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神作品

エキスパートレビューアー2022

女性fandesuさん

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楽しい!

ちょっと評価が甘いのですけれど、楽しいから『神』を付けちゃおうと思います。
伊達きよさんって、まだこの本も含めて3冊しか読んでいませんが、多分、ジンと来るお話や泣かせるお話も書ける方なんじゃなかろうかと思うのですね。
でもコメディで攻めて来る。
この心意気を感じちゃってね「推したいなぁ」と思ったのですよ。コメディBL小説受難の時代(大げさ?)が来つつあるような予感がする私としては。

この『楽しさ』を生み出しているのはテンポの良い語り口だと思うんです。
子猿を助けて命を落とした主人公は、あの世とこの世の境目で出会った神様に、多次元世界に転生して病気の王子を救う様にと言われます。そして、死んじゃった彼の体を神様が形成するまでの間、昼は子猿の体を借り、夜は人間に戻るという生活をおくることになります。
転生した世界の人々は身長が2m超えも普通の、大柄な人々の世界。
小さな小さな子猿&人間に戻っても子どもに見えちゃう日本人が、異世界の大きな人々に可愛がられたり、惚れられたりしながら、不遇の王子を何とかしようと奮闘するお話。

いや、実はそれほど突飛なことが起きている訳じゃないのです。
ただね、そこはかとなく可笑しい。
『変で可笑しい』のではなくて『ハートフルに可笑しい』のですけれど。
前述しましたが文章のリズムが最高!
非常に読みやすいので逆に凄さを見過ごしてしまいそうになるのですが、このリズム感は白眉だと思いますよ。癖になる。

追いかける作家さんがまた増えました。

可哀想な……

得てしてBLは『可哀想な受け』が登場します。
少女文化の延長線上にあるからだと思うんですけれど。
以前から少しばかりそういう匂いを漂わせていたのですけれど、この『暴君竜シリーズ』はついに『可哀想な受け』ではなく『可哀想な攻め』が全開のお話になってしまいました。

多くの方がはらはらして物語の先行きをご心配されていると思うのですけれども。
そんな中、不謹慎なレビューなんですけれども。
でもここは『ちるちる』なんだもん、萌えを叫んでいいよね。

NTRと負け犬に萌えツボがある私は、この巻の可畏に激しく萌え~~っ!
ど真ん中だよ、どんぴしゃりだよ。
あらすじがどうのこうのじゃないの。
もう、可畏の言動のすべてに萌え転がったっ!

有能で強くてプライドの高い攻めが自分の力ではどうしようもない事態にぶつかって、でも愛する者と自分の尊厳を守ろうとして苦悩する姿を見るのが「だーい好き♡」っていう、あたしみたいな姐さまはいませんか?
そんな方にはこの本、もうウハウハですよ。

蛇足
双子が歌い踊る『こんぶの歌』。
DVDを出してくれたら絶対買います。
可能であれば、笠井画伯の流麗かつ可愛らしい双子ではなく、ちょっとヘタウマが入ったブルブルした線で描かれたEテレ風アニメーションにしてくだされば、萌え死にしてしまうかもしれません。

時代劇として強烈に面白い

「み、光っちゃん……かっこいい~!」と『鎌田〇進曲』のヤスの様な科白を思わず呟いてしまったのは、今作の流鏑馬爭いのシーン。
いや、最高にカッコいいよ、将軍光彬。
あの純皓が、果てのない愛情を持ってしまい「怖い」と言うのも解る。

本当にこのシリーズは『光彬無双』。
無双のくせに光彬自体は『想い人は純皓ただひとり』というのもすごい。
King of kings、真のスパダリ、漢の中の漢と言うべき彼が、受け様だっていうのもすごい。
これは同時に、闇組織八虹の首領でありつつ、牡丹の花に譬えられるほど美しい観台所の純皓が攻め様だっていうのもすごいってことになるのですけれど。
お話は実にオーソドックスな時代劇の形を取っていながらも、このジェンダーの『混乱(良い意味でね)』が実に楽しいんです。
この世界はとことん自由だーっ!

