電子限定おまけ付き
楽しみにしていた桃子すいかさんの4冊目。
春夏秋冬をテーマに、連作形式で描かれた4組のお話が入っています。
ひとつだけ雑誌で読んでいたものがあって思わず泣いてしまったとても心に残るお話だったのですが、こんな素敵な形で纏まったんだ〜〜!って嬉しくなりました。
繊細だけど強さと生命力を感じる桃子すいかさんの作風に、「季節」というキーワードはしっくりきすぎるくらいしっくりきます。
タイトルと表紙をひとつの作品に寄せちゃったのはどうしてなのかな。
4つでひとつの連作短編集なのに、他の作品が同時収録作みたいな位置付けになっちゃって勿体無いなって思いました。
「隣りの美人草」・・・春
試合中に足を怪我をしてしまったサッカー少年と、美人だけどガリガリのお兄さんのお話。
病室から始まる恋っていいですね。カーテン1枚の距離感と、元気な人に励まされるのとまたちょっと違うお互いにかけあう言葉で救われていく感じ。
抜かれても抜かれても次の春には必ずまた咲く強い雑草のようになろう、と笑顔を取り戻す2人に生命力の再起を感じるお話でした。
「8月のロスタイム」・・・夏
4年間片思いしてきた親友に大学生活最後の夏休みをひと月だけ“恋人”として過ごしてもらうお話。
田舎の一軒家で一緒に寝起きして、一緒に出掛けて、恋人のようにエッチなこともして・・・ラジオ体操のスタンプカードが1マスずつ埋まっていって、カウントダウンするように減っていく“ロスタイム”。
夏が終わっていくセンチメンタルが最高潮に達した2人が、夏の夕立ちの中でびしょ濡れになりながら初めての挿入ありエッチをする姿が不覚にもすっごい萌えました…!やってることはただのアオカンなのに、なんでしょうかこの雨が降っているだけで全てが洗い流されるように爽やかさが広がるのは。夏+雨の演出効果すごい・・・!
そうそう、今はもうロスタイムって言わないんですよね。いつからか知らないけれど、今はAdditional Timeって言いますよね。“本来ないはずの時間”じゃなくて、“空費された分を追加した時間”といった意味合い。
最後のモノローグにグッときました。
「落ち葉あふれて」「枯れ木に蕾」・・・秋
親友を亡くした主人公と、死んだ親友の甥っ子のお話。
甥の〔紫苑〕が叔父の形見としてもらった手帳には叔父の〔高三郎〕がやり残したことが書かれていたと言う。それは親友の〔恭〕としたかったこと。それを叔父のかわりに自分と一緒にやってくれないかと恭に言う。
紫苑は叔父の恋人が恭だということを知っていて、叔父が恋人に対する後悔を残したまま死んでいったことも知っていた。紫苑は叔父の心残りを昇華させてあげたかった。
その紫苑の行動が恋人が死んでしまったことを悲しみとして昇華できないままでいる恭の心の葉っぱも落としていく。
木が秋に葉を全部落とすのは冬を乗り越えるため。木は次の春のために弱い葉を捨てるのです。
冬を乗り越えた枯れ木には蕾がつくのが自然の理、ということで後半は2人のお話へと突入していきますが、パッとはくっつかずにじっくりゆっくり。
全2話ですがしっかり読めた印象のストーリーでした。
恭さんが地味な見た目に反して意外とエロく、叔父さんにどんなふうに仕込まれたのかと悶々とする紫苑くんが可愛かったです。
「冬来たりなば」・・・冬
噂話が唯一の娯楽のような何もない田舎から一緒に出ていくことを子供の頃に約束した高校生たちのお話。
私立に行ける〔こーちゃん〕は早々に推薦で大学が決まるのだけど、国公立しか選択肢のない〔シュウ〕は猛勉強の日々。しかも志望は医学部。シュウがいくら田舎の学校で成績トップの秀才だろうとその道はやはり険しくて・・・
受験ってほんと世知辛いね。。
思い描いた通りにはいかなかった2人だけど、高校生男子のピュアな可愛さがきゅーーーんとくるラストを運んできてくれます♡
頑張れ若者!
