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表題作鬼子の夢

佐助,山に暮らす大男
与六,16歳,百姓家の息子で「鬼子」と虐げられる

その他の収録作品

  • 流るる雲

あらすじ

鬼子と呼ばれ蔑まれ玩弄されてきた与六は、絶望し村を逃げ出す途中崖から転落してしまう。目覚めると見知らぬ場所で看病を受けていた。助けてくれたのは獣のような男で、与六はその姿におびえるが…。

与六はその晩、村から逃げ出した----明日には領主の「もの」にされてしまうというそんな夜だった。与六は不吉な出生から「鬼子」と村中から虐げられていたが、貧しい村の生まれとは思えないほど美しい子供だった。十五になる頃には村中の男ばかりか、実父にまで体を弄ばれ----そしてある日、悪名高い領主の目にとまり差し出されることになってしまう。絶望し村を飛び出した与六は、谷に転落し死を覚悟したが、山に暮らす佐助という男に助けられる。その後も生活を共にするうち、与六は佐助の優しい心と熱い肌に酔い、初めて心が満たされることを知った。しかし、与六と佐助のささやかで幸せな日々、蜜月は長くは続かなかった……。

作品情報

作品名
鬼子の夢
著者
丸木文華 
イラスト
笠井あゆみ 
媒体
小説
出版社
白泉社
レーベル
花丸文庫black
発売日
電子発売日
ISBN
9784592851165
4.3

(210)

(125)

萌々

(55)

(18)

中立

(6)

趣味じゃない

(6)

レビュー数
30
得点
905
評価数
210
平均
4.3 / 5
神率
59.5%

レビュー投稿数30

エロが読みたかったら、絶対オススメ!

主人公の2人は純愛ですし、心がきれい
佐助の執着には途中、少し引きましたが…
これでもかと濃厚な絡みがあるので、少しエロいのが読みたいと思われてる方は満足されること必至です
レビューで書かれてる方もいるのですが、時代感を出すためか、隠語が現代っぽくないので、そこで萎える方もいらっしゃるかもしれません…

私は本編も好きなのですが、番外編の話にも萌えました
読んだことはないのですが、江戸川乱歩の“屋根裏の散歩者”もこんな感じなのかな?と思いました

0

濃厚!!

文体から滲み出るじめじめ鬱々とした雰囲気が凄い。とても良い。

人と離れて暮らしてきた佐助と疎まれ続けてきた与六が優しさを知ってくところは暖かく、与六を鬼に仕立てさげずむ人の身勝手さが泥臭く。佐助が大事な人を得たことで朴訥な性格に独占欲憎しみと負の感情がついてしまったこともがつーーんときた。ただただ優しかった佐助が嫉妬のあまり与六のことを信じられなくなって自分本意になるとこはツラい…村人の身勝手さも気持ち重くなる…けど、佐助、与六の心の変化、権者との対峙と心の強さ、思い合う気持ちはとてもとてもカッコ良かった!!ミステリー?伏線がいろいろで面白かった!

ツラいとは言いましたが、緊縛でガツガツなHはどエロくて濃密で淫靡な雰囲気たっぷりで、まーーーとにかく凄かったです!!笠井あゆみ先生のイラストも本当にお耽美で…

どうなるかと思ったけど、二人で均衡を保ってるって権者の言葉のとおりでした。

0

傷を舐め合う純粋な睦み合い

ファンタジーというのか時代物というのか。ジャンルは分からないが、世界観の構築がしっかりしており、序盤から訛りも設定もすんなり入ってきた。文章も余計な修飾が少なく短文が多くなっていて、その雰囲気づくりに一役買っていた気がする。

与六の境遇は悲惨なものだったが、この時代なら仕方ないとも思わされ、与六に同調するように諦めの気持ちで読んでしまった。
与六視点で語られるモノローグは、感情に関する表現はあやふやなのに、肉体的な痛みに関する知識は豊富。笑うこともなく涙が出る意味も知らないのに、落下の衝撃を和らげる術は知っている。そのちぐはぐさが今までの経験からくるものと考えると、切なくて泣ける子供だった。(ここら辺の描写はどこまで計算されて書かれたものなのかな…?)涙が流れる描写も、与六が知らないからか毎回違う表現になっていて、だからこそ感情が伝わりやすくなっている感じがすごく良かった。

佐助と出会ってからの二人は、傷を舐め合う獣のように睦み合う。佐助が与六を「与」と呼ぶのは、六番目の子として名付けられた与六を、元いた場所から解き放つ意味があったんだろうか。与六を通して見る子供のような笑顔の佐助が魅力的で、二人にがっちり心を掴まれてしまった。

当然蜜月は長く続かず敵が妨害しにくるが、験者はまさに馬に蹴られた状態で追い払われる。片方を消すとまずい、では両方いっぺんに、てな判断に至ることはなく、愛の前に改心させられたように去っていった。二人の壮絶な過去の後にくるエピソードなので、これ以上辛いものだと耐えられそうになかったのでほっとした。
ここの与六は素晴らしく、初めて欲しいものを見つけ必死になる様子に泣けた。

続きのSSはすっかり気心の知れたふうふになった二人の小話で、あまりに普通の恋愛をしているところがとても良かった。ただヤキモチを焼くだけでも、そんな感情が芽生えるようになったのか、と勝手に泣けてくる。
モブ視点なのも、今もどこかで二人は幸せに暮らしてますよ感が強く出ていて、幸せな余韻の残る終わり方で良かった。

しかし最後まで与六の村を全壊させた犯人を隠し通した佐助が気になる。与六が知るとまずいような事実なら、佐助視点ではっきりさせて欲しかったと思う。ここがもっと知りたかった、突っ込んで書いて欲しかった等々、もっと読みたいと思う箇所が他にも点在していて、読み終わってもどうにもムズムズが止まらない。自分なりの考察で終わらせるところなのかなあ。単にこの二人の物語をもっと読みたいだけかもしれないが。

