生前に、凄く、好きな人がいたんだ。

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表題作猫の王国

イズミ、由良の幼馴染に似た指導教官・騎士
森本由良、猫を助けて死に猫人になった高校生

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

猫を助けて死んだ由良が目を覚ますと、猫耳と尻尾が生え“猫の王国"と呼ばれる天国に居た。ここでは猫騎士になれば願いを1つ叶えてもらえるという。自分が親友・泉 貴洋との喧嘩が原因で自殺した事になっていると知った由良は、その誤解を解くため騎士を志願する。騎士学校で由良の専任になった教官のイズミは貴洋によく似ていた。二人が重なり不思議に思う由良だが、イズミは過去を語るのはルール違反だという。優しくいつも傍に居てくれるイズミに次第に惹かれていき…

作品情報

作品名
猫の王国
著者
犬飼のの 
イラスト
yoco 
媒体
小説
出版社
心交社
レーベル
ショコラ文庫
発売日
ISBN
9784778124243
3.7

(108)

(39)

萌々

(27)

(25)

中立

(12)

趣味じゃない

(5)

レビュー数
21
得点
390
評価数
108
平均
3.7 / 5
神率
36.1%

レビュー投稿数21

動物好き読者は悲喜交々かと

犬飼のの先生の作品は、暴君竜シリーズや薔薇の宿命シリーズなどその他複数、拝読させて頂き、今作も作家買いさせて頂きました。

自分の命よりも猫を助け、命を落とした者だけが、入国を許された天国。そこは猫の為の天国、猫の王国だった。猫を助けて死んでしまった由良は、猫耳と尻尾が生えた猫人として猫の王国に迎え入れられる。そこで由良は、親友の貴洋との喧嘩が原因で自殺したと誤解されていることを知る。謂れの無い批判を受けてしまう貴洋の為、誤解を解くには猫騎士となり、願いを1つ叶えてもらうしかない。そして由良は猫騎士を目指すべく騎士養成学校、クリソベリル・キャッツアイに入学する。騎士候補生として由良は専属の指導教官のイズミと出会うが、イズミは貴洋とよく似た猫人だった。

猫を助けるなど、動物の猫は勿論だが、猫の王国では猫耳と尻尾が生えた猫人が多く登場したり、驚いたり感嘆した時に「ニャッ」と鳴いたり、猫耳や尻尾の動きの描写や猫人同士の毛繕いなど、動物よりも猫人要素が多めな気がするが、個人的、各項目5段階で
猫 4
ストーリー 4
ファンタジー 4
切なさ 3
エロ 1
な感じだと思います。

シリーズ物ではなく一冊完結で、物語のその後が気になったりしますが、一区切りとしては綺麗にまとめられていると思いますので、ページ数的にも読み応えはあると思います。
しかし注意点として、猫を助けて命を落とす者達がいると言うことはすなわち、猫が危険な目に遭う描写があると言うこと。更には猫騎士の使命として魔を祓うのだが、その魔と言うのが人に虐待されて命を落とした猫の怨念なので、猫派の自分は割と平気ではあったが、猫派じゃなくても動物が辛い目に遭っているのが嫌と言う人には、読むのが少しばかり心苦しい可能性が無いとは言い切れません。
ですが、それを乗り越えた時、飼っている猫をもっともっと愛してあげようと思える、慈愛を分けてもらえます。自分は頂きました。

冒頭は主人公の高校1年生の由良君が親友の貴洋くんといつの間にか疎遠になってしまったことやクラスメイトが用意した偽物のラブレターの所為で貴洋くんと更には関係が悪化したりと序盤から由良君にとって辛くて切ない展開に読んでいて胸が苦しかったです。

読み始めた時から、貴洋君は由良君のことが好きで、好意を悟られない為や男同士だからと言う理由で疎遠になったのではと予想していたが、その予想が当たっていたとしても貴洋君の言動で、偽物のラブレターの件で「貴洋のことは、ただの友達」と抗議した由良君に対して「いつから友達になったんだ?」と言い放ったり、遂には、由良君を呼び出しておいて当の貴洋君は彼女と帰る所を見せ付けると言う鬼畜の所業に少しばかり業腹でしたよ。

