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好意の始まりは爽やかな感情ばかりではないことや表面上では見えない人間のドロッとした部分の表現が、説明的ではないのにしっかり伝わってくるのが本当に素晴らしくて。
コンパクトにまとまっているけれどもとても奥深くて、なんともクセになる作品ばかりでした。
特に好きだったのは「銀杏のはなし」。
擬人化した銀杏同士が一緒に成長していくなかで、はっきりと恋だとは言えないような気持ちが芽生えていくけれど。
出会ったのも偶然なら別れもまた突然で、ひとりになってからは時間が過ぎるのを待つしかできない切なさに胸が締め付けられました。
その後の再会がとても運命的で、もう生き別れることのないカタチで再び一緒にいられるようになって本当に良かった…!と感動しました。
短編集だけれど物足りなさなんて感じないほど、ものすごく濃密な一冊でした。
短編4本。
表題作は、諏訪が謎めいていて、根岸と距離が縮まるにつれ、真実が明らかになっていくという草間先生らしいストーリー。
いつもながら、先が読めないドキドキと、萌え的なワクワクを感じつつ、盛り上がりと共にタイトルを回収しての終わり方がお見事としか。
これが短編で、しかもBLあるあるやご都合主義なしに、毎作オリジナリティ溢れる作りなのが、改めてすごくて。
絵、構図、背景がどストライクだし、あとがきも大好きです。
キャラも皆チャーミングで。必ず愛らしいところがあるのが好みです。
根岸は拾ったカメを助けてあげようとあたふたしているところがめちゃくちゃかわいくて。そんな根岸を見かけた諏訪は好きになっちゃうよね、と思いました。
諏訪の秘密を知った根岸は、引くどころか受け止めてあげる心の広さ。それがタイトル回収なんですね。
しかも諏訪の女装も引かずに逆に興奮しちゃってw それも女装だからではなく、本来の諏訪がかわいいと確認した!とめっちゃいい奴。
諏訪はテンション低いながら、根岸のことが大好きで、根岸はストレートに気持ちを伝えて、お互い大好きな2人に萌え萌えしました。
「されど美しき日々」は読んだことある、と思ったら「夢見る星座」に収録分の再録なんですね。
山口のことが好きだからと、イジメをたきつけたり、紙袋を被っている姿が辛かったんですが、続編が読めるとは!
瞬へのあてつけ、自分から離れないために山口は紙袋をとらなかったり、周りもそこまで本気でイジメていなかったようでちょっとほっとしました。
記憶が失くなっても瞬は山口が好きで。山口のことは皆がかわいいと思っていると言う瞬に山口が「ねえわ」と言うのが笑いました。
「銀杏のはなし」は草間先生の童話ぽいお話でよかったです。絵が雰囲気にピッタリ合いますもんね。
「根岸の誕生日」は諏訪のヒモパンに根岸がテンション上がりまくっているのがおもしろかったです。
本作で、草間先生のBLマンガ既刊単行本を全部読みました(新刊「いろいろつれづれ」含め)。うれしい〜〜(BL歴浅いもので)
上にも書きましたが、草間先生の世界観が大好きです。
私は基本長編にハマるので、マッチ売り〜やぎさん郵便が好きですが、先生の場合は短編もすばらしいので、短編の良さを教わりながら楽しんで読んでいる感じです。これからも作家買いする漫画家さんの1人です。
数年前に読んだきりなのに、どの話もものすごく記憶に残っています。
不思議な魅力に溢れております。
【幸せの条件】【カレシの習性】 萌2
お人好しのリーマン・根岸が住んでいたアパートが全焼して、「うちに泊まれば」と言う向かいに住む諏訪の厚意に甘えることに。
根岸が隣人の飼い猫だと思っていた猫を「ムル」と呼ぶ諏訪に「あれ?」と思いつつ、根岸は諏訪を意識し始めて…。
火事こそ偶然だけど、ストーカーも報われることってあるんだなという話です。
おおらかな根岸と心配性な諏訪のバランスが絶妙で、良いコンビ。
諏訪の姉や兄のキャラも濃いので、この2人を絡めてもっと読みたくなる2人でした。
【おかしな男】 萌2
高校生の斉田は、母親が単身赴任の父の元へ行く度に宅配ピザを頼む。
月に2回のピザの日は、ピザ屋でバイトする同級生の橘とピザを食べて勉強を教えて…。
男子高校生とピザ、似合い過ぎます。
相手が好意を持っていると思っていたけれど、もしかして逆だったんじゃ…?と気付いてしまう話。
橘が斉田を意識し始めた瞬間の回想で終わるラストが短編映画のようです。
【されど美しき日々】【あらかじめ消える世界】【愛と秘密の記録】 萌2
小学校である日突然いじめられるようになった山口。
急にひとりぼっちになった彼に手を差し伸べてくれたのは委員長だけだったが…。
策にはめても欲しいものは欲しい。
小学生だから、余計に欲望に忠実なのか。冷静に考えると恐ろしい。
中学入学直前に姿を消した委員長に、偶然再会するものの、恨みよりも嬉しかった記憶の方が先立つ山口が単純だけど可愛い。
そして交通事故で記憶喪失になっても、山口への恋心は急速に蘇る委員長もいい。
ほんとに冷静に考えると酷いんだけど、終わりよければ全て良し。
嫌な感じが一切しないのは、草間マジックなのかなあ。
【銀杏のはなし】 神
大好きです、この話。
街を見下ろす山の上にある神社に植えられた2本の銀杏の雄株。
共に成長し、同じ時間を過ごした2人が、死によって分たれるまでが情緒たっぷりに描かれています。
そして素敵なラストに、運命ってあるんだねと目頭を抑えてしまうはず。
時間の流れと重みを感じられる、素晴らしく素敵な話です。
策にはめる系が多いけれど、好きだからこそ。
いじめは良くないけど、家まで着いて行くとかって中学校の頃とか、周囲の女子たちはよくやってたよなあ、なんて懐かしい記憶が蘇って来ました。
銀杏の話はたくさんの方に読んでほしいなあ。
草間さかえさんの作品は結構読みましたが、この短編集は読み返す頻度が高い作品です。
表題作の受けのりくがミステリアスで、アンニュイな良い雰囲気の持ち主です。
攻めの根岸さんは年上ワンコって感じなのですが、りくは魔性ネコとでもいいましょうか。
根岸さんのことを好きになり、ストーカーな行動をするのですが、根岸さんのアパートに火をつけたのがりくなんじゃないかとハラハラさせられましたね。
何の予告もなしに女装で根岸さんを迎え入れたり、根岸さんの誕生日に女性物の紐ショーツを履いて仕事に行ったりと、攻めを翻弄する魔性体質のりくがお気に入りです。
他の短編もとても良い作品揃いです。
されど美しき日々のカップルも好き!
あと草間さんの描く子供はめっちゃ可愛いです♡
草間先生は「マッチ売り」シリーズの長編しか読んだことがなかったんですが、短編集も素晴らしいですね。
カプの組み合わせで4作品収録されてますが、いずれも結末に一捻りあって、やはり実力ある漫画家さんはうまいなぁと感じました。
内容については他の方がたくさんレビューされているので割愛しますが、印象的だったのは1番短いお話「銀杏のはなし」。
人外・擬人化ものってあまり読んだことがないんですが、穏やかな気持ちで萌えを感じることのできた素敵な作品です。