挿絵は当然素晴らしかった。この世界観に笠井さんという判断は神だと思う。本文は★4.5、挿絵プラスで神。

1

これは滅してほしくない鬼

2020年、世間では鬼を退治するヒーローが大流行しましたがこちらは退治される鬼さんサイドの言い分といった話でした。

周囲と少し違っているというだけで忌み嫌われ、人間社会から爪弾きにされた2人が互いの孤独を慰め合う姿は鬼というよりも傷ついた小動物のようで哀しくも愛おしい……

むしろ、罪のない与六や佐助を鬼と罵って痛めつける人間たちの方がよっぽど鬼なのではないか?佐助を調伏しにやってきた験者が「鬼と人とは、背中合わせだ」と口にしますが、本当に人は誰しも心に狂気を飼っているのだなとしみじみ思います。

などと難しく考え込んだりもしましたが、そんなこと一瞬で消し飛ぶくらい2人のえっちはエロかったです。まじでどエロかったです。

そんなに強い力で抱きしめたら与六は粉々になってしまうのでは?というくらい佐助の愛が劇重いです。体格差いいぞ〜(合掌)
大事に大事にしすぎて与六を監禁しちゃうところもまたいい!出会った当初は仙人?のようだった佐助が性欲剥き出しで暴走する様子にめっちゃニヤニヤしました。多分新年初笑いです。

あと後日談の「流るる雲」も最高でした。平次郎、その場所変われ。

ラスト3行は人類全員が胸に留めるべき言葉ですね。そして不倫、ダメ、絶対。

6

エッロい昔話

絵師様買い。しかしなんで今まで読まなかったのかってぐらい面白かった。

もう表紙から恥ずかしくなるぐらい美しくエロい。こちらを向いていたしております。カメラ目線かよ?
挿絵もステキです。与六が佐助に抱き込まれて眠る絵がお気に入りです。

佐助と与六の心の有り様は鬼などと言われるにはあまりに善良すぎて、調伏しようとする験者の方がよっぽど悪人な様に思えてしまいました。
2人は周りの人達に鬼にされてしまったというか、周りの人に作られた鬼という感じがしてしまいました。

あと与六の菊門はなぜ濡れるんですかね?ヤバい病気じゃないのかよ?と心配になりました。


1

愛を知る

孤独な二人が恋を知り、欲を知り、愛を知る。
鬼として生まれた攻めと、鬼子として育ち鬼にされた受け。
愛とは何か、美醜とは何か、鬼と人とは何か、
様々なことを考えさせられました。

共に暮らし始めた二人は必然的に惹かれる合うんですが、人の温もりや優しさを知らなかった二人が、互いを好いて、熱を求め合い、もっと触れたいと体を重ねるのが純愛以外の何ものでもなく。
こんな序盤で想いが通じた上での行為(本番ではないんですが)が来ると思っていなかったので、幸福感半分、不安半分で色んな意味でどきどきしていました。
というのも、カラーイラストで縛られた与六が描かれていたんですよ。
(いやまあ表紙もかなりあれですけどね)
こんな無骨ながらも優しい佐助が、そんなことをするのか......?
と不穏さを感じながら読み進めていたのですが。


うおおおおおおおおついに来ちまった監・禁!!
いやそうかなぁそうだよなぁとは思ってたんですがまさかこんなに豹変するとは。
目の前で与六を襲われたこと、その男たちが与六を慰み者にしていたことが佐助のトリガーとなり、日に日に監禁はエスカレートします。
と言っても、佐助にとっても初めての感情で、自分でもどうしたらいいか分からないんですよね。大事にしたいのに、閉じ込めておきたい。
そんな気持ちを与六に吐露する佐助と、佐助の変貌ぶりに戸惑いながらも全て丸ごと受け入れる与六。
恋を知った佐助は、与六への様々な欲を知ってしまったのです。
今まで鬼としての自分を抑え込むために、感情を抑え人から離れて生きていた佐助にとって、この激情は制御のきかない暴馬のようなものだったのでしょう。

けれど二人への苦難はこんなものではありません。さすが丸木先生。
鬼を退治する験者の存在が二人を脅かします。
愛とは何か、人とは、鬼とは何かを考えさせられるのはまさにこの場面。
人も鬼も愛する者を守りたい思いは同じではないか。
人であっても愛する者のためならば鬼にもなるのではないか。
そもそも鬼とは何か。
与六を虐げて来た村の者たちの方が鬼ではないか。
人が生み出す狂気こそ鬼ではないか。
二人の愛、強く結ばれた絆を目にした験者は去っていくのですが、確かに二人の世界に傷をつけようものなら世界に災厄が訪れそうな程の思いの強さを感じました。

最後の第三者の視点で描かれる夫婦としての二人も最高でした。
与六をあんなに閉じ込めていた佐助が与六の美しさを見せびらかし、今度は与六が佐助を見る女たちに嫉妬し二人きりになりたがるのが可愛い。
二人の寿命が幾ばくかはわかり兼ねますが、死ぬまでどころか死した後もずっと永遠に二人は寄り添っていくのだろうなと思う二人でした。

4

神評価でなく鬼評価

自分でも驚くほどもの凄い速度で読破しました。
丸木先生の作品は、世界観のつくりだけでなく物事の因果や説得力がしっかりしていてどっぷりと浸かれ読み応えが半端ないです。想像しやすいので読むのが遅い私には助かります。

物語は15の与六が、殿の玩具に売られる前夜森に逃げるところから始ります。その掴みからしてグッときました。
助けてくれた佐助と徐々に思いを交わし超濃密になっていくのも、そこから酷い執着を現し人間臭くなっていく佐助も、最後までお話の流れがとにかく見事です。
『鬼とは人とは』を根幹に、純粋さや孤独、人間の残酷さや醜さが詰まった確固たる愛と絆のお話でした。

