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西田ヒガシ先生のデビューコミックス。
8作品収録の短編集。
そして、デビューからすでに他の誰の作品とも全く違う個性がある。
「奪う男」
何もかも自分より優れている後輩が、また自分と同じ部署にやってきた。
そして以前のように、何もかもを追い抜かれ、何もかもを奪われ。
だがその男は泣きながら言うのだ。コートを返せ、と。
この辺りから物語の色が一変し、男たちの言えなかった恋情がほとばしる。その急展開に驚き、圧倒される。
「YOU GIVE」
規律の緩い営業所にバリ系の所長が来て、みんなやりにくい。
営業の青山はゲイで所長に気があるが、所長は本社の取締役に心酔していて…
西田ヒガシ的Hシーンの凄いところがもうデビュー作から出ている事を再確認!
大袈裟な喘ぎも擬音も無い。ただ絶頂に震える全身とそれを愛おしく見つめる眼。
ラストがギャグなのもすでにお約束です。
「課長になったら」
ライバルに同性セフレとのイチャつきを見られてしまった。
だが相手は見て見ぬフリ。
自分はアセる。
だがこの話はここから意外な展開に転がっていく。つまりは…実は「両片想い」。
そして西田的カップルは社内で追いかけっこする。
「LOOK LIKE」
職場のチーフが訳もわからず自分を避けている。やりづらい。
そんな時2人で泊まりの研修を受けることになり…
チーフの抱える切ない秘密と、逃さずにチーフを掬い上げる小田嶋がいい。
「総務にひとこと」
室長にわざとキツく当たる総務の坂本。でもそれは…
西田先生ってほんとにこういう展開巧い。
何と言っても室長の「おまえの…メガネを…はずしてみたいなと……」というつっかえつっかえの言葉ですよ。
「LIVE & LET…」
金貸し同士のトラブル。
敵なのに思わず助けてしまって心ならずも一緒に逃げるが…
同じような展開が続くけど、コレもやっぱり巧いんだな。言わずに想いあってて、激情のまま雪崩れ込んだ後、ギャグで落とすカンジ。
「放課後まで待てない」
高校生。に見えないけど高校生よ。
怪我でサッカー選手の将来が無くなったクラスメートが好きで。
相手は露骨に避けるから思い余って襲おうとするんだけど……からのまたしても急展開。
一人なら大丈夫なのに、相手も、と思うと怖くなるアイツと。
一人だと不安だけど好きな奴と一緒なら強くなるオレ。
「君の奏でる曲を」
金で繋がった関係のバンドマンとクラシックのピアニスト。
嫌々ながらの腐れ縁かと思いきやの…
2人の想いは今まですれ違っていて、その間違いを言葉にしてやっとわかる。これまでの時間は何だったんだろ?ピアニスト氏はどうも掴みどころがない。
反発と急展開、なだれ込むような行為と照れ隠し的ギャグ。
また、どれもこれも等身大の男性(特にリーマン)が繰り広げる愛や微妙な機微や笑い。
そういう類似点の多い作品群ですが、どれも最高に面白い。
これがデビュー作か…今読んでも当然面白いしその凄さをより一層感じる。
ここが原点、デビュー単行本です。どっちもこっちもオフィスラブ。短話でまとめるのが本当にうまい。デビューだけあって、先生にしては茶化さず甘い気がする。
◾︎奪う男
この作品を全く同じ台詞で別の作家さんが描いても、ここまで刺さってはこないんだろうなと思う。西田先生の絵柄こそが自分には魅力的なんですよね。少女漫画のようにキラキラしていないからこそ、台詞が一発一発生の言葉で発せられて届く。
◾︎YOU GIVE
20年前の作品なので青山がタウンページ見てたりしますが、面白さは普遍です。
◾︎課長になったら
◾︎総務にひとこと
「奪う男」と同じく、話はとてもストレートなのにこんなに面白い。
◾︎LOOK LIKE
小田嶋はチーフの食べ物の好みも血液型も知ってるし、高野は小田嶋が何にでも醤油をかけることを知ってると。うーん相思相愛。
作者様のデビュー作。程良いギャグテイストで読んでいて楽しいです。
8作品中、5作品までがリーマンものの短編集です。この作者様の作品はリーマンものが多いのですが、妻子もちとか切ない読後のものもある中、これは全部がハッピーエンドという点で初読みにはお勧めです。
「奪う男」
本多(攻め)から樋口(受け)は何かと奪っていく。高校時代ではバスケのレギュラー、部長の座、彼女。そして社会人になって再会した今度は仕事。ついに腹を立てた本多は樋口を襲うけれど…。最後のページ、「主張」ってなんぞやと思ったら「出張」の誤りでした。コートをよこせと泣く樋口が可愛かったです。
「YOU GIVE ユー・ギヴ」
