官能小説家と俺の“言えない”お仕事

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表題作インディゴの気分

城戸 士郎,ポルノ小説担当編集者
木島 理生,スランプ中の小説家

同時収録作品ポルノグラファー補遺(其の壱,其の弐)

久住 春彦,サラリーマン
木島 理生,小説家

あらすじ

担当編集×若き日の官能小説家
[ポルノグラファー]過去編スピンオフ!

官能小説の編集者・城戸は、
大学の恩師の葬儀で、同級生だった
純文作家の木島と再会。

創作に行き詰まり困窮している木島に
城戸はポルノを依頼してみるが、
出来は濡れ場が5行で終わる始末…。

そんな折、木島は城戸の頼みで
ポルノ作家の大家・蒲生田のもとへ
弟子入りにやってくる。
そこで悪趣味で鬼畜と有名な蒲生田に
「あること」を命じられた二人は、
一線を越えた関係になってしまいーー。


『ポルノグラファー』から遡ること十数年。
凡人の憧れ×天才の孤独を描いた
城戸と木島の“言えない”過去の物語。

作品情報

作品名
インディゴの気分
著者
丸木戸マキ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
祥伝社
レーベル
on BLUE comics
シリーズ
ポルノグラファー
発売日
ISBN
9784396784225
4.4

(286)

(193)

萌々

(55)

(27)

中立

(5)

趣味じゃない

(6)

レビュー数
25
得点
1271
評価数
286
平均
4.4 / 5
神率
67.5%

レビュー投稿数25

本当に本当に読んで良かった!!

木島と編集者城戸との過去のお話、つまり成就しなかったお話なのできっと読んだら悲しい気分になってしまうんだろう…と警戒して当初、読む予定はありませんでした。
でもいるいるさんの素晴らしいレビューのおかげで(本当にありがとうございます!)俄然興味を惹かれて入手。

結果…本当に読んで良かったです。

純文学作家としてデビューした木島が官能小説を書き始め、どのように変わりあの「ポルノグラファーでの木島」に至ったのかという経緯が描かれているので、もちろん城戸との関係も描かれているのだけど、木島と城戸の愛憎劇などに終始しておらず恋愛メインではないところが素晴らしい。
城戸は既婚者で子供もいるので、例えば結婚が決まった際のエピソードなどドロドロしたものが描かれているのかと思いきや非常にあっさりしたもので、成就しなかった関係=悲恋という見せ方ではありません。

続編が出ると聞いたときに、キーパーソンとして城戸くらいしか出てこないのではないかと思っていたのですが違いました。
官能小説の大家と呼ばれる蒲生田が非常に重要なキーパーソンとして登場します。彼の元に木島が弟子入りをするのですが、この二人の非常に人間臭いやり取りが印象的でして、師弟関係にとどまらず木島が理想の父親像を蒲生田に重ね、親子のような関係になっていく過程がとにかく素晴らしかった。

そして何よりも読みたかった久住との続きが読めたのが幸せです。
ポルノグラファーで再会したその後が描かれており、さらに本編では再会して付き合っている二人のその後の様子が木島の口から語られています。

「宝物なんだよね 僕の」

これを木島の口から聞けたときには、あぁほんとにこの本買って良かったぁぁ!!と思いました。木島は久住に会えて良かった。それを確信できた一冊でありました。
そして、それを聞きながら自分の知らなかった表情をするようになった木島を見つめる城戸。

そのあと、二人でタクシーに乗り込んだシーンも神です。

「城戸くん またね」「またね」
二度めに言った「またね」に何とも泣けてきます。

城戸にとってハッピーエンドともバッドエンドとも言えない。モヤモヤした思いは一生残り続ける。
でもそう単純じゃないからこそ、ほろ苦く味わい深い。大人のためのストーリーでありました。

こりゃ神しかないっ!!

20

もはや文学作品

前作のポルノグラファーがよかった!からの、本作を購入ですが。
これ、本当に良かったです。
なんだか最近、やおいの語源か?!みたいな、エロくて変態プレーみたいなBLがブームなの?な感じの中(それはそれできらいじゃないんですが)、理由があって、無理がない変態。の、純愛!みたいな。

前作はスランプになった純文上がりの官能小説家の主人公木島が、若い男の子にちょっかいをかけて恋愛に移行する話なのですが、
今回はその木島が、デビューしてから行き詰まり、まさに官能小説かになる流れの話です。
大学時代に木島の才能に自分の作家になりたいという夢を削除した城戸が官能レーベルの編集者となり、すっかりダメになっている木島に会うところから始まります。
城戸に言われるまま、官能小説に挑む木島は、城戸に言われるまま間の小説の大御所の最後の弟子になって・・・という話。
城戸の木島に対する嫉妬や愛情。木島の身内に受け入れられなかった過去からなる、先生との関係。
とにかく、なんだかストーリーが濃い。
それこそ官能小説の大家団鬼六の、BL小説っぽい作品を思い出しましたよ(小野塚カホリ先生がコミック化しているあたりの美少年とか)!