玉兎という『神』が光彬の血を繋ぐ、つまり光彬に子どもを産ませることに執着しているものですから、この巻ではかなり大ごとな陰謀術策が起きています。
絡んでくるのは佐津間藩主、志満津隆義(漢字のチョイスが最高やな)と行方知らずになっていた純皓の異母兄、紫藤麗皓。
この2人が手ごわい悪役でね。バックには玉兎もついているものですから、将軍勢は大ピンチですよ。この巻で『スッキリ解決』しないので後味もそれほど良くないですし。あと麗皓が何か『悲しいこと』を隠しているみたいなのですが、それは全く何なのか解らないんですよ。
……だから、続きが早く読みたいっ。
(麗皓の秘密なんですけど……ひょっとして源氏物語的な?その場合、純皓が光源氏の立ち位置です)

このシリーズが非常に面白いのは『学校で習ったりドラマ等で覚えた私たちの江戸』をお上手に利用しているからなんじゃないかと思うんですね。庶出の将軍、京から来る御台所、吉原、火消、ご落胤etc.etc.……。
ちゃんとした知識じゃなくても楽しめるのです。
でも「ちゃんとした知識を持っているともっと楽しめるのだろうな」という匂いがします。いいかげんな話じゃないから、楽しめる『偽江戸=恵渡』なんですもの。

そして何と言っても、榊原彦十郎時代から続く『大きなお話』の全貌が見えてきて、それが『神との闘い』なんて言う、それも『愛を貫くために神と闘う』なんていう、どっちかって言えば欧米風思想に近くて、だからこそ私たちの考えと似通っているものであるというのが、とっても面白いんです。

時代劇は敬遠される方もいるかもしれません。でも『観方・読み方』と言うか『お約束』のコツさえ掴めばスルスルいけます。
もう、強烈に面白いから。
既刊をご覧になって来た姐さまだけでなく、未読の姐さまも是非お手に取ってみてください。
この至福のひと時を共に。

典雅さんの書く『俺様』

この本が出る本日を首を長くして待っていたんですよ。
本屋さんに入荷のお知らせが入った瞬間に飛び出して、入手して、仕事もそこそこにして読み終わって、今はお話が醸し出す幸福感に浸りつつも「ああ、もう読み終わってしまった」という微かな寂しさに包まれているところです。

今作は『国民的スターに恋してしまいました』のスピンオフです。
あとがきに『そちらが未読でも問題なく読めますが』とありますが、読んだ方が良いです。未読だと笑い逃すおふざけがあるからです。
また、表題作のかなりの部分が『国民的~』で繰り広げられたドラマの裏側というか「葛生と旬があんなことやそんなことをやっている間に、樫原と日暮はこんなことをやっていたのね!」的なことが書かれてありまして、これがとても面白いんですもの。そうだ!明日にでも本棚から『国民的~』を引っ張り出して『比較読み』をしようっと。

攻め様の樫原は典雅さんの攻めとしては珍しい『俺様』です。
でもね、マッチョじゃないんだな。
『誠実な毒舌男』とか『気遣いのない善人』っていう感じ。
典雅さんが書くと、私があまり好きではない俺様キャラも素敵に見える。
そして、同時収録作では、この俺様樫原が壊れるのですよ、日暮が好きすぎて(笑)。
はい、典雅さん作品のお約束ですね。今回のデレ、とっても良かったです!

