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神作品

エキスパートレビューアー2022

女性ひみたさん

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今年度117位

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上巻に輪をかけて濃密で劇的でエモくて、そしてちょっと中二

美しくてエロくて優しくて圧巻でした…!

視力が良くなる、サッカーボールが物凄い速さでキャッチできる、別人格の声が聞こえる…
自分の力が目覚めてしまった中二感!
世界の終わりか始まりか、ふたりぼっち、リンゴ…擽られます。

上巻よりヒートは収まっていくのですが、それに反比例するように罪意識や強い嫉妬でドロ熱くなだれ込むのがすごかった。
西央くんの「エッチじゃないとこがどこにもない」身体の描き方がもう美しくて…身体の動きにデフォルメや効果音が少ないのもすごく綺麗。
彼の顔のつくりで、根がちゃんとした人なのだろうなと伝わってくるところも好きです。
二人の会話一つ一つに変化する表情が、どれも魅力的で見飽きません。

西央くんは身体の変化が怖くないのかと上巻で思ったのですが、3.4日ではまだ疑問と戸惑いの段階みたいですね。ヒートから脱して、その時当たり前だった感覚が抜けたと。
親身に心配してくれる喬の「怖い?怖いよね ごめんね」という優しい台詞が沁みます。西央の頬が染まります。
彼が怯えないから余り可哀想に見えないことは、読む上で救いになっているんですよね。

嫉妬で目の色が変わる本気の喬も堪りませんでした。
アルファとしての強烈なプライドや周囲への苛立ちが生まれ、今までの穏便な気持ちとの争いが起こる。
葛藤にかなりの頁数が割かれていて、それを終えて出てきた純粋な気持ちは清々しい。
「求められたい」が支配したいよりも欲張りかもという言葉は、考えさせられます。
独りよがりでなくより難しい次元。
本能に抗うのではなく、その声を聞いて更に上を行くような、好きな人への接し方には感動しました。

そして「異性」という言葉が、正に新しい性の意識の誕生として出てきたのも、自然で良かった!
現代(この漫画の舞台も現代ではあるけど)様々な性に少しだけ広がった理解が、更に加速したような延長を感じました。

喬は医者家系だし、アルファの性質は代々少しずつ形成されてたのでしょうね。
西央くんはまだ解明されていないし完成されていない身体の変化で、果たして身篭ったり、それ以前に定期的なヒートは大丈夫なのかとか、考えようによってはメリバです。
それでも、この二人はどうあってもきっと大丈夫と思わせてくれる終わり方で良かったです。
ちゃんと言葉にするって気持ち良いし、相手にちゃんと届くから大事だなと改めて思いました。
ああ、でも頸噛むシーンもハッピーでトロ甘なシーンももっと見たかった…

心理描写と画力とエロ、全て高いレベルで、オメガバース代表の一つになる作品、決定的な変化になると思います。

色の違う手が重なる素敵なお伽話

素晴らしかったです。
童話やお伽話のように劇的で芯のある純愛のお話、感動しました。
「風と木の詩」セルジュの両親のお話を思い出します。

色狂いの父が“犬”を飼ったという様子を見に、息子レオンは小屋へ。そこには昂る匂いを纏う少年奴隷と、弄ぶ父の姿が。
驚愕しつつも、その匂いを嗅いでからレオン自身の身体にも変化が起きる。悪魔か魔女か、その少年に会いにまた森へ…というお話。冒頭からグッと掴まれました。

人や宗教が信じられない奴隷と、彼を大事に守ろうとするレオン。
跪いて奴隷の手の甲にキスをする王子、ベタかもしれませんがロマンチックで素敵です。
彼が見惚れ頬を染めるのがっ可愛いかわいいかわいい!!!笑
恋をしている表情が抜群に上手い作家さんだなと思いました。

それだけでなくお話も整理されていて読みやすく、色んな登場人物の思惑が交錯するのが面白い。
特にレオン父の行いが酷いのですが、でも奴隷ノエに首輪付けてたのはグッジョブでした。彼はオメガかな?
キャラクターがしっかりしていて無駄がなく、お話の破綻も余り気になりませんでした。

ノエが人生を諦めているけれど父の為に生きているところも、レオンとのささやかで大切な交流、恋をしてからの行動もいつも一所懸命で、ウジウジしないので好感が持てて応援したくなります。
瞳が可愛く涙が綺麗で泣けてきます。