この4つのお話は実は同じ田舎町が舞台。
最後に全員がクロスオーバーする描き下ろしが収録されています。
人生の時間がある時ほんの少しだけ止まってしまっても、季節が巡ってゆくのは絶対に止まらない。
そんな自然のたくましさの中で人は生きているんだから、人だってやっぱりたくましい。
「あなたがいる次の季節」って表現が、あぁすごく作者らしいなぁとじんわりしました。
ぐわーーーっとくるというよりも、穏やかにあたたかいものが広がっていくのを噛みしめるように読める作品集でした。
雑誌で読んで泣いちゃったのは秋のお話「落ち葉あふれて」。続きがあったのがすごく嬉しかったです。
【電子】ひかりTVブック版:修正-、カバー下○、裏表紙×、電子限定描き下ろし(1p)付き
連作短編集。春夏秋冬。とある街のそれぞれの季節を舞台に描かれた、4つの優しい物語。
●隣りの美人草
高校のサッカー部で靭帯損傷してしまった瑞樹と、隣のベッドに入院してきたキレイなおにいさんのお話。
短いながら、ドキッとさせられる展開もあり、読後は春の日差しのようにほんのり温かい。
ピュアラブっていいなぁ〜。おまけでの2人が可愛い♡
くすりと笑えます。
●8月のロスタイム
表題作。お試しで読んで先が気になって。
友達の蓮のことが好きな翔馬は、お酒の勢いで告白してしまう。すると蓮から「付き合ってみる?」という思いがけない返事が。
あとで傷つかないための予防線として、一か月だけの期間限定で付き合うことを提案する翔馬。
親戚所有の田舎の空き家で夏休みの一か月を恋人として過ごすことになった2人ですが…
埋まっていくラジオ体操のスタンプ。
恋人として過ごした日々のあかしであり、恋人と過ごす期間の終わりを意味するカウントダウンでもある、このアイテムの使い方がうまいんです!
田舎ののんびりした雰囲気も伝わってきます。
2人が抱えるそれぞれの葛藤が描かれた、優しい物語でした。
ただこの2人、身長も体格も顔の雰囲気も髪型も、そっくり。ハッキリ違うのは髪色。
黒髪とトーン髪なんですが、たまに両者トーンになるときがあって、そうなると見分けがつきにくい。
これどっちのセリフ?と考えながら読むとテンポが落ちるため、そこだけが少し残念でした。
●落ち葉あふれて
●枯れ木に蕾
亡くなった旧友・高三郎の墓参りをする恭。
2人の間にあったわだかまりを解くため、「叔父さんが恭さんとしたかったことを俺と一緒にやろう」と、叔父である高三郎の生前の思いを恭に伝えていく甥の紫苑。
恭と高三郎の間にあったものとは何だったのか。
その様子を描いた《落ち葉あふれて》。
そして、そこから数年後の恭と紫苑を描く《枯れ木に蕾》。
先の展開が気になるストーリー運びがとてもお上手。
長年の想いに向き合い、真実を知り、消化していく。
恭のこれからの人生にとって大切な大切な、高三郎の故郷での日々だったと思います。
たくさんの歳月をかけて、再び大切な恋に出会えた恭と、可愛い紫苑の2人には、今度こそ幸せになって欲しい。
●冬来たりなば
幼馴染のコウジとシュウは受験生。
お金持ちですでに私立大への推薦入学を決めているコウジと、母子家庭で国立大の医学部を目指すシュウ。
昔、一緒に東京に出ようと約束していた2人ですが…
あーっ!ここでもホント、フリと小道具が効いてます。
うまいよ〜!思わず胸がじーんと…
桃子すいか先生、伏線の回収の仕方がすんごくうまい作家さんだと思います。
短いお話の中に、幼馴染の友情、恋、将来のこと、親子愛など、温かさが詰まっていますよ♪
気になったお話をいくつかかいつまんで紹介するつもりが、全編じっくり読まされてしまった!
書かされてしまったぁ〜!
きゅん〜っと、優しくピュアな一冊です。
最後のおまけで、全カップルが登場し、あまあまなその後を見せてくれるのがまた幸せなのでした♡
すっごく良かった。
気になる作家さんではあるものの、つい見送っていた桃子すいかさんですが、この本を読み終えて既刊も買ってみよう!と思ったほどです。
ピュアでほのぼのしつつも、どこかセンチメンタルなところがあってそこが良かった。
そして登場する4カプ・春夏秋冬に絡めてお話が綴られるんだけど、ちゃんとそれぞれ季節の香りや湿度というか空気の違いが感じられるんです。
これって結構すごいことだと思う。
【隣の美人草】
靭帯損傷して入院する羽目になったサッカー少年と、隣のベッドのキレイなおにいさんとのお話。
うっかり抱きしめてしまったおにいさんの体が骨と皮ばかりで「ガリガリじゃん」「ちゃんとご飯食べなきゃだめっすよ。」という少年の何気ない一言に、思わずぎゃーー!!となったわ。
考えなしで言えちゃうのもある意味、若さなんでしょうね。
余命まもないフラグかと思いきや、ホッ。
ナガミヒナゲシと花菖蒲が登場するので春というよりも初夏に近いかも。
屋上を吹き抜ける風が気持ちよさそうです、
【8月のロスタイム】
親友にうっかり告白してしまい、夏休み期間中だけ恋人となった二人。
田舎の夏の雰囲気がこれでもか!と詰め込まれていて、読んでるだけでつい麦茶が欲しくなってしまう。
二人で毎朝参加したラジオ体操のスタンプカードを宝物にするつもりだったというくだりで貰い泣きしました。
切なさ爆発した末の雨と汗と涙にまみれながらのアオカン、素敵です。
冬だったら風邪確定というか鳥肌立てながらのアホな二人になってしまうけど、夏だからそれすらも風物詩(?)
