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表題作ワンダーフォーゲル

沖津 稜,閉所恐怖症の青年
伊武,人の心が読める小説家

同時収録作品みえない友達

その他の収録作品

  • 夏休みの友
  • 南の島ミッション!(カバー下)

あらすじ

「僕は君の頭の中の物語だって、小説にすることができるよ?」放浪先の沖縄で野宿を続けていた沖津。台風で身を寄せたのは、小説家・伊武の家だ。本人曰く「他人の心の中が読める」という伊武は、過去のトラウマから閉所恐怖症の沖津に、初対面から興味を示してきて…!?
妄想狂か、嘘つきか。不思議な力を持つ男と過ごす、鮮烈な嵐の一夜──!!

作品情報

作品名
ワンダーフォーゲル
著者
草間さかえ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
徳間書店
レーベル
Charaコミックス
シリーズ
ワンダーフォーゲル
発売日
ISBN
9784199607196
4

(125)

(58)

萌々

(37)

(19)

中立

(5)

趣味じゃない

(6)

レビュー数
22
得点
500
評価数
125
平均
4 / 5
神率
46.4%

レビュー投稿数22

誰を主人公に据えて何を読むか、で面白さが変わる

読者の読み取る力に委ねられているのでピンとこなければスッキリしないまま終わりますが、ピンときた時には「面白い!」と手放しで絶賛したくなるような1冊です。
そして、登場人物達の色気に当てられてBLとしてもしっかり満足度◎でした^^
草間さん惚れ惚れするなぁ。

「見えない友達」と「ワンダーフォーゲル」という2つのお話が入っています。
これらは相互に絡み合っていて、「ワンダーフォーゲル」を読むと「見えない友達」の側面が見えるようになっていて、一方で「見えない友達」は「ワンダーフォーゲル」を読むための布石のような位置付けになっています。
誰をメインの主人公に据えて読むかで印象がカメレオンのように変わる1冊かもしれません。

ここから先少しネタバレし過ぎかもなので、未読の方は読み飛ばしてもらう方がいいかもです。



「見えない友達」は、子供の頃に遊んだ「友達」が実在していたのかイマジナリーフレンドだったのかよく分からない、という体裁で始まります。
話が見えない最初のうちは「得体の知れないぞわぞわ感」が付いて回る不思議なお話という印象なのですが、解ってしまうと実はもっと直接的に背筋がゾワっとするような事実が隠されている(かもしれない)…というあんばい。
隠されている(かもしれない)ものは「ワンダーフォーゲル」の番外編まで読み切ってもう一度本作を読み返すことでぶわっと浮き上がってくる。
「ワンダーフォーゲル」内のセリフをそのまま引用するなら、
「父親は彼を連れて逃げた/おじいさんは閉じ込めて/君がやっと外に放した」そんなお姫様救出劇。
本編では巧妙にヒントだけばら撒いて真実は何も明かされないのですが、
「しろう君は(中略)ずっと俺のヒーローだもん」
このセリフの意味が解った時に襲いかかってくる、背筋を凍らせるような破壊力ったらありません。

(かもしれない)としつこく括弧書きするのは、推理小説のようにラストに何もかもが明らかになるわけではないから。
読んだ者の頭に浮かんだであろう「真実」は、あくまでも作者によって誘導された読者の推察にしか過ぎないのです。

と、そんなレビューを書くに至らせるのが、次のお話。

「ワンダーフォーゲル」は、他人の頭の中が読めるという小説家のお話。
これがさてうまくレビューを書けるだろうか…という感じのお話なのですが・・・
あらすじなどはさておいて、ここは自分の感じた「面白味」を書き残しておこうと思います。
冒頭で“「見えない友達」は「ワンダーフォーゲル」を読むための布石”と書いたのは、「見えない友達」が「ワンダーフォーゲル」で描かれていることを理解するために用意された解り易い事例の役割を担っていると思うから。
ある側面を見聞きして何かを知ろうとする時、そこにはたいていの場合多くの思い込みや推察といったものが加わるんだけど、そのことに本人はなかなか気付けないもの。
そんな教訓めいたものを面白く肉付けして「物語」に昇華させたのがこのお話なんじゃないかなと自分なりに着地しています。

ここに出てくる小説家の〔伊武〕は、人の頭の中にある物語を読んで代わりに自分が文章に起こしているだけ、だからこれらは自分の生み出した物語ではないという。
読者はそれまでの話の流れで伊武が人の心を読むシーンを見せられているから「ああ、そういう話か」と伊武の主張をすんなり受け入れて読んでいく。
それを沖津が「目を覚ませ!」と言わんばかりに真っ向から否定する。
「あんたの書いた本はあんたの頭から出た話だ」
最初よく分からなかったんですよ。結局どっちなの?って混乱するんです。
そこでもう一度読み直してみると「ああ、そういう話だったんだ…!」って気付くことがある。
〔沖津〕という俯瞰的な視点が、作者の意図的なリードによって一方に寄せられてしまっていた読者の視点の偏りを矯正してくれるんです。
沖津の「閉所恐怖症」という設定は、「広い視点から見る」というのを暗喩しているのかな?なんて思いました。

で、ん?待てよ?それじゃあ…とまた「見えない友達」に戻って読み直していくと、先に書いたような感想に最終的に行き着くわけです。
いかに「それ」が事実っぽくても推察は推察でしかない。本当に本当の真実は当事者にしか分からない。
そしてその当事者達はすでに亡くなっているか記憶を失っている。
真実はもう誰にも分からない。
全部がハッキリと明かされないのはきっと“敢えて”なんだなと。
軽く鳥肌が立つような仕掛けのある、読み甲斐も読み応えも十二分な1冊でした。