人外で昔話や時代物、方言は読む前のネックだったのですが、無問題で最高でした…特に
「食ってしまいたい」
「食ろうて、わしを、全部」
この殺し文句は脳天にキます…!
体格差や野性味のある性の絡みが濃厚で凄まじいです。
最後の覗き見たおじさん、いいなぁーそこ替わって

素晴らしいところがあり過ぎていつまで経っても満足なレビューが出来そうにないのでとにかく出しました。

10

梁塵秘抄が原案 鬼を生む女の呪

鬼子と呼ばれ、生みの親にも村人にも凌辱されて育った美貌の与六
山で隠遁して暮らす佐助は、生まれた時から鬼。母に匿われて育つが、母を村人に殺された時、鬼の力が全覚醒する。
与六は山で佐助に救助される。二人は番になって寄り添って生きていく。

面白かった! 昔物語風のBLです。著者は、ゲームのシナリオライターもされているせいか、辿っていきやすい構成でした。
鬼同志の情交は濃くて花丸blackの濃厚な情交場面以外は、「こんなことしちゃ損するから止めた方が良いよ」と教える御伽噺風に仕上がってます。「鬼は人の心が生むもの」
表紙やイラストが、とてもアクロバットなポーズで、手足がどうなっているのか判別できなかった。二匹の蜘蛛の絡み合いみたいだー。
とても面白かった、他の題材の今様をアレンジした続篇は、あるのかな。著者の和ものが他に有れば、読みたい。

最後の章に、今様が一つ紹介されています。この今様がこの作品の原案で、鬼子を産むほどの女の怨念は、男が作らせている・・のだ、と、この歌を引用しています。
著者は、教養高い人なんですね。古典のアレンジで、こんな面白い小説を作れるなんて。
あらすじは、先に投稿があるので割愛。

---調べた物
▶梁塵秘抄 巻第二 四句神歌 巻第二 四句神歌 雑; 遊女が作ったとされる、女が男を呪う歌
【我を頼めて来ぬ男 角三つ生ひたる鬼になれ さて人に疎まれよ 霜雪霰(あられ)降る水田の鳥となれ さて足冷たかれ 池の浮草となりねかし と揺りかう揺り揺られ歩け】
*現代語訳(行くよと約束して来ない男 角三つ生えた鬼になれ。人から嫌われろ。霜雪霰が降る水田の鳥になって 足が冷たくなれ。池の浮き草のように揺ら揺ら彷徨うがいいわ)
---
▶「鬼子」とは
親に似ていない子供、異様な姿で生まれた子供、特に歯が生えた状態で生まれた子供のこと。
▶この作品の主人公は、岡山県の北東部(旧美作国)生まれ。
兵庫県および鳥取県と県境を接する地域とされているので、桃太郎伝説がある地域。
---
▶梁塵秘抄(りょうじんひしょう)は、平安時代末期1180年前後に、後白河法皇が編んだ歌謡集。
中世の流行歌「今様」と呼ばれる声楽の歌詞を後白河院が編んだ。登場するのは遊女、傀儡子、博徒、修験僧など秩序の外側に生きる人々だった。
現存するのはごく一部で、全二十巻のうち、巻一巻頭の断簡と巻二全体および口伝集巻一巻頭の断簡と口伝集巻十全体が現存する

▶雅仁親王(後の後白河天皇、法皇、1127年~1192年)
原案の歌集を編纂した人;後白河法皇は、凄く変わり者だったみたいです。大天狗と言われた天皇。
鳥羽天皇の第4皇子で、通常なら皇位継承とは無縁な立場なので、天皇に即位するまで、朝から晩まで遊興に明け暮れて、当時の貴族が相手にしない今様(民謡・流行歌)を愛好し、熱心に研究していた。身分の低い者も屋敷に招いて交流していた。(だから改革をおこせたのかも)

10

期待を裏切らない一冊

なぜかamazonのおすすめにずっとあったので購入しました。読了後の今となっては、amazonさんありがとうと言いたいです。私の趣味にぴったりでした。

~個人的な好きな要素~

①話の雰囲気
読み始めた時は金〇一シリーズのようなおとぎ話になぞらえて村人が次々に死んでいく話かと思いました(笑)。そのくらい最初から雰囲気があるんですよね。ついつい引き込まれてしまう。ファンタジーに見える設定が全然気にならないほど、作品の雰囲気が一貫していました。

②エロい
プレイがエロいと言うより、雰囲気がエロいです。巨根なのに巨根に頼らず挿入までが長い手練手管な攻・・最高かよ。

③ラストが好き
BL小説の全てがココに尽きると思うのですが、この作品は特に圧巻。飽きさせずに読ませる体力もさることながら、第三者を交えた客観的な描写もちょうどいい。最後は読者へのメッセージを描く形で終わる作品になっています。高尚な文学小説を読んでいる気持ちになりました。

5

箱庭から外の世界へ

やさしくて哀しい2人だけの箱庭。
受けの境遇可哀想すぎるし攻めの境遇も中々辛いものがあり、
許されない罪だとしても、優しい鬼と非情な人だったらどちらが鬼というのかって読みながら思う。
2人とも生い立ちとか憂いはあるんだけど、出会い惹かれ合う様は美しき純愛。
......って何回ヤってるんですかこの方達ーッ!!
精力が漲る怒涛のエロが凄い(笑)
ストーリーでも読ませるけど、中々にエロも凄かったです。
体格差がお好きな方にも刺さる作品だと思う。
最後は2人自由に旅をしていて救われた^ ^

4

鬼とは何か

苦しいほどに求め合う愛に、胸が張り裂けそうでした。

鬼子と呼ばれ虐げられ、弄ばれ、村から逃げ出した美しい与六と、人を殺めてしまったことから、人目を忍んで山でひっそりと暮らす鬼の佐助。
悲しい過去を背負った2人が、互いの優しさに触れ、愛情を感じ、貪るように求め合う姿に熱いものがこみ上げてきました。

