

ハッピーエンドじゃないー!!という点が最も残念すぎる。
それがいいんじゃないかー!!という人も多いのはわかるんですがハッピーエンド至上主義の自分にとっては後半本当読むのが辛かったです。あぁ、終わりに向かって救いがないんだなってわかってしまって…。
時代背景はしっかりしていて表題作だけでなく他の派生作品も研究されてから描いてらっしゃる感が致しました。絵も綺麗です。
ただ、ハッピーエンドじゃないー!!ということで中立に致しました。

3

ありそうさが逆に鬱陶しい。

読み進めれば読み進めるほど1話目の高前の変などす黒さが心に残り、
智実との年を超えた擦れ違いぶりに
「ざまぁw」
としか思えなくなってしまったというのが正直な感想です。

基本線高前のキャラクターって結局は
「色を武器にして権勢を得た男」
なんで、結局は目の前で一の姫に自刃されたことで佐渡に流されても
因果応報なんですよね・・・

最終的な高前の落ちぶれっぷりを地方から敦満はどういう目で見た事やら。
「美しさに魅入られて取り上げた人にいつの間にか上から足元を掬われて地方へ左遷」
個人的にはこの彼にいちばん入ってしまったがゆえに後半の高前の何様ぶりと
その結果に対して可哀想とも何とも思わず、少しすさみました。

すでに「院のお気に入り」というステータスがある状況で近づいた智実より、
下の地位にいた時に引っ張りだした敦満のほうが高前を愛していたようにしか思えんのです。

作者からも忘れられた敦満が哀しすぎるので、中立にしたろかと思う程度の萌えです。

4

いたずらなり、平安上等!

平安ものといえば大抵美しくたおやかな雰囲気のものが多いですが、実際は成り上がり上等の世界で、この本の高前のような人間も普通にいた時代ですよね。
必死にのし上がって来た人間が一時の天下を取っては滅びて行く、その繰り返しで歴史はつながれてきたことを思うと高前のような冷酷非情な成り上がり者もまた必然の存在だったように思えました。

今よりもっと混沌とした無法の世界が広がっていた時代に生きた人たちはもっとギラギラ生きていたんだろうな。
といってもこの作品は絵柄等、平安情緒を美しく見せているので、あまり泥臭い雰囲気はないです。残忍な場面は多少ございますが。
なので高前という人間のやっていることはギラギラしているんですがあまりその辺りを感じさせず、どちらかというと悲しい人間像を浮かび上がらせているように感じました。

作品を読み終わった後には切なさと同時に虚しさも感じました。
これぞ「猛き者もついには滅びぬ」ですな。勢い盛んであったものもやがては滅びるという虚しさ。
高前の場合は中途半端に上り詰めて落ちちゃいましたけどね。ま、仕方ありません。自分のやったことが我が身に振り返ってきただけのこと。自業自得・因果応報です。

BL的な見所は、高前に関して一番萌えるのは状況・相手によってリバるというところでしょうかね。
二度美味しい展開でございますよ!

しかし高前は「歌」もうまいし、頭脳・策略派なのです。
ただの見目が麗しい男というだけではない。それが作品に深みを与えていると思いました。
高前が単なる男娼じみた男ではこうも話は盛り上がらなかったでしょう。

そしてこのお話、結構ウツ展開です。
高前と智実がラブラブするような描写は一切ございません!お話の展開としてはそういう描写がないのはむしろ納得なんですが、そういう要素がないと満足出来ないという人には物足りないだろうと思われました。

作者さまがあとがきにておっしゃっていますが、平安パねぇっすよね!(あとがきはカバー裏です)
あの悪左府も参考に文献を読まれたようですが、
あの人はまたパねぇほど男関係が有名で「平安って一体」と思ってしまいます(笑)
色々下調べされて、パねぇ平安ものを描いて下さってありがとうございました。

10

優しいタッチで描かれる、容赦ない現実

平安末期の院御所。
主人公の高前(たかさき)は、武家三男の出自から、
身体を使って有力者に取り入り、従者、北面の武士(上皇に仕える武士)…と成り上がる。

北面とは、高前に限らず、貴族の家柄でない者たちが、特殊な才能を認められるなどして、任じられることの多かった職。
同じく平安末期に、北面の武士からスタートした平清盛のその後の台頭を思うと、
高前の末路の悲しさが際立つ。

武家出身らしい野心をのぞかせながらも、貴族の真似事をして成り上がり、
しかし結局は有力者の「犬」以上になることはできず、都を追われ孤独に一生を終える…。

そんな人生のなかで、ただ一人、欲目抜きに自分を慕ってくれる智実という存在に出会えたことが、高前にとっての救いだったのではないかと思います。

高前は、立身出世のためなら他人を平気で利用する冷血漢ですが、
人を蹴落さなければ生きていけない世界の厳しさも同時に描かれており、
彼一人が歪んでいるとは思えない。
自分が情を交わした人物を切り捨てつつも、
その人に惜別の情や名残惜しさも感じている向きがあり(『そののちは』)、
心底悪人には見えない点に、高前の人生のままならなさ、悲しさを感じます。

高前は、有力者に抱かれるばかりでなく、
邪魔な存在である千里を手篭にするなど、抱く側に回ることも辞さない。
そんな高前が、いっときも気の抜けない院御所にあって唯一、素直な好意を寄せてくれた智実とだけは、惹かれ合いつつもプラトニックで終わる。

