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2004年刊。
電子書籍にて購入、挿絵なし。
地雷耐性度胸試し、4編セットか!?と身構えていたが、あっさりと読了したのだった。
これも年の功のうちなのだろうか、決して読書量が多い訳でもないのに興味本位で他作家、他作品を読んでいく中で〇〇はエグかった、△△はゲスだった、××は強烈だった…ってのを経て段々と読めるようになっていったんだなぁ…ってのを痛感した次第だ。
あと、短編集ってのもあると思う。
これがそれぞれ長編×4冊分となるとさすがに立て続けに読めなかっただろう。
しかし、他レビューにて親切に地雷を警告されているのを承知で、そんな自分は無謀ながらもこの一冊を水原さん入門編に推したい。
自分からすれば表題作の『窓』以上に『夏陰』『箍冬』のほうが断然痛かったし、この本に収録されている『秘密』では一枚の宗教画、『黄色い花』では日本画について触れていて、その後の他小説でも絵画に関して造詣が深い事に触れる機会はある。
『温い血』はガチ叔父×甥だが、その後の刊行小説のデータを覗くと他にもガチだか義理だかの関係ものが幾つかありそうなので、ここで一作読んでおくのもいいかも知れない、と思う…
あくまでも、読む側の生理的嫌悪ってのに引っ掛かる心配がないってのが優先だけどね。
ところで『秘密』『黄色い花』内の三角関係ってちょっと特殊な気がする。
データ上では『秘密』の薫は受け、『黄色い花』の隆一は攻めと分類されているが、彼らってそれぞれ本命カップルに仕立てられた当て馬のようにか見えないのだが、どうだろうか?
4つのストーリーからですが、ちょっと私には1歩引く作品でした。
人によって愛し方や愛情の受け止め方はありますが、実際こういう風なのかなー?と同性愛に関してちょっとコワいなと。まぁ、空想の世界もあるでしょうから。。。
窓ーではもう、受けが狂ってしまうんじゃないか?と思いましたが、意外な展開に驚きました。んー?お互い年月が経ちすぎたから、免疫ができたのか?とも思いました。いつの間にか受けが攻めを好きになっていることに驚きました。
黄色い花ーでは何とも悲しいなーと思ってしまいました。1歩間違えば近親相姦になってしまう、そんな事はお互いに理解し、それでもお互い自らの愛情を屈折した形で与え合う、何とも言えない情愛の深さに寂しさを感じました。
あーでも過激な内容でしたな。。。
鬼畜執着攻め大好きな自分としては最高に萌えました。受けが容赦なく屈服させられる感じがよいです。特に表題作の「窓」で受けは暴力と恐怖によって洗脳されますが、そこに甘さが微塵もないのがよいです。心理実験を見ているような気にさせられます。まあ現実世界でやったら確実にお縄なことのオンパレードですけどね。
筆力も申し分なく文の運びもGood。心理描写も丁寧で純文系の素養のある方だと思います。
BLといえばシュガーコーティングされた御都合主義ですが、もっとこういう、容赦なく鬼畜なBLが増えてほしいです。
短編4編が収録されています。
どのお話も個性的で、次はどんな話がくるのだろうとドキドキして読みました。
それぞれのお話にざっとあらすじと感想を書いたので長いです。すみません。
「窓」
高校の後輩×先輩。(現在は社会人)
あらすじは上記のSTORYにあるので省きます。
執着攻めがお好きな方にはとてもお勧めです。
隆明の歪みのなさと、常軌を逸した執着が素晴らしい(笑)
受けの保は隆明を恨む気持ちはないのかな。「人生を台無しにされた」くらいは恨んでても仕方がないと思います。
なんだか物分かりが良すぎな気もしました。
でも人って変化するんですね。
まさか(今更)そんな展開を見せるとは思ってなくて、とてもビックリしました。
「温かい血」