鬼とは何なのか。人とは何なのか。

深く考えさせられました。
与六はこれまで人の優しさに触れたことなど一度もありませんでした。
佐助によって、初めて優しさというものを知り、笑うことの楽しさを知ったのです。
その優しく大切な佐助が、人からは「鬼」として忌み嫌われる不条理。
中盤歯車が噛み合わなくなったりと、苦しい展開もありましたが、2人が幸せに辿り着けて本当によかったです。

アンソロジー「メス堕ちBL」にて丸木文華先生を知り、当時はあまりのエロ描写に度肝を抜かれたものですが、こちらの作品もとてもエロかったですねー。
時代背景もあり、使われる言葉も古めかしいため、官能的と言ったほうがしっくりくるでしょうか。
めくるめく官能の渦に飲み込まれそうでした。
描写の数もさることながら、エロシーンの描写の長さったら!
これが素晴らしい!
イメージにぴったりな笠井あゆみ先生の素晴らしい挿絵が、それをさらに盛り立ててくれます。

「流るる雲」はその後の2人について語られています。
全国各地旅をして廻っている様子の2人。
美しい与六を見せびらかしたい佐助と、逞しく男らしい佐助が女性の注目を浴びるのが嫌な与六。
嫉妬や独占欲に満ちた会話のなんて甘いこと♡
このエピソードに救われ、心地よい読後となりました。
それにしても与六の話し方は本当に可愛かった…
心洗われました。

12

神5くらい


早く続きを読みたいけれど
あぁ勿体ない!
この本なんでこんなに薄いの⁉︎

そんな気持ちにさせられたのは久しぶりでした…。

試し読みで時代ものでその上受けくんの訛りまであるのを知って、少し不安でしたが購入しました。

訛りについては他のレビュアーさん方も仰っていますが、全く気になりません。むしろもっと訛って話を聞かせて!と、読後すぐにこれを書いている私はまだ興奮が冷めやらない状態です。

年齢を重ねるにつれ、青春ものやキラキラきゅんきゅんするような物語より、ドロドロしてネバネバしたようなものが読みたくなるのは、私だけではないはずです。

前も後ろも苦しくて辛くて、とてもむごいのです。
でも最高に、泣きたくなるほど幸せで…。
感情が練り混ぜられる内容でした。

本が薄い、と前述しましたが、決して物足りないと感じたわけではなく、絶妙なボリュームとなっておりましたのでご安心下さい!
その上本編を読み終え疲れ切ったであろう精神と身体に、後日談で上質なアフターフォローが待ち受けています(笑)

身体も疲れきるの…?

そうなんです、エロスがエロすぎてやばばばでした、私は息を乱さずに読む事が出来ませんでした。二人の境遇、置かれた環境、深まり過ぎて縺れ合う愛情…それに加え眼に浮かぶような巧みな描写、訛りも本当に良いお味を出すんですよ!!

試し読みしてみて、ちょっとでもいけそうな気がしたら読んでみてはいかがでしょうか?

私には大切な一冊になりました。

12

昔話風

お話の雰囲気は、昔話的な感じです。
文華先生の作品の中でもかなり好みのお話でした。
笠井あゆみ先生のイラストもすごく世界観にマッチしていて、とても素敵でした♪

受の与六の可愛い方言にかなり萌えます。
その方言を話す与六ちゃんがとっても可愛くて、私的にはお話の世界観に引き込まれるひとつの要素になっていました。
そして与六ちゃんはとってもいじらしく、切なく不憫な身の上などもあり、涙腺かなりゆるいのもありますが、私には辛い場面もあり、かなり号泣ものでした。
佐助も不憫でしたがとても優しくて、素朴で、しかも童貞だなんてっ!!

エロもすごくエロかったです。
淫靡でした。
堪能。
でもエロだけでなく、心に届くお話ってのが最高でした。

佐助と与、大好きなカップルです。

9

純愛を貫いたからこそ

なんとか読み終えました。
与が可哀想で辛くて佐助に救われて蜜月を過ごし、すっかり山に慣れてしまった与が自分の落ちた谷底を見に行こうとしたところで、行くな!嫌な予感しかしない。やっと幸せになれたからここで読むのをやめてしまおうかと悩み、しばらく置いておきました。

与の怪我の治りなど不思議な気がしていましたが、佐助は鬼だったのですね。
最後まで与の村を殲滅したのが佐助なのかは謎でした。

色々ありましたが二人で生きていける道が選べて本当に良かった!純愛と二人の絆があったこそですね。

与を取られないように段々佐助がおかしくなって行く様子や、それに寄り添って何をされても受け入れる与が切なかったです。

人とは、特に村ではちょっと自分たちと違う存在を恐れ排除しようとする気持ちは当然かもしれませんがムゴイですね。

流るる雲は数年後のお話のよう。容姿は変わらない様子なのはやはり鬼の力ゆえなのか。
あんなに人と交わらず二人きりで暮らそうとしていたのが、すっかり人に慣れ大阪見物までしちゃってます。海にも行ったりあちこちどこでも行こう!って自由でそれもいいかなと。

佐助の出自も語られます。やはり鬼は産まれるべくして生まれ存在するものなんだな。だけど生まれた鬼は幸せになってもいいよね。無敵だしある意味最強ですね。

それにしても佐助が与の美しさを見せびらかしたいとは。変わったなあ。あんなに閉じ込めておきたがってたのに。
与も女たちが佐助を見るのが嫌でたまりません。もっと醜ければよかったなんて、可愛いですね。

それにしても佐助が二人の秘め事を若旦那に覗かれて平気とは。最初からわかって始めちゃうとか。ひえー。
あとがきに先の時代でもって書いてあったので長生きするのかな。
いつまでもお幸せに。

