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ずっとランキングに載っていて気になっていた今作品。一気に読み、そしてすごい読後感に、しばし帰ってこれませんでした。
内容は皆さま書いてくださっているので感想を。
初っ端から恋人に「結婚したいから家を出ていって」と別れを切り出されるつぐみ。売れない作家で生活の一部を恋人に負担してもらっているつぐみにとって、恋人から別れを切り出されることは恋人を失うだけでなく「生活」も失うこと。順風満帆な人生を送ってきた恋人には、家族もおらず収入も不安定なつぐみの「これから」を想像することができない。良くも悪くも現実的なその二人の温度差に一気に引き込まれました。
対して事故の後遺症により記憶障害を持つ朔太郎。彼は事故に遭うまで、記憶障害という障害を持つまでは何の問題もなく生きてきたけれど、今はそういう自分を受け入れなくてならない、と言うところまで来ている。「一人で生きていく」と覚悟を決めている。
実際、記憶がなくなる、というのはかなりの恐怖を伴うことですよね。自分が何をしたのか、何をすべきなのか分からない。そんな暗闇の中で唯一見つけた希望がつぐみの書いた小説で。
自分にないところを埋めあうように惹かれあう二人だけれど、でも朔太郎は自分の障害をつぐみの負担にしたくないと別れを決意して…。
ストーリーを考えると、けして珍しい話ではないと思うんです。むしろ、王道だし、先もよめる。けれどそれを上回る二人のお互いを思う気持ちに引き込まれました。あと朔太郎のおじいちゃん。ナイスでした。
最後のSSは、これは人によって好き嫌いがある話だな、とは思いました。けれど、私はこのSSが一番泣けた。きっと若い人は「老後」なんて想像だにできないんじゃないかな。でももうオバサンである私にとっては身につまされるお話なんです。想像できる未来なんです。夫に先立たれて、一人で生きている自分。それでも家族と過ごしてきた思い出や時間が自分にとっての宝物なんじゃないかなって。
幸せな二人のままで終わってほしかった、と言う思いももちろんあるけれど、それでも二人が過ごしてきた長い時間が二人にとってかけがえのないものだったのだろう、と分かる終わり方で、すごくよかった。
そして小山田先生の描かれた表紙が良い!二人の間に流れる空気感がすごくよく読み取れて、しかも朔太郎のおへそがちら見えしてるのがまた良い…!いや、変態チックな感想でスミマセン…。
とにかく文句なく神評価です。
読後、えも言われぬ幸せと哀しさが相まった感情に埋め尽くされていました。
この気持ちを言葉で表現するのはとても難しい作品です。
最後のSSは、作者のあとがきでも言われていますが、好みは二分するでしょうね。
でも、私はとても幸せを感じました。
つぐみも朔太郎も、お互いに約束を果たし、永く共に生きていた証を見せてもらえた事がとても嬉しかったです。
みぞおちにズーンと重石を載せられるような、本当に重くしんどい設定で、幸せな人生を送れたのだなとわかってさえもこの重石は取り切れません。
ファンタジーのように奇跡が起きるわけでもなく、ただ淡々と朔太郎の病気の現実が書かれているので、想像以上に突き刺さります。
リアリティもあって苦しいけれど、だからこそ、2人の何気ないやり取りや送っていた日々に、純粋に感動し、一緒に幸せを感じる事が出来ました。
これを読むのは、どっしりと構えられる時でないと受け止めきれないなぁ……
凪良さんの作品では軒並み泣かされる私ですが、その中でもこの作品はやばかった。
後書きで作者本人も言っていた通り、最後の評価が激しく分かれる事でしょう。
朔太郎の苦しみであったり、つぐみのかける言葉の出ないもどかしさだったりが、とても心に刺さりました。
本編も涙と愛のが満載のお話でしたが、後日談の展開が神がかってました。
朔太郎の病状の進行と、つぐみを失った頃の朔太郎の変化の部分が柔らかく混ざり合った書き方をされていて、ヘルパーの女性が出てくる頃、読者側もつぐみが既に鬼籍の人だと気付かされる。