こちらの作品を読んで、前作のポルノグラファーを読み直しました。
ら、もうそちらもよい感じで。
こっちとそっち、どっちを先に書いてたんだろう(前作が先に決まってますが)?丸木戸先生は!!マジ、神か!?みたいな気持ちになりました。
そのぐらいスムーズに、どちらから読んでもすごいのが普通にすごいです。
スピンオフ作品は失敗作を読むと、キャラに一貫性がなくなっていたり、ひどいと、あーーーー、人気あったからね〜〜、編集者も声かけるよね〜〜なものもありますが、これは本当に良かったです。


もっとネタバレしたいですが、これ以上書くと読書感想文みたいになりそうなので、この辺で。
エロは少な目ですが、ストーリー重視な方は、絶対に買って損がないと思います!!

13

スピンオフというより、こちらが本編と言いたい!

前作の『ポルノグラファー』もとてもよかったのですが、クズやゲスに萌えを滾らせる私にとっては久住の真面目さや一途さが誠実すぎてちょっと萌えきれなかったし、木島の行動もなんだかちょっと突飛に感じていて違和感を感じていたのですが『インディゴの気分』を読んで欠けていたピースがはまったようにしっくりしました(こちらだけ読んでも前作以上の読み応えがありますが、両方を並べて補完しながら読むと、あまり感情を表現しない木島の気持ちが見えてきて二冊ともさらによくなるので、まだ未読の方はぜひ両方読まれることをオススメします!)

どうして木島はスランプに落ちてしまったのか?なんで意味のない口述筆記などさせようと思いたったのか?そもそもなんで官能小説なのか?などの前作の宿題を補う以上の完成度で、とても読み応えがありました。

そこで鍵になるのが、編集者城戸の存在です。きっかけはお金だったにしても、彼の誠実さに惹かれたがゆえに見下していた官能小説に対しても考えを改め、また、師となる蒲生田に出会い官能小説作家として再帰するまでになり、気持ちも城戸に傾いていたのに、社会の目を恐れ、常識から外れることができず、思ったままには生きられない城戸に裏切られ、一度は歩み寄るものの、結局、社会のしがらみから抜け出せず常識人として生きる道を選んだ城戸に取り残されてしまう。

グズやゲスはある意味特別な人間がなるものだと考えていましたが、一般人であろうとするためにクズになってしまうタイプが1番相手を傷つけているのかもしれないとこの作品を読んで思いました。

傷つけられ辛い思いをしたのは木島の方なのに、誰かを宝物と思えるまでに木島が幸せを感じることができている一方で、思うがままに生きられず、燃え尽きることができなかった想いを燻らせ続けている城戸が哀れでたまらない気持ちにさせる、何ともいえない余韻を残す名作でした。

12

後から描かれたとは思えない、木島理生の人間性を突き詰める物語。

『ポルノグラファー』の木島は捉えどころのない不思議な人でした。
今作では、『ポルノグラファー』で編集として登場した城戸と木島の訳ありな過去が描かれています。
別な男との恋愛、しかも恋人にならない話ってどうなのかなと読むのをためらってましたが、紙本を手に入れる機会があって期待せずに読んだら、文学作品のような重みがあって、『ポルノグラファー』の奥行まで広げるストーリー!
これは読んで良かったです。

城戸と木島は大学同期。
城戸にとって木島は、女を寝取られ、木島の才能によって小説家の夢を諦めた因縁深い存在。
なのに再会した木島は城戸のことを覚えていないし、文学賞を取った華々しい過去から一転、スランプに陥り、生活にも困窮している。
そんな木島に城戸は官能小説を書いて稼ぐことを勧める。

そんな時、城戸は上司から転職を餌に、死にゆく作家の遺作原稿を取ってくることを命じられる。エロ小説編集からビジネス誌編集になれたら仕事を理由に振られた彼女を取り戻せるかもしれない。
城戸は自分の未来のために、木島を小説家の弟子として送り込んでまで遺作を取ろうとする。

