電子限定版 イラスト入り
人間と獣人が共存する世界を舞台にした3カプのお話。ナチュラルに“背中の羽”と出てきてびっくりした。特殊設定はそこだけで、地に足のついたストーリー。キャラは矢浪が一番好きかな。
『恋する鳥は空を飛べない』
教師に恋する男子高校生のお話。高岡がいくら気のない素振りを見せても、吉沢はぐいぐい迫ってストーキングまでしていて、とにかく高岡が大変そう。
この話は、告って振られた生徒が自殺未遂を起こし、振った教師が悪者にされる展開が胸クソすぎて、教師への同情が止まらない。もし未遂で済んでいなかったら、確実に高岡のせいになっていたであろうところが激しく不快。
教師なんて何を言っても批判されそうだし、こんな悪意を見せられたあとでは、真白にはもう高岡から離れて欲しいと願ってしまう。学校という狭い世界で生きているがゆえに、高岡への執着はなかなか消えないが、最後は自分で気づけて良かった。
この時点ではお別れエンド。お互いのためにも、ベストな終わりだったと思う。
『毒蛇は涙をこぼさない』
蛇の毒牙を持つ矢浪と後輩君のお話。矢浪は一作目にも出ていて、一番好きなキャラだった。
生い立ちや生活環境等が酷いので辛くなってしまいそうだが、一作目で大人になった矢浪の様子を知ったうえで読めるので、ある程度心の安定が保てて良かった。
『モノクロ世界でうたう猫』
一作目に教師として出ていた諏訪と、同級生のお話。これと一つ前の作品は、特にテーマが分かりやすい。いじめや差別が描かれており、さらに言葉でもはっきり語っている。
個人的にこういうものは、エピソードの提示で伝え、直接的な言葉を使わず、読者に考えさせる書き方の方が好きかな。
『鳥は太陽にくちづける』
お別れした一作目のカプが再会し、見事両想いになってくっつくお話。教師を辞めた高岡が遠慮なしに口説いてる。
生徒と教師がくっつく場合、生徒側は卒業して外の世界を見ても気持ちが変わらないかを確認してからというのは大事だと思う。重くなっていく生徒の感情に振り回される教師はつくづく大変だな、と思った。
一人称視点。一人称だけど砕けすぎていないから、とても読みやすい。
●一つ目は28歳教師(高岡)x翼の生えた生徒(真白)
やっぱり教師x生徒は良いな。
年上に恋をする受けは可愛い。
幼少期から羽だけでちやほやされ辟易していたところに、先生の対応が沁みて惚れた流れ。
表紙の次にあるイラストや序盤の会話から、悲恋切甘メリバなのかと構えて、何となしの会話にすら胸がぎゅっとする。
雰囲気が神聖。
●二つ目の話は毒蛇先輩(功貴/いさき)x後輩(正/せい)
窒息死の噂の発端となった二人。
一つ目の話ででてきた、矢浪のパートナーの獣人カウンセラーはこの後輩のこと。保健医じゃないから安心してください。
●三つ目は同級生カップル。人間(敏公/としひろ)x猫耳獣人(円/えん)
これも一つ目の話で出てきた、諏訪先生と歌手? の若い頃の話。
窒息死の噂の現場を聞いてしまった二人。
こう考えると、一つ目の話で「美術準備室で窒息死する」って噂で神妙になってたのが面白い。
諏訪が円に告白したセリフがイケメンすぎる。
●一つ目の話の三年後の話……32の高岡と21の真白。
卒業してからも諏訪や矢浪とその恋人たちと交流を続けている真白。諏訪が奢るからとx時にレストランで待ち合わせを約束し、当日を迎えてレストランに行き「待ち合わせで〜」と言って見渡したらそこに高岡が手を挙げて待ってたシーンでぐっときた。
真白の言葉一つ一つに意味深な返事する高岡にギュンッ……。
観覧車の「誰と結ばれないって?」のシーン。今までかかってたBGMが止んで、ドゥンッ…エンダァァァァァァァァァァァァァイヤァァァァァァァァって流れるくらいのクライマックス。
教師の頃と打って変わって、溺愛独占欲丸出し攻めです。真白は変わらず健気純粋受け。
ナツイロ・リアルは、3カップルが集合したキャンプ話。
特典番外編は、また先生になった高岡と真白の、過去振り返り話。
最後に。結ばれてから、真白は高岡のことを翔さん翔さん呼ぶようになります。某哀川の顔が浮かんできます。
表紙絵のイメージで、獣人が住む世界観の物語と理解して購入したのですが、
著者が言う「リアル」の意味する概念が良く理解できなかった。
獣人世界を描くファンタジーになぜ「リアル」?