受け様、日暮は気遣いと献身、そして乙女思考のモブ顔男子。
そうなんです。今回は『アンドレ受け』なの。
これもなかなか可笑しかったんですよねー。

ただでさえ、毒舌樫原と謙遜が過ぎる日暮の掛け合いが可笑しいのに『芸能事務所でタレントの付き人になる前に、日暮が芸人としてやっていたネタ』であるとか『見た目がシュッとしている樫原が趣味で着ている変なTシャツ』であるとか、お話のすじとは異なるところでもぷっと噴き出す小ネタが仕込まれているので、油断できません……そして、私に幸せを運んでくれるのです。

典雅さんの本を読むと「読者を喜ばせたい」「笑わせたい」「幸せな気持ちにしたい」という意思を感じます。
その気持ちがとても嬉しい。
尊いと思います。
次のご本も期待してお待ち申し上げます。

大きいお姐さまのための本

夕映さんのお話で一番好きなのはずーっと長いこと『天国に手が届く』だったんですけれど、この本がトップに躍り出ましたね。

表題作がすばらしい。
それは、
長く付き合ったふたりにいかにもありそうな喧嘩であったり、
また、そのなだめ方と言うか『うやむやにする方法』であったり、
長いこと一緒にいる為にちょっとした好意が言い出せない状況であったり、
こんな『あるある』の中には、2人の人生を重ねていく難しさや、恥ずかしさや、何年経っても成長しない自分へのもどかしさが溢れかえっていて、読んでいると「あああああ~っ」と叫びながら転がりまわりたくなるほど見につまされるんですが、その後に、それを上回る強さで「でも、その全てが愛おしい」という激しい感情に襲われました。

このお話、始まりと終焉は対比する様に響き合った構成なんです。
たたみかけるような終りの部分。
大きいお姐さま方にはかなり「クル」のではなかろうかと思います。

あたしは泣けた。
こんな風に感じられるのなら黄昏もまた一興。
そう思うほど、良い本でした。

『ヤリチン』って……

ヤリチン……
なんか久々に聞いた単語なんですけど。
それだけじゃないの。
このお話の攻め様、ミケーレは『爽やかなヤリチン』『太陽の様なヤリチン』『人格者でヤリチン』なんですよぅ。
なにこれ。
普通、並ばない単語の組み合わせで構成されている。
これがね、私は最高にツボったんですよ。

お先に書かれた姐さま方が大層美しくご紹介されておりますので、細かい所は吹っ飛ばした『このお話の好きな所』を書きたいと思います。

私、昔からね『美女と野獣』は道徳的なお話としては破綻していると思っていたんですよ。だって、王子が野獣に姿を変えられた理由が『見た目で人を判断し、その本質を見誤ったから』ということなら、美しくない娘に心を奪われなければならんのではないかと思うんですよね。

そもそも美しさの基準なんて時代によっても社会によっても異なるし、好ましいと思う容姿だって人によって幅があると考えれば『美しい娘』っていう概念自体がうさん臭くもある。

で、このお話は私が以前から思っていたそのあたりの疑問をね、晴らしてくれちゃったりしたんです。
それも大変お上手に。

恐ろしいはずの『伝説の怪物』だって、その中身を好ましいと思えば全然怖くなくて、むしろ愛らしいってことなんですよ。『だらしないオタク』は別の見方をすれば『何も目に入らなくなる位集中力がある』人になっちゃうんですよ。

あとね『長いこと愛し合い続ける為には無理をすべきでないし、ええかっこしいもやめた方が良い、の法則』もやんわりとですが明確に書かれています。
これもね、かなりの真理だと思うのね。

人付き合いが苦手で、世間からちょっと浮いた存在が初恋を叶えるという、いかにも乙女ちっく(BLなのに!)なお話なのですけれども、あらすじの裏側で控えめに流れる主張はとても気持ちが良かった。

何と言っても冒頭に書いたことを始めとして、笑えるのが良いです。
コメディベースのBL小説って減っている様な気がするのですよ、最近。

最高!

電子本屋さんの書棚で昨年からこの本をちらちらと見かけていました。でもその時は気づいていなかったのです。バッチリと目が合ったのは「年の初めの楽しみに何を読もうかしらうふふ」と物色していた昨年の大晦日なんですね。

『喘ぐ攻めたち』だとぉ~っ?
そもそも『たち』?
『たち』って何だよぉ?