すれ違いから、また高前の武士としての誇りとも言えるプライドの高さから、
二人が今生で結ばれることはなかった。
しかし、智実の最期、月の美しい晩に映る人影に、
心の深い部分では通じ合っていた(高前は智実を受け入れていた)のだろうと思わせる、
余韻の残るラストのひとコマが味わい深い。

毒気のない爽やかな絵柄が、今ひとつ「平安愛憎劇」にそぐわない感もあり、
また演出的にも、濡れ場や人の死、激しい感情などをストレートに見せず、あくまで綺麗にまとめている。
そこに物足りなさを感じるも、描かれている内容や登場人物の人生を自分の中で咀嚼すると、その過酷さや儚さに深い感銘を受ける。そんな魅力をもった作品でした。

8

美しい犬の一生

デビュー作、なのでしょうか? 素晴らしいと思います。
本誌で4話目くらいから興味を持ち、早くコミックスにならないかなと楽しみ
に待ってました!

平安情緒がふんだんに出ています。平安好き(笑)には堪らないんではないでしょうか?
 
高前の人を惑わす雰囲気と美しさと言動に幾人もが惑わされ、まるで美しい月のようだと言われ乞われる高前。けれど身分の問題や嫉妬で、侮蔑や畏怖の視線も集めます。
そんな状況下におかれる高前は誰にでも簡単に体を許すが誰も信じない、目的の為に何でもする ある種冷酷な男です。

そんな中で出会うのが貴族の智実。
周りの人間とは違うと感じ、体ではなく心を恋われたと感じます。
けれど同時に、智実は自分とは正反対の人間で自分が欲しているものを全て持っているとも感じ反発します。

2人の関係が崩れるある事件がおこり、高前は智実の「犬」となる…。

高前が一の姫に言った言葉は、自分を重ねていたように感じます。
切ない終わりかもしれませんが、高前は晩年少しずつ「人間」に戻って
いったようにも思います。

高前意外に「雅楽師の恋」も収録。こちらは純粋な愛を感じます(笑)
個人的に千里のルックスも好きなのでもうちょい見たかった~。

10

とにかく読んでみて!

待ちに待った1冊が登場しました!!
OnBlueで連載が始まった時、あっさりした顔と雰囲気が平安の装束に今一つ合わなくて絵柄的にちょっと苦手意識を持っていたのですが、
毎号毎号読み進めるうちに、この本の主人公・高前のあまりに頑なでそして器用貧乏な生き方が切なくて、そして御所内の愛憎・策略のそのストーリーが実に時代背景にマッチして、いつの間にか期待して待つほどの作品になりました。
そして、、、このラスト!!
何度読んでも涙があふれてきます。
彼のそのとうとう折れることのなかったプライド。
いや、そういう形でしか生きることができなかった哀しさが。
狡猾な男と憎しみを抱いた男の不器用なすれ違い愛?
陽のあたる道を堂々と歩く男と、夜の月明りの下を歩く男?
太陽と月のような二人の男の対比と言えばいいのでしょうか?
うまく言葉にできないのですが、思い切り心を鷲掴みにする作品です。
一点、注意するならば若干バッドエンド気味ですので・・・

見目の綺麗な高前は近衛中将の従者であり、寵愛を受ける者として側にあるのだが、高前の評判に院近臣たちからも目をとめられ院の寵愛を受けるように。知らぬは中将ばかりなり。
そして中将は地方の国司に任命され、高前は北面の武士としてとりたてられることに。
ここから高前を巡る、朝廷内の愛憎劇が始まるのです。

権力欲に囚われた成りあがり物語だったらとても簡単だったでしょう。
しかし、高前がここから先、有力公卿達と関係し、上皇の寵愛を受けてはいても、それ以上身分が上がることはないのです。
誰もが高前を欲しているのに、上皇から愛を受けているはずだと思われるのに、彼は決して「愛」を返しません。
まるで何も望んでいないかのように。
しかし、自分を貶めようとする策略には敏感にその相手に対しまるで呪詛返しの如くに相手を落としていきます。
そんな彼の前に、公卿の家柄ながら自ら望んで武士になった智実が現れます。
彼だけは、他の男とは違う。
送られてくる文も無視し、彼の好意を不快に思い、しかし多分に意識しまくっている。
その感情は高前でさえ気がつかない知らなかったモノなのかもしれません。
自分が不愉快にさせた相手からの罠を避けるのに、彼と親しくしている乳兄弟の峯良を使った為に起きた事件。

上皇は高前を「犬」と呼びました。
人になれないという意味でしょうか?
媚びて牙を剥くということでしょうか?
汚い言い方をすれば”犬畜生”にも劣るということでしょうか?
懐いて甘えればかわいかったものを、愛情を返せばまだ温情もあったものを。
全て高前が受けてきた一時でもきっと本気もあったであろう愛情は、高前にとってなんだったのでしょうか?
彼は何が欲しかったのだろう?

切なくて哀しいです。
決して側に近付けず、戸越しで見る桜。
高前は何を思っていたのだろうか。
高前の心は語られぬまま最後を迎えます。
読者に、ああだろうか?こうだろうか?さまざまな感情を考えてあてはめて、高前に移入していく自分という作業が、この物語の高揚感を更に盛りたてます。
解りやすいようで、解りにくい、でも、何となく解るような気がする。
全てを理解できなくても、この最後にとてもとても感動を覚えるのです。

余談:作者様あとがきにおいてあの悪左府(頼長)をイメージしたようなことが書かれていましたが、ちょっぴり彼と高前を重ねながら読んでもいいのかも?

15

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