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六青先生といえばファンタジー作品というイメージがあったのですが、今作の現代物も素晴らしかったです。
これはかなりの攻めザマァと言いますか。健気可哀想受け&攻めが後悔する話がお好きな方はにはたまらん作品になってます。
ほんと、過去の攻めが嫌なやつで、そのせいで受けはとんでもなく可哀想な目にあってしまいます。本当に受けは何にも悪くないのに…(輪姦の描写がありますので、苦手な方はご注意を)
過去の悲劇で傷ついた二人の心を癒していくようなお話になっていて、読者としては、二人が元通りになってくれたらいいのにな〜と思いながら読んでいたのですが、終盤の受けのモノローグにハッとさせられました。そんな流されるみたいに許しちゃダメだよなぁと。
現代物ではありますが、六青先生らしさに溢れている作品でかなり楽しめました。
おすすめです!
トラウマがあって対人恐怖症という主人公のお話です。
主人公が悲惨なめにあっていて大きな傷があるという、ある種の王道的なストーリーだと思ったのですが、攻めキャラの一連の行動を誠実と思えるかどうかで評価が別れそうな気がします。
主人公の佳人のトラウマは攻めキャラの藤堂に起因しているのですが、藤堂のしたことはかなり酷いと読んでいて感じて、前半は藤堂に対してムカムカ…。
もちろんそこで終わりでなくて、藤堂は自分のしたことを酷く後悔し、佳人の傷が癒えるまで、家族に疎まれても、佳人に拒絶されても、雨の日も風の日も佳人のもとに通います。
それはなかなかできることじゃないし真摯だと感じるのですが、それでも藤堂のしたことの酷さがどうも、自分なら簡単には許せないなあと感じてしまいました。おそらく佳人視点が多かったからだと思うのですが。
酷い攻め、いわゆる「クズ攻め」が心を入れ替えて受けを大事にする、という展開のストーリーです。前後編になっているのですが、前半がう~んと思った分、後半半分が個人的とてもよかったと思います。
過去自分に酷いことをした藤堂と、心を入れ替えた藤堂を頭の中で無意識に別人だと分類している佳人。藤堂を愛しているのに、藤堂に傷つけられた恐怖がまだ残っているんですね。
お互いに傷ついて長い時間をかけて許し合うカップルのお話です。
スッキリ明るいお話ではないので手放しで楽しめた!という感じではなかったのですが、トラウマのある受けのお好きなかたには、痛々しい部分も含めて楽しめるのではないかと思います。
書棚にあったものを久しぶりに手に取りました。
ふと目についてどんな話だったのかすぐ思い出せず再読しました。
発行から10年以上経ちますが、持っていても再読しなかった理由と結末を思い出せなかったのはメインカップルの一人の大司が好きになれなかったからだと思い出しました。
佳人はとても健気で困難なことにも精一杯努力をして乗り越えていこうとする頑張り屋なところが好きです。
けれど何しろ受けた傷が深すぎて、何年たっても癒されるどころか無意識に封印してなかったことにしてしまわないと精神が保てないくらいに心と体に傷をつけられているのです。
大司は、佳人がずっと憧れていて告白の末付き合うことになった中学からの同級生です。
けれど、田舎から上京した途端に大学生デビューの末ちやほやされ労せずしてなんでも手に入る状況に毒されてしまったんですね。
『健気で控えめな恋人』が『地味で冴えない人前に出すもの恥ずかしいだっさいヤツ』としか見えなくなり、心から理解し常に癒してくれた優しい恋人をもう飽きたの一言で棄て去りました。
それも、大司への逆恨みのターゲットにされ乱暴されて心身ともにボロボロ状態で会いに行ったら浮気相手と一緒だった、というクズ具合です。
それから6年後、大事な人を傷つけて失ったことを後悔していると言われても、そこに行き着く心情の変化や心を入れ替えた経緯が弱くて「失くなってからその存在の大切さに気がついた」というのもだからなんで急に?というのが納得できずにもやもやとしてしまいました。
弟を大事にする極度のブラコン兄や、佳人を大事に育ててくれるセラピストの薫がとても魅力的で、彼らの話がもっと読みたいと思いました。
六青作品に常に漂っているスピリチュアル臭がこの作品ではMAXでした。そういうものが好きな方にはいい・・のか?これ。わかんないけど。
どうしても消化不良になってしまったのは、健気受けはこの作家さんの十八番ではありますが、これは健気というより受け身というか頼りなさすぎて好きになれなかったです。人としてどうなの?と思ってしまった。
トラウマを受けてしまった後はまあ仕方ないかと思うんですが、それ以前がちょっと。攻めの心変わりがわかる気がしてしまい。
いまいちのめり込めなかったもう一つの理由が、攻めが事件後に豹変して受けに執着し始めるところです。それだけ執着できる強さがあったら、そもそも受けに惹かれたかな?とか。主人公が二人ともどこか違和感を覚えるキャラで、あまり楽しめませんでした。現代もので非ファンタジーではなかなか納得しがたいキャラでした。これ、中世ファンタジーとかで、お兄ちゃんもカウンセラーとかでなくセラピストとか出てこなかったら、アリなキャラだったかも?
屋久島での出来事も、あまりに都合よすぎ、っつかなんつか。
スピリチュアル臭のあまりの強さに苦笑。というのが正直なところでした。
六青作品を初めて読んだのですが、全体に漂う透明感のあるせつなさと痛さとほのかに甘いトーンは、もう神領域だと思いました。
なのに何故、神評価でなく萌え評価にとどまったかというと、他にも書いてらした方がいらっしゃいましたが、ラストの方の駆け足っぷりが物足りなかったから。
思い切って2冊とかにした方がよかったんじゃないだろうか。この作品。
とにかくラストが物足りない。
紙面が足りなかったのでばたばたと書き急いじゃいました的な放り投げ感があります。
物語的にもどうもいろいろごまかされた感があって、勢いで読まされるんですけど、読後しばらくして、「あれ?何にも解決してなくね?」と小首を傾げてしまいました。
過去の出来事のせいで、受けは一部の記憶を失い、対人恐怖症と冷感症にもなっているんですが、記憶こそ戻るのですが、対人恐怖症と冷感症は解決されないんですね。
ラストで攻めとの最後のわだかまりはなくなり、二人が一緒に暮らそうと示唆するシーンがあるので、恐らくは完治したか、もしくは今後二人でゆっくり治していくのだろう、と感じ取ることができるのみ。
できればここらへん読者任せにしないで書いてほしかったなぁと。
ことに、全体を通して受けは痛々しいSEXを強いられていて、幸せな人肌の感触というものを知らないままラストを迎えるので、一度くらい受けにも幸せなエッチを味わわせてあげてもよかったんじゃ…と思わなくもなかったです。
それから、前半の受けは、記憶を失って対人恐怖症がありつつも、自らの足でちゃんと立とうという前向きな意思と、自分が対人恐怖症であるにもかかわらず他人を癒そうという、痛々しいながらもしなやかな包容力があったのですが、後半で記憶が戻ると、記憶のなかった六年間が逆行したかのように急に幼稚なうじうじくんに変貌するので、痛々しい受けが好きな人にはツボなのですが、うじうじ受けが嫌いな人には苛々するかと思います。
この辺ももう少し丁寧に描写されていればよかったなぁ。
なんかいろいろ惜しいというか、やっぱりこの倍のボリュームがほしかったように思います。