……好きなんですよ、喘ぐ攻め。
当然の如く喘がせる受けも大好き。

ただ、今まで出会った喘ぐ攻めは、つらい過去があったり男という概念に押しつぶされそうなところでギリギリ頑張っていたり、あるいはそういったジェンダー的な所から激しく自由な大人の男(いやん、色っぽい)であったり、かなりにシリアス寄りだったんですけれども。
で、喘がせる受けの多くは悪女かママだった(女じゃないけどね)。

なぁに、このお話。
そんなのと全然違う。
最高にぶっ飛んでいるくせに、とぼけているじゃないですか。
久々の『大当たりトンチキ』です。
興奮。

幼い頃、親から奴隷商人に売られそうだったヤクルを助けてくれたのは娼館の女将。彼女はヤクルに仕事と居場所を与えてくれました。今は娼館で働く人すべてを家族の様に感じているヤクルの夢は、この娼館を町一番の店にすること。
ひょんなことから泥酔した客に体を売ることになったヤクルは『とんでもない名器』の持ち主だったのです。そして、次から次とセレブな男たちがヤクルの虜となって行く……

これね、いわゆる『ほら話』なんですよ。
『ほら男爵の冒険』とか『ガリバー旅行記』とか、ひょっとしたら『ガープの世界』なんかもそうかもしれないんですけど。
このジャンル、かなりのストーリーテラーじゃないと書けないと思うんです。
だって、法螺っていうのはエスカレートしないとつまんないでしょ?
放っておいてもどんどん盛らさってしまう性質なんですもん。
だから放置しておくと風呂敷は限りなく広がりたためなくなってしまう。
このお話でも、ヤクルのお相手はどんどん偉くなっていくんですよ。挙句の果てには自国だけでは止まらなくなっちゃったりする。
もう、爆笑に次ぐ爆笑ですよ。

素晴らしいのは竹智さんがこの広がりまくったお話を見事に畳むこと。
最後のちょっとしたひねりも、前半部分の『娼館のお姉さま方が仕事に対してどんな風に努力しているか』という描写と対を成していて、こちらはニヤリとさせられちゃいました。

問題(?)は、このお話は『ほら話&お仕事小説』であることなんです。
恋愛と言う意味でのLOVEがないんじゃないかしら?色っぽくもないし。
LOVEに過剰な期待を持たずに読んでください。
あたくしは至福の時間を過ごさせていただきました。

じわっと来るお話

魔法もケモ耳もヒートも、刑事もヤクザも、霊ですら出ません。
そんでもってそれほど大きな事件が起きるってわけでもないんです。
……でも面白い。めっちゃくちゃ浸りました。

あとがきによれば第19回リンクス新人大賞で激励賞だった作品とのこと。
調べたら2014年の10月31日が締切。
6年前か。
いや、2021年今の私の『読みたいお話ドンピシャリ』でした。

ひとりは絵描として生計を立てたいけれどなかなかうまくいかなくて、画廊でバイトをしながら絵を描き続けている藍沢。
ひとりはディラーのNO1営業マンであるがため社内では同僚に妬まれ、胃潰瘍になっちゃうほど繊細で、おまけに自分のことについてはとっても口下手な遠野。
この2人が惹かれ合い、互いを大切だと思う様になるのですが、アートについてのすれ違いが起きてしまうんです。この『すれ違い』というか、誤解というか、ここがこのお話のミソなんですが。

藍沢にとって絵って『自分そのもの』なんですよ。
そういう人じゃないと多分絵描きにはなれないんだと思います。
で、遠野はそのことを良く解っているんです。
解っているけど、藍沢の求めていることに応えられない理由がある。
ここの描写がね、いやはや、とってもつらい。

このお話はね、ラストが素敵。
様々な理由で感じ方が違ってしまわざるを得ない人たちでも理解しあえる、と書いてある。やり方は『相手を尊重すること』なんですよ。
これ、恋のやり方としても、アートのつくり方としても、納得できる。
それもね、ストンと落ちる様な書き方ではなく、じわじわっと来るんです。
この『じわじわっ』がねぇ……いやー、良いですよ。
是非ご一読を。

お元気ですか?

