普段あまり小説は読まないのですが活字読みたい欲に駆られ、ランキング上位にあって気になっていたので手にとった作品でした。
本社から出向してきた年下上司・藤木と、流され上手な園田の恋。
関係の始まりから勢いのままに突っ走る藤木と、それを受け止めながらもどこか他人事な園田の温度差に妙に胸がざわついて、ずっとハラハラしたまま読み進めていました。
期限付きで付き合うことを決めたときは恋愛感情など抱いていなかった園田ですが、一緒に過ごしていくうち本当に藤木に惹かれていくので、彼の中にある「距離と気持ちの法則」にも変化があるのだろうなと思いきや。
藤木が東京に帰ったらこの関係はおしまいという考えを頑なに変えようとせずすれ違ってしまうことに。
藤木のことをもっと信じてもいいんじゃない…?と思ってしまうくらい、最悪な結末しか考えていないことが悲しくて、胸がギュッと苦しくなりましたが。
ツラい別れとその先に待つ虚しくなるようなやり取りを幼い頃から幾度となく経験した園田にとっては、大切に想っているからこそ失うのがこわくて踏み出せない部分があるのも理解できました。
そんな自分のことを冷静に分析できているというのも切なかったです。
でも最後には自分自身で殻を破って藤木のもとへと向かい、しっかりと心を明かすことができて。
色々なことを諦めてばかりだった彼がはじめて諦めたくないと思ったその恋が、ふたりにとって幸せだと思えるところに着地してくれて本当に良かったです。
静かに流れていた日常を変えた緩やかな恋なので大きな波や激しいドラマみたいなものはありませんが、だからこそそれぞれの心情が際立って強く心を掴まれた作品だったなと思いました。
非オタ×オタの同棲中ラブラブカップルのお話。
言ってしまえば、なんて幸せな痴話喧嘩を見せられてるんだ…!と思うくらいに平和な展開(笑)
でも非オタとオタクって友達なら適当にやり過ごすことができるかもしれないけれど、恋人になるとなかなかそうはいきませんよね。
相手にとっては些細なことでも自分にとってはめちゃくちゃ大事だったり、逆も然りで。
恋人として大切に想っているからこそぶつかってしまうし、うやむやにしていたら関係も壊れてしまうかもしれないし。
ハジと廉もお互いに大好きだからこそすれ違ってしまうのだけど、でも大切な恋人の為に一つひとつ解り合っていきたいと考える。
そんなふたりの日常を微笑ましく見守らせてもらいました。
基本的にふたりとも優しいし、言いたいことをきちんと言えるから良い関係でいられるのかもしれませんね。
めちゃくちゃ可愛いふたりにほんわか癒やされたお話でした。
カフェ店員の望月と、彼が密かに想いを寄せている常連客の北川とのお話。
オメガバースだけれども第二の性にはあまり左右されないので、過去との不思議な繋がりとふたりの関係性にしっかり目を向けられる展開となっています。
お互いに惹かれ合っているので少しのキッカケですぐに距離は近付いて、何の障害も無く両想いになりそうな雰囲気だったけれどそう簡単にはくっつかず。
でもそこに焦れったさとかは無くて、それぞれ胸に抱えているモノを一緒に解いていく過程にこそ萌えがたくさん詰まっていた気がしました。
前世の記憶を持つ北川は過去の想い人と望月を重ねて見るあまりに"望月自身"に踏み込めず、そして母親の死から前に進めなくなっている望月には人を愛すること自体が大きな壁となっているので北川からの好意をすぐには受け入れられず…。
様々な思いの中で揺れるふたりに苦しくなってしまう部分はたくさんあったけれど、そこから目を逸らさずにしっかり彼らが向き合ったので
その先に待つ結末がより幸せなものに感じられたのでした。
読み終えたあとも静かな余韻に浸りたくなるような、とっても素敵な作品でした。
高校時代につるんでいた不良仲間同士の再会ラブ。