更に許すまじなのは、由良君が助けるきっかけとなった仔猫を虐待していた悪童達。由良君がガツンと叱った時は、よくぞ言ってくれた。悪童への一喝が勇ましくて格好良いよ。その後のメインクーンとなった番人とのやり取りがちょっと微笑ましてくて、悪童への苛々が緩和されました。メインクーンって大きいもんね。
しかし個人的には悪童達には少しでも痛い目に遭えばな、と思ってしまった自分もまた悪なのか。

命を落とす前の由良君は寂しく思い悩む姿の印象が強いのだが、猫の王国での由良君はとても穏やかで優しく、貴洋くんとの誤解を解く為一生懸命に、そしてイズミさんの指導に応える為健気に、猫騎士を目指す姿に頑張れと応援したくなります。
個人的に様々な場面で猫語で鳴いたり無意識に猫の尻尾を絡ませ合ったりするのが可愛くて、猫らしくて癒されました。

由良君が出会った猫人達は表紙にも描かれていてとても魅力的だが、やはり気になるのは貴洋くんに似た猫人のイズミさん。ストーリーやCP要素的にこうなのでは?と予想はするものの、由良君とイズミさんのおおよその年齢差や猫の王国に来た時系列などで疑問が残ってしまうのだが、全てが明かされた時は、自分のおつむでは予想出来ない展開で脱帽致しました。

親友と疎遠になったり家族との死別だったり切なくて辛い描写もあるが、猫要素は勿論、異世界ファンタジーな学園物としても楽しめると思います。更には協力書店限定SSではマタタビでとろーんとする由良君が可愛くて、本編も特典も是非とも読んでほしいです。

0

誰かにとっての救いは誰かにとっての絶望でもある

 作家買いなのと、yoco先生の素敵な表紙に惹かれました。
 いつものことながら犬飼のの先生の緻密な設定に感心させられ、特殊な世界観を楽しむことができました。
 ネタバレてんこ盛りな感想なので、未読の方はご注意ください。

 本作の舞台は、猫を守ったり救ったりした際に命を落とした人だけが死後に招かれるという天国の中にある猫の王国でしたが、こんな風に現世で何らかの徳を積んだ人が死後に何らかの形で報われる世界が本当にあったらいいのにな、と何度も思いました。死後の楽しみがあれば、現世はもっとがんばって生きようと思う人がたくさん増えそうですよね。
 あと、本作は映像化に向いているなと思いながら読んでいました。グラスソードやデートと称した跳躍シーンや戦闘シーン、そして何より猫耳や尻尾がついたキャラが動いているのを想像するだけで愛らしいです。

 中立評価にしましたが、由良が過去を改変するまでは神寄りの評価でした。
 生前の場面は辛かったけど、生前も死後も由良があれだけ執拗に貴洋にこだわっているのを見せられたので、イズミはおそらく貴洋だろうと思っていました。そうなると貴洋が由良より先に死んでいないと矛盾しますが、そこは犬飼先生の手腕で上手く納得させてくれるだろうと期待していました。
 なので、由良がイズミに惹かれながら二人の距離が縮まっていく過程に萌えていたのですが、全てを明かされてからではイズミが卑怯な人間という印象が強いです。
 素性を隠したまま望みが叶った通りにイズミとして由良に近づき、子孫繁栄の必要がない世界だから同性愛や同性同士で番になるのも普通のことだと刷り込み、由良から恋愛的な意味で慕われているのを確信してもなお、由良が過去を改変して貴洋の罪がなかったことにされるまで真実を話しませんでした。この一連の行動がどうしても保身に走っているようにしか見えません。
 結局由良のゲイ疑惑をでっち上げたのは誰だったのでしょう? 貴洋は普通でいたいから由良への恋愛感情を抑圧していたはずなので、そっちの方面で由良を吊し上げるのはおかしい気がするし、かといって他の誰かであれば自分も被害者として揶揄されている状況も耐えられないと思うし、由良が友達としか思ってないとゲイ疑惑を否定した直後に貴洋が友達とすら思ってないとわざわざ傷つけるようなことを言ったのも、愛憎なのか何なのかよく分かりません。
 由良が川で溺れた件だって、子供たちが猫を虐待したことはもちろん人としてありえませんが、貴洋が由良を呼び出して放置しなければ由良が死ぬことはなかったのです。それも由良から一方的に恋愛感情を向けられているのであれば、彼女といるところを見せつけるのは効果があると思いますが、友達としか思ってないと言った由良にこれをする意味とは一体……。
 貴洋は由良のことを家族を捨てて死ぬような人ではないと言っていましたが、極限まで追いつめられた人が衝動的に自殺という今まで考えたこともなかった選択をするのであって、普段の人柄なんて何の参考にもならないと思います。それを第三者の立場が思うならまだしも、本当に自殺に追いこんだ可能性があるかもしれない立場の貴洋がそう思うんだ……とガッカリしました。
 おそらく、遺族が由良の死の真相を知ったとしても、やっぱり貴洋を責めずにはいられなかったと思います。

