電子限定おまけ付き
四ノ宮慶さんと言えば、エロ濃いめでちょっとエキセントリックな話を書かれる作家さん…
そんなイメージでしたが、本作はかなり王道寄り?のファンタジー。
お稲荷様・モフモフ・花嫁…とBLファンタジー定番の要素が詰め込まれています。
それでいて、舞台となる田舎町の情趣ある風景、主人公の内面の成長など現実世界の描写にも力が入っていて、なかなか読み応えある作品でした。
主人公は、高校を卒業して間もない青年・拓海(受け)。
大学受験を予定していましたが、父が脳梗塞で倒れたことを機に進学を断念。
実家の温泉宿を手伝うため、6年ぶりに生まれ故郷へ帰ります。
雨宿りするため、稲荷神社の境内に入ると、宮司のような格好をし美貌の男性・佐古路(攻め)と出会い…という話。
雨男で、大事な場面ではいつも雨に降られる拓海。
それは6年前のある出来事がきっかけでした。
小6の頃、稲荷神社の狐像が咥えていた鍵をあやまってもぎ取り、滝に落としてしまった拓海。
以来、行事などのたび雨に降られるようになり、友達から煙たがられるように。
以前はガキ大将で皆の中心にいた拓海ですが、稲荷神の祟りに悩むあまり別人のように暗い子どもになり、中学からは町を出て寮のある学校に転入…
そんな、なかなかシリアスな背景があります。
拓海の前に現れた青年・佐古路は、190近い長身に美麗な容姿をもつ人物。
常に敬語で、温厚な性格の彼は一体何者なのか…?というと、(タイトルから予想される通り)狐様。
幼い拓海に鍵をとられたせいで、やがて力を失い消える運命にありますが、それでも拓海を見守り続けてきた大変優しい心の持ち主です。
拓海が佐古路を救おうと奔走する中で、引っ込み思案な性格を脱し人間的に成長していく展開が秀逸。
脳梗塞で右手に麻痺が残った父の代わりに、拓海が秋祭りで太鼓を叩くことになり、それが稲荷神様の怒りを解くきっかけとなります。
拓海が秋祭りに出ることを決意するまでの父との会話、佐古路への想いなどが丁寧に描写されていて、特に父とのやり取りにはグッとくるものがありました。
絡みらしい絡みは後半までお預けですが、二人が結ばれた後のイチャイチャシーンには甘さがあり良い感じ。
佐古路の弟・佐倶路のツンデレぶりなど、脇キャラもなかなか立っています。
ただ、失くした筈の鍵が拓海のあんなところに…という展開はやや苦しい気も。
拓海が佐古路の番になった後も普通に家族と生きられる〜というラストもちょっと都合が良すぎる気がしました。
しかし、大団円のラストには幸せな気持ちになれる一冊です。
あとがきによると、当初のアイデアでは
、攻めは狐ではなくアメフラシ(海産の軟体動物)になる予定だったとのことw
それはそれで見てみたかった気もしますが、本作は本作で、佐古路の狐耳姿やワンコっぽいキャラに萌があり良かったと思います。
もふもふが好きなので手に取りました。初めての作家さんです。
子供の時のいたずらによる事故で天罰として雨男になってしまった拓海(受け)がそのいたずらによって持っていた鍵を無くし力を失いつつある狛狐、佐古路(攻め)と神の怒りが解けて番になる話です。
昔からガキ大将で、でも下の子供たちの面倒をよく見る兄貴分だった拓海は、神罰のせいで雨男になり自分が楽しみにすると雨が降るので周りに迷惑を掛けないように心の起伏を平坦にして周りとコミュニケーションをとらないようになってしまいます。
対して佐古路は鍵がなくなったせいで霊力が少なくなり、自分の命も危ぶまれる中、拓海のことばかり心配している優しい人です。
ほの方も仰ってますが、この神様か何を考えているのかよく見えない。神罰とはアメフラシなってしまったことで、佐古路の鍵になってしまったことではないと思うのですが、鍵の形をした尻の痣が痛んだ後に雨が降るのだから、連動してます。その上、鍵を返すのには食べられるか伴侶になるしかないなんて、人間として死ぬという選択肢しかないってことで、それでも十分過ぎる神罰だと思うんですけどね。お父さんは懐の深い神様だって話をしてくれましたが、とてもそうは見えない。