時々「元気かなぁ」と思い出す登場人物が私にはいます。
いや、フィクションだってちゃんと解っていますよ。
でも、彼らがこの世のどこかで生活している様に思っちゃうんですよ。

このシリーズの静良井はまさしくそういう『思い出しちゃう彼』のひとりで、それもかなり度々「元気かなぁ……元気であって欲しい」と考えちゃう人です。
だからこのss(最後の一作『未来を半分残したままでいる』のみ、いわゆる短編小説並みの長さです)の再録本はとても嬉しかった!

相変わらず色々と悩んだり、ちょっと悲しくなったり、解らない過去の自分に嫉妬したりしているみたいですが、本編で常に向かい合っていた『自分を根無し草の様に感じてしまう虚無感』は薄れて来ている様に思いました。

見えないものを「ある」と思うのは、信じる心がないと難しいと思います。
私はこの『信じる』ということが苦手で、おまけにちょっと怖くもあるんですが、記憶が途切れてしまうために自分の同一性を感じられない静良井にとっては生きるために必要なことだと、これらのお話を読んで解ったんですね。
そして、静良井が自分を信じられるのは中上の存在があってこそ。

本編を補完するものとして、そしてちょっと心配だった静良井のその後を覗き見させてくれるものとして、本当に素敵な後日談だと思いました。

人は変わり得る

前作『ロイヤル・シークレット』を読み終わった後に、私はこれよりももっとガチャガチャした(事件が多い)続編を想像していましたが、それは見事に外れました。
どっちかって言うと、じっくり書き込まれています。だからベンとジェイムズの心情に寄り添って、ジレジレしながら読めるんですよ。
これがねー、つらさもあり、それ故の輝くような喜びもあり。
心をあっちこっちに連れて行ってくれます。
まあホント、面白い本ですなぁ……

お話の中に出て来るのですが、本のタイトルは『王族の恋人』の意だそう。このタイトルの通り、今回はベンの葛藤が読みごたえがありました。
彼がどうして特定の恋人を作らず、一ヵ所に定住せず、いわゆる一匹狼的な生き方をして来たのかが良く解りました。
ジェイムズが慎重で、我慢強く、恋に臆病であった理由が『彼の今まで』から形成された様に、ベンだって『今まで』があったんです。そこから発想すると、ベンがロイヤルファミリーに『閉じ込められて生きていく』のは不可能に近いと思わざるを得ないのよね。

2人は今後の人生を共に過ごしていきたいと切望しているんですよ。
でも、ジェイムズは自分が生まれた家が持つ責務を果たすべきだと考えていて、ベンは何物にも縛られないで生きていきたいと思っている。
2人の願いはぴったりと重なり合うことはないのです。

ジェイムズのカムアウトを国民が支持してくれるのか?
英国国教会がゲイの国王を認めるのか?
王位継承2位のジェイムズの妹、インディゴの抱える精神的な問題は?
ベンはこんな事件が起きる度に、パパラッチから執拗に追いかけられる日常からジェイムズを連れて逃げ出せるのではないかという希望を抱きます。

だからこそベンが『(ジェイムズの)務め』について話す457pのシーンで、私はとても感動してしまったのね。
ベンは『ジェイムズが譲ってはいけないもの』を解っている。
で、自分が自分の為に守ろうとしているものについてずっと考え続けるんですよ。
ジェイムズを失うほどの価値なのか、ということを。

全体で512pのこの本。
「457pでこんな感じか……終われるんかいな?」と激しく心配したのですが、ライラさん、伏線の張り方がお上手!
人は変わることが出来るんですよ。
大切なものを守る為に。
過去を理性的に振り返ることによって。
今まで捕らわれていたものの見方を変える努力で。

そういう意味で、とても勇気づけられる本だと思います。

濡れ場は控えめ。
でも、この手の抑え方は余計エロく感じますねぇ。
メンタルとフィジカルのリンクが大層お上手に書き表されているのが好みでした。