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お前に命を狙われるのも悪くない
前作「愛していいとは云ってない」の後、またもや克幸の元に戻り、バーテンダーとしての生活を送る湯月。
克幸の財力で最新の治療を受けた釜男は、舞台復帰を目指しレッスンを始めていた。
…という時間軸で、ある日湯月は突然見知らぬ男たちに拉致されて。
彼らの湯月に対する要求は、釜男に手を出されたくなければ斑目を殺せ、と。
その方法は、毒殺。
酒を出すバーテンダーとしての湯月にふさわしく、斑目に出す酒に毒を入れろ、という男。
何よりも釜男が大事な湯月は、克幸を殺す決意をするが…
この辺りの湯月の克幸に対する愛憎の緊迫感は強烈。
3作目にして、物語の持つ「力」は益々加速しています。
男の抱く殺意、湯月の抱く愛憎、克幸の抱く執着…それらが絡み合って、アクション、サスペンスの観点からもスピード感と迫力共に申し分なし。
もちろん、武闘派・克幸は絶体絶命の局面でも傲慢な帝王の顔を崩さず、自分に楯突く男を容赦なく叩き潰します。この対決シーンも必読。
そしてそれは、結果的に湯月と釜男を助けることにもなる。
全てが終わって興奮のままサディスティックに湯月を抱く克幸。そんな克幸に心まで持ってかれてる事を自覚して、それでもただ従うだけにはならないのが湯月。
本作はここで終わっています。
斑目兄x坂下の「愛してる」シリーズは大団円でしたが、こちらの克幸x湯月編は完結とは言えない。
これは是非続きを読みたいと切望します。
「幸せであれ」
湯月の中学時代の同級生視点でのSS。
昔から雰囲気のあった湯月。対して特徴のない自分。中学の時、一度だけ口をきいた事のあるだけの自分。
湯月の店のカウンターでカクテルを一杯。
もちろん、湯月は気付かない…そして彼は知る。湯月は「初恋」だったという事を。
『愛して』シリーズのヤクザの斑目弟と愛人のバーテンダーのスピンオフ3作目。
今回、斑目に恨みを抱く人間から釜男を盾に取られ、斑目を殺すよう湯月が脅されます。一度は、釜男のために斑目を殺すことを決意した湯月ですが……。斑目に勘付かれてしまい、折檻という名の激しい悦楽へと堕とされます。それはもう、これまでの逃亡や火遊びの浮気の非ではない、中原ファン期待の至上最悪のお仕置きをされるわけです。あんなとこやそんなとこにあんな物やそんな物を入れられます。その後の敵陣に捕まった時以上に、湯月の身の危険を感じました(笑)。
やってる行為もかける言葉も最低極まりないですが、怒りや恨みに任せてというより、純粋に痛めつけるのを楽しんでいるところが、斑目が斑目である所以だと思います。その後の黒幕との対決でも、命の危険に晒されながらその状況を楽しんでさえいて、そのブレない悪党ぶりに、気付けばどっぷり毒されてしまっていました。
相変わらず、自分の本心に気付こうとすらしない捻くれまくった二人ですが、恋愛面においては、少しずつ進展しています。斑目は湯月のことを「他に代えはいない」と自覚していて、湯月も斑目のことを自分の居場所として認識しつつあります。斑目兄が「お前も大事なものを作れ」と助言した通りになってきていますが、何となく、この二人には最後まで、お互いへの感情を恋や愛とは認識せずに、捻くれた愛情表現のまま走りきってほしいような気もします。
この二人の行く末は、まだまだこれで終わりではないと信じております。