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日野ガラスさんて、少女みたいな光の多い目にバシバシのまつげが男性についていて、あごも細く尖っていて少女マンガみたい、なのに首筋はガッチリ・・・というアンバランスさが何だか苦手で、昔一度読んだきり手を出さないでいた作家さんでした。
でもこれがすごくすごく良くて、今まで避けてきたことを後悔。
3人のキャラクターが主人公のオムニバス形式ですが、3つとも全部よかった!
1話目を読んで面白いかもって思い、2話目がすごく良くて、3話目が更に更によかった!
テーマが同じで、3つともこんなにクオリティーの高いお話に仕上げるのは素晴らしいと思います。
3人とも売専ボーイという設定ですので、お話の上では相手以外の人ともお金をもらって寝ています。なので特定の相手以外と関係を持つお話は嫌だという方には向かないかもしれません^^;
「溺れる瞳」
ゲイなのか悩むサラリーマン充に、売りボーイとして優しく接するアキ。
最初はお客だから優しくしていたのが、次第に禁止されてる店外でも会うようになり、どんどん互いが好きになり、もう恋人なんじゃ?と錯覚するまでになるけれど、別れる時に渡されるお金がいつもアキを現実に引き戻します。
アキはお金と体の関係を真剣に考え始め、内容はなんてないお話なのに、客として出会ってしまったことで、客とボーイとしての関係が切り離せないまま恋愛感情が育って行く様が丁寧にかかれています。
充と出会ったことで世界がキラキラしてる、もうお金なんていらないって言おう!って思うアキが本当に可愛い。
せつなく苦しいお話ですが、最後はハッピーエンドです。
アキ以外のほかのキャラにも言えることですが、お金を払って身体を買いに来る客の事をボーイは嫌な目でなんて見ていなくて、「大事なお金を払ってくれている」「皆理由があって買いに来る」と真剣に考えてあげていることが良かった。
「最低彼氏」
この二人がカップルとしては一番好みでした。
未成年に見えるくらい可愛い葵は26歳で、可愛い系で売ってますが中身は口が悪くて強か。初めて自分を買ってくれた金持ちの金子には素で接しています。
彼のことが好きだけど、世界は自分中心で回っているという感じの金子の性格と葵の性格ではなかなかいいムードにはならなくて、金子相手に「サイテー」だとか「呪われろ」など暴言を吐いています。
素直でない、ツンデレ意地っ張りの典型的なキャラクターです。
金子が気になって気になって仕方ないのに、買いに来てくれないことにイライラし、違う人を指名すると泣きながら大嫌い!という様が本当にかわいい。
俺様と意地っ張りの、こういうカップルて、王道すぎるのになんで萌えてしまうんだろう。も少し長く読みたかったです。
「HEARTS」
ラストのお話がすごく良かった。
前の話でアキと葵をフォローしてくれた店のNo.1瑞希の裏側。
借金をかかえて学校にも行かずに生きてきた瑞希を、店の店長である葉山はボーイとして店に出すことで借金を返済させようとします。
今でこそどんなお客様にも合わせられる瑞希が、最初は手がつけられない警戒心の強い暴れ猫だったころから、根気よく面倒を見て学校に行っていないからと馬鹿にはせず教養やら礼儀やらを教えてくれた葉山との関係が丁寧に描かれています。
瑞希が次第に葉山に懐いて心を開いていく様子が温かくて本当にきゅんとする。
葉山に拾われて店に出て、瑞希は初めて自分にも価値があることに気がつきます。葉山が瑞希に対して、売りをしているのに「汚れない大事なもの」だって言ってくれるのがよかった。
結局、関係が曖昧なまま終わるのもよかったです。
いつかしたいね、という、ボーイとしてでなく、「本当に好きな人とするってどんな感じかな」という未来に幸せを期待する感じで終わっていたのに胸を打たれました。
売りという仕事と恋愛の関係を上手く描いていた作品だと思います。
売春ネタなのに痛々しくないというか。
売り系が苦手ってかたにも是非是非!読んで欲しいなぁて思いました。
日野さんの繊細で綺麗な絵と売り専という仕事が絶妙に合っていて、どこか危うげで儚くも華やかな世界観が楽しめました。それでいて随所に出てくるまるまるとしたチビキャラが可愛くて良い(笑)
ノンケリーマンに恋してしまう売り専、
甲斐性無しの男を嫌いになれず振り回される売り専、
恩人であるノンケ店長に惚れてる元ヤン売り専、三組とも受けが健気。
特に表題作のアキはクリスマスにお誘いを受けて純粋に表情を綻ばせて喜んだり、おそろいの指輪をプレゼントしようとしてそわそわしたり非常にいじらしくてきゅんきゅん。元ヤンの翔も店長の優しさを受け容れて字や言葉遣いまで完璧に努力する姿が愛しいです。
三者三様の売り専ラブ、楽しかった!