5

上質な昔話BL

読みやすく雰囲気のある文章。過度ではないが時代考証もきちんとなされており、すんなりとこの世界に入れる。不憫な受けと攻めが出会い、お互いの傷を癒しながら愛を育んでいくお話。エロも濃厚で様々なプレイが楽しめる。(木に括りつけたのは多少、可哀相だったが)方言も楽しめ、ファンタジー要素もあり、最後まで飽きずに読むことができた。体格差萌え、方言萌え、時代物萌えと様々な萌えに溢れているので嵌る人も多いのではないかと思った。続きが読みたい。

7

不憫受けと不憫攻め

不憫な生い立ちをした受けが、生まれ育った村から逃げる最中に怪我をして、攻めに助けられる話。

攻めも不憫な人なのですが、実に朴訥としていて優しくて良い。
その攻めが、ある事件の後、受けを愛するあまりに小屋に閉じ込めるようになり、荒縄で柱に縛り付けていくようになるくだりは読んでいて興奮しました。
また受けの過去にも嫉妬するようになり、人間らしい感情を芽生えさせていくのですが、それが別の不幸も招き寄せることになる展開には胸を打たれた。
大変、おもしろかったです。

最初は、受けの名前が「与六」だし、一人称は「わし」で、語尾も「〜じゃ」(岡山弁?)だしで、萌えられるか不安だったのですが、あっという間に世界観に惹き込まれてしまいました。
実に見事としか言いようがない。
ラスト、そして番外編の最後の最後までおもしろくて、丸木先生マジ神だなと思いました。

7

傷を負う者同士の純愛。

お互いを想い合う愛が深い...!!!

序盤は受けの不遇な生い立ちが不憫でかわいそうに感じましたが、攻め様が救い出してくれて徐々にお互いが惹かれあっていく所が本当にキュンキュンしました!

攻めの佐助の素朴さというか、与六を助けてすぐに体を求めない所にもとても好感が持てました。
男気溢れる容姿なのに、ちゃんと丁寧に接するんだなあっていう。
初っ端から襲い掛かるような攻めも好きですが、佐助の場合はそのギャップに惚れます!

あと、与六が経験豊富で佐助が童貞だったという設定にも萌えましたw
「どうりでお互いフェラばっかりしてると思ったら~」みたいな//

2人とも心に傷を負っていて、それを補完し合うように寄り添っているのが、愛だなあと感じます。
一度味わってしまうと性に貪欲になる、人間らしさが2人とも表れていて、そういう描写も上手いなあと思いました。

エロの描写もさすがですね!!!
挿絵も天下の笠井あゆみ様!お美しい!!!

3

淫靡な純愛

丸木さんのお話しで、淫靡な作風の中でもボクトツとして一途な攻めが登場するものにハゲ萌えるので、この作品も個人的にツボでした。

薄幸の受け。しかし、健気というのとは少し違う。幼少から村人の慰みになってしまった不幸な運命ながら、そこから抜けだして自立しようという芯の強い少年。一方、まじめだけれども、鬼として、人間とは離れて一人暮らす攻め。
そんな二人が、人里離れた隠れ家で二人だけの蜜月を過ごす。これまで出会ったこともないような美しいものに憧れ、独り占めしたいと思う鬼。初めて自分を一人の人間として求めてくれた心優しい鬼を、むしろ包み込むような愛で慕う受け。年の差、身長差をひっくり返すような関係です。

特に縛り付けてのエロはすごかった。。ただ濃厚というよりは、お互いがなくてはならない存在の上での激しいHに萌えます。

ただの夢じゃなくてよかったな、と思いました。
笠井さんのイラストがお話しに非常にマッチしてました。






10

大人昔話BL

読み終わった直の感想は「続きが読みたい!」です。この二人をもっともっと追いかけて欲しいです。鬼ワールド作品はたくさんありますが私としては№1に確定です。鬼として一人淋しく暮らしていた佐助とたくさんの人の中にいながら一人淋しく暮らしていた与六が出会い初めて誰かといる喜びを感じ、生きていく楽しさを知っていく、ちょっと悲しい場面や恐ろしい場面も登場しますが、それ以上に二人が幸せに向かって頑張る姿を応援せずにはいられない作品です。本当に続巻を希望します。めっちゃいい話!

12

孤独な鬼×不遇の美少年

不遇の美少年と孤独な鬼の交流を描いた時代劇ファンタジーです。

面白かったけれど、匂い立つほど濃厚なセックスシーンを除くとあまり起伏のないお話だと思うので私は「萌」評価です。丸木文華さんの作品らしいというかなんというか…主人公二人さえ幸せならあとは不幸になろうが殺されようが気にしない!という清々しい展開なので、そこが引っかからなければ更に楽しめると思います。

クライマックスに描かれる験者のくだりはもっとシリアスでシビアな事態になるかと思いきや、結構ぬるっと終わって肩透かしでした。序盤にさらさらっと描かれている与六の身の上話のほうがよほどシビアだったな…。

3

素朴な幸せを(主に性的な方向で)必死に貪るふたり。

今までに読んだ鬼と村人系BL(?)ではダントツに一番好きでした。
生まれ育った貧乏な村で、鬼と虐げられてきた美貌の少年「与六」と、人里はなれた山奥に一人ぼっちで暮らす大男の「佐助」。受けの与六も芯がある少年で好感なんですが、それよりなにより佐助がめちゃくちゃ正直なのが良いですね!受けに対して、「嬉しい」とか「好き」とか、そういう感情をまっすぐに伝えてくる攻め!!大好物です。

種類が違う山場がいくつも用意されていて最後まで飽きずに読みました。後編で験者が出てくるあたりだけは唐突に感じてしまったものの、私は結局BL小説には「萌え」をメインに求めているので、幸せな情交シーンがこれでもか!というくらい詰まっている今作品には大変満足致しました。

