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まさか『トイチの男』のスピンオフが出ているとは知らず、レビューを拝見して慌てて買いに走りました…
とはいえ、期待はしてました。玄上先生のHPで硅太郎と銀示のSSは読んでいたので。
一冊、馴れ初め話を読めてとっても嬉しい!
自分の才能の限界を知っていて苦しんでいる硅太郎(攻)と、あふれるほどの才能を持ちながらどう生きていけばいいのか分からない銀示(受)のお話です。
銀示は生まれと育ちが特殊で、他人が聞けば「可哀想に」という境遇だったのですが、本人は愛しているママとパパに囲まれて「幸せだった」と言う。
作中、何度も銀示の特殊な感性がこまかく描写されているのですが、この感性はこの閉じた世界があったからこそなのではと思わせられる。
銀示の色をとらえる感覚、光に対する欲求、おまけに、においや手触りなどという絵に関係しないようなものにも突出した感性をみせるのですが、それが世界を知らない子どもが無意識に、知りたい触れたいといろんなところにセンサーを張り巡らせているように感じられるのです(うまく言えない…)
とにかく銀示は世間のことをなにも知らないので、悪者にいいように騙されます。
硅太郎は銀示の才能にはじまり、銀示自身を愛してしまったのでそれを助けたい。
でも学生だからできることはなにもなくて…
これまでの二十年を捨てようと決意した硅太郎の気持ちを思うと、心が痛い。
まあ、結末などは実際に本を読んでいただくとしてー。
この本は、世の中にあふれるものが銀示の目にはどう映っているのか、ということを想像しながら読むといっそう楽しめると思います。
はっきり言って「どんなんだそれは!」と言いたくなるようなものもあるのですが、それは銀示にしか分からないのでしょう…
割と最後のほうまで閉塞感でいっぱいなのですが、正直なところ神いっこでは足りないくらい好きなお話です。神ボタンを10回くらい連打したい。
銀示、硅太郎のカップル。こんな出会いと、しがらみが……。それを抜け出て今に納まってるのが素敵です!…キラキラ視点の銀示、硅太郎が居なければちゃんと生き延びられなかったでしょう。硅太郎ガンバレ~!世界を又にかけ、お姫様な銀示を幸せにしてあげてね♪…そして自分も幸せに…♡
玄上八絹先生のお話しは、ホント最後まで何が起きるか分からない!ひとつ置いただけで盤上が一瞬で違う色に変わって行く…。唖然、愕然とする、抜ける様な爽快感あります!!
ホント大好きな作者様です♪ヽ(^0^)ノ
実はあとがきも何も見ないで読み始めて最後の書下ろし部分を読んで初めて
既刊「トイチの男」のスピンオフでトイチよりも10年以上前の内容だったことに
気がつくと言うお間抜け状態で読んだのですがこれが面白い!
物凄く大きなアップダウンがある訳ではないのですが、
受けになる銀示の独特な感性にとても惹かれました。
もっともその銀示の育った特殊で傍から見れば残酷な境遇なのですが、
本人にしてみればそれは疑うことなく幸福だったのだと思えるのも切ない気がします。
生まれた時から軟禁生活、両親以外に人と接する事も外に出る事も無く
両親がある日突然亡くなるまで狭い世界で幸せに暮らしていた銀示が
突然周りから良かったねと、これで自由になれると言われて戸惑う姿が目に浮かぶような
そんな設定なのです。
傍から見れば浮世離れして見えるし、そこに絵を描く圧倒的な才能があれば
育った背景なんか知らなくても芸術家だからそんなもんだと済ませられる。
でも銀示本人にしたらいつまでも迷子の子供みたいで、硅太郎に出会ったことが
本当に神の導きのように思えて、読みながら良かったと思ってしまう。
銀示のおかしさ違和感に硅太郎が気づく、初めは圧倒的な才能に、次にその才能からは
想像も出来ない世慣れなさに、ハーフの見た目に初めは海外育ちだから何も解らないと
思っていたけれどそんなレベルよりも危ない気がして銀示に保護欲を感じ
次第に銀示を取り巻く状況が見えて、それと同時に愛しさも育っていく。
タイトルのもなっている二人で初めて育てた虹の球根。
何色の花が咲くか解らないけれど、銀示の心の中に虹が生まれると言うセリフが
銀示の硅太郎への思いと、二人の幸せな心が感じられる気がしてステキでした。
描き下ろしで、ああ、あの質屋さんの話であの時の夫夫だったのねと気がつき、
益々面白いと感じてしまうお話でした。
未読なら2冊同時に読んだらますます面白いと感じる作品だと思いました。
こちらでお勧め頂いた玄上八絹さんの作品です。
同作家のワンコシリーズよりも文章の感じも読みやすく、初読みならばこちらのシリーズの方が良いかもしれません。
はっきり言って派手さは皆無、地味です。
地味ですが、ジワーッときました!