この作品は3つのカップルが出来上がるまでが書かれていますが、どれも可愛くて好きでした!
みんな同じお店のボーイなので、おまけ漫画で電話で繋がってるのがなんかよかったです。
こういう1つの本に話がいくつか入ってるのって、1つの話が薄くなりがちなので苦手だったんですけど、これはどれも満足度高めです。
カップルになるまでって区切りで描いてるからですかね?
全カップルみんな好きでしたが、個人的には金子さんと葵くんのその後がとても気になります。
たぶん両思い(金子さんの気持ちがよくわからないのは私の読解力のなさのせい…)なのに、金子さんの連絡の頻度の低さはなに??笑
仕事がとても忙しいのかな?
それに怒ってる葵くんは非常に可愛いですが、まだまだニ波乱くらいありそうな2人なので、続きが読みたかったなぁ。
他の2カップルは幸せそうで何よりです。
とてもまとまりが良く、読んでいて楽しかったです。作者さんの他の作品も見てみようと思いました。
三作品収録されています。
どれもウリ専のお店が舞台になっていて、そこで働くウリ専ボーイ・三人がそれぞれの主人公です。
どのお話にも他のカプのお話がちらりと絡んでて世界が繋がってます。
【溺れる瞳】
ノンケのはずだったけれど、最近男が気になる…というリーマンの充とウリ専ボーイ・アキのお話。
お話の進み方は普通っちゃ普通だけど、充とアキとの間でやり取りされるお金について、アキが思いを馳せるモノローグがキラリと光ってここがとても好きです。
写真家になりたかったという充が、写真ではなく他の仕事で汗水垂らして得たお金をどんな想いで自分にお金を渡しているんだろう…というところが。
そして実は、最近男が気になったから店にやってきた…のではなく、公園で見かけ声を交わしたアキが気になってしまったから店に来てしまったんだなぁ、とわかるところも良いです。
【最低彼氏。】
30代にして自社ビルを持つやり手の社長・金子とウリ専3年目、ほぼベテランに入りつつある葵のお話。
金子は葵の初めての客で、その時のスマートな振る舞いにポンと恋に落ちてしまったものの、遊び人の金子は数ヶ月に一度しか葵の元にはやってこず…。
あんあんとよがるキャラじゃないのに客からはそれを期待されてしまい、いつも客前では演技している葵。
それが三ヶ月ぶりに金子に抱かれた際に本気であんあん言ってる姿が◎
一生遊んでやるから店辞めてこいと言われて、なにそれ、サイッテー!!と言いつつも身体が勝手に動いて、浮き足立てて店に駆け込む葵がかわいかった。
だけど描き下ろしでは一生宣言をして恋人同士になった後も、一ヶ月連絡なし、丸二ヶ月会ってないで放置されてる葵が描かれて、なんか不憫…。
【HEARTS】
店長と、5年働く最古参でありながら、いまだにNo.1ボーイであり続ける翔のお話。
母親の借金のかたに売られてきた翔が、育ってきた環境のせいでろくに学んでこれなかった翔の背景を見抜いて、漢字の書き取りなど一般的な知識も身につけさせようとする店長が良いんです。
No.1として君臨し続けてタチネコSMなんでもござれだった翔が、店長に向かって「いつかセックスしたいね。本当に好きな人とするのってどんな感じなのかな。きっとすごく幸せなんだよ。」初々しく言うところが好き。