5

もっと見たい

山田風太郎作品に似た雰囲気だと思います。エグみを含んだエロ。
美しさ故に不遇な子供時代を過ごした与六と、生きる術を教えてくれたお坊さんが死んで以来孤独に暮らす鬼の佐助。
与六と出会う前は朴訥で純粋だった佐助は、やがて恋を知り快楽を知り、そして嫉妬や執着を覚えます。
家から出てはいけないと与六を柱に縛り付ける佐助。
このまま執着が悪化したらどうしよう、と心配でしたが春が来て旅に出てからは落ち着いた様で安心しました。
佐助は普通の人より長生きな気がしますけど、与六も多少はそうなったんですかね?
エピローグのストーリーが落語にありそうな話で面白かったです。浮気癖が治るといいですね。(ニッコリ)

0

人の心が鬼を生む

笠井あゆみさんの美しいイラストと、濃厚エロを期待して購入した1冊でしたが、余りにも美しい純愛物語に思いっきり心を撃ち抜かれました。
与六と佐助が愛おし過ぎる><

不吉な出生から「鬼子」と虐げられ、美しい容姿のせいで村中の男達の慰み者にされてきた与六。
鬼として生まれ、人との関わりを避けて生きてきた佐助。
そんな底知れぬ孤独は読んでいても辛くなるほど。
どれだけ辛く淋しい人生を歩んできたのかと考えるだけで涙が出そうになりました。

そんな中出会った2人。
お互いの中に安らぎを覚え、愛情を知り、何よりも掛け替えのない存在へと昇華していく。
その様子が余りにも自然で必然のように思えました。

でも、やはりどうしても上げておかなければいけない点は余りにも濃厚なエロですよね!!
最初は、佐助の人知を超えたイチモツの大きさ以外は普通の濃厚エロなんです。
でも、ある日村人が与六を襲っている場に佐助が遭遇して以来、佐助の嫉妬心と与六への執着心が暴走してしまいます。
今までの男の気配の消すかのように与六を縛り、拘束し、自分の欲望をひたすら与六に打ち付け注ぎ込む。
与六にとってはかなり無理を強いられる行為ではあるけど、佐助の気持ちを察し、健気に受け入れる与六の様子には本当に心を打たれました。

余りにも純粋で美しい心を持つ2人。
そして余りにも強く一途な絆で結ばれた2人。
与六は佐助を守るために鬼になろうとし、佐助は与六を守るために暴走する鬼の力を憂う。
こんな2人を引き離すような運命はあってはならないと思うのです。

人の心は恐ろしい。
鬼にでも何にでもなりうる可能性を持っている。
与六のことを鬼子と忌み嫌う村人が、与六にとっては鬼そのものであった。
とても美しいお話ですが、とても考えさせられるお話でもありました。
エンディングの物見遊山編はラブラブな2人を堪能できてとっても良かったです☆

最後に、ちょっと話はずれるんですけど、時代物のエロって『口吸い』とか『魔羅』とかっていう独特の表現がよりエロさを感じさせて滾ります(笑)

19

方言萌え!

レーベルは花丸blackなので、えっちは濃いです。


攻めの左助は朴訥な人柄で、うさぎは卯、与六のことは「与」と呼びます。
実はこの呼び方が本作を神評価にした理由です。
個人的な見解ですが、攻めが受けを「与六!」って呼んでいたらえっちシーンが盛り上がらなかった気がします。笑

時代物では名前が難しいなーと常々思っておりました。
戦国の農村に生まれた子供は、権七とか弥兵衛とかばっかりだったのでは?みたいな感覚があります。
たとえば聡や陽介といった名前はどうも現代の気がしていました。
そこに、この作品はひとつの素晴らしい解法を与えてくれました!
本名と、呼び方を少し変えるんです!!!
ありそうな、けど耳慣れなくて萌えには違和感のある「与六」という名を、攻めが呼ぶときだけ「与」にするのです!
あだ名のような、舌足らずのような感じが可愛い!!!
「よ」という響きが可愛い!!!
その時代の名前としてリアリティがありつつ、可愛い、萌えるものとして秀逸です。

笠井先生の美麗なイラストが物語に華を添えていて、こちら方面からもおすすめの一冊です。

7

温もりも切なさも繊細で美しい

艶麗たる美貌を持つ少年ヴィーナス再降臨。

『忍姦』を読んでからというもの丸木さん描く絶世の美男子に魅せられ、
こちらの作品が気になってどうしようもなかったのです。
序盤での与六の外見描写だけでも美人受けにめっぽう弱い私はとんでも大興奮!!
その見目麗しい姿が目に浮かぶような洗練された美文にただただうっとり。
不吉とされて鬼の子と蔑まれる存在でありながらも驚く程に妖艶で神聖な、
その相反するイメージがタブーを犯しているような感覚を生み、更なる耽美の境地へと誘ってくれます。
佐助の愛してるが故の依存や加虐的にも思える所作すら、その華奢すぎる身体で受け止める与六の健気さに心を打たれました。
悲惨な境遇下で育ち、求め行くものが互いに一致しているからこその強固な結び付き。
やってることはとんでもエロスなんですけれど、それすら神聖なものに感じました。
体格差と頻度を考えると与六の体がちょっと心配になってしまいますが。
世界にまるで二人しかいなくなってしまったような閉塞感を節々に漂わせながらも、孤独な気持ちをお互いから救い出し、心を魂を解放してくれる…
温もりも切なさも繊細で美しい叙情的な心に染み入る作品でした。
笠井さんの美麗過ぎるイラストもこちらの作品のイメージにぴったりと嵌っていて、何度でも見たい衝動にかられてしまいます。

5

鬼ってなんだろう

ダークな空気と密閉した空間の中で、二人の愛だけがどこまでも穢れなく美しい。
そんなお話でした。

ほの暗くしっとりした雰囲気の中で、居場所を見つけられずにいた二人が出会い、お互いを居場所として惹かれあっていくお話。
二人の気持ちがだんだん近づいて寄り添って一つになっていく様子がていねいに描かれています。この気持ちの変化がとても説得力があって自然で、テンポとバランスがよかったです。
さらにエロシーン。ほかの場面もそうなんですが、しっとりとした和の雰囲気があって、かなり濃厚なプレイにもかかわらず下品じゃない。しかも、目に浮かぶような表現で、丸木作品は初読みでしたが、すごく好きだなぁと思いました。

