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表題作彼に棲む獣

狩生凱,25歳,貿易商の息子
榊千佳也,23歳,美術史専攻美大生

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

先祖が喰らった獣神のなれの果てが身のうちにいるという凱。その「獣」は千佳也の匂いに惹かれ……。
我慢できなくなった凱と「獣」に翻弄される千佳也。淫靡でじれったい宿命愛をご堪能ください!
(出版社より)

作品情報

作品名
彼に棲む獣
著者
神楽日夏 
イラスト
葛西リカコ 
媒体
小説
出版社
プランタン出版
レーベル
プラチナ文庫
発売日
ISBN
9784829624968
2.7

(7)

(0)

萌々

(1)

(3)

中立

(3)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
4
得点
16
評価数
7
平均
2.7 / 5
神率
0%

レビュー投稿数4

運命で全ておさめてもいいのかな?

昨年の作品で『神と契る』という作品があり、あれは体が人間で、魂が神様というファンタジーでありましたが、これもまたある種実体のない獣の血、という部分の不思議なファンタジー。
この作家さん幾分、お話の温度が低いのですが、登場人物が美しい、という設定はお約束なんでしょうか?
結末は意外にもあっさりとして、う~ん、、と首をかしげなくもないものではありまして、二人が運命の相手という結論付けだけであるならそれでもいいか、な感じで全てに納得できるモノではなかったのです。

曾祖父がオーストリアから移り住んで立てた古い洋館の一翼はその曾祖父が集めた怪奇な本を集めた私設図書館です。
千佳也は祖父と共に大學に通う傍らその本の管理をしています。
ある日、そこを訪れた見事に綺麗な外見をした男・凱。
彼の美しさに目を奪われる千佳也ですが、手が触れた瞬間まるで嫌悪するように手を引かれ、首筋に顔を近づけられまるで吐きそうなしぐさをする凱に、不愉快を覚える千佳也でした。
しかし、毎日のように図書館を訪れ何かを探してい凱に千佳也は惹かれていくのです。
ある日、顔がクマで体が人間、顔が狼で体が人間の二人が一人の乙女の前で戦っている絵を図書館に飾ると、凱はその原画を見せろと、激しい興味と執着を示すのでした。
原画を地下書庫で見せた時に千佳也に訪れた何者かが体を這うような感覚に、欲情を覚える千佳也。
一体、凱は何者なのか?
彼等の秘密がだんだんとヒモ解かれていきます。

多分に、ラストで解き明かされるその因縁において、二人は惹かれるべくして惹かれ、結ばれる運命だったということでありますが、
千佳也の積極性は、謎を解きたいという気持ちもあるにしろ、性急感があってなかなか魅せてくれます。
二人とも、童貞同士っていうのが、キスも初めてっていうのが、ちょっと美味しいww
また目に見えない狼の血ということで、それが触手の様に働くのも不思議な作用ですw
凱のその血を鎮めるのに、千佳也が不可欠ということは、凱のお母さんもお父さんと知り合ったことで血が収まったってこと?
でも千佳也の血筋が・・・ってことは?
などと、不思議な疑問があるのですが~
愛は全てを救うってことなんでしょうか?
不思議ですねー、どうやって解釈しておけばいいのでしょうか?

1

彼に惹かれたのは

今回は客の注文で買付をする貿易商の跡取り息子と
私設図書館を手伝う美術史専攻の美大生のお話です。

遥か昔に血に潜められた獣を宿した攻様が
受様との出会って生涯の伴侶を得るまで。

受様の曾祖父は生涯をかけて
ある伝説に関わる書物や絵画を収集しました。

曾祖父の死によりの蔵書を収めた書斎は
そのまま私設図書館となり、
受様の祖父が館長として管理していますが
一般には公開されていません。

というのも曾祖父が集めた蔵書は
人と交わり、人を喰い、人に変わる力を持つ獣を
テーマにしたモノばかりだったからです。

秘密めいた空気が漂う図書館は
幼い頃から受様の遊び場の一つであり
美術史専攻の美大生となった今でも
手の空いた時間は祖父を手伝いながら
図書館で過ごす事を日課にしていました。

そんなある日
ここ最近では珍しくなった新規利用者として
凍てつくような雰囲気を纏う美貌の若者、
今回の攻様が現れます♪

図書館の常連のように怪奇伝説に好む
同好の志には見えない攻様を訝しみますが
攻様は受様に対して厭わしげな素振りで
受様は大いに傷ついてしまいます(苦笑)

祖父によると
攻様の父は客の注文を受けた品を
世界中から探すという特殊な仕事をしていて
攻様は後継ぎとして修行中の身らしく

今回の来館は
人狼の物語を求めてらしく
しばらくは毎日通ってくるときいた受様は
憂鬱な気分になってしまいます。

しかも
誰に対しても無愛想で無関心な攻様は
図書館に通う常連達の連帯意識も無視し
勝手に振舞う事から彼を巡って
細かなトラブルまで起こる事になります。

そんな攻様ですが
図書館を飾る為にある絵が架け替えられると
その絵に激しい関心を示します。

それは
囚われの乙女を巡る戦いの絵ですが
敵の怪物ばかりか助け手のはずの英雄もまた
異系として描かれたモノで

美術を専攻する受様にも
画家の意図が理解できない残虐的な絵でした。

しかし絵について問う攻様の声には
切実な感情が滲んでいて…

この絵には何があるのか?
そして攻様が本当に求めているモノとは?!

