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まず評者は驚愕したのです。
『柳沢さんの作品なのに、滑らかに読めるなんて!』
と。
今迄が今迄だけに身構えていたのに、拍子抜けと
言うべきか嬉しい誤算と言うべきか。
そして読み通して振り返ってみると、ああ!と合点が
行きました。
この一冊における柳沢さんの役割は神でも監督でも
ないのだと。
我々読者と同じ様に舞台に棲む魔物に魅入られた
ろくでなし共の群像劇を見守る立ち位置に居るのだ、と。
そう言う愛着が筆に籠って動いた訳でしょうから絵解きが
さらりと進む筈です。
この一冊には端役にまで惜しみなく愛が注がれています。
その愛を活かせない役者もたまにいる様ですが。
バレエの世界を舞台にした、雰囲気のある漫画。
on Blue誌上で部分的に読んだ時には、それほどいいと思わなかったのだが、
まとめて読むと世界観が際立つ。
バレエの世界で生きる義理の兄弟を中心に、もう2カップル、オムニバスで描かれてる。
絵は古風でキャラの見分けがつきにくかったり、書き方が整理されていない感じがあり
些か読みにくさもあったが、バレエ場面の絵は綺麗だし、ストーリーも悪くない。
バレエってだけで、つい引き寄せられてしまうっていうのもあるんだけれど…
明るいLOVEじゃなくて、芸術に携わるものとして愛と不可分な執着とか葛藤とか、
そんなものが描かれているのはとても好みでした。
兄弟の父クレマンと、長じた兄弟が所属するのオゾン・バレエ団の代表ティエリー。
この二人の若き日、クレマンの分かりにくい愛は切なく心に残る。
一方で、天才ダンサー・モリとオリヴィエの話は可愛らしい話。
ちょっとユーモラスな部分もあり、読みでのある一冊だった。
(書き下ろしの「encore」で納豆をねちねち混ぜているユーイに笑ったw)
表紙の裏は赤、裏表紙の裏は青、の装丁も素敵。
<おまけ~作中のバレエについて〜>
*「火の鳥」ストランビンスキー作曲、振り付けミハイル・フォーキン、1910年パリで初演。
ロシアの民話を題材にしたストーリーだが、本来クラシックでは火の鳥役は赤いチュチュの女性。
本作品では、モダンのオリジナル演目として男性が演じている。
*「ロミオとジュリエット」プロコフィエフ作曲、
言わずと知れたシェイクスピアの名作のバレエ版。1940年レニングラードで初演。
この演劇的なバレエは、古典的なバレエしか知らなかった観客にとって
非常に刺激的だったと言われている。
作中クレマンとティエリーをロミオとマキューシオに準えているが、
マキューシオの死の場面はこのバレエの見せ場の一つ。
*「若者と死」コクトーの原作をバッハの「パッサカリア」の旋律にのせた
ローラン・プティの初期の代表作。1946年初演。
熊川哲也のレパートリーとしても知られる。
*「春の祭典」ストラビンスキーが、ニジンスキーの振り付けの為に作曲。
以降この革新的な曲は、多くの振付家によって振り付けられている。
ベジャール版やピナ・バウシュ版などが有名。
こんばんは~
おまけ、ありがとうございます(^▽^*)
読みながら「ん?」となって手が止まって、ネットで調べてみると、
分かって納得なこともありましたが、
いっぱい情報が出すぎて余計こんがらがることもありました(‐ ‐;
なので、こんなコンパクトに豆知識(?)を載せてくださってありがたい、感謝です!