そして与六も佐助もキャラがいい。大型純朴執着ワンコ攻めと美人淫乱ショタ受け。大好物です。しかも視覚的に訴えるような表現で描かれていて、どこまでも白い花のような与六と野獣系の佐助のコントラストも絶妙でした。
方言も純朴な雰囲気を添えて、与六の艶めかしさをさらに煽ってくれるし。
最初の方の文体の中にわざと民話に出てくるような言葉が使ってあって、それも世界観に合っていてよかったです。

笠井さんのイラストもすごくきれいで。この表紙のイメージに引き寄せられて読みましたが、お話にもすごくあっていました。

12

人を鬼に変えるもの

◆あらすじ◆

舞台は、戦乱の世(大坂に関白がいるらしいので豊臣政権時代?)の美作。
とある貧しい農村に、村人たちから「鬼子(おにご)」と蔑まれ、男たちの慰みものにされて生きる少年がいます。
少年の名は、与六。(16歳 数え年?)
或る日村を逃げ出し山へ遁れた与六は、山に暮らす鬼・佐助(推定年齢26歳?)に助けられ、山中の薬師堂で佐助と共に暮らし始めます。
自らももてあますほどの破壊力で人を殺した経験もあり、罪を悔いて人里を離れひっそりと暮らしてきた佐助ですが、心は人間以上に優しくて純粋。
惹かれ合う二人は、ごく自然に体も求めあうようになります。
鬼と呼ばれ、異界に追いやられた二人が出会い、愛し合うことで、初めて自分の存在を肯定的に捉えていく…
純愛と濃厚なエロス描写。そして、鬼とは何かを問い、「愛する人間を守るためには、人は鬼になる」「鬼として人に排除される存在から見れば、人こそが排除すべき鬼である」というアンチテーゼを掲げた作品でもあります。

◆レビュー◆

購入動機はとりあえず挿絵買いと、丸木作品の試し読みだったのですが、結果としてかなり満足度の高い作品でした。
何が満足って…やーもう、エロス!エロス連呼。
最初は兎をかわいがるように与六を慈しんでいた佐助と、人に優しくされる心地よさに酔っていただけの与六ですが、お互い心の距離が縮まるに従って、だんだんと肉欲の渇望を感じ始めます。
佐助は与六と違って人と交わった経験はなく、知識もないのですが、彼の中のとてもプリミティブな欲求が、抑えがたい衝動になって与六の体を求めていく。
一方、セックスの経験はあってもそれを苦痛としか感じたことのない与六が、愛する佐助との行為にだけは、とめどないエクスタシーを感じ、その感覚に溺れて行く…
お互いピュアなだけに歯止めを知らずSM地獄に堕ちて行く二人(ちなみに二人は幸せですw)を、粘り気たっぷりに描いた濡れ場が最高です。

舞台は美作なので、よそ者の佐助と鬼調伏に訪れる験者以外は、岡山弁。
みなさん書いていらっしゃるように、岡山弁の小説と言えば、かの「ぼっけえ、きょうてえ」を思い出す人が多いのではないでしょうか。
内容は忘れてしまった今でも、おどろおどろしく湿った情緒だけは記憶に鮮明。あくまでも自分の中でという話ですが、そんなホラー作品の借景効果もあって、湿り気が倍増したような。
土地と因習に縛られ、狭い世界に生きるた村人の陰湿さや、村での与六の無力さも、ゆるい岡山弁でうまく演出されている気がします。

最後まで謎だったのは、与六の村を焼き、村人たちを皆殺しにした火の正体。
村を焼いたのは、与六の体を弄び続けた村人たちへの佐助の怒りの焔なのか?
それとも…
作中で与六は、村の子供たちが翠の火焔に包まれて消えて行く夢を見ます。夢の中で与六は、佐助に知られたくない彼の過去を全て知っている村の子供たちを捕まえようとしていて…
作品のタイトルも「鬼子の夢」だけに、この夢は気になりますね。
が、与六の夢と村人惨殺の真相は曖昧にしたまま、物語は終わります。
エンディングの、愛しい人以外は何もかも消えてしまっても構わないという、与六のモノローグも意味深…与六を生み落とす時、「これは鬼じゃ」と叫んだ母親は、与六がいずれ村を滅ぼす存在だということを予知していたのでしょうか。
どこかダークで割り切れない終わり方ですが、それがまたほの暗い余韻になって残っていく感じ。
こういうエロ暗い話、大好物です。

番外編「流れる雲」は、大坂を旅した二人の旅籠での一夜を、出歯亀の目線で覗き穴から眺めたショート作品。相変わらずの二人の絶倫Hが、鮮度UPで楽しめます。

20

孤独な二つの魂が結びつく

「ぼっけぇ」「恐(きょう)てぇ」等の岡山地方の方言や、
異形の者として村八分に近い扱いを受ける主人公に
どことなくS.I.女史のホラー小説を思い出す。
区分としてはファンタジーですが
日本の怪談に近い雰囲気もある、ほの暗く叙情的な作品でした。


貧しい百姓家の六男に生まれた与六。
母親が難産の末自害したことから「鬼子」と虐められ、
美しく成長してからは
村の男達や、実の父親の性のはけ口にされてきた。
ある日、娘を弄んでは殺していると噂の若様に目をつけられ、
村から逃げ出したところを、山に棲む大男・佐助に助けられる。
寡黙だが優しい佐助と一緒に暮らすうち、
与六は佐助を慕うようになり…。