つぐみを失う事をあれほど恐れていた朔太郎は、毎日つぐみに先立たれた寂しさや悲しみを思い出すと同時に、記憶からつぐみを失う事が無かったと言う彼の幸せに、読者は気付かされる。
とても幸せでハッピーエンドな筈なのに、同時に悲恋を読んだかのような遣る瀬無さに包まれる。
後味が悪い気もするが、最高の余韻を残す後読感がある作品でした。
これはやはり、萌え作品ではなく神作品か趣味じゃ無いかの選択を迫られる作品では無いかと思います。
まるで作品自体が、筆者いとうつぐみの様なとても不思議な作品でした。
読み終わった現在、猛烈な切なさに涙が止まらないままですが、
是非レビューをかかなければ!と思いつつ書かせていただきます。
一言で感想を表すことのできない作品に初めて出会いました。
凪良先生の作品に遅ればせながらハマり、なんとなくの気持ちで手にとった新刊ですが、こんなにも素敵な作品に巡り会えて本当に自分はついているなと思わずに居られません。
大げさなようかもしれませんが、それほどの気持ちが読了感を占めています。
「おやすみなさい、また明日」自体も物凄く良い作品なのですが、私の中で強く印象に残ったのが「スイート・リトル・ライフ」です。
凪良先生もあとがきでおっしゃるように、確かに賛否両論ありそうなお話かもしれませんが、これがあったからこそ健忘症である朔太郎さんのキャラが救われたような気がします。
記憶を失うことは、怖いことだけれどそればかりではない。
それを強く表したSSだったのではないかと思います。
どことなくストーリーが展開していく中で、あれ?と感じさせつつも気を引くストーリーで読者に考える隙を与えてこない。
この感じがドキドキや切なさを倍増させてきて、最後には涙が溢れている…
沢山の感情がこみ上げてくるちょっと大人なお話でした。
「ゲイに向かって子供がほしいなんて、女に生まれ変わって出直せって
言ってるのと同じなんだよ。死ねって言ったと同じことなんだよ」
鳴かず飛ばずの小説家・つぐみの友人となる人気漫画家・小嶺の台詞。
つぐみの元彼である伸仁にぶつけた言葉ですが、とても強烈に印象に残りました。
愛ある日々を過ごしてきた筈なのに、いとも簡単に崩れ落ちる。
これから先の話をしたって、絶対なんて有り得ない。
恋愛だけに限った話ではない。何にでもあてはまること。
記憶障害の朔太郎。
コミュニケーション能力が著しく乏しいつぐみ。
そんな二人がいっしょの時間を過ごすことで、背負っているものが少しだけ溶けて柔らかくなり、あたたかい気持ちが増え、もっとそれが欲しいと思う。
手を伸ばせば自分のものにできると、多分、思えていたはず。
なのに、
「絶対してはいけない」
「諦めなくてはならない」
「望んではいけない」
そんな朔太郎の思いが交錯して、ひどく辛かった。
友人にも恋人にも家族にもなりたい。それを全部一人でなりたい。
そうすれば、色々な角度から、相手を支えてやれるのに。
傍にいれば悲しい思いをさせる。
離れればもっと苦しい思いになる。
決断したあとの2年間は、二人はどれだけ辛かったでしょう。
だからこそ、若い二人の「おやすみなさい」がものすごく重たいものに感じました。
あとがきを読んで、凪良さんが書きたかったことの我儘を押し通した、というような文章を読んで、私もラストのSSは『なくてはならないものだったのだ』と思いました。
辛いことがありました。
それを乗り越えました。
相手を思う気持ちに気づき、結ばれました。
今は幸せに暮らしています。
ただソレだけじゃなく、一人の人間の人生、という視点で見た時。
老いた彼も必要だったのだ、と。
彼をなくした彼は、今を忘れ、昔を思い出し、そしてまた新たな情報と記憶が刻まれる。
きっと死ぬまでそれは続いて行くことで、苦しく儚く、嬉しく切ないことの連続なのでしょう。
老いた彼が願う「また」。
静かな愛に包まれて、彼が先に待つ場所へと願いながら明日を迎えるのだなと思うと、涙が自然と流れました。
久しぶりに一気読みした小説でした。
取り留めもなくつらつらと書きましたが、
私にとって、切なくもあたたかい涙がこぼれる1冊です。