入店前の研修としてのセックス描写はあるけど、恋人同士になってからのセックスはないので、そこが見たかったような、でも明るい期待に膨らんでいる翔の言葉だけで終わっているところがかえって良かったような…。
描き下ろしでは、【最低彼氏】の葵が、元同僚の翔やアキに金子についての愚痴を電話でぶちまけるお話です。
愚痴を聞いてもらってすっきりするはずが、翔やアキが恋人とうまくいってる様子が漏れ伝わってしまい、なんで俺だけ………!!!となってしまった葵が、なんだか不憫です。
「溺れる瞳」
ノンケらしきサラリーマン充×売り専ボーイとして働くアキ。
「最低彼氏」
お金持ちの金子×売り専ボーイとして働く葵。
「HEARTS」
売り専店店長の葉山とNo.1売り専ボーイ翔。
「telephone」(描き下ろし)
上記3カップルの後日談。
オムニバス形式でありながら、主人公達が一つのストーリーとして繋がっています。
売り専ボーイとして働く男の子達の葛藤と恋のお話。
日野さんの作品は何を題材にしてもキラキラと輝いてます。
重たそうな雰囲気の中に散りばめられるセンシティブさと、感情が動き出した瞬間の叙情的な描写には目を見張るものがありますね。
繊細で本当に綺麗。
「溺れる瞳」
自分のセクシャリティに疑問を持つ迷える子羊こと充はアキに惹かれるも
売り専として働くアキを受け入れられなくて…アキもまた充の隣には自分は
並べないと思うけれど恋する気持ちは止められないんですね。
エロスは決して多くないのですが、アキの姉が自分とお揃いで買ってきてくれたピンクのワンピースを着ながら充を想い、自慰をしているシーンがとても印象に残りました。
美しいと思えるが故に、何だか見てはいけない瞬間を覗いてる気持ちになり、ドキッとしちゃいました(*´o`*)⋈*。
充がセクシャルティに悩みだしたのにはどうやらアキに関係があるようで…。
「最低彼氏」
アキと同じお店で売り専ボーイとして働く葵のお話。
こちらのお話は3カップルの中では、どこか可愛さ漂う比較的軽めの雰囲気。
葵は、中学生ぐらいに見える容姿だけれどウリ専としてベテランの域。
自分好みの常連客 金子に惹かれ、期待するもいつも甘い罠に落ちては落胆させられる。
素直になれないけれど、金子のことが大好きで嫉妬したり苛々したりグルグルしちゃう葵が可愛らしかったです。
「HEARTS」
タチでもウケでも何でもいけるノンケの売り専ボーイ翔と店長のストーリー。
アキと葵が働くお店で一番古いNo.1ボーイ。
売り専として働くことで自分の存在価値を見出した翔。
その過去には何かあるようで、入店当時は文字すらまともに書けません。
それを店長の葉山は、口と態度は悪いながらも色々と翔を気に掛けてくれます。
そんな葉山に、字の上達と同じく人間性も変化していって、惹かれていったのでしょうね。
客に自分の字を褒めらた時の翔の笑顔はとても輝いていて、葉山に対する翔の想いの丈がギュッと詰め込まれている気がしました。
この二人に関しては、セックスシーンはありません。
だけど、ラストシーンを見るとそれで良かったと納得いきました。
個人的には「溺れる瞳」のお話をもう少し読みたかったですね。
描き下ろしでは、3カップルそれぞれの特徴が表れていてほんわかした雰囲気になっていました。