木島は最初は老人の世話なんかって言ってたくせに、作家の前に出ると弟子になりたいと挨拶し、作家が出した城戸への尺八(フェラ)の無茶ぶりまでやってのける。
その後、欲望が止まらないまま二人はホテルへ…
木島は来る者拒まずで経験豊富でも、去る者も追わないし、欲望の激しさなんて理解してなかったはず。でもこの時の木島は間違いなく城戸を求めていた。
木島の城戸への想いはシリーズのどこにも触れられてないけど、木島は城戸に惚れていたと思う。
だから城戸が結婚のために自分を利用したことが許せなくてヒステリックにわめき、その後、城戸は結婚も退職も辞めて木島の担当のまま関係も続いたものの、城戸が家庭を持って別の人生を歩むのに比例して、木島はスランプになっていったんだと思う。

木島が反発したまま父を亡くしたことをどこかで悔やんでいて、それが老作家への献身になっているのも、木島の内面を覗けたような気がします。

丸木戸先生のあとがきによると、城戸と新キャラでスピンオフを作る予定だったのを、城戸の木島に対するモヤモヤした想いを突き詰めることにして、この話を描いたそうです。(私には木島の城戸に対するモヤモヤした想いに受取れましたが…)
ってことは、後付けの設定もあるはずなのに、城戸と木島の過去として全く違和感がない!
それどころか『インディゴの気分』の過去があったからこそ、投げやりで捉えどころのない木島になったんだと、”木島理生”の人間性まで突き詰めて『ポルノグラファー』に繋げてるのがすごいです!

城戸にとっても、木島にとっても、あの時の衝動はずっと熾火のように燻っていくはずで、余韻を引きずります…
この余韻はそのままにして欲しかったから、春彦と木島のその後はこの本では読みたくなかったなぁ。

12

痺れました!!

非常に楽しみにしておりました…。
『ポルノグラファー』過去編!!!
久住くんもワンコで可愛くて好きなんですけど、
木島と城戸とのなんとも言えない雰囲気がたまらなくてですね…。
久住くんが二人を怪しんでいる内容は
ただの妄想では無く嬉しかったですww

木島の変人っぷりが
前作に比べるとちょっとマイルドなような気がしてしまいましたが
何度も読み返したので
単に私が木島という人物に慣れてしまっていたのかもしれません。
インパクト強すぎましたもの!!
でも、城戸に頼られ無茶ぶりを承諾したところに
かなりグッときました。
好き勝手しかしないイメージだったので、
ちゃんと情もかけられるんだなぁっていうか…。

城戸が、想像していたより真面目で驚きました!
いや、途中「そりゃないぜ城戸よぉ……」な事もありましたが
人はどうしたって条件のいい方に行きたくなるものですよね。
なんていうか、とても人間くさくて好きです。

大御所官能小説家・蒲生田先生が凄かった!!!
木島を上回る変人っぷりでしたが
信念を貫く姿勢が素晴らしい…。
そして、スケベは正義だと言う事を改めて感じましたし
説得力ありすぎですよ。さすが“官能小説界のドン”。
城戸に見せた涙と、最期木島に見せた笑顔が泣ける……。
木島もよく頑張ったね……。

あー…二人が結ばれなかったから久住くんとお付き合いするわけですけど
やっぱり城戸もいいなぁ………。
お互い好きな気持ちはありつつ成就しないところに
他の誰より特別な想いがずっとあるんでしょう。
きっと引きずっているのは城戸の方なんですね。
…だったら結婚するんじゃないよ!もう!!お前は!!!
説教したい気分です…。
いや、『インディゴの気分』とまではいきませんがww

同人誌と描き下ろしの久住くんがまた面白い…。
大丈夫、たぶんもう大丈夫なはずだからりーちゃんを信じてwww

本編は耽美でシリアスだからこそ、
コミカルなシーンが活きています。
テンポもいいし様々な表情も見惚れてしまいます。

カバー裏のデザインも凝っていて、
表紙を開くと小説風につづられていて
雰囲気めっちゃいいです!!
湿度のあるエロさがなんとも…最高!!!

早くもCD化決定、おめでとうございます!!
城戸役の松田さんの演技を沢山聴けるのがものすごく楽しみです!!
『ポルノグラファー』で新垣さんととてもいい感じでしたから…。
今更ながら、あちらも神でしたわ。我ながらバカ。

前作を未読の方は『インディゴの気分』の後に
『ポルノグラファー』を読むのも楽しいかもしれません。

11

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