ちるちるのレビュアーさんは親切だ~~♪
もう少し読みたいとも思うけど、人生の一瞬のきらめきや思い出をダイジェストで見せているような、一度しかない生の舞台に立つダンサーを描いた作品に合った刹那的な魅力を感じました。
パリを舞台に、主人公を変え、時代を変えて語られるバレエダンサー達の日常、葛藤、愛情。全部で三つのカップルの話から成る短篇集で、各話にはつながりがあります。
最も印象に残ったのは、【Au revoir】前/後篇です。
現在はバレエコーチとして、メインカプ達を指導するティエリーと、メインカプの父親で天才ダンサーだったクレマンの話。
クレマンとティエリーの愛し方の違いが、二人の芸術の道の分かれ目でもあり。
天才的ダンサーとして、舞台の上でも実生活でもドラマティックな人生を歩んできたクレマンの最期は、実にあっけなく。
その原因も、若い頃のふとした戯れがあとを引いているのですが、彼の記憶にはなく。
ティエリーを思っているかのよう安らかな顔を浮かべて死に絶える彼は、最後までひどい男で、天才故の無邪気さと残酷さを感じさせました。
絵が、ちょっと少年漫画っぽい感じであまりblらしさがない路線だったのが、表紙のイメージとは違いましたが。ダンスシーンなどの筋肉の付き方や動きの描き方がしっかりしていて、個人的には大満足でした。
この作家さんの作品をもっと読んでみたいと思いました。
義兄弟、ともにバレエダンサー…ということなんですが、モダンがメインなのでキラキラしていません。そこがちょっとガッカリ(笑)
これ、読み返すたびに評価が上がっていった本です。
正直なところ、一度読んだだけでは「中立くらいかな…」と思ったくらいでして。
まず表紙では分からなかったんですけど、絵が得意なほうではなくて…
表紙はユーイは目を瞑ってますし、レジスも片目しか見えないし…ちょっと、というかかなり独特な絵です。
で、キャラの書き分けが曖昧なところもあって、一度読んだだけでは「?」となる部分があったのです。
とまあ、とっつきにくかったところを通り過ぎると全てが愛しくなりますw
計3カップルのお話が入り組んで入っているので、ぶつ切り感はありません。
レジスとユーイの義兄弟
多分最初にとっつきにくいなぁと思ったのは、最初にこのふたりのお話がきたからかも。
いや、主役なんですけども…w
歪んだ愛をユーイ(弟)に向けるレジス(攻)で、レジスはどこかユーイに逃げてほしいと思っている節がある。
レジスとユーイが兄弟になった流れをレジスは納得していないところがあって、ユーイへの愛どころか、さまざまなものが歪んでる。でもこれ仕方ないことなんですよ、少し後ろの「Au revoir」を読めば分かっていただけると思います。
で、どこまでもユーイが知らん顔して追ってくるものだからどんどん追い詰められて、最後には愛も懺悔ももろもろぶちまけてしまう、と。
ふたりの創作ダンスに付けられたタイトルがレジスの気持ち。
オリとモリの同バレエ団ダンサー同士
あの、最初に混乱したのはオリでした。
ユーイにちょっかいかけてたリュカってキャラとの区別が付かなかったんです~(涙)
だから最初はリュカ=オリと思い込んで読み進めて、最後にオリのフルネームが出て「あ、あれ?」と思った次第。
天才ダンサーとして活躍してたモリ(受)の怪我を自分のせいだと思い込んで落ち込むオリ(攻)
私はこのふたりが一番好き。一番BLっぽいと思った。
オリは負い目から動けずにいたけど、モリがどこまでも愛の人でした。
このふたりの話がもっと読みたかったな。モリが踊れるようになるまでとか。
ティエリーとクレマンの傲慢愛
あー……これはどう感想を書いてよいものやら分からない。
クレマンみたいなキャラはBL的に大嫌いなのですが、でもこれが彼の性分なんですよ。だから成り立つ話もあるというわけです。
クレマンを表す言葉として私が思いつくのは、純粋に傲慢。
ティエリーがレジスとユーイに語ったクレマンの印象が胸に痛い。
最後の1ピースを手に入れる直前でクレマンは亡くなってしまい、それを与えるはずだったティエリーもクレマンに縛り付けられてしまった。
お話としては「500ユーロの嫉妬」が好みだったんですが、これも一度目は意味が分かりにくかったんですよねぇ~(涙)
これから読む方はコートに注目してください。
バレエの知識はなくても普通に読めますが、ロミオとジュリエットの話だけはちゃんと知っておいたほうがいいと思います。
でないとクレマンがわけの分からない人になってしまいますので…
好き嫌いは別にしても、かなり奥深い作品で、バレエダンサーたちの苦悩や
取り巻く環境、芸術性の高いバレエゆえに才能一つでその後が決まる。
そんなバレエ界で、ダンサーたちの交流と苦しい葛藤、愛した相手の裏切りや
思いが空回りするような擦れ違い。
ある義兄弟ダンサーのカップルを中心に描かれているそれぞれの恋のゆくへ。
悲恋もあれば憎しみもあり、器用に生きているようで、誰よりも不器用。
様々な人間模様を垣間見る事が出来、過去と未来が交差する展開もある。
この作品はさらりと読んでしまえば、それまでになってしまう恐れがあるのですが、
じっくり読み込むほどに味わい深い内容だと思える感じの作品。