32歳の叔父×高校生の甥
成績優秀で容姿も優れ、小利口で要領が良い和己(かずき)は、叔父の俊和の元で暮らしています。
和己は、叔父の歪んだ愛情に気づいていて、好奇心から叔父と恋人関係になります。
何でも甘やかしてくれる叔父に不満はありませんでしたが、和己の心は満たされません。
しかしある出来事がきっかけで2人の関係に変化が生じます。
このお話も素敵でした。
まず猫っかぶりの和己ですよ。(実は愛情に飢えている寂しがり屋なんだけど)
よくこういう小賢しくて可愛い子ぶった憎たらしいあて馬っていますよね。(笑)
そういう子が主人公なので、凄く興味がわきました。
そして本当の姿が全く見えない叔父。果たしてその実態は…
ハッピーエンドですけど、少し”受けざまあ”が入ってると思います。
「秘密」
社会人2人(サディスト同士の恋人)×高校生。
薫は、カフェで知り合った公一と雅弘に好奇心からホテルについて行ってしまいます。
自分の隠された欲望の正体を知るために…
実は薫は、宗教画(打ちのめされたキリスト)に欲情してしまうという、ほの暗い欲望を持っていました。
3PのSMプレイがメインのお話です。
初めての体験で、マゾになりきれない薫の青さが新鮮で面白かったです。
プレイ後のフォローもきちんと書かれているので安心できます。
「黄色い花」
美大生×画家の養子(高校生)
本当は、画家×養子(高校生)
画家を目指す美大生の隆一は、美人画で有名な日本画家、水口藤人(とうじん)に傾倒しています。
隆一は、ひょんなことから水口へインタビューをする機会に恵まれ水口邸へ向かいます。
そこで絶世の美少年、旭と出会います。
隆一は気難しく秘密主義の水口に気に入られ、アトリエに入ることを許可されますが、そこで水口と旭の全貌を見ることになります。
これは隆一のお話ではなくて、隆一を通して語られる水口と旭のお話だと思います。
短編で良かったです。
なぜなら隆一が深入りしても良いことがないと思うから(笑)
それくらい水口と旭の関係は複雑に絡み合っていました。
でも、これから隆一の創作意欲の糧になっていくんだろうな。
一番好きなのは「窓」で、あとは掲載順に好きでした。
「神」よりの萌×2です!
同レーベルで当時衝撃だった「夏陰」「箍冬」を読んで、その後にこの作品を読んだ記憶があります。
その後だったので痛さや陵辱は既に勉強済だったんで比較的冷静に読めたんじゃないかなー。
全部で4作収録されていて、「窓」と「温い血」は執着系の攻。
特に窓の執着っぷりは強烈で、独占欲のあまりに己のイニシャルの焼き印を入れようとする位のすんごい執着度です。
「温い血」は叔父と甥。ずっと優しい理解ある大人だと思っていた叔父がある切っ掛けで豹変するんですがそのあまりのギャップにひえええええ~です、でも叔父さん格好いいんですけどねー。
「秘密」は密かにS資質を持つ少年が、男性2人とのふとした出会いでそれを引きずり出されてしまう話。これはあくまでお互いに割り切った上でのプレイとしてのSMなんですが、言葉攻の方が痛いかも。
「黄色い花」これはしっとりとしていて切ない禁忌を描いてます、陵辱は激しいエロは無いですがこれが一番切ないかも。
微スカや陵辱、痛いプレイは出てきますのでそこんとこは好き嫌い別れそうですが自分は大好物なのですよー。
あと挿絵が奈良さんなんですが、この挿絵が台詞付きでマンガの1Pみたいな仕様になってるんですよね。
奈良さんの挿絵は素敵なんですけど、この形式は正直何だかなーです(ピアスノベルはたまにこういう挿絵形式やってたのでこれもその一環なんだと思います)
まあこういったコマ割ありの奈良さん挿絵は珍しいのでそういう意味では奈良さんファンは押さえておいてもいいかもしれないです。あとこの頃の絵はまだ線が柔らかくて今とは別の意味で肉感的な絵柄です。