電子限定おまけ付き
交番勤務の警察官というワードに弱く、気になって試し読み→電子版を購入しました。
最初の露出狂登場!の展開からもっとコメディな感じを予想していたのですが、実は警察官の樋山には過去のトラウマがあって…と、重めなしっかりしたお話でした。
冒頭で樋山が捕まえた露出狂・岡崎くんは、本当はそんな性癖はなく、少年時代にいなくなった犬を見つけてくれた樋山にずっと片想いしていたそうで…こんな年下の執着攻め好きです。純な感じも良かったし、でも、なぜ露出狂のふり?と思って読み進めていたら、ちゃんとafterloveで樋山さんが本人に聞いてくれました(笑)電子版の描き下ろしで、露出狂について検索する岡崎くんもかわいらしいです。
嫌な奴かな?と思った佐川刑事も最後は二人の良き理解者?になりそうだし、こういう円満エンドも好きで、読後感も良かったです。
露出狂の青年をお巡りさんが困った性癖から救う話だと思っていたらちょっと違った。それぞれが抱く過去が、良くも悪くも今の二人を作り上げている。岡崎の思い出は樋山の元へと向かう原動力となり、樋山を過去のトラウマから救い出す。
作品情報や帯にはそういうのを匂わせる事が全く書いてない!露出狂やヘンタイを強調したいかにもマニアック感を漂わせている。そう思ってフタをあけたらしっかりとした心に残るストーリーが待っていたなんて、いい意味で騙されましたね。
平穏な日々を望む樋山の前に現れた露出狂風の青年岡崎、過去の失敗から樋山は彼を放っておけず、性癖を満たしてやるための奇妙な関係が始まる。
こうして性癖を治療していく話なのかと思いきや、岡崎の正体と露出狂の理由、そして樋山の暗い過去のエピソードが徐々に明らかになっていき、このお話の本質が見えてくる。
一つの事件をきっかけにどんどん状況が悪化する、不幸のスパイラルに飲まれていくような過去の樋山。
…でもどうしてでしょう?登場人物の重暗エピソードが出てくると逆に歓喜してしまうサイコパスみたいな自分がいます(-_-;)
たくさん悩み苦しみもがいて、それでも一生懸命に生きて来た人の方が幸せになって欲しいと強く思えるし、苦労が報われたその時には達成感があり、祝福がより大きなものとなるからです。
樋山の心の闇を作るきっかけになったホームレスの男性…どんな理由があれ犯罪は許される事では無いけれども、中にはどうしようもなくなって罪を犯す人だっている。
特に、猫好きな読者はきっと悲しくなるし、彼の全てを否定する事は出来ないと思います。生き辛い世の中から弾き出されて残った居場所がきっとここしか無かったのだから。
認知症を発症して全てを忘れてしまった事が、幸せなのか可哀想なのかは解らないけれど、謝る事も叶わなくなった苦さの残る結末は、彼から目を背け続けた樋山に対する罰なのかもしれない。…と、BL部分以外のストーリーや人物も強く印象に残り、色々考えさせられました。
Hシーンに関しては、序盤は露出狂の見てもらう為のプレイが中心で進み控えめですが、その反動であるかのように結ばれた後の最後でしっかりあって満足感。
樋山が割と積極的な態度を見せるのが良かったです、主導権を握ろうとしても結局は若いパワーにたじたじにされちゃうんだけれどね。
もしも樋山があの時岡崎と出会わなければ、静かで穏やかな一人きりの空間をこの上無い幸せと思い込み、胃の痛みを薬で誤魔化しトラウマを抱えたまま一人で生きていったのかな…。
「さようなら俺の変わり映えのない日々」…その「もしも」を考えてゾっとしてしまった。だからこそ二人が出会って結ばれた現実に安心し、改めて良かったと祝福する事が出来ました、かつて岡崎を助けた事に対する報いが回って来たのでしょうね。
表紙絵とどぎついピンクでアホエロかな~と軽い気持ちで購入したら騙された!!!
めちゃくちゃ感動するじゃん!いい話すぎる!
文句なしの神評価です。
いい所が多過ぎてなんて書けばいいか分かりませんが、ずっと前から好きでした系が好物の方には是非とも読んでいただきたい。
あらすじから露出狂のインパクトが強すぎて、そこに引かれてしまいがちですが、それはあくまで導入部分。根本はもっと別にあります。
岡崎の強い思いがあっての露出狂で、樋山のやりきれない過去があってのおまわりさん。
年上のおじさん(くたびれすぎてもなく若すぎてもいない激燃えのちょうどいい塩梅)が年下の大学生に救われるとってもいいお話なのです。
樋山が過去と向き合い、岡崎の胸で号泣する場面は思わずウルッときてしまいました。
作者様と編集者様にしてやられた感満載ですが、大満足なのでしょうがない!
個人的に樋山の長めの前髪がツボです。
前髪が少し乱れながらのクシャッとした笑顔が可愛くて可愛くてこちらまで幸せになります。
かつて親切にしてくれたお巡りさん…幼心に憧れと恋心を抱き現在進行形でお巡りさんに恋してる学生の岡崎くん(攻)と、トラウマを抱えて"偽り"で生きているお巡りさんの樋山さん(受)。特に語られてはいませんが、おそらく彼らはゲイやバイではなく、"たまたま"親切にしてもらったのが樋山さんで、"たまたま"自らをさらけ出すことができた相手が岡崎くんだっただけです。そこに互いしかない"特別感"を感じて、とても素敵でした!!
トラウマと向き合うために警官を辞めようとした樋山さんが、岡崎くんとの出会いや元同僚で数少ない友人(?)の佐山さんの助けもあり、警官を辞めることなく向き合うことが出来るのですが、
樋山さんが岡崎くんに
"まずはおまえに ありがとう"
と伝えるシーンがお気に入りです!
樋山さんにとって、岡崎くんがどれほどの存在なのか、その一言で伝わってきます。
日常の、さりげない親切心が、後に自身を変える出会いを生むこともあるんじゃないかなって思うと、変わらない毎日だとしても退屈に感じることなく、一瞬一瞬を今まで以上に大切に生きていきたいなと思いました( ^^ )