Sakura0904![]()
上下巻でなんとも言えない読後感を残してくれた作品でしたが、後日談であるこちらは、研究所内の閉鎖的な空間にいた時と違って、ただ穏やかな日々が緩やかに流れていく、そんな雰囲気だったので上下巻よりは安心して読めました。研究所の方針に違和感を感じ、衝動的に聡夫を連れ出した進藤が、本当にそのまま聡夫の傍にい続けてくれるのか未知数なところがあったので、彼がやむを得ず聡夫についててくれているわけではなく、ちゃ…
新田先生の作品は、どんな業界の話でもその世界観を描くのに手を抜いている箇所がまったくないなと感じます。今までに読んだ『春抱き』シリーズは本当に芸能界にいたかのような描き方、『公使閣下の秘密外交』は間近で外交官達の駆け引きを見てきたかのような描き方に感じました。そして、今回はヤクザ、裏社会の作品。まだ1巻なので抗争など殺伐とした展開はなく、導入も特殊で笑える要素もありますが、今回も1巻目で読者の心…
◆晴れたら君を迎えにいく(表題作)
全部読み終えてから改めて振り返ると、そういえばこれが表題作だったと驚くほど存在感が薄くなってしまった作品でしたね(笑)。私はこちらも好きでした。気象予報士という職業も素敵だし、2人の出会いも仕事への真面目さが窺えて良い社会人同士の恋愛だなぁと。展開の速さはちょっとリアルさに欠けますが、じっくり読んでみたいと思えるカップルでした。
◆オレはかわいい弟と
…
いろんな波乱を乗り越えたカップル達の、甘い後日談をこれでもかと読めるのは幸せですね。収録されているカップルのバランスは良いとはいえず、玄間×氷見が多め。この2人が人気のようなので、読者の声に応えた形の選択かと思います。私は守夜×隆成が特に好きなので、この2人の話ももう少し多かったらさらに満足度が高かっただろうなぁと思いました。玄間達に比べて、酒の匂いが濃くロマンチックさのないセックスが多いですね…
今に繋がるかつての言霊師や紙様達の関係性が紐解かれるのが興味深いのと同時に、10巻以上も続く長編でありながら、今までほとんど掴み所のなかった和記というキャラクターをこの最終巻でようやく理解できたことが嬉しかったです。真鉄と力一との間で複雑に揺らぐ彼の感情。一見、どこまでも力一の紙様として生きる真鉄を見て、力一に嫉妬しているように見えるけれど、実は彼は力一にも恋をしていた。2人に同時に置いていかれ…
いやぁ、ここもすごく関係性が尊いカップルでした! 阿沙利は彰伊のことを最初はこんなに憎んでいたんですね。今までの描写では分からなかった、初めて知る事実だったので驚くと共に、彰伊の根気強さ、我慢強さに改めて感心しました。こんなにも阿沙利に嫌われていると知った時の孤独はどれほどのものだったでしょう。それが自分ではどうしようもない理不尽なきっかけだったのも、やりきれないですよね。阿沙利も本当は彰伊に非…
近衛を想う琴葉の気持ちの強さがすごく伝わってきました。初期の頃はもっとふわふわしたカップルだと思っていたけれど、昔から周りに歓迎されてこなかった中、2人3脚で命の危機すら乗り越えてきた、本当に強固な絆で繋がれた2人だったんだなぁと。紙様は傷付いてもすぐ治る、それでも近衛が傷付くのは嫌だと一貫していた琴葉。近衛がどんな時でも琴葉の言動に感情を左右されることなく、琴葉の傍にいる、彼を守る、と安定した…
キャラ単体への萌えはその時々によって変わりますが、ストーリーだけでいうと、守夜と隆成の話が今までで一番ぐっと来たかもしれません。隆成のことを下品だとか粗野だとか評しつつも、何にも勝る美点として彼の情の厚さをすごく評価してくれているんですよね。守夜の主になるのを拒んでいたのだって、面倒だからとか紙様なんてよく分からないからとかいう理由ではなく、主になることで守夜にどんな損をさせてしまうか、彼なりに…
白紙になってしまったけれど、なんとか和記の手で再生された氷見。記憶は失ったけれど姿形は元通りの彼に、少しでも玄間は優しく接してくれるのかと思いきや、彼は振り出しに戻ったように手酷い言葉を浴びせ、激しく氷見を抱いてしまうんですね。もちろん、せっかくあんなに時間をかけて心を通わせ合える仲になったのに、それが一瞬でゼロになってしまった喪失感、虚しさは尋常じゃないでしょう。それでも、生まれ変わる前の氷見…