前作はまだ未読なのですが、だんぜん読みたくなりました。
攻めの硅太郎は美大生。
小器用だったがために、十代の内に自分の才能と向き合い見切りをつけることがでず後悔している、20歳の青年。
受けの銀示は17歳まで母と共に、父から外に出ることを禁じられて育った青年。
才能の神には好かれても現実には自分の価値も知らず孤独であり、それを理解もしていません。
基本、美大生とか芸能とか、大仰になりがちな題材は苦手です。
文章で表現することが難しいとも思いますし。
なので避けていたジャンルでした。
でもこちらは、『こんだけこの人はすごいのよ!』といった雰囲気がなくスルッと入っていけました。
最初の視点が硅太郎で、自分の才能に行き詰まっていたからかもしれません。
綺麗事でない様子が惹き込まれました。
とにかく印象深い銀示の親戚、清水。
こんな生活能力マイナスな銀示を口先で黙らせるのは簡単だったとは思うけれど、本当に腹立たしかったー。
ただその分硅太郎が銀示へ庇護欲と独占欲を発揮させていて、良いコントラストだったのかな?読者には。
ただふたりが、というか、硅太郎が銀示へ性的欲求をかきたてられるのが若干、突然きた!という風に感じました。
銀示にとっては初めて出来た友達で(あの時点ではふつうならばまだ友達じゃないんだけどね)、亡くなったママの肖像画の他に唯一できた心の拠り所だったので、なんだかわかるわあという感じではありますが。
このね!肖像画がね!もう泣かせます。
ママは何かわかっていたのかなあ…
主人公たちも良いですが、わたしは教授の小栗一押し!
受けだったら嫌ですが、小栗のお話読みたいなーと思わさせる大人キャラでした。
こんなに登場するんだから可能性はあるのかしらと、期待したくなります。
最後のSSは、前作を読んでいる方の方が楽しめると思いますが、ひじょうに短いのであまり気にしなくて大丈夫です。
ひとり『玄上八絹』 祭り継続中!
読み始めたら次々読みたくなる不思議な作家さんです。
萌えのベクトルが似ているレビュアーさんがよかったとおっしゃっていたので読んでみました。
不思議な設定のお話でした。
トイチの男のスピンオフだったのを読み始めてから知り、慌てて数年前に読んだ本を再読しました。
本編はトイチの方を読まなくても問題ないですが、それから10数年後のショートストーリーの方はトイチを読んでいると、なるほとど思える作品です。
絵が好きで絵描きになりたいが幸か不幸か並外れた鑑定眼を持ったことから、自分の絵の凡庸さを知ってしまった美大生 硅太郎が出会った同じ大学の天才画家 銀示。
硅太郎が自分にない才能を羨み将来に迷いながら銀示の描く絵に惹かれていく心境が密に描かれています。やがて保護欲が芽生え恋愛感情が生まれてくる段階が自然で不思議と同性同士の恋愛への罪悪感や葛藤もなく、すべての揉め事や問題解決のめどだ立った時にするりとまとまっていく面白いカップルです。
銀示は考えられないような変わった生い立ちで、ある意味絵画の英才教育をされていたようなものかもしれませんが、人としての生き方や社会生活をする術は身につけないまま生きてきたせいでとんでもなく常識外れな人なんです。
そんな天才画家と天才鑑定士は割れなべにとじぶた的なベストカップルだと思います。
本編の最後で、硅太郎が気まぐれに買って銀示に与えた球根が、虹が生えると信じさせてしまったことを嘘だと謝ろうとした時に銀示が言った言葉が心に残りました。
虹ではなく普通に花が咲くことを知っていてそれでも(この花が咲いたら)「俺の心に虹が生まれるんだ」だからこれは虹が生える球根だと言い切った銀示はすごいと思った。そういった発想やセンスが非凡な絵を書かせるんだなと思わされました。
『質屋が知らない秘密』
本編から10数年後、硅太郎と『トイチ~』の茅野が過去を回想しながらその後の話をしています。
硅太郎たちのその後がわかって安心しました。
未読の方はきっと『トイチ~』の方も読みたくなると思います。
是非合わせて読むと一層面白いのでオススメです。