パピレス限定特別版
「てのなるほうへ」で出ていた、ろくろ首 春宵がメインとなるスピンオフ。
前作はせつなさありのハピハピものに感じましたが、
当作は「永遠に近いもの」をどうするか ということが
少し取り上げられているようで、ちょっぴりせつなさありの印象です。
お話が好き。小椋先生の挿絵がこれまた秀逸!
で神に近い萌2でお願いいたします。
いいんです、妖怪が。
表紙でお分かりになるように、とても描きこまれています。
カラー口絵は、前作メインカプを含めた妖怪たちの宴会図。
プチトマト妖怪(正式名称知らず)が攻めの膝に寄り掛かって
酔っぱらってます。
めちゃくちゃ愛しい。こういう書き込みいっぱいの図。
中は3作あるのですが、その中表紙が、妖怪大行進の
ぱらぱら漫画のようになってます。
こういう本作るのって、とっても楽しいと思う。
一日千秋:江戸時代のお話。50P弱。
もういいかい、まだだよ:現代設定。160Pほど。
もういいかい、もういいよ:まだだよ の20年後。10Pほど。
春宵が、思いのほか、天然ちゃんでうぶうぶちゃんで、
とても妖怪とは思えない、本当に可愛らしいキャラでした。
そんじょそこらの人間よりずっと子供。純情。
**************以下は より ねたばれ
一日千秋:
江戸時代、人を驚かして、妖怪として有名になんなきゃな!と
頑張ってる春宵が、人間(弥一郎)との関わりで傷つきます。胸が痛い。
御簾裏(みすら・狐姿の妖怪で江戸の妖怪の元締め)の親心(傷ついた春宵に
寄り添う)と、まだ頑張ろうする春宵に、じーん。
まだだよ:
「弥一郎」に瓜二つな樋野学と春宵のお話。
学は不器用な一途さん かな。春宵は人間のある家族に3世代に渡って
家族として過ごしてもらっています。本当に本当に可愛いです。
そんな二人の大切にしたいお話。最後の学のセリフに、有難うと言いたい。
もういいよ:
学は42歳ごろで、御簾裏がこっそり学のところに来て、
「選択肢がある」とささやいたりもしています。
まだまだ悩む、でもそんな時間もまだ許される二人の心の揺れ でした。
ほわほわ幸せ話ではありませんが、二人で一生懸命悩んでいる姿が
とてもとても心に残る、作品でした。
先生、今回も素敵なお話、有難うございました。
次は御簾裏のお話を読んでみたいです・・・贅沢でしょうか。
ろくろ首の春宵は人間社会に溶け込んで暮らしています。
平成の日本(おそらく平成一桁代)、春宵は自分の正体を知る大学教授のもとで、大学生・樋野学と出会います。
樋野は、江戸の昔に春宵に初めてできた人間の友人・弥一郎と同じ顔をしており、春宵は樋野のことが気になって仕方ありません。
もしや弥一郎の子孫では?と考えた春宵は樋野のことを知りたいと近づくのですが・・・というお話です。
草枕と違い、人間・妖怪両方の社会でそれなりに上手く生きてきた春宵視点で語られるので、前作『てのなるほうへ』よりも妖怪社会について詳しく書かれていた気がします。
そして、妖怪と人間のもっとも差違な部分、「寿命」についても・・・前作で春宵がぽろっと吐露していたので、春宵が主役ならそいう話になるだろうとは予想していましたが、考えれば考えるほど切ないなぁ・・・。
救済策も提示されていはいるけれど、それを彼らが選ぶかどうかまでは書かれておらず、そこは読者に委ねられます。どちらが幸せか・・・それは人によって違うでしょうしね。
弥一郎と樋野の繋がりについても、人によって解釈が違いそうです。
おもしろかった!という以上に、読み終えて人と語り合いたい一冊でした。
この作品は「寿命」と「トラウマ」がキーワードだと思います。
過去、弥一郎にしてしまったことを後悔し続け、その時弥一郎の一言に傷ついていた春宵。
寿命の問題もトラウマも、癒えて乗り越えた、には達していませんが、彼ら二人なら・・・!と信じられる優しい雰囲気に満ちていました。
今作だけでも問題ありませんが、『てのなるほうへ』も読むのがオススメです。
飄々としたイケメン春宵(前作)と、そんな彼にもいろいろあって傷ついていて、そして恋人の前ではこんなに甘くて可愛い!という一面(今作)が楽しめますのでv
『てのなるほうへ』のスピンオフ。