「真実を伏せたままのこの唇では お前を汚してしまわないだろうか」
こんなロマンチックでロミジュリかよ台詞があればバッドエンドも覚悟して最後までドキハラ。もしバッドエンドでも良い作品に違いないのですが、この終わり方は至高でした。

オメガバース設定を読者が知ってる前提として(巻頭に説明書有)、作中はふわっとした描き方で説明少ないのが良かったです。
魔女設定でも良いのではと思ったのですが、長い説明を抜きにしてお話の流れを壊さなかったのは重要だと思います。純愛のお話なので比較的エロが少ないのも良かった。
頁数が多い分ちょっとお高めですが、純愛ストレートなお話が好きな方にはお勧めです。手酷いオヤジ攻め苦手な方は注意。

最高だった〜〜〜〜〜!!!!かわい〜〜〜〜何これ推せる…っ

どうして今まで読まなかったんだろうと思うくらい、最っ高ーに楽しくて完璧でした!!
BL初心者にお勧め訊かれたらこれからはダントツでこれです

漫画の展開を夢見る主人公といえば、「ハッピーエンドを信じてる」などなど毎度笑わせて貰ってますが、漫画の中で作家さんのタッチの違う漫画作品が見られるのも醍醐味ですよね。

この作品は可愛さもキュン(萌じゃなくキュン!)も笑いも、DKワチャワチャも展開にワクワクもあって読んでる間ずっとニヤニヤしてました!「第一話」のフォントも好きです。

主人公一ノ瀬がとってもイキイキしていて、変わり身の速さもワタワタしてたり少女漫画にキュンするところもみんな可愛いんですが、時々毛先が♡になってるのも最高です。
理想の少女漫画の展開を悉く陣内に踏襲され、時には否定され、そしてBLを読み込んでいく一ノ瀬!目の前の対処だけでその先がフワフワしてるから、少し相手に踏み込まれるとアワアワしてしまって可愛面白い。

転校してきた幼馴染の陣内、自分は興味のない少女漫画の話をされても
「ゆっくり聞かせて」
って男前すぎます。こんな器の広い聞き上手に自分もなりたいとすら思ってしまいます…

加藤ススさんは脇役も主役張れるくらい良いキャラを描かれるので、当て馬的立場になった時も「あっそれもいいかも…!!」なんて思わせてくれるのが楽しいです。
みんなそれぞれ秘密を抱えていて打ち明ける展開も大袈裟でなくて良かったです。

その他グッときたポイント
・「は…?陣内ヒロコ様じゃ」
・壁ドン返し
・悩めるイケてる男子会議
・俺の響也をとるなよ!(アオハル〜に続く台詞になってますね)
・とんだスパダリだよ(可愛い〜〜)
・かわいくない 変なブームが来てからスゲエ扱いづらいんだよこいつ…!

鬼のような風貌と初心な恋心のギャップ戦国版

すごい体格差…
その時代ならではの言葉やシチュで萌え上がらせるところも、文体を時代の雰囲気に合わせて変えているところも(“〜だった”が多く、若干読みづらさはあるものの)、いつもながら素晴らしかったです。
笠井あゆみ先生の挿絵は構図もかなり凝っていて華々しく、文章と相まって壮絶なムードでした!細い線で描かれる妓楼の部屋やお尻を握るような対面座位も最高でした…

戦国の時代に無双の強さを誇る太田平蔵は体格良く傷だらけで鬼のような風貌。でも実生活では女が怖がらないように出来るだけ優しく接するジェントルマン。
その彼がお凛(実は少女の格好をした忍凛太郎)に一目惚れして、出来るだけ背中を屈めて目線を合わせたり草花のお話をするなんて滅茶苦茶可愛すぎます!大男が少女に側室のお伺いを立てるなんて…激萌でした。

この作品では濡場にはそこまで萌えず(綿密で圧巻でしたが)、それよりも表立って一緒に居られない二人の僅かな逢瀬の数々が切なくて良かったです。
忍びとして報告する凛太郎を、平蔵は触れる事も出来ず上から眺めるしかないシーン。凛は凛で心の中で何度も彼の名前を呼んでいたり。
我慢出来ず凛太郎がお城の平蔵の腕の中に忍び込んだり、夢のようにお告げを囁いたり。