表題作は、「恋する鳥は空を飛べない」
あとがきには、
『普通の人と少し違う獣人』
『人外とは差別用語』
「人は「違う人」にはいつだって残酷」
死生観も「差別のうえに重なる差別」
・・とあって、ファンタジーに登場する人物は、現実社会に存在するマイノリティを獣人に擬人化して、マイノリティが感じる苦痛や孤独を語っている、らしい。
「サヨナラ・リアル」は、目次に無い区切りが四つあり、どれも美術室(「長時間いると窒息死する」というジンクスがある)に関わる獣人と人間の恋。
鳥
毒蛇
猫
鳥と太陽
そして、あとがきの後には「ナツイロ・リアル」
各章に登場する獣人キャラは、少し異質で世間から浮いてはいるけど、どれもそれなりに幸せ。
偏見と差別感を持たない伴侶と出会い、それなりに自分を受け入れ、生を謳歌しています。
一通り読んだけど、読後にタイトルと中身の不一致を感じました。
捻りすぎじゃないのかな。
「リアル」が差別を意味していて、「サヨナラ 差別」を意味するタイトルなら理解できる。
評価もレビューも見ずに、読み始めました。
獣人。人間社会の中に獣の特徴を持つ人が混在する世界のお話。
ファンタジーだけれど、リアリティがあり、獣人だからある悩みや生きにくさが、少しずつ伝わるように描かれています。
背中に羽を持つ高校生の吉沢は、美術部顧問の高岡に惹かれ、美術部に入るが高岡先生は全く相手にせず。。。
『美術準備室にいると窒息死する』という噂を調査し、高岡先生を守ろうとする吉沢。。。
高岡先生と吉沢のお話。
そして、この噂の元になった矢浪と正。
高校教師の諏訪と円。
3つの物語がそれぞれ単独で描かれていますが、少し繋がっており、読んでいるともしかして!と思う場面があります。
一冊になっているのも、読みやすく良かったです。
私的には、諏訪と円の話が男子高校生らしさと、友情から恋に発展していきそうな感じが凄く好きです。
猫耳を想像するだけで、きゅんきゅんしました。
獣人なので、綺麗や可愛いだけではなく、醜さ、辛さもあり、獣人の集団自殺というニュースにもなるくらい重い設定でもあります。でも、成長した吉沢を見ると生きるぬくことの素晴らしさが感じられます。
高岡に、「初めて全身で溺れる恋をした相手」と言われた時には、私も浮かれました!
何ていい言葉なんだろ!
色々な面で、神評価作品です。
朝丘さんのご本は最近は購入していなかったのですが、教師×生徒に惹かれて読みました。
カプはメインを合わせて3組。
舞台は同じ男子校ですが時間軸が違うので、ちょっとわかりにくい部分もありますが、それを把握していれば大丈夫かと思います。
どのカプのお話も一人称ですので、その辺りは好き好きありそうですね。
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メインカプは、高校の美術教師の高岡(28歳)×鳥の獣人で高校二年生の真白。
そして、蛇の獣人で高校二年の矢浪×後輩の正。3組目は学級委員長の敏公×猫の獣人で転入生の円となっています。
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時間軸は高岡×真白が一番最近で現在。
他の2組は現在もう大人になっていて、真白だけが高校生。
サブカプのお話は、4人の高校時代となっています。
なので順番的には、矢浪×正→敏公×円→高岡×真白が正しいのかな。
現在は真白の担任が敏公で、敏公から紹介されるのが矢浪です。
高岡と真白の話にこの二人はキーパーソンとしてかなり登場(特に敏公)していて、ちょうど彼らのことが気になった頃にそちらも読めるのはなかなか親切な構成。
読み終えて思ったのは、真白面倒くさい!ということです。
一人称なのでよけい感じるんですよね。
それでも高校時代の後半辺りは涙を誘います。
真白は健気だし。
訪れる別れも、いっそそのままでも良かったのかなとも思いました。
というのは最後のショートで大学生になった真白の鈍さがかなり際立っていて、読んでいて頭の中にハテナマークが…
そしてそこでは前半かなり男前で個人的に好感度の高かった高岡もアプローチがグイグイで、まるで別人のようでした。
アンハッピーなら読めないと思い大丈夫なのを確認して読んだのですが、かえってなんだか腑に落ちなくなってしまいました。