青山(攻め)は研修の講師をしてくれた橘所長(受け)に会うのを楽しみにしていたのに仕事マシンに変身していてガッカリ。だが、橘が営業本部長を好きだと気がついて…。健気で切ないなぁという部分と、コミカルで面白い部分のバランスが見事だと思いました。
「課長になったら」
課長の座を争っている同期の二人、南と姫嶋は、実は両思いだったという話。オフィスでのエッチ、椅子を足で引き寄せて来たりゴミ箱を蹴飛ばすという描写がリアリティあって良かったです。あと攻め受けが反対だとなんとなく最初は思っていました。
「LOOK LIKE ルック・ライク」
小田嶋(攻め)は自分をロコツに避ける高野チーフ(受け)の態度が腑に落ちない。そんな中、二人で研修に出かけ、宿泊先のホテルで高野の元彼氏が小田嶋に似ていると知り…。
投稿作とのことですが、この作品が一番好きです。高野と8年間付き合った男は、妻子がいて高野は愛人だったのですが、別れ際の高野や小田嶋への態度は男らしくて良かったです。泣きながらティッシュをばら撒いたり、恥ずかしくてギクシャクする高野が可愛らしかったです。
「総務にひとこと」
総務の坂本(受け)は、原田室長(攻め)を呼び出しては書類の小さな不備をちくちくと文句を言う。その心は…。ラストのテンパる原田室長が面白かったです。仕事は出来ても恋愛は不器用な男って良いものです。
「LIVE&LET… ライヴ・アンド・レット…」
裏の金貸し業でライバル同士の二人、島田(攻め)と北村(受け)。だが、島田が殺されそうな場面で、とっさに北村は助けてしまい…。
殴りあった後のセックスが野生的で素敵でした!「目を閉じないで」にこの二人の続編があります。
「放課後まで待てない」
高校生カップルの話。新田(受け)を襲おうとしてやめた平井(攻め)が「高校中退だとどんな仕事があるかな…」と突然窓の外を見ながら言うという風な展開がすごく好きです。学校にある安い机でのエッチが高校生らしかったです。
「君の奏でる曲を」
レインはホルツに抱かれているけれど…。音楽家同士の恋模様です。レインが不可思議な男でした。
「まんがみち ーあとがきにかえてー」
爽やかなアニメ声でキツイことを言われた編集長、に笑いました。
きちんと働いている大人の男が揺れる恋模様を読みたい方にお勧めです。最後まで必読です!
感想書きたくて再読。
切っても切っても同じ俳優が演じてるとしか思えない短篇集。
とにかくリアルなリーマンライフ。そしてどこまでも不器用で、かっこつけてズッコケな男たちが堪能できて満腹です。
15年も前の作品で、多少タッチも変わってるんだけど、印象としては全然変わってない。
初投稿作も収録されているんだけど、これがまたガチガチな西田節で、当時よくこんなキラキラしてない作品が採用されたなあと、編集さんの先見の明に感謝するばかりです。
西田東さんのデビュー作ですね。十数年ぶりに読む機会に恵まれて、当時の衝撃がよみがえってきました。
やっぱすごい。尋常ならざる才気がビリビリ伝わってくる感じ。20~30ページの短編ばかり8編なんですが、つまんないのがひとつもない。さすがに絵柄は今以上に不安定で、いかにも「あれこれ模索中です」って感じなんだけど、読んでるうちにそれも気にならなくなるくらい、1人1人のキャラの生身が息づいています。
昔読んだ時は、表題作の「奪う男」が、タイトルのインパクトもあって一番印象に残ってたんですが、今回は「課長になったら」で不覚にも泣きそうになりました。
ナンパな南と硬骨漢の姫嶋。対照的な2人だがいずれも仕事はデキる男。入社10年の同期でともに出世頭、課長のポストを争う好敵手と周囲に目されている。
ゲイの南はある日男といちゃついてるところを姫嶋に目撃されてしまう。
保守的な職場で、出世レースに響くと口止めしようとする南。「俺がそんなこと告げ口すると思ってんのか?」と激昂する姫嶋。南は思う。「告げ口するような男だったらよかった」みんなに言いふらして笑い物にしたり、軽蔑して無視したりするようなやつだったら、自分もこんなに長い間苦しまなくてすんだのに・・・と。
その後もあまりにも変わらぬ態度で接してくる姫嶋に、つい挑発するような行動に出てしまう南。「なんでそんなに知らんふりするんだ?」姫嶋の反応は、だけど予想外に激しくて・・・
互いに混乱の極みにありながら、一方では熾烈な課長レースもいよいよ佳境に入る。「俺に課長の椅子がきてもお前に譲る」だから抱かせろと迫る南。「いいぜ。課長にならせてくれるんならどんなサービスでも」「おまえがそんな言い方すんな!汚れちまう!」
めちゃくちゃ矛盾した南の言い分。姫嶋の困惑。せっぱつまった南が思わず漏らしてしまう一言が「じゃ、言っていいのかよ。俺がただお前を好きだなんて、言っていいのかよ?!」
対する姫嶋の返答がこれまたオトコマエで、BL史上に残る名告白シーンだと思います。