女は壊れないよう努めて優しく触れていた平蔵が、恋をした相手には感情も理性も振り乱され、「おかしくなる」と言われれば「痴けになればこれ幸いと座敷牢に閉じ込めよう」と激情赴くまま抱き潰します。
平蔵は鬼のような風貌と心の純粋さを持ち、凛太郎は平蔵の前ではメロメロメロでも他人に揶揄われれば鼻で笑うような冷たさを持っていたりと、ギャップの振り幅が魅力的。

嫉妬が渦巻いているのもとても良かったです。正室の豊の方は、自分には向けられない平蔵の恋心やお凛に遠慮なくぶつけられる熱情を妬む。お凛の兄分は変わってしまった弟を許せない。この二人とそれぞれ対峙する笠井先生の挿絵がまた素晴らしい…!!
いや、忍が正室を抱くとかありえんし、平蔵一人で政に悩み過ぎだったり、突っ込むとこはあるんですけども。

時代小説を全く読まない者でも把握しやすい文章に助けられ、また太鼓やシンフォニーが聴こえてくる様な戦の臨場感を味わえました。
バッドエンドしか想像できない激動の世のなか、昔の二人に戻ったような花のお話や穏やかな雰囲気(エロはエロい)の終わりもホッと終えられて良かったです。徹して純愛でした。

表情の変化が魅せるハイカロリー劇画

13ページと、1枚めくった15ページの内海の瞳の変化が素晴らしいんです。真っ黒な瞳と、光を取り込んだ瞳の感情の変化が映画的で眼福です。
彼が赤嶺を呼ぶ際「お前」から「貴方」へ早々に呼び方が変化するのが好きでした。

表情や紙面の明暗がとにかく劇的で、しかも語り過多めとハイカロリーな作品、読後疲れます。
お話の粗は目立つのですが、一度助けてくれた人への拭い切れない愛憎入り乱れ、自分の存在の無意味さに愕然とする様が泥臭く描かれているところが好きです。
カッチリしたスーツを着た男が情けなくなったり、恋で涙するウエットな演出はグッときます。
身体のやりとりも男らしくガッッチリでエロ。
その割にお花を配するのはちょっとクサいかな。美しいのだけど。

歴史が変わる濃密愛憎劇

この作品に関わった人達の本気が、頭が痛くなる程伝わってきました。
箸休め無しの愛憎劇ドラマ。身体も心も真に迫ったと思えば裏切り、どう行き着くのか画の迫力も相まって息を詰めて見届けました。
濃密な劇画BL、また、修正もちょっと心配になるくらい仕事してなくて、目に驚きがありました。
欲を言えば語りが多かったり、大ごとにし過ぎだったり真相が欲しい部分など思う所は多々。けれどキャラクターも作り手も熱量高めなのがハッキリみてとれる作品は好きです。
BLを読み始めた時にこんな作品に出逢えると思っていたので、感謝と拝む意味も込めて神評価です。

Classicゴージャス受けと清純攻めの甘エロ笑涙

「うつくしい体」は日本画や西洋画、タトゥーデザインを織り混ぜた画力オーバードライブの荘厳BLで大好きな作品です。
今作も全てドが付くほどゴージャスでクラシカルでエロティックでコメディ、鹿島さんの作風に完璧にマッチしたテーマでとても見応えある一冊でした…!
単話配信の表紙が怖かったのですが、こちらの幸せな白いデザインの方が内容に似合ってると思います。

美麗筋肉ヴァンパイアのラドゥ。一見攻めだと思いがちですが甘とろ可愛い受けで、受けに見えがちな細っこい僕ちゃんのマコトは攻め。そのギャップが最高で病みつきになり、この世界感に引き込まれます。
「愛する人とじゃなきゃ駄目」とフラフラになっても我慢する、というか自分の身体のしくみが分かってない童貞淫魔のマコトを、ラドゥはある目的の為に助けます(上に乗って精気を与える)。所謂誘い受けですが、ラドゥの表情やポーズが超絶色っぽく、溜息出ます。
目的自体は試し読みで判明しますが、ファンタジーの中で異色さが面白い。