離れていた間に変わった環境や喪ってしまった人もいる中で、10年ぶりの再会にそれぞれの心がまた動いていく様子に心を揺さぶられます。
当時お互いに想い合っていたものの、気持ちを伝えることもないまま離れてしまった貴一郎と晃太。
やんちゃしていた頃を懐かしむくらい会っていなかったのに、再会したらすぐにまた昔の空気感に戻れたのはそれほどまでにお互いの存在が大切だったからなのでしょう。
大袈裟に懐かしがったり昔のことを責めたりしない晃太に、きっと貴一郎は救われて。
切ないような愛しいような気持ちを覚えながら、大人になっても変わらずに自分の中にある気持ちに気付いていくわけですね。
多くを語らない貴一郎のそばで心を波立たせているのはいつも晃太で、同じ気持ちのはずなのに同じ場所に立っていないふたりの微妙な距離感が切なく、貴一郎が想いを口にするまでは何度もハラハラさせられましたが。
夢を追いながら前へ進んでいくそのビジョンの中に、晃太が存在しているのがわかりほっと一安心。
今度は絶対に手を離さないという決意を感じた海での言葉は、晃太にとって忘れられないモノになったのだろうなと感じました。
トオル先輩のことや高校生当時のことなど、忘れられないけれども思い出すと胸がギュッとなるような過去を抱えながら。
何年も経ってやっとふたりがふたりらしく一緒にいられるようになり、その様子を見れてとっても幸せでした。
「エモい」ってこういうことを言うのか…!と思うシーンが幾つもあり、そのどれもが胸に刺さる素敵な作品でした。
中国人褐色イケメンのルイと育ちの良い美人さん・梓。
バーのウェイターとVIP客という間柄だったふたりがひょんなことからワンナイト…というところからその関係は始まるので、もっとライトなお話かと思っていましたが。
人との距離感や付き合い方に迷うふたりを見ていて、想像以上に重たいお話だったなと感じました。
梓が誰にも言えずに抱えている孤独はとても痛々しく、ルイもまた自分自身の居場所を探しているようなところが切なくて。
似た者同士というわけではないけれど、自分では埋められない心の隙間を持つ者同士が惹かれ合うのは必然だったかな、と。
傷の舐め合いから始まった恋でもふたりが幸せならそれでいい。そう思えました。
自分の求める言葉をくれるルイに救われた梓が、彼との日々をキッカケに自分自身を見つめ直すようになるという成長が見えたのも素敵で。
ふたりともいい笑顔でラストを迎えられたことがとても嬉しかったです。
感情の始まりは曖昧だったけれど、どうして好きになったのか?という部分よりも一緒に過ごすその先にある幸せに目を向けさせてくれるようなお話でした。
ファンタジー要素アリな幼馴染DK同士のお話。
現実と非現実がいいバランスで組み合わさった展開にものすごくドキドキしました。
昔からずっと仲良しだった大成と翔太朗ですが、中学時代のちょっとした気持ちのすれ違いから今はちょっぴり距離ができてしまっているふたり。
でも悪夢を見るようになった翔太朗を大成が助けてくれたことをキッカケに、夢の中で"だけ"以前のような関係に戻れるようになるわけです。
翔太朗の肉体は完全に寝ていて大成と会うのは夢の中だけれど、そこに登場する大成にとっては「現実」というのが面白くてものすごく引き込まれました。
ファンタジーだと理解しながらも夢を操っている部分にものすごく興味がわいて、大成の家系に伝わるエピソードを聞いてみたくなりました(笑)
夢の中での大成はとても大胆だったし与えられる快楽に溺れる翔太朗の姿もエロいので、なんだか覗き見しているような気持ちになりつつ。
そのやり取りのなかで自分の気持ちに気付いた翔太朗が今度は大成を救い、無事に両想いになってくれて本当に良かったです。
想いが通じ合ったふたりの高校生らしいがっついたセックスもまたエロくて良かった…!