身の内に理性の無い獣が巣くう血筋の攻様と
「獣」に好まれる血を有する受様の恋物語です♪

お話は受様の曾祖父の日記と
彼が描かせた一枚の絵を基軸に展開します。

攻様は生まれた時から
自らの血に潜む魔性をおさめるべく
世界中の怪奇伝説や伝承を追っていました。

片や受様の血筋は
どうやらその獣達が惹かれる要素を
宿しているらしく

攻様と出会う事でその血が目覚めた受様は
攻様と同じように獣に憑かれている男に
襲われたりしつつ

攻様が自身の獣と理性に折り合いをつけて
受様を生涯の相手として受入れるまで
ハラハラ&ドキドキな展開で面白かったです♪

特に攻様の獣事情を知らない受様が
事の次第を聞こうとして攻様迫ったら
迫られた攻様の理性がプチキレた挙句の
お初シーンはかなりツボでした(笑)

今回は本作と似て神を宿す攻様お話を一作、
神楽さんの既刊『魔神の婚姻』をご紹介します。

0

設定倒れ・・・

神楽さんは好きなんですが、時々『なんでこっち・・・?』というのがあります。これもそのひとつ。

なんとなく、気合いはわかるんですよ。『なんかこういうの書きたいんだよ!』というのは。でも申し訳ないですが、気持ちというか雰囲気だけはなんとなく伝わって来るものの、中身が伴ってない気がします。私の好みじゃないから、余計にそう感じるのかもしれません。全然楽しめなかったし。

これは一種のファンタジーなんでしょうか。私はファンタジーBLは大好きですが、まったく乗れませんでした。入る隙もないままに勝手に終了・・・という感じでしたね。

いっそ『BL』としての枠じゃなく書いた方が、いろいろと詰め込んだ設定は活かせたんじゃないのかなあ。ファンタジーなのかホラーなのかわかりませんが。←BLのレビューで言うことじゃないよな・・・

獣とか触手とか、せっかくの設定が単に意味ありげなもので終わってしまったように思いました。それなのに、『BL』として、つまりラブ面も私は物足りなかったです。
どっちつかずで中途半端でしたね。コンパクト(褒め言葉ではない)にまとめ過ぎた感じ。

それに、特に『獣』関係で、読み終わっても疑問が残ってしまうというか、綺麗に収束できてない気がして、説明不足だと感じましたね。これは私の読み込みが足りないのかな?

う~ん、何かと消化不良でした。『それっぽい』雰囲気はありましたが、それだけだったな。

0

どうも沸点の低い異形モノ

千佳也(ちかや)の実家の施設図書館は、欧州から移住した曽祖父の蔵書で全て"人と獣"に纏わるものだ。
利用できる人物もごく一部の顔見知りに限られているのだが、そこに不愛想な美男・凱(がい)が足繁く通うようになった。
千佳也は、何かを懸命に探す凱の力になりたいという気持ちから彼に惹かれていくが、相手にされない事に寂しい想いを抱くようになる。

凱の秘密に関わる"異形のモノ"ってのがまさしく言葉通りの内容だった。
"変身"というよりも、"寄生している"って言ったほうがイメージに合う。
先に異形を宿す他の人物の変貌シーンがあるのだが、グロテスクな割りにスプラッタ味が皆無ってのは何だか不思議だ。
また、それが千佳也の内を侵食する目に見えない触手みたいな描写とか、凱の内面の異形と千佳也の内面の何かが共鳴し合って貪るシーンってのは多分独特なシチュエーションのはずなのだが、どうも興奮しない。

この一冊が神楽さん作品の初読みとなるのだが、2010年刊にも関わらず俗世を感じさせないひっそりとした雰囲気に戸惑った。
凱と千佳也の先祖には何か関わりがあって、その謎の手がかりは曽祖父の蔵書にあるって展開は興味をそそるのだけどなぁ…
沸点が低いと言うか、どこか冷めていて高揚感が湧いてこない。

ただ、凱と千佳也のお互いの内に潜んでいたモノ同士の相性が勝っているばかりでなく、当人達が相手に歩み寄ろうとする姿勢は好ましい。
凱ってばこれまでに誰にも接触する事が出来なかった境遇からか、千佳也に対しては感情表現が下手でも一途な男だった。
その辺りは千佳也のほうが上手くリードしていて、たとえ異形が潜んでいても初々しいカップルではある。
その部分にもう少し思い入れを込める事が出来たら良かったのにな。

0

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