マコトの純朴さが分かる後半も、声出して笑いました!
淫魔といっても半分人間のマコトと、永遠に生きるラドゥ。宿命を抱えた切なさと、それを心の真っ直ぐさで押し通そうとする愛は、ベタかもしれないけどそれが良いです。
「本当に好きな人としかキスしない」と線引きしていたマコトの気持ちがラドゥに全振りしたら、愛が止まることはありません。
今までラドゥを愛してきた人達をちゃんとカバーした表現も優しくて染みました。
ラドゥの心中にある、人には理解出来ない暗闇に陽が差し込むような、そしてまた閉じてしまいそうな演出が感動的な美しさでした。

そして美丈夫受けに教え込まれる純朴攻めが淫靡で堪りません…!!「(いいところを)探してごらん」破壊力。
二人は正反対な雰囲気なのにどちらも甘々で可愛くって。体格差や対面座位も最高でした。
受けにお姫様抱っこされる攻めも、調教側だったのが甘えたになる受けも可愛い。
そして触手も若干量あります。

Rentaさん先行販売、そちらのレビューで「Renta限定おまけが重要…」とあったのが気になり購入。修正は美麗な線の上に残念なモフ白、画質微妙でしたが、おまけの内容が定番フラグで可愛かったです。
「こんな子に僕がひっかかる訳ないじゃないか」←もっと可愛い形容詞

本編ラストは300%ハピエンと言い切れないので、地雷多い方は少し慎重がいい可能性あります。私はハッピーで美しくて楽しくて泣けました。

ハゼさんへ続く、抗いがたき誘い受け

「セックスセールスドライバー」ではお仕事描写も面白くキャラが魅力抜群だったさばみそさん。この過去作も抗い難い誘い受けでした。

「ヤバイ性癖」とは、被害(刻み付けて欲しい)癖です。
訳ありで田舎に戻った青年ユウスケ、道で注意してくる眩しいDC?慎太郎に目を奪われる。
ユウスケの火傷や切り傷を見て、「好きな人には絶対暴力を振るわん」と言う慎太郎をユウスケはすぐ好きになってしまう。

幼い良心や正義感と大人の誘いが絡み、昔の傷を密かに見せつつ親密になる様が濃厚で、ヒャ〜ッとなりながら読みました。
その次の頁では、自宅で突伏している慎之助。その居た堪れなさや戸惑いが、少年らしくて堪りません。

年若い子に性を教えメロメロになる大人の図、良いですね…自分好みに大人にさせて、精神の成長に切なくなったり嬉しくなったり。体格差のある包み込むような格好の騎乗位はなかなか見られません。
ユウスケが誰彼構わないビッチではなかったこと、慎に奉仕を求めないところが個人的にセーフでした。

通常であれば少年慎太郎を危ぶみ、ユウスケも考えるように普通の道に戻してあげたくなるのです。でも彼は太陽属性のしっかりしている性格で、自分の言葉で話しユウスケを選んだのだから最終的にはこれで良いのだと少しは安心できました。
彼のこの性格は、ユウスケの「ヤバイ性癖」を無効化とは言わないまでも闇作品にさせない力があります。

個々の台詞、キメるときにちゃんとキマッてる表情や情景、安定した画力もまた読みやすく引き込まれました。ユウスケの表情や過去背景に説得力があるので、その性癖と「相手が傷つけたくなるように仕向けているのかも」という台詞にも、少し理解できるなと思う発見がありました。その発見をプラスして萌2から神評価にしました。
なかなか抜け出せないものだと思いますが、最後には慎太郎の陽のパワーに押されたように、甘えたり傷を治そうとするユウスケの姿があって読後感良かったです!