これまで離れていたぶん、恋人同士としての時間を存分に楽しんでほしいなと思いました。
グルメ雑誌編集者の千晃が取材で諒二がオーナーをしているバーに訪れたことで知り合い、少しずつ心の距離を近付けて恋へと変わっていくようなお話でした。
千晃のアナニーシーンから始まるし付き合う前に身体の関係をもったりするので、わりと軽めなお話なのかな?と思いきや。
恋愛への苦しいイメージと過去の恋人たちとのツラい記憶がある千晃の心はかなりダメージを負っているので、そこを癒やして解していく過程はなかなかに深い部分があったなという印象でした。
半ば勢いで一線を越えてしまったふたりですが、諒二は遊びで手を出したわけではないし千晃も快楽に流されただけではなくて。
お互いに好意があるのは明確で諒二から気持ちを告げられてもいるのだけど、なかなか一歩を踏み出せない千晃の複雑な心境はとても切ないものがありました。
恋愛に臆病になっているというより、恋をするということ自体わからなくなっている感じで。
どれが正解か?という答えが出ていても実際にすぐに動き出せるかと言ったらまた別の話で、諒二への想いの中で迷子になってしまっているのがもどかしくもあり、そこが乗り越えるべき課題でもあったのかな、と。
でもどんなときでも千晃と向き合うことをやめなかった諒二に救われて、しっかり前へ進むことができた千晃。真っ直ぐに気持ちを伝える姿に清々しささえ覚えて、改めていい出会いをしたふたりだったなとしみじみ思ったのでした。
甘さや切なさ、大人の色気まで。バランスよく楽しめる素敵な作品でした。
バイト先の中華屋に入った注文の配達でお客さんの家へやってきた歩睦。
すると中から出てきた半裸のイケメン・マオに突然抱きしめられ、そして悪魔だと告げられて。
状況を飲み込めず何がなんだかわからないままセックスをしているという、なかなか激しいところから始まるお話でした。
悪魔の食事は人間の精気で、出前はあくまで人間をおびき寄せるための手段だったと知った歩睦は、食べ物を粗末にするのは良くない!と、マオに怒るわけですが。
自分の身体を好き勝手にしたことを問い詰めるのもそこそこに、食べ物のほうで怒っちゃうちょっぴりズレているその可愛さがツボでした。
関わりたくないと思いながらもズボラで面倒くさがりなマオの世話をしたり、なし崩し的にセックスをしたりという日々が続き、やがてマオ自身に惹かれていく歩睦。チョロすぎだな…?みたいなところはあるけれど(笑)
素直でいい子なのは伝わるし、マオも食事目的で歩睦を抱いているわけではないのがわかっていくので、微笑ましさたっぷりなやり取りにほんわかできました。
歩睦がマオの家族と会うところはぜひ見てみたかった!大歓迎で溺愛されるんだろうな。
苦しいところとかもなくずっと楽しい気持ちのまま読める、とてもハッピーなラブコメでした!
前巻ではまだ先が見えなかったふたりの恋ですが、一気に色々なことが動いていったなーという印象の2巻。
目が眩んでしまいそうなほどのキラキラな青春を存分に摂取させてもらいました。
孝宏からの告白を受けて、日々の生活がままならないほど意識してしまっている奏多。
そんなウブで可愛いところがありつつ、自分の気持ちがはっきりするまでは流されずにいたいという芯の強さも感じられて。
正直、孝宏が勝ち確だと言ってしまうくらいにはその想いはわりとバレバレなのだけど、それでもけじめをつけたいと考えるような一面に孝宏は惚れたのだろうなーとしみじみ思ったのでした。
告白の予約をした辺りからもうドキドキが止まらず、ふたりっきりの音楽室で…というあのシチュエーションに爆萌え(笑)
頬を挟んで「大好き」の破壊力は本当にやばかったです。
そしてついに両想いになったふたりの初々しいイベントの数々にキュンキュンしっぱなし。
孝宏の想いが全力で伝わってくるような真っ直ぐな眼差しが本当に素敵で、奏多の強がりまじりの照れ笑いも最高でした。
爽やかで眩しくて、胸がキュッとなるふたりの恋をまだまだ見守れるのが嬉しいです。
次巻も楽しみに待ちたいと思います。
異種族同士の恋ですが争ったりいがみ合ったりという苦しさはまったくなく、ふたりのやり取りに癒やされるようなとってもあたたかいお話でした。
出会いのシーンではお互いに戸惑いはあったものの、過度に疑うことなく真っ直ぐ受け入れたところに根っこの優しさがにじみ出ていてものすごくほっこり。
魔族と人間の交流を再開させるため壁を壊すことになり、魔力供給が目的のセックスをして。
そこにそれぞれの気持ちが伴ってくるとちょっぴり切ない展開になるけれど
特に拗れたりすれ違ったりしないでスッと両想いになってくれるので、その後の甘いセックスを存分に楽しむことができました。
がっつりファンタジーだけどもふたりの想いには現実的なモノがあったので引き込まれたし、何よりブランクとチェルナの人柄がものすごく好きだったので、何度も読み返したいなと思える作品でした。