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三崎先生作品初読み。
初単行本とのこと。
あとがきで書かれていたことが全てかなと思います。
中学生の思春期まっしぐらの心の揺れが描かれたお話。
女装した兄は「普通じゃない」と噂されてしまう田舎。
自分は「普通」でいなきゃいけないとがんじがらめになって。でもしゅんちゃんのことが気になって気になって。
2013年発行、この頃はまだこういう作品多かった気がします。
しゅんちゃんは家庭の事情からどこか影があり大人っぽい。
終盤しゅんちゃんのターンがありよかったです。
孤独で辛かっただろうけど、そこまで悲惨でなくよかった。
矢河が自分の正直な気持ちを認めてよかった。
ここにたどり着くまではぶっちゃけ楽しいお話ではないですもんね。
わかるわかる子どもの時ってそうよな〜としんどい気分で読みました。
両思いになり、しゅんちゃんは叔母さんがやさしそうだし問題なく働いていて、矢河と順調にお付き合いするというハピエンでほっとしました。
美山がいいわねと思ったら作者さんのお気に入りなんですね。わかる。癒しでした。
まさに春がぴったりのすごく可愛いタッチなのに反して、内容は結構重め。BL漫画では性に葛藤するキャラクターが登場する作品も少なくありませんが、こういう視点で描かれる作品は初めて読んだような気がします。性に限らず、自分の「普通」と他人の「普通」の基準は違うこと。これを常に念頭に置いて人と会話することって本当に難しいけれど、けっして忘れてはならないことだと思いました。
あくまでBLなので、ストーリーに直接関わってくるのは春介が同性の春希を恋愛対象に見ていることが、彼の「普通」であるということです。でも、読者はそれ以外にもたくさん「普通」の違いを見せつけられます。子供が友達を連れてきたらおやつを出したり、塾にも行かせたりする母親と、男を取っ替え引っ替えして子供に無関心な母親。高校に行くのが当たり前と思っている子供と、卒業したら働かなければならない子供。兄の女装にショックを受ける弟と、その女装姿の方に慣れ親しんでいる友人。
それぞれ生きてきた環境も違うし、出会った人も、人からかけられる言葉も、何もかもが違っていたはずなのに、いつの間にか私達は自分の「普通」が全員の共通認識であるかのように思い込んでしまうことがある。たとえ悪気がなくても、時に自分の「普通」を他人に当てはめることが相手を傷付けることがあることを忘れてはならないと、改めて心に刻みました。違って当然、同じことが奇跡ですよね。そして、自分とは違う人間だからこそ、その人を好きにもなれる。小学生から高校生になるまでの一番大きく変化する時期にこんなに難しい課題と向き合った2人は、今後お互いのことで悩んだ時、きっと悔いのない選択ができるだろうと思いました。
大好きな1冊です。
読み返すたび何度でも涙腺をやられてしまう三崎汐さんの傑作。
ポカポカ陽気に誘われて朝から読み返して感動しておりました。
デビューコミックに対してこういう風に言うのは作家様からしたらあんまり喜ばしい言われ方ではないのかもしれないけれど、読み返せば読み返すほどやっぱりすごい傑作だと思うし、こういう作家様に1人出逢う毎に、BLって尊いジャンルだなって噛み締めてしまいます。
子供から少しずつ子供じゃなくなっていく10代前半を、息苦しく思いながらも挫けず生きている少年達のお話です。
パッと見はブルーが綺麗で青春BLっぽさを感じる表紙のイラストですが、よくよく眺めると少し不思議。
2人が立っている場所がどこかと言うと「冷たい水の底」なんです。
だけど天上からはしっかりと光が射し込んでいるから暗くはない。
あの頃(10代前半)を例えるなら、確かにこんなイメージかもしれないなと思いました。
そしてページをめくって読めるのは、まさにそんな、暗いけれど煌めきが常に共にあるようなお話です。
主人公の〔春希〕は周りより少し成長の遅い子なのだけれど、小学6年生の春、〔春介〕との出会いでそれまでの自分の世界にほんの僅かにヒビが入ります。
そこから少しずつ始まる春希の心の成長が高校入学までの約5年間のスパンでじっくりと丁寧に描かれていくのですが、女装して家を出ていってしまった兄の存在もあり、なかなか遠回りな大人への道のりです。
枷は「まっとうに育ってほしい」と願う親心を裏切りたくない子供心。
世の中の「まっとう」から外れる事柄は色々あるけれど、それでもやっぱりセクシャリティの問題は10代特有のあの閉鎖的な環境で受け止めるには一番キツいものだと思うし、自分を守るために別の誰かを傷付けてしまうような発言をついしてしまうのも、それがあとから重くのしかかってくる感じもリアルでチクチク痛い。
「僕の『普通』はいつも僕の大事な人を傷つける」というモノローグのズシリとくる感じ。
10代のめまぐるしい季節の中に自分だけが置いていかれてしまうような春希の焦燥感は、読んでいるこちらまで胃がキリキリとしました。
「冷たい水の底」から浮上したあとも良かったなぁ。
最後のモノローグがすごく好きです。
思わず一緒に目を閉じて、同じように息苦しかった自分のあの頃を思い返しました。
青春の尊さというのは、自分の頭上には光があることを暗い場所からでも信じ抜ける強さなのでしょうね。
本編のラストページはもちろんのこと、描き下ろしの最後の1ページがまた良いんですよね。
子供じゃなくなっていくけど、でもやっぱりまだまだ子供だよね10代は。
頑張れ!って思います。
三崎汐さんは最初は絵から受ける印象と中身のトーンにギャップを感じるかもしれませんが、この繊細で刺さる感じ、ちょっとチクチクする感じが大好きです。
【電子】ひかりTVブック版:修正-、カバー下なし、裏表紙なし
思春期のキリキリした切なさが、すごく伝わってくる作品です。絵に癖のある作家さんだと思いますが、私はこの絵と、エピソードを淡々と連ねていく感じがたまらなく好きす。エロはかなり薄めですが、最終的に幸せな感じがあればエロが薄くても満足です。欲をいえば、もう少し、いちゃついてるところが見たい…かな…。
小学校の6年生の春、春希のクラスに東京から転校してきた春介。
二人の出会いの小学生から、中学生、中学卒業後まで、一番心も身体も変化する中学生時代を中心に、
自分を受け入れること、
他者の違いを認めること、
そして、恋を知ることを、丁寧に綴った作品。
この作品に登場するキャラクター達は、一見、不安定でひょろよろした絵だけど、
それが、この年頃の子どもの、心や身体の未熟さや不安定さとすごく合っていて、
このストーリーには、この絵しかないって思えます。