もう、初めに「ゲームあるから家においでよ」って言うの、行っちゃダメなテンプレだよ〜〜とヒヤヒヤしました(笑)

もう一つの短編は表題作を見た後には別口過ぎて、オチも微妙だったのですが、この一冊の誘い受け&筋肉が「セールスドライバー」に続いているのが見えて読みやすい気がしました。絵はこの本の方が好みです。
kindle unlimitedにて。

読み返してはとろけます

素晴らしい作品に出会うと言葉にならず、でもレビューしたくて読み返して…とエンドレスになってしまいますね。
作中に出てくるフィナンシェのような、丁寧に作られた香り豊かな甘さある作品でした。焦がしバターなんです。

歯科医の尚は、漫画的には女性的になってしまいそうな傾向のある性格なんですが、骨格や表情も繊細且つしなやかな男らしく描かれていて素敵でした。頼りなくポーッと赤くなる表情が儚げで可愛くて、マスクをつけ外しする仕草も色気があります。誠一さんに指で解されながら耳を攻められた時の苦しそうな顔が男らしくて堪りませんでした(笑)

尚は元々好きな人の言うことに流されやすい性格なのでしょうね。引目を常に感じていて辛くてもそのまま受け入れてしまう。学生時代の先輩とのやりとりや描写がなくても、表情で彼の行き場の無い寂しさが伝わってきます。

来栖誠一は所謂スパダリ分類の人物なのですが、全く嫌味がないのです。人に気を遣わせない(人に合わせる)ソツのなさが自然で、会話の返しも優しくて、本当に素敵でした。
帰り際にもう一度顔を覗かせたり、気まずくなりそうになると笑いを交えたり、尚が振り返るのを待ってたり。「寝る前に声が聞けて…」なんて言いつつ仕事してたり。
撫でてほしいと言われ、その時だけでなく幾度も撫でてあげて。
失恋の話を聞けば「そんな風に思って貰えるなんて羨ましいよ」
不安で引目を感じている尚が少しでもホッとするような、気を楽に出来るような言葉をいつも選んでいて…また誘い方も相手がうんと言いやすい言葉を使って(家に上げたい為に「手もこんなに冷えて…」)、大袈裟ではないさりげない優しさがすごく沁みます。そして特別力を入れて描かれているわけではないのに誠一の汗が妙に好きです。

この二人の組み合わせだけでとても魅力的な作品ですが、心情の変化や相手への観察がとても丁寧に綴られていたところも良かった。
キーホルダーやシャツなど、小物も効いていました。尚がタートルネックばかり着ているのですが(とっても似合ってる)誠一と同じように、彼に出会った時の服だからお気に入りになったのかなぁと思うとほっこりします。
彼の謙虚でささやかなキスの仕方が可愛い…

電子限定書き下ろしも、3頁とは思えない密度でした。尚が見た夢のお話で、二人で叶えようねというだけなのですが、最後に照れつつ笑っている尚が、誠一からの優しさや愛を受け取れるようになった感じのするハッピーエンド。可愛い…対面座位も最高でした。

「今日は来栖さんが来院する日だな なんかお花がぽわぽわ出てて1センチくらい浮いてる」
「虫歯ゼロだぞ‼︎」「なんだと⁉︎」に和みました。

深潭回廊 1 コミック

永井三郎 

罪と比例する幸福

本流未読でこちらのみの感想です。内容が分かっていて読む人しかいないにしても、「しゅみじゃない」評価が0はすごいですね。

柳田先生が他の人と同じように憎悪している、自身の“獣”のおぞましい可視化が強烈でした。
ペドフィリアだからといってそれ自体が罪ではない。自分でどうすることもできず、本人すら自身を恐れていることは木原音瀬さんの「ラブセメタリー」にもありました。
彼が自分を理解し抑え付け、普通に見えるよう擬態している時点ではまだ正気があるのですから、読者として辛くとも安心して見られます。
先生の過去の行為(生徒へのレイプ未遂)というのは表紙裏で触れられたのみ。

考えさせられたのは、渚に触れ合うようになってから、柳田先生の足元に花が咲き満開になるところです。思い詰めていた今までとは全く違う満たされたニヘラニヘラする表情は、それだけ見れば普通の人と変わらない。けれどふと気づくと自分が堕ちていると自覚してしまう。
生まれついた(発現してしまった)性癖のせいで幸せが得られないというのは、絶望です。

中学生の渚は先生を慰める救世主でもあり、死神でもあります。目も怖い(汗)
彼は無邪気に少年同士で遊びおちゃらけもするし、大人に何か言われても飄々と交わします。
柳田に興味を惹かれて同衾し、遊ぶように共犯している危うさは、見てはいけないもののようで目が離せません。

ペドフィリアは性的マイノリティの中でも特に理解されないものです。もうすぐ2巻発売とのことなので、先生がどうこれから生きるのか、見守りたいと思います。