前作読んでいた方が前作のネタバレにはならないかな~という程度なのでこちらだけでも十分楽しめます。引続きイラストは小椋ムク先生。
表紙にいる、ある可愛い妖怪達も活躍します♪
今回もイントロ「一日千秋」でがしっと心、鷲掴みされました。
妖怪世界と行き来しながら人間世界でも生活している、ろくろ首「春宵」が主人公です。
草枕や弥一郎との関わりには色々考えさせられるところがあります。
切ないです。
日常描写では、春宵さんは江戸時代から生きてるおじいちゃんなので、言い回しが古くて逆にその表現が可愛くってそこが私には萌えポイントでした。
のっぺらぼうが主人公だった「てのなるほうへ」のスピンオフです。
「てのなる〜」で、個人的にすごくすごく気になる存在だった、ろくろ首の春宵。
スピン元の方で「人間と恋仲である」ことに言及していたので、これはもしやスピンオフあるのか…と思い探してみたらこちらの作品を発見することができ、やった!と即買いでした。
スピンオフ作品ではありますが、スピン元を読んでいなくても問題なく作品の世界観に入っていけると思います。
(※本文にも挿絵にもスピン元の二人が出てくるので、元を知っているとより楽しめます☺︎)
ええと、正直に言うと、どちらかと言うとスピン元の「てのなるほうへ」の方が個人的に好みだったな、と。
というのも、前作の攻め、のっぺらぼうの草枕ほどには、今回の攻め様に感情移入できなくて…。
学が春宵を好きになったきっかけやその過程なども、どうもピンと来ず、な部分もあり。
なんといっても弥一郎との出会いやエピソードがとても良くて印象に残ってしまったため、弥一郎と比べると学(今回の攻め)がなんとなく薄ーく思えてしまったんですよね。。
”出る”と噂の妖怪を自ら探しに来て、人間を驚かせようと待っていた春宵の首を持ち上げ、逆に春宵を驚かせてしまうー
そんな弥一郎にとても好感を持ってしまっていたので、いまいち学の魅力が感じられなかった…
それからこれは作品の評価とは全く関係ないのですが、読み進めるまで私、勝手に春宵は攻めだと思っていまして;
本編を読んで春宵が受けだと分かった時、ちょっと動揺してしまったんですね。
あくまでも私の中の勝手なイメージだったのですが、ちょっと”イメージ違い”でびっくりしたー!というのがありました。
ただ、ストーリーは文句なく面白く、そのテーマも奥深いです◎
前作で持ち越されていた(?)「人間と妖怪の寿命の差」というものに、攻めの学は真っ向から向き合い考え抜き、ある結論を出しています。
ただ、そぼ決意をまだ春宵には話していないんですね。まあ話しても間違いなく拒絶されそうですが…これからどうやって二人は意見をすり合わせ、結論を出すのだろう…と非常に気になるところです。
あと、前作も挿絵が可愛くて可愛くてきゅーん!だったのですが、今作も小椋ムク先生の可愛いイラストの素晴らしいこと!(⸝⸝⸝°◽︎°⸝⸝⸝)
ページを開いてすぐ、スピン元の二人と今作の二人が合同で飲み会しているイラストがあるんですが、もうキュンキュンです。。「トマトの妖怪」をスピン元の受け様が正座した膝の上に抱える形で載せていたり、顔を赤らめた提灯が酒瓶をそのまま飲んでたり(笑)可愛いったらありゃしない!❤︎
考えさせられるテーマを持ちながらも、可愛らしくてなごんでしまうシーンもあり、前作に引き続き、妖怪の世界を存分に楽しませていただきました✨
「てのなるほうへ」はだいぶ前に読了済み。
今回は、そちらにも登場していたろくろ首が主人公。
「てのなるー」の草枕とは違って、いたずら好きの明るい子というイメージがありましたが、それだけではなく、隠された彼の後悔が描かれたお話になっています。
小椋ムク先生の描く妖怪たちがとても可愛くて、癒されます。特に酔った子たちが。
「一日千秋」前章にあたります。
江戸の頃、まだ若かったであろう?春宵と樋野弥一郎という人間との出会いから別れまで。
妖怪も人間と同じで、持って生まれた性格というものはそう変わらないんでしょうね。
春宵は、妖怪、人間に関わらず、誰かと関わっていきたいタイプで、なんというか、とてもポジティブ。悪い想像をあまりせず、楽観的に人々と関わっていこうとします。