…という私のこのレビュー自体がそもそも私の勝手な思い込みの加わった考察かもしれませんよね。

やー面白かった!
そして「ワンダーフォーゲル」のおねショタみあるカップリング、萌えでした♡

【電子】ebj版:修正○、カバー下○(1p)、裏表紙×、電子限定特典(4p)付き

17

何度でも読み返したい

大好きな草間さんの最新作!
読み手の理解力が試されるような、伏線などはちょっと難しいですが、
読み返しに堪え得る良作だと思います。
(「分かりやすい」のが好きな方にはお勧めできませんが。。)

伊武さんの能力が本当なのか思い込みなのかはっきり書かれていません。
でも、稜が「妄想でもあんたにとっちゃ真実なんだろ」と
自分は信じてなくても相手がそう思うならそれでいい、と許容するところに
大きな愛を感じました。
登場人物の4人とも皆かわいくてニヤニヤ。

最近はエロ濃度が高い作品には胸やけ気味なので(定期的にこういう時期がある)、
そういう意味でも今の気分にぴったり。
上半期一押しです。

9

伏線の回収の仕方が素晴らしい

草間さんの新刊という事で楽しみに待っていました。

『みえない友達』と『ワンダーフォーゲル』の2つの話が収録されていますが、それぞれ独立した短編かと思いきや草間さんらしい、というのか、絶妙にリンクした関係の2組の恋人たちのお話。






草間ワールド満載。です。

序盤、まったく意味が分からない。

前半は『みえない友達』。
自分しか知らない、ほかの誰も存在を知らない「みえない友達」と探しているという一人の大学生・平坂くんが主人公。

平坂くんが子どもだった頃に一緒に遊んだゆうとくん。
ゆうちゃんが見知らぬおじさんに連れていかれるところを目撃した平坂くん。
けれど、そのことを大人に話してもだれも「ゆうとくん」を知らない。
「ゆうとくん」は実在した男の子だったのかー。

後半(というか表題作)の『ワンダーフォーゲル』では、人の考えることが読めてしまうという不思議な能力を持つ作家さんが登場。

ホラー要素はバリバリあるのですが、おどろおどろしさはほぼなく、「ゆうとくん」は本当にいるのか、いるのなら今どこにいるのか、を軸にストーリーは展開していきます。

「ゆうとくん」の存在のために今現在もトラウマに悩む青年たち。
一体だれが「誰」で、人間関係がどうなっているのか、というのが非常にわかりづらい。

分かりづらいのだけれど、そこかしこに撒かれた伏線が少しずつつながっていき、パズルのピースがぴたりとはまるように答えが分かる。読んでいるときは意味が分からなかったところが、後々「あれはそういう意味だったのかな?」と分かる。伏線の張り方、そして回収の仕方。そういったストーリー展開に仕方はさすが草間さんといったところか。

けれど、本当はどうなのか、というのは読者にゆだねられているのかも。読んだ人それぞれが、好きなように、感性のままに「こうなんだろう」と思ったのが、その人なりの正解なんじゃないかな、と。

草間さんの絵柄って、綺麗なのですがちょっとレトロっていうのかな。
なので不可思議なストーリーですが、和の雰囲気に満ち溢れていて、ホラーというよりも「夏の夜の怪談」といった雰囲気のお話でした。

なかなかわかりづらいお話ではあるのですが、個人的にはとっても面白かった。草間さんらしい、複雑で、でも優しい想いに満ち溢れた神作品でした。

7

一歩進んで、二歩下がるみたいな…(笑)

みな様レビューで書かれているように、とにかく難解(笑)設定も状況も人物の名前さえも分かりにくい〰‼

さりげなく名前とか年齢など冒頭には置かれているものですが、全くそんな優しさなどなく「えっ、これってもしかして何かの続編なのかな…」っと『ちるちる』で確認してしまいました(笑)

さらには『みえない友達』と『ワンダーフォーゲル』の二部構成なのですが、あんた誰?って人がいきなり出てきて明らかにされることもなく前半終了とか、とにかく行って帰ってちょっとわかって、また行って帰ってちょっとわかるというのを繰り返し、最後まできてなんとなくわかったようなわかんないような…で、再度冒頭から読む。と、いうことを繰り返していくうちになんでだろう…すごくよくなってくる!恐るべし、草間マジック(笑)

萌えシーンとか熱い想いをいっぱい書きたいのですが、あまり情報を入れてしまうとせっかくの謎解きの面白さが半減してしまうので、難解なところしか書けませんでしたが、わかりづらくて、行って帰ってするのもこの作品のよさだと思いますので、ぜひ一読されることをオススメします。
私は大人のイブさんにたまらない萌えを感じました(うっとり)後半の『ワンダーフォーゲル』にはご褒美シーンもありますので、途中で投げずに最終ページまで到達して下さい!

3

すぐに読み返したくなる謎

ミステリー調の作品が多い草間さかえ先生の中でも、初っ端から謎だらけの作品です。

◾︎みえない友達
難解との前評判ではありましたが、初読のとき先生の新刊が嬉しくて異常な集中力だったため、すんなり読めました。しかし、暫く経って軽い気持ちで読み返していたら途中道に迷いました笑
登場人物の名前をきっちり噛み砕きながら読む事をお勧めします。

◾︎ワンダーフォーゲル
「みえない友達」ありきのお話です。「みえない友達」はBL的萌が薄めですが、こちらは沖縄の空気感と、イブさん(受 小説家)の色気と、沖津(攻め 閉所恐怖症)のエロさが相まって草間先生らしい濃厚さです。ストーリーの構造や脇キャラも好き。

※電子書籍 カバー裏漫画有り
電子限定おまけ漫画4枚(ネタ系 面白いです)

2

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