 そして由良ですが、とにかく貴洋第一なところにあまり共感できませんでした。どんなにひどい扱いを受けてもあそこまで執着するなら、いっそのこと貴洋に恋している設定の方が納得できたのではないかと思います。
 過去改変の場面も、結果的に自分だけでなく貴洋の死に繋がってしまう人物だったとはいえ(でも由良はまだそのことを知らない)、猫を虐待した子供たちをクズ呼ばわりする由良に違和感がありました。
 猫の王国で騎士になるために猫の死と向き合ってきたからこそ沸き起こった憎悪なのだと思いますが、私からすれば貴洋もクズに等しい行為をしたと思っているので、子供たちには写真を撮ってデジタルタトゥーをちらつかせて脅した上にデータを消すことを失念したのに、一方で貴洋の所業は無条件で許して貴洋の罪を消すことで頭がいっぱいになっている態度の落差について行けなかったです。
 何より、過去改変の被害者は由良の家族だと思います。
 事実をねじ曲げた失踪なのに、家族は由良の悩みに全く気づけなかった自分を一生責め続けるのではないでしょうか。特に弟の紗良は全力で由良を引き止めなかったことを両親に責められたかもしれないし、これからずっと悔やみ続けるのかと思うと本当に気の毒です。
 由良の死に直面しないとはいえ、二度と姿を見せることのない由良の帰りを待つ人生は果たして家族の救いになるのでしょうか。私ならこちらも相当地獄だと思います。真実を知っているだけに、ただただ家族がかわいそうという思いしかありません。
 由良の望み通りに過去を改変して一番救われたのは貴洋です。貴洋の家族も加害者一家というレッテルはなくなりましたが、事故死だったはずの貴洋が謎の失踪に変わったので新たな苦しみがずっと続きます。改悪と言ってしまいたいほど貴洋本位なのに、そこまでのことをしておきながら友情しかないのはさすがに突っ込みたくなります。
 無自覚で好きだったわけでもなく頑なに親友の憧れと言い切りましたが、もしも猫の王国が同性愛が普通ではない世界だったら、同性愛を全く意識しない由良はイズミに恋しなかったという裏づけになるのでは? と思ってしまいました。せめて両片想いだったらまた別の見方ができたのかもしれません。

 辛口な感想になりましたが、どんな過ちを犯しても、何かしらの善行があれば天国に行ける可能性があるという希望を持たせてくれる作品です。
 納得できない部分はあるものの、小規模なセカイ系と解釈したら、まあそういうものなのかなと思いました。

3

後悔する攻め様がいい( ^ω^)

攻め様の後悔や悔恨といったものが大好物なので、とっても萌えさせて頂きましたヽ(*^^*)ノ


受け様の由良と、攻め様の貴洋は、幼なじみ。
高校生になる頃から、貴洋が素っ気なくなって、由良は寂しい思いをしていた。

仔猫を助けようとして溺れた由良は、目が覚めたら猫を助けて死んでしまった人だけが来れる『猫の王国』に迎えられていた。
自分が溺れる前の出来事により、自分が貴洋のせいで自殺したとされ、家族や貴洋が苦しんでいると知った由良は、それを回避する為、猫の女王に願いを叶えてもらえる騎士を目指すことに。

自分の行いが自分に帰ってくるから、人を蹴落とすんじゃなく、自分が頑張る。
名前も出なかったユラの隣室の人の恋人になりたい子達も、そんな邪魔の仕方ならいいわね、なんて思っちゃいました。
他にも、騎士の学校のメンバーは、魅力的(^-^)