首を飛ばしたり長くしたりして驚かすのが彼の楽しみで、弥一郎との出会いは、いつものように驚かそうとしたところ、逆に彼はウワサのろくろ首を探していて、まんまと春宵は逆ドッキリされてしまったというものでした。
結核に侵されていた弥一郎は余生を楽しく生きようとしていて、春宵も友達として彼と過ごす時間を大切にしていましたが、無情にも病状は進んでいき。危篤状態を目の前に、春宵は妖怪のボスにお願いして、弥一郎を死なない妖怪にしてしまったのです。
春宵は、良いことをしたと思っていました。
だけど、弥一郎は違いました。
春宵にしてみればほんの少し流れた時間。
弥一郎が生き返ってからの何十年、まったく歳を取らない姿に、周りから不気味がられるようになっていたのです。
そんなとき偶然ふたりは再会しますが、弥一郎が口にしたのは恨み節と、「化け物」という春宵を罵る言葉でした。
そして弥一郎は自死してしまいます。
深く後悔しながらも、春宵はやはり人間と関わっていくことをやめられないのでした。
そして本編。平成です。
妖怪でありながらも、お世話になっている荘助の協力もあり、人間界に馴染んで生活している春宵。
戸籍もあり、仕事もある。すごい。
大学教授である荘助の助手として働いていて、偶然にも樋野学という、弥一郎にそっくりな青年と出会います。顔貌や、匂いまでそっくりのようです。
弥一郎との繋がりを確信し、とにかくその子孫かもしれない樋野くんとの関わりを持ちたくてしょうがない。即行動、が春宵らしい。
春宵の良さなんですよね。明るくて、うじうじしない前向きさが。
ひょんなことから樋野くんがゲイであることを知ってしまい、春宵も秘密を話すべく自分が妖怪であると告げるのですが、全く信じてもらえず、首を飛ばして見せることもできず、悪質な嘘だと思われて、ゲイは妖怪だと揶揄しているのかと怒らせてしまいます。
ふつう信じませんからね。
確かに、幽霊はいるいないとよく騒がれているのに、妖怪は昔の言い伝えみたいな、創作っぽいような感じがしますから。
妖怪ウォッチが流行った時、妖怪は流れキター!と喜んでいたのかも。
でも昔々から変わらない春宵の写真を見せたり、荘助の思い出話などを聞いたりして、わりとすんなり信じてもらうことができましたが、そこからがだいぶ唐突なラブ展開。
樋野くんはたぶんもともと春宵は好みで、バイトなどを通して付き合ううちに惹かれていったのだろうなとは思いますが。妖怪であることは、彼にとっては障害とはならないようです。
お付き合いが始まったのはいいものの、春宵の本来の姿(ろくろ首したところ)を見せてくれないというささいな仲違いがあり、ぎくしゃくしたまま樋野くんが測量バイト中に土砂崩れに巻き込まれてしまいます。
ここからが妖怪の本領発揮!
仲間であるかまいたちやムササビ(毛布みたいにでっかい)の協力もあり、春宵も首を飛ばして樋野くんを見つけ出し、救助成功です。
ここの小椋先生の挿絵がまた可愛いんだー!
また、樋野くんが生死の境を彷徨って魂が抜けたからなのか、思った通り本当に先祖であった弥一郎の魂が乗り移り、あの時の謝罪と感謝を口にしてくれます。
「化け物」と言われたことは春宵が自分で思っていた以上に深く傷になっていて、枷になって、本来の姿を見せることができなくなっていましたが、数百年の時を経て、ようやく春宵は自分のアイデンティティ?を取り戻すことができました。
元気になった樋野くんと初めて身体を繋げることになったのですが、妖怪として長いこと生きてきても、未熟だったり、初めてのことがあるもの。
照れながら夢中になっている春宵はとても可愛かったです。
樋野くんは肝すわってんなー。さすが弥一郎の子孫。
最後の後日譚では、ふたりが恋人になって20年経ったころの様子が描かれています。
このころに草枕の「てのなるほうへ」が現在進行形で起きているよう。
春宵はもちろん姿形変わりなく、樋野くんは40代。リラックスできる非常に良い恋人関係を続けてるようですが、見た目の差は開く一方。
そして、弥一郎を不老不死の存在にした妖怪のボス、御簾裏が樋野くんに囁きました。
「まだ選択肢はある」
彼らは最終的に何を選んだのでしょう。
それは描かれていませんが、とても良い終わり方だったと思います。
とても面白い作品でした。