【落ち葉あふれて】
これは思わず泣いたわ……。
あの手帳の絵にもっていかれました。
そして!
地味メガネっぽい恭の意外なエロさときたら!
どんだけ仕込まれたのかなぁ?と悶々としちゃう紫苑の気持ち、わかります。
【冬来りなば】
「一緒にこの町を出よう」とかつて約束しあった幼な馴染み同士のお話。
ほわほわと吐く白い息が、まるであたたかな愛を撒き散らしているかのように見えるシュウ母の存在がとても良かった。
母強し。
それぞれのカプに描き下ろしが一つずつおまけという形でついているのですが、最後のおまけ(5)は全員が登場する総集編。
みんな幸せそうで良かった。
しかし狭そうな田舎町にゲイカプ4組とは、素敵。
萌萌よりの神で。
どのお話もきっちりすいか先生の世界って感じで、思う存分堪能できました。
「冬来りなば」、月刊誌で読み逃してたのですがコミックで読めて本当によかった!かわいくてキュンキュンしました。
「落ち葉あふれて」は再読だったけど改めて切なくなりました… ハッピーな後日談が見られてよかったです。
春・夏・秋・冬、それぞれの季節をテーマにした短編集。
どれも同じ田舎町での日常を切り取ったほのぼのストーリーなのですが、まるで推理小説を読んだ時のように、ラストではっと驚かされる構成になっていてびっくりしました。
驚きと同時にやってくる感動がすごいです。
たしかに心温まるほのぼのストーリーなのですが、それぞれの悩みや生き方、たくさんの想いが込められているとても深くて優しい作品ばかりでした。
◆隣りの美人草
サッカーの部活中怪我をして入院している瑞樹の隣のベッドの隣に急患のように夜中入院してきた美人なお兄さん・深山。
すぐ仲良くなる2人でしたが、お兄さんはあまり自分の話はしたがらず、体もガリガリに痩せていて…。
ふたりのやり取りがとても微笑ましいです。
おにいさんがひなげしをくれたシーン。思わず泣いてしまいました。
ネタバレなしで最後まで読んで欲しい作品です。
◆8月のロスタイム
夏休みの一か月間だけ、恋人(仮)として田舎の親戚の空家で過ごすことになった大学生4年生の蓮と翔馬。毎日ラジオ体操に通いスタンプを貰い、花火をして、田舎の夏を満喫しますが、やがて夏休みも終わりに近づき…。
蓮の抱えてきたモノ、翔馬がずっと隠し続けてきた蓮への想い。
ラストで2人はどうなってしまうのか。
これもやはり泣けました。
あー、そっかー。だから蓮は女遊びばかりしてたのかぁ。
川に落とした大切なラジオ体操のカード、戻ってきて良かったね、翔馬。
◆落ち葉あふれて
◆枯れ木に蕾
5年前に親友であり恋人でもあった高三郎が他界してから、時が止まってしまったサラリーマン・恭。一年ぶりに訪れた墓参り先で高三郎の甥である高校生・紫苑に出会います。
叔父が遺した手帳に、恭とやりたかったことが描いてあるから、良かったら俺が叶えてあげたいという紫苑と一緒に、名所を巡り美味しいものを食べ歩きますが…。
手帳のネタバレで号泣しました。
あのイラストと泣き笑いする恭を見てさらに号泣。
この本で一番好きな作品です。
一年後、大学生になり、恭と暮らし始めた紫苑のお話も読めて、ああ、良かった、恭さんの時は紫苑くんのお蔭で再び動き始めたんだなぁと嬉しくなりました。
◆冬来たりなば
10年も前に「一緒にこの町を出よう」と約束しあった幼馴染同士のこーちゃん・とシュウ。体の弱いシュウは東京の私立に推薦で進むことが決まっていますが、こーちゃんは母子家庭なので国公立の医大に受かるため猛勉強中。
最後はやはりほろっときましたが、この2人ならきっと大丈夫。
そう感じさせてくれるラストでした。
どれもこの作家さんの温かい絵がぴったりくる優しくて、少し切ない、素晴らしいお話ばかりでした。
文句なしの神評価です。