で、ユラの前に教官として現れたのは、貴洋そっくりな容姿のイズミ卿。
イズミ卿のそばに居るのが嬉しくて、自然と惹かれていくユラ。

イズミ卿の正体は想像がつくものの、なぜ?と不思議に思いつつ読み進めました。

全てが分かった時は、なるほど、そういうことだったのか~。

全編由良視点で進むので、貴洋の方は想像するしかないのですが、それを考えるとめっちゃ萌えた(≧∇≦*)


攻め様の後悔する姿を読みたい時に、手に取る1冊です(*^^*)

0

アニメ化希望(笑)

2018年刊。
温情溢れる寛大な女王陛下に常に見守られている、猫好きだったら堪らないであろう天界の一国の物語。
作品ごとの独自の世界観を味わえる醍醐味は犬飼さん作品ならではのものだ。
今回は特に細部に渡って設定が凝っているのもあって、綺麗な色彩で映像化された状態でも見てみたいな…なんて思った。
もしアニメ化されるなら頑張って全話見るぞ(笑)

猫を守った為に命を落とした者達が招かれる"猫の王国"。
そこに招かれた主人公・由良はその後に遺された家族や友人が荊道を歩む人生を憂い、一つだけ女王陛下に叶えてもらえるという願い事で死の直前のトラブルを回避したいという想いを持ち、猫騎士を目指す。
一番心残りだった友人・貴洋に対して由良が抱いていた気持ちは、思春期特有の友人を独占したい気持ち、とも取れるけれどね。
猫の王国で専属教官として由良の前に現れたイズミが貴洋と瓜二つの容姿で、かつての由良の気持ちに恋愛感情が芽生えていたかは定かではないが、そういう目線で意識し出す。

周囲の猫人達も自由恋愛を謳歌している環境なのだが、性欲でギラギラしておらず発情期とかマウントといったようなものがなく始終穏やかだ。
最近BのL面では性癖こだわりとか過激エロが重用されている中で、久々に穏やかなLOVEを読めてほっとした。

肝心の話の展開も御座なりにされる事なく流れているのには見事だ。
これだけ設定が凝っている中でもきちんと各キャラクターの個性が伺えて、心情が入り込める余地があるのが嬉しい。

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ちょっと辛口でごめんなさい…

・感情で読ませるタイプ 樋口美沙緒先生、朝丘戻先生、一穂ミチ先生、凪良ゆう先生etc…
・物語の起承転結、勢いがある展開で読ませるタイプ、犬飼のの先生、夜光花先生、かわい有美子先生(この方はたまにものすごく静謐なお話も書かれますが)etc…
みたいな印象を持ちながら読書している私がレビューします。
神評価沢山あるので、良作と受け止めつつ、こんな意見もあるよ〜程度に見てくだされば!幸いかと!


yoco先生の挿絵が入った小説を読みまくる月刊だったこともあり、こちらの作品にも縁がありました。
重力を感じさせない素晴らしい表紙と、それとは裏腹に思いの外切なくてシリアスめな内容だというレビューを好ましく思い購入。

全体的にはさすが犬飼先生なだけあってぐいぐいお話を読ませてくれたんですが、私的にユラが良い子すぎると言うか…ちょっとそれに違和感があってなかなか入り込めず…泣
猫に対しての気持ち、悲惨なニュースに鬱々とするのはわかるんですが、それをバネに騎士になろうと励む気持ちに共感しきれず、共感しきれなかったからこそ、所々、いきなり泣いたり膝を着いて蹲ったりした場面の、感情の起伏についていけなくて取り残されてしまいました。
正義感が強いのかな?正しすぎて、ちょっと引いてしまったというか…
でもそういう受け様は犬飼先生の作品の魅力の一つでもありますよね。難しい…

貴洋や、家族のことを思って騎士になりたいのはわかるんですが、頑張ろう、頑張ろうって言葉が響いてこず、また貴洋の性格も把握しきれず…

ただ、最後の最後で、貴洋の長い悔恨の人生が、やっと救われたな、という部分には大変萌えました。
攻め様が人知れず受けを想い苦しんでるのって、切ないのに心がぎゅっとしてしまって、とても良かったです!

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