孤独な二人が惹かれ合うまでの流れはとても自然です。
追ってくる人間達から、命がけで互いを守る姿もいじらしい。
どうか幸せになってほしいと応援せずにはおれない展開です。

佐助は本物の「鬼」で、
鬼を殺しに来た人間たちに母親を殺されて以来、誰とも関わらず孤独に生きてきた。
それが、与六という愛しく守りたいと思える存在に出会い、
初めて執着という感情を知る。
与六も、今まで誰にも感じたことのない安心感を佐助に覚え
自ら望んで佐助に抱かれます。

仲睦まじい二人の純愛モノながら、
陰茎を縛るなどちょっと危ない束縛プレイもあり
エロ面でも楽しませてくれます。
エピローグの嫉妬し合う二人も微笑ましい。


BLとして萌えるだけでなく、
村社会や集団心理の恐ろしさ、疎外される者の悲哀といった
人間ドラマとしても読ませる内容でした。
筋はシンプルながら、完成度の高い作品だったと思います。
笠井絵も雰囲気にぴったりで素晴らしいです。

15

愛で変わる

読みはじめに直ぐに気がつく方言、岡山地方の方言が、作品の面白さを底上げしてる
そんな風に感じました。
ぼっけえ、きょうてえ、とっても怖いって意味だったように思うのですが
7,8年前に大好きな作家さんのホラー小説でそんなタイトルの怖い話を読んだ記憶を
鮮明に思い出し、岡山の方言は独特な感じで心惹かれるものがありますね。
もっとも地元の人にしてみれば当たり前の事でしょうが、作品でお目にかかる率は
断然低い気がするのでその意味でも新鮮でした。

内容的にはファンタジー、それも痛い系にちょっと属する話だと思います。
生まれ落ちた時からいわくつきみたいな状況で村人や家族にも疎まれて育ち、
自害した母親が受けである与六を鬼だと言ったせいでその後の与六は悲惨です。
鬼の子と言われ、仲間外れ以上の手酷い扱い、年頃になると与六の類まれな容姿が
かえって悲劇的な状況で、村の若い衆に弄ばれるし、実の父親も同じ穴の貉状態。

そんな与六に目をつけたのが近場の城に住む好色な若様で、娘をかどわかしては
弄び飽きれば殺すと噂されている人物でさすがの与六も怖がって死にもの狂いで
村から逃げるが、谷底に落ちて瀕死になる。
それを救って面倒見てくれるのが攻めになる佐助、人里離れた山奥で一人で暮らし
朴訥で優しく、鬼子だと蔑まれた与六が初めて安心して安らげる居場所になります。

朴訥過ぎる佐助は与六と出会ったことで愛しさを覚えて行き、与六も同じように
佐助を愛するようになりますが、二人のエロはかなり濃厚部類です。
村から逃げ出した与六が村人に見つかってしまうトラブルが起きた時から
佐助の与六に対しての執着具合がかなり深くなります。
そして佐助の本当の姿も明らかになって、男である与六の身体の変化はその為かと
思えるような内容です。

愛するが故に佐助にだけは知られたくなかった村人との出来事、
それが佐助の異常なまでの執着に繋がっていくが与六にとってその思いは心地よいと
感じると同時に自分を信じてくれないのかと悲しい気持ちにもなるのです。
そしてエロスはたっぷりで、官能的な作品なのでエロエロが苦手な人には
内容的にはかなり密度の濃い純愛ものなのにおススメ出来ないのが残念。

そして個人的に気になったのは、与六の村が全滅して燃え尽きてしまった出来事。
初めは佐助が燃やしてしまったのかと思っていたけれど、もしかしたら与六の
強い思いが、与六自身がしたのではないかと思ってしまいました。
エロスと悲しいファンタジーの融合はなかなかクセになる面白さがありました。

15

純愛

題名といい、表紙イラストを含めた装丁といい、何て魅惑的なんでしょう!
口絵イラストも中のイラストも大胆な構図で目を惹きますが、いつもドロドロしたダークさを期待してしまう丸木作品に、今回は純愛を見ました。
執着愛も根っこを探れば純愛をこじらせたものと考えることは出来ますので、路線としてはきっとはずしてないとは思うのですが、それでも健気さが前面に出た展開が今回は新鮮でした。


貧しい村の百姓の家の六男として生まれた与六。
彼が生まれた時、母親が鬼が生まれると出産を嫌がり、産まれた直後に狂って死んでしまったことから鬼子と呼ばれ、村でも忌み嫌われていた存在。
しかし、その美しい外見から村の男たちのみならず実の父親の慰み者ともなっていた与六。
そんな彼が乱暴者で、呼び寄せた娘たちは飽きたら殺されると評判の領主に目をつけられてしまうのだが、苛めは耐えられても殺されるのは嫌だと村を逃げ出し、谷に落ちてしまう。
怪我をした与六を助けたのは、見た事のない大男の佐助。
彼に介抱され一緒に暮らすうち、情がわき、そして情が繋がり、二人は幸せな暮らしをしていたのだが・・・

鬼子と呼ばれ、誰からも愛されない人生を生きてきた与六と、
身に鬼を持つことからひっそりと暮らしていた佐助。
寄る辺のない、寂しい一人ぼっち同士が惹かれあうのは筋。
しかし、その愛情が執着に変わって怖いほどの愛情になっていくことで事件が起きてしまう。
鬼と呼ばれる二人だけど、誰でも身の内に鬼を住まわせている。
なにも形相だけではないと、むしろ純粋な二人が人間で、彼等に酷い仕打ちをし鬼を怖がる人間が鬼のような姿を描く事で、それを説いているような。
至って物語はシンプルなのです。

作者さんの特徴である濃厚なまぐわいシーンは、情の高まりと共に執着の強まりと共にどんどん濃厚になっていく、それが見せ場でもあります。
優しさから激しさへ、それがよく解ります。
佐助のイチモツは、、、一体どのくらい大きいのか?

自分はこの路線もとても好きです。

18

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