それに神の怒りが取れたのはいつなのかよくわからないです。神社での奉納太鼓に拓海の心が伝わったと言っていましたが、奉納太鼓を叩くのは良かったのかしら?謝りに行くのも佐古路に懺悔するのも邪魔していたのに?雨もお天気雨で豪雨じゃないし。
不憫受けとはちょっと違うのですが、人が良いだけに苦しみ続ける拓海があまりに可哀想で、後半の奉納太鼓を叩くところまでは読んでて苦痛でした。
兄思いなのはわかるのですが、鍵を返せと責めるだけで、ただの人間の拓海にどうすればよいかの指針も与えてくれない佐具路にはもやもやするし、小さい時ならわかるけど、子供じゃあるまいし、今だに絡み続けてくる酒屋の息子も、何がしたいのかよくわからないし。
最後の方は良かったです。佐古路の独占欲とかもっと見たかった。佐古路にはもっともっと拓海を愛してあげてほしいです。ただ、私としては最後の方の幸せな拓海の日常をもっとたくさん読みたかった。そしてもっともふもふして欲しかった。ラブ成分は濃いのですが、ちょっと短い‥後半までしんどかったので、その分最後の部分が幸せで、読後は悪くないです。そこまでたどり着くまでが苦痛だったのが残念でした。
拓海には今まで苦しんだ分、沢山幸せなってほしいと思います。
四ノ宮さんの作品は初めて読みました。
王道でちょいモフなファンタジーです。
田舎の温泉宿の息子、拓海は子供のときに神社の狐像の鍵を滝壺に捨ててしまった過去がある。
以来、雨男となってしまった彼は、逃げる様に故郷を離れ東京で寮生活をしていた。ところが、父親の病気の為、大学への進学を諦め、宿の若旦那として再び故郷に戻ることとなる。
帰郷した日も雨に見舞われ、拓海がやむなく神社であまやどりをしていたところ現れたのが、稲荷神の眷属である佐古路。
王道も、モフモフも、神社を舞台にした話も大好きなのですが、いまひとつ盛り上がりに欠けるかな、と思います。
他の方もおっしゃる様に設定が、よく分からず読んだ後も謎な部分がありました。(ま、私の理解力が乏しいのも大いにあるかと思いますが)
そして結局、稲荷神は怒ってたの?何かしたの?
2016年刊。
表紙で一目瞭然のケモ耳尻尾人外攻めでっす!!
10歳の頃、稲荷神社のお狐さま像が咥えていた鍵を壊してしまってから雨男となってしまった拓海。
以来、楽しみにしていたイベントや遊びが雨男の拓海のせいで中止続きになってしまうのを同年代の子供達に責められる居たたまれなさから、都心の中学・高校に進学して地元を離れてしまう。
しかし、温泉民宿を営む実家の父親が倒れた事から、大学進学を諦めて跡を継ぐべく戻ってきた拓海だが…
ちなみに拓海が実家に戻ってきて最初に出逢った神社に住む佐古路(さこじ)は、実は稲荷神の眷属でお狐さまだというのはすぐに察しが付くかと思う。
拓海がお狐さまの鍵を壊したのに謝れずに隠し続けた罪悪感、雨男になった自覚から周りに迷惑を掛けないようにと引きこもりがちになってしまった経緯、諦めていた夢で佐古路の為に祭りの日に奉納太鼓を叩く決心をするまで…が上手くまとまっている。
この話は拓海視点で進行していくのだが、佐古路の目線から捉えても楽しいかも知れない。
長年見守ってきた住民達の中でも一番贔屓に思っていた子に失くした鍵の霊力が宿っていて、拓海をこれ以上悩ませたくないと身を引く覚悟を持っていたのに、番になってもいいと告白された時の喜びようが何とも可愛かった。
それからの二人はまさに王道の溺愛一直線で過ごしていくんだなと丸わかりの後日談も入っている。
本来雨っていいイメージがないし、自分にとっても嫌な天気だが、拓海が雨男となって思い悩む一方で、佐古路の嬉しい感情が滲み出る”狐の嫁入り雨”(優しい小雨)ってのも効果的だった。
タイトルからもふもふを期待して読んだけれど、それほどもふもふしておらず肩すかし。主人公が雨男というコンプレックス部分が話のかなりの部分を占めていて、BLとしてもちょっと拍子抜け。題材としては惹かれる部分が多いのに何だか萌えきれず残念。
作品として破綻しているわけでもないし、文章も特に問題がないのに何かが足りない感じ。雨男になってしまった部分をもっと書き込んでファンタジーを強くするか、もっともふもふを強くするかのどちらかにすれば満足感が強くなったのかも。